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視える世界を超えて キャラクター紹介①

・千葉(チバ)
年齢:19  性別:未定  身長:種枚さんより少し高い
薄味だけど多分主人公。大学生。昔から霊が見えたが、霊感持ちではなかったために対抗手段がなく、正直とてもしんどかったそうです。ちなみに一人称は「自分」。

・種枚(クサビラ)
年齢:不明  性別:女  身長:160㎝
この物語を主軸になって動かしてくれる人。人。生まれた頃から歯が生えていた所謂『鬼子』(ぜひお手元の国語辞典で「鬼子」を調べてみてください。10代20代の皆さんなら持ってると思うので)。
ちなみに名前は偽名なんですが、由来は「鬼子→鬼の子→きのこ→クサビラ」の連想ゲーム。
手足の爪は通常の人間より長く硬く鋭いものになっており、筋繊維も常人より遥かに頑丈なので、身体能力もちょっと度を越して高い。
また感情の起伏がそのまま体温に直結する体質(熱くなれば熱くなるし冷めれば冷たくなる)の上に気性がかなり荒いので物理的に熱くなりやすい。
あと興奮すると何か角も生える。牙も鋭くなる。口も裂ける。瞳も金色に人外めく。
本人は祖先のどこかに鬼の血でも混じっていたのではないかと考えているが、現実はもう少しすごくすごい。少なくとも純血のホモサピ。
高い身体能力、鋭く頑丈な爪、超高温・超低温になる体質、霊感、あと色々を生かして、怪異を屠りまくっている。得意戦法はパワー・スピード・スタミナのうち相手の得意は更に上回って上から押し潰し、苦手分野は徹底的に叩く脳筋の極みみたいなやり方。持てる全てをフル活用した数々の必殺技には全部きちんと名前がついている。今回使った技で技名を口にしてないのを含めると名有りの必殺技は【垂爪】【推火爪】の2つ。

何かが崩壊している者
男性/21歳/埼玉県
2023-12-12 15:53

視える世界を超えて エピソード1:鬼子 その⑦

人影はしばらく藻掻いてからようやく体勢を変え、上体を起こした。
「ねえ君。これ、邪魔だから持ってて」
種枚さんがそう言って、人影の方を向いたままこちらに向けて奴の頭部をこちらに放り投げてくる。慌てて受け取ろうとしたけど、その頭部は自分の手をすり抜けて地面に落ちてしまった。
落ちた頭部を拾い上げようと何度か試しているうちに、人影の方に跳んでいっていたはずの種枚さんが自分のすぐ真横まで飛び退ってきた。
「持っててって言ったのに……」
「持てないんですよ」
「霊感無しめ」
「あいつはどうなりました?」
「どうもしてないが」
「えっ」
人影の方を見ると、たしかに上体をこちらに向けた姿勢で止まっており、種枚さんに何かされたようには見えない。
「距離が足りなかったんだよ距離が。……けど、これで十分」
心なしか、彼女の声色が少し低くなったような……。
「【推火爪】」
種枚さんが何か呟いた。と思うや否や、また姿が消え、次の瞬間には人影の身体が大きく弾き飛ばされていた。

何かが崩壊している者
男性/21歳/埼玉県
2023-12-08 18:08

視える世界を超えて エピソード1:鬼子 その⑥

種枚さんは着ていたパーカーを脱ぎ、素早く腰に巻きながら倒れている人影に近付いて行った。……ところでこの人、パーカーの下に、薄手とはいえもう1枚パーカー着てる……。

