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造物茶会シリーズ番外編にして、企画「蘇れ長編!」参加作品です。

緋い魔女と黒い蝶 Act 1

木々が青々と茂る山の中、2つの人影が歩いている。
一方は長い赤毛の少女で、丈の長いワンピースを着ている。
もう一方は短い黒髪のコドモで、暖かい時期なのに黒い外套を着て頭巾を被っている。
2人は静かに歩いていたが、ふと赤毛の少女が立ち止まった。
「…お前、その頭巾を外したらどう?」
赤毛の少女が振り向きざまにそう言うと、黒い人物はぴたと足を止める。
「この通り暑いし、ここは山の中だからお前の嫌いな人目もほとんどないし」
顔を隠す必要はないと思うんだけど、と赤毛の少女は呟く。
「…別に」
俺は好きで被ってるからいいんだよ、と黒い人物はそっぽを向く。
「あらそう」
そう言って少女は前を向いて歩き出す。
「…それにしても今回の依頼は、”脱走したホムンクルスの捕縛“ねぇ」
随分とまた面倒そうな依頼を引き受けてしまったわ、と少女はこぼす。
「じゃあ引き受けなきゃよかったじゃん」
なんで引き受けたんだよ、と黒い人物は少女のあとを追いながら聞く。
「そりゃあ今は金欠だから…」
少女がそう言いかけた所で、おーい!と2人に向かって声が飛んできた。
声がする方を見ると、黒髪の少年と赤いとんがり帽子に藤紫色の髪のコドモが立っていた。
少女はあらと笑ったが、黒い人物はげっと嫌そうな顔をした。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-08-28 20:18

緋い魔女と黒い蝶 Act 2

「久しぶりじゃない」
少女が彼らに近付きながらそう言うと、黒髪の少年は小さく手を振る。
「よぉ、“グレートヒェン”」
元気だったか?と少年は赤毛の少女こと“グレートヒェン”に笑いかける。
「まぁそこそこね」
それよりも“ヨハン”、貴方も来てたのねとグレートヒェンも微笑む。
「そりゃそうさ」
僕も脱走ホムンクルスの捕獲を依頼されたのさ、と“ヨハン”と呼ばれた少年は得意げに言った。
「にしてもグレートヒェン」
ふと思い出したようにヨハンは黒い人物に目を向ける。
「ソイツが噂の…」
「そうよ」
ヨハンに言われてグレートヒェンは黒い人物の方を見る。
「こいつは“ナハツェーラー”」
この間の依頼の報酬でもらったの、とグレートヒェンは“ナハツェーラー”が被る頭巾を取る。
ナハツェーラーは頭巾を取られないよう抵抗したが、それも虚しく顔を出さざるを得なくなってしまった。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-08-29 19:43

緋い魔女と黒い蝶 Act 3

「ふーん」
ヨハンはそう言ってナハツェーラーの顔を覗き込む。
「コイツが“黒い蝶”か」
思ったより可愛い顔してんな、とヨハンは笑う。
ナハツェーラーは嫌そうにそっぽを向いた。
「“ナツィ”って呼んでるのよ」
グレートヒェンの言葉にヨハンはへーと頷く。
「ナツィ、彼は“ヨハネス”」
通り名は黒い魔術師“ヨハン”よとグレートヒェンはナハツェーラーことナツィに紹介する。
「そしてこっちが…」
「“メフィストフェレス”」
グレートヒェンが藤紫色の髪の人物に目を向けた時、ナツィが遮るように呟く。
「俺を作った魔術師、“ヴンダーリッヒ”が作った使い魔の内の1体」
俺より先に作られた人工精霊だ、とナツィは言い切る。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-08-30 19:36

