表示件数
0

淡く、

夏色を含んだ風がビルの間をすり抜ければ
真っ赤な夕焼けが
アスファルトさえも染める午後7時

夏なんて貴方に出会う一要因にもならなかった

揺れるブラウスの袖を引っ張ってくれませんか
みっともなくても正直に
月並みな言葉を並べて
繋ぎ止めてくれませんか

触れればそこに居るのに
心はさわれないから不安だよ

幾ら腕の中で幸せを願っても
解ければ忘れそうで

淡く、強く、君を想って今日も月が揺れるよ

0

普遍

客観を極めると
自己存在は潰れて消え去り
世界の中で
普遍的な理性と
多種多様な欲求が
激しくぶつかり
荒々しくうねる姿が
見えてくる

自らの理性が普遍的か
それだけ気になる

0

LOST MEMORIES ⅡⅩⅠ

職員会議を終えた先生は、軽く説明をして、生徒を廊下に並ぶよう促す。先程と変わらず、必要最低限のことしか話さない。番号順に並べということだったが、この団体行動に 瑛瑠は驚かずにいられなかった。
前も後ろも、廊下中に人、人、人。
チャールズが言うには『まわりの人の真似をしてください。式中はただ座っていればいいです。』
ふと、あの彼が目に留まる。
まわりの様子をうかがうでもない。
自分と同じような境遇であるなら、慣れていないことだらけではないのだろうか。
つかめない人である。
「瑛瑠さん、隣同士みたいだね。」
不意に声がかかる。望だ。長谷川と祝の間に人はいなかったので、どうやらそういうことらしい。列は2つということだ。
「ぼーっとしてたみたいだけど、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
言い辛そうに口を開く望。
「あの……別に、敬語じゃなくていいよ?」
呆気にとられる。
どうして急にそんなことを。たしかに、そうかもしれないが。
「癖のようなものですから、気にしないでください。」
それでも納得には至ってないように見える。
「……長谷川さん?」
「う、ううん、癖ならしょうがないよね!」
そう言って、前を向いてしまった。
基本敬語だ。それは、そうマナーとして教えられたからに過ぎない。チャールズやお世話係、メイドに使わないのも然り。立場云々ではなく、その場面には相応の対応があるということだ。
だからといって相手に強要する気はないし、自分と違うからといってどう思うわけでもない。口調も、個性のひとつだ。大切にされるべきものである。
と、瑛瑠は考えるので、唐突な望の発言には、どうしても疑問を抱いてしまうのであった。

1

LOST MEMORIES ⅡⅩ

教室全体を見回して、ある男子生徒に目が留まる。
「瑛瑠さん?」
本を読んでいるようだ。
「あの、長谷川さん。彼のこと、知ってます?」
今 本を読んでいる、と付け足す。
望は首をかしげる。
「いや、知らないよ。」
ですよね。
思って応えずにいる瑛瑠を、望は訝しげに見る。
「どうしたの?」
まさか、本人に言うわけにもいくまい。
「いえ、ホームズなんて 洒落ているなと思っただけです。」
別に、何でもないと答えればよかったのだが、嫌味を言いたくなってしまった。自己満足でしかない答えに、望はさらに不思議に思うのだった。

4

LOST MEMORIES ⅩⅨ

まもなくして大人の人が入ってくる。50代くらいだろうか。男の人である。どうやら担任の先生。寝癖だろうか、朝起きてそのままのような状態の頭の彼は細身で、いかにも低血圧といった感じがする。瑛瑠の思う統率力のある先生のイメージとは、かけ離れているといっても過言ではなかった。少なからず、このような人を王宮の中では見たことがなかった。
教卓の前に立つ先生。
「おはよう。今年一年このクラスの担任をやる鏑木(かぶらぎ)だ。
今日の日程は事前に紙で見ていると思うが、始業式のみ。昼には完全下校。」
なかなかの単刀直入タイプであった。たしかに、事前に予定は知らされていた。もちろん、チャールズ経由ではあるが。
「今日は時間がないから、クラス内での自己紹介や委員等の決め事は明日。
これから職員会議だから、静かに教室にいること。勉強でもしとけ。」
気だるそうに言う先生を、瑛瑠はまじまじと見つめる。
先生はそのまま教室をあとにした。
あんな先生、あんな大人は初めて見た。
クラスで話し声が聞こえる。
「ねえねえ、鏑木先生だったね!超嬉しい!」
「ほんとほんと!嫌な先生だったら1年間おしまいだもん。」
生徒間の人気は高いようだ。
今話している子達は中等部からの付き合いなのだろうと思いつつ、やはり彼の人柄は疑問だった。
「瑛瑠さんは高等部からの人?」
振り返るのは望だ。
「そうですよ。長谷川さんは?」
「ぼくもだよ。鏑木先生ってどんな人なんだろうね。」
話についていけない組発見。静かにとは言われているが、あくまで静かにだから、許容範囲だろう。それぞれやっていることはまちまちだ。

