0

書評のコーナー (14)

若冲/澤田瞳子 (2015)

【概要・あらすじ】
京・錦高倉市場に店を構える青物屋、枡源の主人・源左衛門は、妻を亡くした後は、家業への意欲を失い、絵に没頭する生活を送っていた。やがて彼は隠居し、画家として独自の画風を確立していく。
彼を姉の仇として憎み贋作を描き続ける義弟・弁蔵や、池大雅、与謝蕪村、円山応挙ら人気画家との交流を通し、奇矯の画家として名を馳せた伊藤若冲の生涯を、一生を彼のもとで過ごした義妹の目線から描く。

【感想・評価】
伊藤若冲といえば、江戸時代の日本を代表する画家として知られ、現在まで多くのファンを持つが、その画風は、派手な色彩、斬新なモチーフ等、当時の画家たちと比べても、明らかに一線を画している。そんな彼の作風には、美しさと同時に、何か妙な不気味さを抱かせるものがある。
彼の作品がその異様さを孕むに至るには、一人の人間としての源左衛門の苦悩や憎悪が大きく関わっている。
非凡な才能を発揮した人物の、普通の人間としての一面がこの小説には綴られている。

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。