緋い魔女と黒い蝶 Act 4

「私言おうとしたんだけど」
グレートヒェンがそう言うと、別にいいじゃないと藤紫色の髪のコドモが笑う。
「ちゃんと“きょうだい”に説明してもらって嬉しいわ」
藤紫色の髪のコドモこと“メフィストフェレス”はそう言ってナツィの顔を覗き込む。
ナツィは、テメェには言われたかねーよと顔を背けた。
「そもそも俺はお前のことを“きょうだい”だなんて思ってねーし」
「あーら照れちゃってー」
メフィストフェレスはそう言って微笑むが、ナツィは益々嫌そうな顔をした。
「まぁそんなことはともかく」
さっさと行きましょ、とグレートヒェンは手を叩く。
「他にも魔術師がこの捕獲作戦に参加してるって言うし」
待たせては悪いわ、とグレートヒェンは微笑む。
「そうだな」
「そうね」
「…」
それぞれがそう答えると、4人は山の奥へ向けて歩き出した。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-08-31 19:46

緋い魔女と黒い蝶 Act 5

4人が歩き出して暫く。
彼らは今回の目的地である脱走したホムンクルスが潜んでいるらしい小屋まで辿り着いた。
「…誰もいないみたい」
グレートヒェンが古びた小屋を覗き込みながら呟く。
「そりゃそうさ」
僕たち人間に隠れているのがバレてるみたいだから、とヨハンは小屋に寄りかかりながら言う。
「そう言えば、“メフィ”は?」
グレートヒェンがふと思い出したように尋ねると、ヨハンはあーアイツ?と彼女に目を向ける。
「周りを探してるよ」
まだ奴らが近くに潜んでるかもしれないからな、とヨハンは笑う。
「…お前らメフィストフェレスのこと“メフィ”って呼んでるのかよ」
不意にナツィがそうこぼす。
「おや、悪い?」
ヨハンがそう聞くと、ナツィは別にとそっぽを向く。
「…あ、君自分のきょうだいのことそんな風に呼ばれたくないタチ?」
「そう言うのじゃねぇし!」
ヨハンにいじられてナツィは語気を強める。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-01 19:40

緋い魔女と黒い蝶 Act 6

「まぁまぁ2人ともケンカしないの」
2人の様子を見てグレートヒェンは手を叩く。
「とにかく、他の場所を探しましょう」
他の魔術師たちもすでにあちこち探し回ってるみたいだし、とグレートヒェンは付け足す。
「そうだな」
じゃあ僕はメフィを呼んでくるよ、とヨハンはその場を離れる。
ナツィは嫌そうに舌打ちをした。
「…ほら、行くわよ」
そう言ってグレートヒェンはナツィの背中を押す。
その時だった。
ふとグレートヒェンは背後に気配を感じた。
「?」
彼女は思わず振り向くが、そこには鬱蒼とした森が広がるだけだった。
「…」
何もないことを確認したグレートヒェンが前を向こうとしたその時、上から何かが飛び込んできた。
「‼︎」
真っ先に気付いたナツィがグレートヒェンを突き飛ばす。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-02 20:33

緋い魔女と黒い蝶 Act 7

「ナツィ!」
グレートヒェンがそう叫ぶ頃、ナツィはどこからともなく大鎌を出して上から飛び込んできた、“それ”の剣を弾いた。
「テメェ」
「…」
そこに立っていたのは橙色の髪をなびかせた少女だった。
「出やがったな、ホムンクルス!」
ナツィがそう怒鳴ると、少女は魔術師の手先かと呟く。
…と、どこからともなく矢が飛んできた。
「!」
ナツィは思わず後ろに飛んで避ける。
矢の飛んできた方を見ると、離れた茂みから短髪の少年が弓を構えていた。
「他にもいるのか!」
ナツィはそう言うとグレートヒェンにおい!と呼びかけた。
「他の魔術師も呼んできてくれ‼︎」
奴ら、他にもいる!とナツィは声を上げる。
グレートヒェンは黙って頷くと、その場から走って離れた。
「…」
ナツィは大鎌を相手に向かって構え直す。
そして相手のホムンクルスに向かって駆け出した。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-03 19:12

