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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その②

「そういえば親友、今日はたしか君の誕生日だったよね。良いものをあげよう」
ふと思い出したように明晶が口を開いた。
「今日誕生日なのはプロフの方な」
「あれ、そうだっけ。ワタシの誕生日を祝ってくれる家族は、3年も前にもういなくなっちゃったからねぇ……」
「死んだみたいに言うじゃん」
「えへへ、みんな無事なんだよね。ここがカゲに沈んだのがちょうどみんなの旅行中で良かった」
「……で、『良いもの』って何だよ」
「ああ、そうそう」
明晶が放り投げて寄越したものを。吉代は片手でキャッチし、改めて確認した。
腕時計のような形状ではあるが、文字盤の代わりに液晶画面が取り付けられている。
「何だこれ。スマートウォッチ?」
「それっぽいでしょ。頑張って作ったんだー。素材だけは腐るほどあるからね」
吉代が顔を上げると、明晶の右手首にも同じデバイスが嵌められている。彼女のデバイスの画面には、半分ほどまで減り黄色くなったゲージと『3』の文字が表示されている。
「おそろい」
「で、これ何」
「装着した人の光の力の現在値と、どれだけ消耗したかを表示してくれる機械。オプションもついてるよ」
「オプション?」
「まず一つが、通話機能。ワタシのデバイスとだけだけど」
「……ってことは、他にもあるのか」
「うん」

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅷ

ちょうど歩道橋の壁に隠れた所で、耳の通信機から石英の声が聞こえてきた。
『作戦はぼくがさっき言った通り、狙撃手以外のメンバーが陽動で一斉に銃器型P.A.を撃つ』
それでカゲを混乱させている隙に狙撃手がコアを撃ち抜く、と石英は続ける。
『みんないいね?』
石英がそう尋ねると、通信機の向こうから了解!と威勢のいいクルセイダースのメンバーの声が聞こえた。
加賀屋隊もそれぞれ返事をする。
『じゃあ目標が近付いてきたら合図を出すから』
それまで待っててね、と石英からの通信は終わった。
「…それにしても」
石英の通信が終わった直後、寵也はポツリと呟く。
「この辺りは妙にカゲが少ないな」
「そう?」
弾は首を傾げる。
「他のみんながこの辺りのカゲを倒しちゃったからじゃない?」
別におかしいことでもないよ、と弾は続ける。
「確かに、この辺りはほとんどカゲはいないけれど…」
STIから支給された周囲のカゲを探索する端末を見ながら巴は言う。
「この通り、周りに隠れている訳でもないみたいだし…」
そう言いかけて、巴は言葉を失った。
「?」
巴、どうかした?と紀奈が巴の方を見る。
巴の目は手元の端末に釘付けになっている。
「巴?」
「マズい」
紀奈の言葉を無視するように、巴は呟く。
「え、マズいって…」
「こっちにカゲの群れが近付いてる‼︎」
巴はものすごい剣幕で叫んだ。
それと同時に頭上から黒い何かがいくつも飛び込んできた。

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お身体どうですか

健康診断
余命を告げる神との問診
カルテ片手に腸内パトロール
終わりまでのゼンマイが静かに巻かれる

キーンコーンカーンコーン
来月までに体重落としましょう
来月までに血圧落としましょう
来月までに病院へ行きましょう

やってくるのは天使か死神か

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野良輝士市街奪還戦 その⑧

「あとは任せたぞ宗司、かどみー」
「おう任せろー」
片手を上げて答えた宗司に、ヌシが腕による薙ぎ払いを仕掛けてきた。
「お、その攻撃は助かる」
そう言いながら、宗司は予め初音が突き立てていた剣を足場に跳び上がり回避した。弾き飛ばされた剣は初音が回収し、宗司が頭上から、初音が足元から攻撃を仕掛ける。ヌシは両方を一瞬見た後、まず宗司を殴りつけようとした。しかし、その拳は途中で不自然に停止する。
灯が地面に向けて撃ったワイヤーがヌシの腕を絡め取っていたのだ。
その隙を逃さず、宗司が頭を叩き潰し、初音が片脚を切断したが、ダークコアには当たらなかったようで、ワイヤーを振り払い更に攻撃を放とうとする。
「させるか」
即座に巻き取ったワイヤーを再び発射した灯の攻撃と遠方からの真理奈による狙撃がヌシの腕を貫き、殴る勢いでその腕が千切れ飛んだ。
「いよっしゃ片腕片脚取った!」
「ナイスゥ灯に真理ちゃん」
親指を立てた宗司の横に、小春が吹き飛ばされてきた。
「ん、どうした新入り?」
「ごめんなさい、押し負けました……。私の押さえてた分、一気に押し寄せてきます」
「マジか。流石に片方しか防げないぞ」
そう言っている間にも、前方からはヌシの叩きつける攻撃が、後方からは無数のカゲたちが、その場の4人に迫ってくる。その時、
『宗司くんは後ろを止めて! ヌシの攻撃は当たらないからかどみーちゃんが心臓を狙って!』
通話状態が続いていた携帯電話から、真理奈の指示が轟いた。

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白と黒と青き星 〜第2話 戦闘〜バディ編

「美空!お前何のつもりだ!」
飛んできたクナイは駆け巡った思考の中から1つの答えだけを指し示した。
「まぁ確証があったわけじゃないけどね」
クナイに遅れて本人が笑いながら降りてくる。
「でもデコイの可能性は高いと踏んでた。だから俺に本体を譲った。違うか?」
徐々に回復するカゲの体や触手に斬撃を入れながら問い詰める。
「半分正解、でももう半分はほんとにジョーじゃなきゃ本体に太刀打ちできないって思ったからだよ」
全く都合のいい言い方だ。実際俺の刀型P.A.ですら傷をつけるのが精一杯だったから結果的には正解だけど…でも今そんなことは問題じゃない。
「なぁ、お前ならコアの位置がわかるんだろ?」
「だからわかるわけじゃないって!見当はつくけど…」
「俺よりわかるならそれでいい、交代だ」
「はぁ?聞いてなかったの?私のP.A.じゃ歯が立たないんだってば!」
「お前はコアを打て、それ以外は俺が諸々やってやる」
お互い投げやりな言い方をするが、その真意は伝わっている。バディとは極めて不思議な関係だ。
「無理言って…まぁジョーが言うなら信じられるけど」
美空はクナイでカゲの体を抉っていく。ジョーはその傷を維持し、攻撃を全て捌く。
【初めからこれが出ればいいのだが…】
隊長はその様子を賞賛しながらも少し頭を抱える。
「あった!」
隊長のそんな感情を余所に美空はクナイがコアに当たった感覚に声を上げた。
「ぅりゃーー!」
ダークコアとP.A.がぶつかり甲高い音が響く。コアへの衝撃にカゲの体が反応し、硬直する。
「ダメ…硬い…」
クナイが刺さったまでは良いがそれより奥に進まない。美空が助けを求めるように後ろを覗く。そこに、彼の姿はなかった。
「ジョー?ねぇ!」
辺りを見回すが彼の姿は見えない。
「上だ、バーカ!」
美空は死角からの声に驚き上を見た。
「どけっ!押し込んでやる!」
美空は彼の姿を目で追いながらクナイから手を離し、後ろに後ずさりする。
「ダァーー!」
ジョーの繰り出した足先は見事にクナイを捉え、先程までよりも深く差し込む。ダークコアの中心に到達した瞬間コアが砕け、その破片が爆散した。融解するカゲの体に足を取られ尻もちをついた美空に
「ラストは貰った」
ジョーはそう言ってサムズアップを見せた。