0

雑談

哲人「じゃあ君は彼が絶対的に悪いというんだね?」
青年「もちろんですよ!まだ年端も行かないか弱い何人もの女の子をあれほど無惨に殺害するなんて、悪くないという方がおかしいですよ」
哲人「そうか。ならその親はどうだね。その男をそんな凶悪犯にしてしまった親だよ?」
青年「ええ、もちろんその親も悪いです」
哲人「ではその親は?少なからずともその男、その男の親に影響を与えた人だ」
青年「それなら、その人もです」
哲人「どこまで遡ろうか?君が進化論者か創造論者かは知らないが、すべての原点は宇宙の始まりだ。君は全宇宙を否定するかね?」
青年「.........」
哲人「我々人間には、人間は裁けないのだよ。同じ人間なのだ。例え裁判官でも、裁判官は裁けない。しかしてその裁判官の裁く力も人間が与えたものだ。ましてや君が人を裁くことができようか?」
青年「.........」
哲人「我々が例え善悪を判断できても、それゆえに人を裁いてはならないのだよ。君は自分のことだけ心配してればよろしい」
青年「しかし、たった今先生も私を裁かれたではありませんか」
哲人「そう思うかね?」
青年「.........」

1

有限

カウントはしないよ
君が焦ってしまうから

いつかは伝えたい
伝わってしまう
気づかれてしまう
バレてほしいのに
いやまだ、そんなんじゃなくて…

本末転倒が呼んだ
最悪でみっともない僕を
見ないでおくれこんな僕を

0

ことばを使うと云うこと

どんなに気を付けたって失言はなくならないし、かけたかった一言もすぐ忘れてしまうけれど、たいせつなグラスみたいに一つひとつこわれもののことば、毎日きれいに磨いては口を付けて、明日も…

5

LOST MEMORIES ⅩⅧ

持ち上がりが多いためか、初日のわりにクラスはざわついている。もしかしたら、望のようにフレンドリーな人も多いのかもしれない。気を付けろなんて、言いがかりだと思ってしまう。
「ねえ、瑛瑠さん。担任の先生、どんな人だと思う?」
うしろを再び振り返って望が聞く。
学校の制度は学んだことがある。しかし、クラス形式での学びは初めてなので、担任の存在は知っていても、どんな人かなんてまるでわからない。
「大人数をまとめあげる統率力のある方、でしょうか。」
馴染めとはまた強引な指令である。今さら気付いてしまった。
瑛瑠としては精一杯考えたつもりだったが、求められていたのはそういう答えではなかったらしい。
さすがに瑛瑠とて苦笑いくらいわかる。
「すみません、質問の意図を取り違えてしまったようで……。」
「ううん、そうであってほしいよね。
ぼくは優しい先生がいいなあ。」
そういうことか。ため息が出そうになる。
いつかぼろが出る、そんな気がしてならない瑛瑠だった。