そして人影の頭を掴んで持ち上げ、軽く投げ上げるように浮かせてから顎に強烈なアッパーカットを決め、その身体を強引に起き上がらせた。
更に深く沈み込むように膝を折り曲げ、一気に跳躍して人影の首を殴りつける。それによって人影は勢い良く回転し、仰向けに倒れた。
「…………よし、と。首は獲った」
こちらに振り向いた彼女の手の上には、たしかにあの人影の首から上だけが載っていた。
「多分これで死ぬでしょ。大体の生き物は首を捥がれると死ぬ」
「いや……駄目っぽいです」
自分が指差す先、種枚さんの背後では、両腕と頭部を捥がれ、致命傷を受けたはずのあの人影が、再び起き上がろうともがいていた。
「あェ?」
間抜けな声をあげながら振り向く、その瞬間ちらっと見えた種枚さんの表情。
すごく凶悪な笑みを浮かべていて正直あの人影より怖かった。

何かが崩壊している者
男性/21歳/埼玉県
2023-12-07 17:32

視える世界を超えて エピソード1:鬼子 その⑤

種枚さんがいたのは、突進する人影の上方数m。いきなり消えたように見えるほどの一瞬で、あの位置まで跳躍したっていうのか。
「そっちを狙うのかい。それは困るなァ……」
種枚さんが空中で回転し始める。
「……私と、やろうぜッ!」
そして回転の勢いを乗せ、高速で落下した種枚さんが、人影の肩の辺りを掠めるように着地する。一瞬遅れて無事だった側の人影の腕が、彼女の触れた肩関節から折れ砕けるように外れ、人影の本体は突進の勢いのままに倒れ込んだ。
しかし、人影はすぐに頭を僅かに持ち上げ、彼女のいるのとは反対側に、勢いをつけるように大きく真横に振り始めた。
(頭突き……ッ!)
そして注意する声をあげる間も無く、横振りの頭突きが直撃した、はずだった。
「……良いねェ」
種枚さんは頭突きを片手で軽々と受け止めていた。そして、
「『熱く』、なってきたァッ!」
空いた片手で逆に殴り飛ばしてしまったのだ。

何かが崩壊している者
男性/21歳/埼玉県
2023-12-06 18:08

視える世界を超えて エピソード1:鬼子 その④

「え、種枚さん……?」
「いやァっははははは! ごめんね、君があんまり無知なものだから!」
種枚さんはなかなか歯に衣着せぬ言い方をしてくる。
「良いかい、君? 『霊感』とは、文字通り五感で霊体に干渉する能力だ」
こちらの胸の辺りを、やけに長く尖った爪の生えた指でつつきながら、種枚さんは言葉を続ける。
「霊体を感知する。それだけならそれは霊感でも何でもない。奴らの存在を知っているなら、誰にでもそのくらいできるものさ」
言いながら、種枚さんは親指で彼女の後方を指差した。
そちらに目をやると、さっき遭遇したあの巨大な人影が、物凄い勢いでこちらに突進を仕掛けてきているのが見えた。
「いやァ、思ったより早かったね。腕を1本奪ったのに……良いかい君」
自分を庇うように、種枚さんはあの人影に向けて一歩踏み出した。そういえばよく見ると、ハーフパンツから伸びた彼女の足は、何も履いていない素足のままである。
「霊感ってのは『こういうの』のことを言うんだ。覚えておきな」
彼女が僅かに重心を前に傾ける。瞬間、その姿が『消えた』。
人影は勢いそのままにこちらに突進してくる。種枚さんはどこに消えたのか。目だけを動かし探していると、すぐに彼女は見つかった。