緋い魔女と黒い蝶 Act 8

ナツィたちがホムンクルスと接触してから暫く。
グレートヒェンは山の中を走っていた。
小屋の周辺にいた魔術師たちにホムンクルスが出たことを知らせつつ、彼女はヨハンとメフィを探していた。
と言うのも、ヨハンとメフィが見つからないのだ。
あの2人は並の魔術師より強いため、グレートヒェンはそこまで心配していなかった。
しかし、それでもあの2人が見つからないと心配になるものだ。
彼女は小屋の周囲を走り回りながら、ヨハンとメフィを捜索していた。
「…どこ行ったのかしら」
あの2人、とグレートヒェンは立ち止まって呟く。
彼女は辺りを見回してみるが、周囲は青々とした木々が生えているだけだ。
「…」
グレートヒェンはまた駆け出そうとするが、ふと近くで小枝の折れる音が聞こえた。
「?」
音がする方を見た時、グレートヒェンは背後から突き倒された。
グレートヒェンはそのまま、斜面を転がり落ちていった。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-04 19:15

緋い魔女と黒い蝶 Act 9

「ぐっ」
木々が茂る山の中、ナツィと橙色の髪の少女が互いの武器で鍔迫り合いをしている。
じわりじわりと後ずさる辺り、見るからにナツィの方が押されているようだった。
「テメェ、どうやってその剣術を…」
ナツィがそう呟きかけて、少女は剣で無理矢理押してナツィを突き飛ばす。
「がっ」
ナツィはそのまま地面に転がる。
ナツィの手を離れた大鎌は、地面に落ちると消えていった。
「教えてもらったんだよ」
少女はポツリと呟く。
「魔術師に殺された、“兄さん”に」
「兄…?」
ナツィは起き上がりながら聞き返す。
「お前ら、“きょうだい”がいるのか…」
「そうだよ」
少女は淡々と答える。
「兄さんはウチらのために、身体を張って戦ってくれた」
だけど…と少女は俯く。
「兄さんはウチらきょうだいを逃すために、犠牲になってしまった…!」
お前ら魔術師たちのせいで…と少女は声を震わせる。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-05 22:20

緋い魔女と黒い蝶 Act 10

「ウチは、お前たちを許さない‼︎」
少女はそう言ってナツィに飛びかかる。
ナツィは即座に大鎌を出して少女の剣を受け止めた。
「魔術師のせいでって、別に俺は使い魔であってお前の兄貴を殺した魔術師とは関係が…」
ナツィはそう言いながら少女の剣を押し返そうとするが、少女はうるさい!と声を上げる。
「ウチらは魔術師とそれに協力する奴らが大嫌いなんだ!」
だから他の”きょうだい“みんなで奴らをぶっ飛ばす!と少女は半泣きになりながら言った。
「なんだよ、それ」
ナツィは思わず呟く。
「関係ない奴まで巻き込むとか、滅茶苦茶にも程が…」
「黙れ‼︎」
ウチらは人間たちが憎いんだ!と少女は怒鳴る。
「テメェ…」
ナツィが呆れたようにこぼすと、ここで向こうからおーい!とナツィを呼ぶ声が聞こえた。
バッと声がする方を見ると、黒髪の少年と藤紫色の髪のコドモが走ってきていた。
「あ、アイツ!」
藤紫色の髪のコドモことメフィはナツィと戦う少女の姿を見とめると、どこからともなく二叉槍を出して少女に向かって投げつけた。
「⁈」
少女はそれを飛び跳ねて避ける。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-06 19:40