0

届け。

滑り込んで滑り込んで。
手が届きますように。
痛くても立ち上がって。
絶対落とさない。諦めない。
上がれ。繋がれ。届け。

0

生きがい

生きがいを探してみたけれど、
どれもしっくり来なくて、
考えてて虚しくなったから、
とりあえず、明日を生きよう。

0

夜明け

思った以上に 世界は退屈なようで
思ってた以上に 僕の足場は悪くて
重く沈んだ腰は いくら踏ん張っても上がらず
気づいた時には 頼んでもいない夜明け

いつか夢見ていた「明日」を
まるで強盗かのように
怖れて
拒んだ
十七のある夜明け

0

しん

好きやからすき
みんなが嫌いやからって
嫌いになる必要はない

9

LOST MEMORIES ⅩⅦ

とりあえず今日は様子見。そう割りきって教室に入る。玄関での人数のわりに、思っていたよりも人はいた。
基本的に静かではあるが、既に話している子も中にはいる。中等部から一緒の子だろうか。だとしたら、人間だろう。一年の期限つきの自分達は、高等部からの新入りである。そう、チャールズに聞いた。
黒板に張られた紙から、自分の席を探して机の上に鞄を置く。前の席には既に人が座っていた。
すると、こちらを振り向いた。
先程気を付けろと言われただけに、身構えてしまう。
「おはよう、初めましてだね。
ぼく、長谷川望(はせがわ のぞむ)って言うんだ。
名前、教えてもらえる?」
優しくにっこりする彼に、拍子抜けしてしまう。
「祝 瑛瑠です。」
「祝さんかー。なんて読むんだろうって、ずっと思ってたんだ。名前も、可愛いね。瑛瑠さんて呼んでもいい?」
感じのいい微笑み。
だめだ、ひとつもこの人が危険だなんて思えない。
いや、危険とは言われていない。気を付けろ、だけだ。
やはり あの彼の真意は図りかねる。
「もちろんです、よろしくお願いします。」
瑛瑠が微笑んで言うと、望はまたにっこりして言った。
「こちらこそ、よろしくね。」

1

summer end

ほら浴衣を着て 花火でも見に行こうか
はぐれないように手を繋ごう
提灯の明かりが二人を照らすから 悲しいのはなぜだろう

またね なんてもうないから
どうか手を離さないで ボクを置いてかないで


もう君は彼方の空へ
ボク達の夏は終わり

0

Moonlit night 〜月夜に咲う〜

愛を信じれない
誰も愛せない
愛に忘れられた
愛を忘れた僕を
月が咲う
夢も信じられない
幻すら願えない
今宵も月に妖しく照らされる
あなたの目は
冷たく
切ない

0

諦められない

故に全て捨てたくても残す。
骨が折れても走る。
走れないなら這いつくばってでも進む。
こんなところで諦めてたまるか。
俺はまだ空虚を楽しみたいんだ。

3

春宵一刻。

眠りに就いても私を忘れないように
あのお月さまの女神に
遺言を渡して
今宵は身を委せて 踊りましょう

幸せのクローバーを
半分こにして あなたにあげる
あなたのすきな小説の 栞にして
幸せも不幸も半分こ

もう頑張らなくていいよ
ゆるゆるしよう

0

ばんそうこう。

心にテープで×を付けられてしまったんだね
きみの声が聞こえない。
じぶんではがせないの?
なに言ってるかわからないよ。。

きみが明日へ一歩踏み出す扉も
堅い板で閉められてしまったんだね
もう生きてけないなんて。
道具持ってないの?
僕も開けられないよ。。

待って泣かないで。
僕が今からテープはがしてあげる。
え、痛くないよだいじょうぶだよ。
、、ずいぶん粘着が。
えいっ!
、、、ぇ、どうしたの?
痛かった?ごめんね、、
「ねえ。ばんそうこうだったんだけど。」

4

LOST MEMORIES ⅩⅥ

『どうせ気付いてないんだろ?』
彼は相当な実力者だろう。人間に1番近いウィッチの魔力をキャッチできるほどのアンテナだ。瑛瑠は一切使っていなかったのに。
確かに気付いていなかった。腹立たしい。筋違いとわかっていても、彼にさえ腹が立つ。
そこまで思って、息を吐いた。このままでは、自分がとらわれてしまう。今 暴走しても、止めてくれる人はいない。
歩を進めながら考える。彼の種は、大体予測できた。
1人、見つけた。やはり話しかけようか。
そう思ってかぶりを振る。チャールズに止められているのだ。それだけではなく、まだ彼とは話せない。どれだけ信用のおける人物か、わからない。会って早々あんな態度で、会ったこともない人を気を付けろと言う。
『どうせ気付いてないんだろ?』
再び思い出す。
『君、弱そうだしな。』
この手の差別は受けたことがなかった。が、実際にあるのだと痛感する。
こう言われた理由。
――私が、ウィッチだから?