何かが崩壊している者
男性/21歳/埼玉県
2023-12-04 15:18

視える世界を超えて エピソード1:鬼子 その③

「……ここまで逃げれば、大丈夫かねェ」
路地を出て、ひと気の多い大通りを抜けて、再びひと気の無い細い道に入ってから、漸く『誰か』は立ち止まってくれた。
「あー……ありがとうございます」
「え? あーうん」
『誰か』はそう答えてから、思い出したように手を放してくれた。かなり力が強かったうえに爪も長かったのか、手首にはくっきりと痕が残っている。
「……ありゃ、ごめんよ」
手首を見つめていると、『誰か』は謝罪の言葉を述べてきた。
「私、力は強い方でさ。怪我になったりしてない?」
「あっはい大丈夫です」
「そりゃ良かった」
からからと笑い、『誰か』は被っていたフードを脱いだ。前髪が同じ長さに切り揃えられたショートヘア、金色に光る虹彩と縦に切れ長の瞳孔、にやりと笑った口元からは鋭い犬歯が覗く、凛々しくも少女であると察せる、そんな顔が現れた。
「私は種枚(クサビラ)、よろしく」
「あ、はい、よろしくです」
くさびら……キノコ?
「せっかく私が名乗ったんだし、君の名前も教えてほしいなー?」
「あー……と、自分は千葉っていいます」
「うんよろしく。ところで君」
種枚さんが尋ねてきた。
「『あれ』が見えてたよね?」
「え……はい。えっと、何て言うか、昔っから霊感みたいなものがありまして……」
自分の言葉を聞いて、種枚さんは一瞬きょとんとして、突然大笑いし始めた。

何かが崩壊している者
男性/21歳/埼玉県
2023-11-30 16:51

視える世界を超えて エピソード1:鬼子 その②

人影が遂にその手を宙に持ち上げ、自分の顔に触れようと伸ばしてきた。あと数十㎝で奴の手が届くかというその時。
「やめとけよ化け物」
男声とも女声とも取れない、中性的な声が背後から聞こえてきて、影の動きも止まった。反射的に振り返ると、街灯に照らされて1人、誰かが立っている。
オーバーサイズのパーカーで顔と体型は隠れていて性別は分からないけど、自分より少し身長の低い、多分結構若そうな……。
「ほら、そっちの君。早く逃げなよ。『それ』、結構危ない生き物だよ?」
『誰か』は人影を指しながら悠然と歩いてこちらに近付いてきた。
「……何ぼーっとしてるんだよ。仕方のない奴め」
『誰か』は自分の横を通り過ぎ、人影の前で立ち止まった。
何をするのか見つめていると、動きが止まったままの人影の腕に手をかけた。
「なァー頼むよ、ここは私の顔を立てちゃくれないかね?」
人影は『誰か』の問いかけには答えず、空いたもう片手を伸ばしてきた。
「へえ、そうかい」
『誰か』が、人影の腕にかけていない方の腕を素早く振った。その瞬間、人影が今伸ばしてきていた腕が切り落とされたように、ぼとり、と地面に落ちた。
「ほら君、まだいたの。逃げるよ」
『誰か』はそう言って、自分の手を掴んで人影のいるのと反対側に走り出した。

何かが崩壊している者
男性/21歳/埼玉県
2023-11-29 22:43

視える世界を超えて エピソード1:鬼子 その①

昔から、自分には霊感体質があった。所謂『見える人』ってやつ。幽霊なのかお化けなのかもっと別の何かなのか、明らかにこの世のものでは無い何か。そういうモノが見えるし、そういうモノが居る場所では寒気というか嫌な予感みたいなものを感じる質だった。

そして今日も。

目の前に現れたのは、骨みたいに細い体つきの、背丈数mはある人影。まるで夜闇を凝縮したように真っ暗な、文字通りの『影』。
大学の講義が遅くまであったせいで、帰りが日没後になったのがマズかった。
人影は帰り道になっている路地を塞ぐように、四つん這いの姿勢でこちらを伺っている。眼があるようには見えないが、多分目も合っているんだろう。
こういうモノに遭遇したら見えていないふりをするのが良いというが、この状況じゃもう手遅れだ。人影は唯一存在する顔の部位の、大きく裂けた口をニタリと歪ませ、手を地面に這わせながら少しずつこちらへ近付いてきた。
こういう状況を『蛇に睨まれた蛙』っていうんだろう。逃げなきゃいけないのは分かっているのに、足が竦んで身動きが取れない。

何かが崩壊している者
男性/21歳/埼玉県
2023-11-29 00:00
  • うおおナニガシさんのシリーズ物だ!
    企画系以外では久々に見る気がするぞ。
    続きが気になりますな。
    …陰ながら、応援しております。

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2023-11-29 18:02