緋い魔女と黒い蝶 Act 11

「ナハツェーラー!」
メフィがそう言って駆け寄ると、ナツィは嫌そうな顔をした。
「なんだよ」
お前には助けてもらいたくなかったんだけど、とナツィが呟くと、メフィはそんなこと言ってる場合?とナツィを起こした。
「あれが件のホムンクルスね」
メフィが聞くと、まぁとナツィは頷く。
「ここはアタシたちに任せて」
アンタはグレートヒェンを探しなさい!とメフィは立ち上がる。
「え、”探しなさい“って…」
ナツィが思わずポカンとすると、ヨハンはグレートヒェンが見つからないんだ!と答えた。
「…はぁ⁈」
なんでアイツが見つからないんだよ!とナツィは立ち上がる。
「どうもこうも、他の魔術師たちにホムンクルスが出たことを知らせたっきり行方が分からないって…」
ヨハンがそう言い終える前に、ナツィは外套を脱ぎ捨てた。
そして背中に黒い翼を生やすとその場から飛び立った。
「…」
ヨハンとメフィは思わず黙りこくってしまった。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-07 19:37

緋い魔女と黒い蝶 Act 11

「…」
山の斜面の下の方で、赤毛の少女がひっくり返っている。
少女はぼんやりと空を見上げていたが、やがて自分に近付く足音を耳にして音がする方に目を向けた。
「…」
短髪の少年がすぐ傍で少女を見ている。
「お前」
赤毛の少女ことグレートヒェンがそう呟くと、少年は手に持つ短剣をグレートヒェンに向けた。
「…人間は自分勝手だ」
勝手にぼくらを作って、好き勝手に使って…と少年は続ける。
「それでぼくらは人間たちから逃げ出した」
それなのに…と少年は声を震わせる。
「奴らは追いかけてきて…」
ぼくらの平穏を、壊そうとしたと少年はこぼす。
「許さない」
少年は静かに短剣を振り上げる。
…と、ふと少年は背後に気配を感じた。
ハッと振り向くと、黒い翼を生やしたコドモが大鎌片手に飛びかかってきた。
「⁈」
少年は横に飛んでそれを避ける。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-08 19:28
  • あ、ナンバリングミスった。
    Act 11じゃなくてAct 12だったね。

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2023-09-08 23:16

緋い魔女と黒い蝶 Act 13

黒いコドモはグレートヒェンに突っ込みそうになったが、すんでの所で耐えて彼女の傍に降り立った。
「…」
黒いコドモは黙って少年の方を見る。
「なんだお前」
「なんだお前ってこっちのセリフだ」
少年の言葉に対し、黒いコドモことナツィは低い声で返す。
「よくも、よくもグレートヒェンにやってくれたな」
テメェら…とナツィは少年に近付く。
少年は怯えたように後ずさった。
ナツィは手に持つ大鎌を振り上げると、少年の脳天目がけて振り下ろそうとした。
と、ここで声が聞こえた。
「…“トラウ”ー‼︎」
ハッと声がした方を見ると橙色の髪の少女がこちらに向かって飛び込んでくる。
「⁈」
ナツィは翼を羽ばたかせてそれを避けた。
少女は少年に駆け寄った。
「“トラウゴット”!」
大丈夫⁈と少女は声をかける。
「“ドロテー”!」
どうして…と“トラウゴット”は困惑する。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-10 13:24

緋い魔女と黒い蝶 Act 14

「“ドロテー”!」
どうして…と“トラウゴット”は困惑する。
「黒い奴が急に飛んでったから、やられちゃうんじゃないかって」
心配になって…と“ドロテー”は涙目で続ける。
「…テメェら」
ここでふとナツィが呟いた。
「なにいちゃいちゃしてるんだよ」
グレートヒェンを襲おうとしてたんじゃないのか、とナツィは言う。
「…なによ」
なにか文句でも?とドロテーは立ち上がる。
「うちのグレートヒェンに手を出しやがって…」
許さねぇぞ、とナツィは大鎌を握り直しつつ歩み寄る。
「ここで、地獄に送ってやる‼︎」
ナツィはそう声を上げて大鎌を振り上げる。
「!」
トラウゴットとドロテーは驚きの余り身動きが取れなかった。
「…ナツィ!」
不意にグレートヒェンが名前を呼んだので、ナツィはハッと我に返る。
「そこまでしなくていいわ」
グレートヒェンがそう言うと、ナツィはちらと彼女に目を向ける。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-10 19:36
最初の2行、前の書き込みと重複してるからいらなかったね。

