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爆弾 【1】

 K国の外相であるDは、貿易交渉のためにF国に来ていた。F国側は、始めはK国に対して友好的な態度を表していたが、次第に強硬な一面を見せ始め、K国側がどんなに様々な交換条件を出しても、F国の首長は一向に条件を譲らず、交渉は非常に難航していた。
 やむを得ず一旦帰国することを決めたDは、運転手つきの車に秘書のSと共に乗り込み、空港へと向かった。
「全く、あの堅物め、一歩も引こうとしない」
 とDが嘆く。
「まあ、そういわないで。交渉はまだ始まったばかりなんですから」
 そうSがなだめても、Dの不機嫌は収まりそうになかった。
 道中、昼も過ぎた頃に、なにか軽食をとろうとSが言ったので、一行は高速を一度降り、サービスエリアへ寄ることにした。その日はF国の休日で、駐車場の空きを探すためにひどく時間を要した。その事にさらに不機嫌になるD。
「おい、さっさと車を停めないか」
「なかなか停めるところが見つかりそうにありません。先にお降りいただいてもよろしいですか」
 運転手がそう言ったので、DとSは先に降りて、食べるものを買うことにした。
 しばらくして、運転手から車を停めた、という連絡が来たので、運転手もこちらへ来るようにと伝え、少しの間それぞれ思い思いの休息をとった。

  • 初のお話
  • 自信なくなってきた
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