1

僕の心はいかほどに。

もしも明日僕が
死んでしまうなら
誰かの命を犠牲にしてでも
生きたいなんて
願うのかな

2

詩を書こう

詩を書くために教科書は必要ないけれど、ときどき誰かに教わりたくなる。
美しいものに法則はないけれど、ときどき理由がわかったりして嬉しくなる。

‪最果タヒ‬さんのSNSで初めて知った「公募ガイド」なる雑誌の7月号に
詩を書こう、と云う特集が組まれていて、とても興味深く読みました。
宣伝じゃないけれど、書店で見かけたら手に取って見てください(宣伝じゃん)

0

   

いつも置いてけぼり。

わたしは、いつも置いてけぼり。



だれに?



あたまのなかで、わたしは、いつも置いてけぼり。

気がついたら、あたまのなかで、わたしは、いつも置いてけぼり。


なにに?


あのこに言われて、気がついたら、あたまのなかで、わたしは、いつも置いてけぼり。

話したことのない、あのこに言われて、気がついたら、あたまのなかで、わたしは、いつも置いてけぼり。


どうして?


わたしは、なんにも知らない。

わたしは、なーんにも知らない。


知ってるのは、

そう、知っているのは、



あなただけ。

1

情景描写

雨が屋根を打つ音は止まず
振り子時計が苦しげに鳴る

現実に俺の心が投影されてる。

0

日常

日常は突然終わる。


例えばそれはたった1つのインターホンで。


例えばそれは机にこぼれたコーラで。


例えばそれは不意に口をついた一言で。


例えばそれはいつもより早く起きたことで。


例えばそれは六と少しで。


例えばそれはロクヒトハチで。


例えばそれは月曜日のギターで。



いつもと同じような日々も、


なにか、違う。

9

LOST MEMORIES ⅩⅤ

そのまま教室へ向かう彼を追いかけるほど、瑛瑠に余裕はなかった。
この屈辱、憤りをどうしてくれようか。初対面である。礼儀とは。マナーとは。
すべてを叩き込んでやりたいと、そう思ってしまった。
怒りにいこうか、それとももう一度話を聞こうか。いや、無視?
そこで、あることに気が付いた。微かに残るこれは
「――魔力。」
魔力は、使う意思のあるときしか原則放出されない。身の危険を守るためや、自らの痕跡を残すため。原則というからには例外もある。
それは、強い感情を持つとき。
意思によって制御している部分が大きいぶん、それに勝るだけの強い感情を持ってしまうと、制御できず魔力が漏れることがある。それゆえ、よく争いも起こる。感情が魔力という形となりやすいからだ。
しかし、代謝のようなものなので、普段意識するようなことでもないことも確かで。
種によって力の相性の良し悪しもあるため、大概は同種族で過ごしている。
長々と説明してしまったけれど、今のこの魔力は、原則の後者だと瑛瑠は考える。居場所を知らせるためでも、テリトリーだと主張するためでもない。
自分は西洋妖怪だと暗に示すために、彼は残した。

0

な。

きらきらとさわやかな言葉がほしい
どれも納得のいかない
前ならえの。

4

LOST MEMORIES ⅩⅣ

黒髪に黒い瞳。それも、冷たい眼。
正面からみると、かなりの美形である。チャールズの顔も綺麗だと思ったが、彼も負けていない。
なんて思っていることがバレてはいけないので、社交パーティーでまなんだ微笑みを向ける。
「なんでしょう?」
「前の席、気を付けた方がいい。」
表情は変わらない。いっそ、瞳の冷たさは増したようにも見える。
「……はい?」
あえてこちらも変えずに微笑む。
「どういうことでしょう。」
目の前の男子生徒は瑛瑠を見下ろした。
「どうせ気付いていないんだろ?」
棘のある声に、さすがの瑛瑠も顔をしかめる。
何なのだろうこの人は。
「君、弱そうだしな。」
ふっと笑った彼は、八重歯を持っていた。