緋い魔女と黒い蝶 Act 15

「今回の依頼は逃げ出したホムンクルスの“捕縛”よ」
だから、倒す必要はないといつの間に起き上がっていたグレートヒェンは続ける。
「…」
ナツィは黙って手に持つ大鎌を消す。
「今だ」
トラウゴットがそう呟くと、ドロテーと共に立ち上がって逃げようとした。
しかし、2人の前に藤紫色の髪のコドモが立ち塞がる。
「あら」
どこへ行くの?とそのコドモは2人に笑いかける。
「…間に合ったか」
藤紫色の髪のコドモの後ろから黒髪の少年が走ってきてそうこぼす。
「メフィ、ヨハン」
グレートヒェンがそう声をかけると、メフィは小さく手を振った。
「さぁ、大人しく捕まりなさい」
脱走ホムンクルスども、とメフィは目の前の2人に詰め寄る。
トラウゴットとドロテーは諦めたように座り込んだ。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-11 22:08

緋い魔女と黒い蝶 Act 16

かくして、脱走ホムンクルスは捕獲された。
ドロテーとトラウゴット以外の脱走個体も、他の魔術師たちの手で生け捕りにされたという。
そして、彼らは元の持ち主のもとに返されるという。
「持ち主は逃げ出したホムンクルスたちをどうするんだろうね」
山を下りながら、ヨハンがふと呟く。
「そりゃあ、それ相応の処分は下すでしょう」
魔術師から見たホムンクルスなんて、“モノ”と変わらないのだからとグレートヒェンは言う。
「そりゃそうだけど、アイツらもちょっと可哀想な気がするなぁ」
なにせ元の持ち主から酷い扱いを受けていたらしいし、とヨハンは後頭部に手を回す。
「逃げ出すのももっともというか」
なぁ、とヨハンは隣を歩くメフィに目を向ける。
メフィはそうね、と頷いた。
「…それにしてもナツィがあんな風に怒るなんて」
なんか意外だったなーとヨハンは後ろを向く。
グレートヒェンの後ろを歩くナツィはなんだよと嫌そうな顔をする。
「お前まさかグレートヒェンのことが…」
「べ別に俺はコイツのこと好きじゃねーよ!」
ただいなくなられると困るってだけで、とナツィはそっぽを向く。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-12 22:16

緋い魔女と黒い蝶 Act 17

「まだ好きとか言ってねーけどー」
ヨハンはそう笑って前を向く。
「…」
ナツィは沈黙していたが、その顔は赤かった。
「ふふふ」
グレートヒェンはその様子を見て微笑む。
「私もお前のことは好きよ」
グレートヒェンは前を向いて呟く。
「私の大事な“使い魔”なのだから」
グレートヒェンがそう言うと、ナツィはちらっと彼女の方を見た。
そして彼女の左手に手を伸ばした。
「?」
グレートヒェンが不思議そうに立ち止まって振り向くと、ナツィは恥ずかしそうにこうこぼす。
「…ちょっとだけ」
グレートヒェンは少しの間驚いたような顔をしていたが、やがてふふと笑うとナツィの手を握り直した。
そして2人はまた歩き出した。

〈おわり〉

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-13 22:01

緋い魔女と黒い蝶 あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
書くって言ったので、「緋い魔女と黒い蝶」のあとがきです。
この作品は企画「蘇れ長編!」への参加用として書いたものです。
ポエム掲示板にたまに投稿している「造物茶会シリーズ」の前日譚に当たる「緋い魔女」の続編としてこのお話は書きました。
元々いずれ「造物茶会シリーズ」の番外編として書こうと思っていたのですが、こういう機会ができたので文字に起こしてみました。
まぁ前日譚の続編なんで、この話もまた「造物茶会シリーズ」の前日譚な訳ですよ。
でも正直読み手側は「これらの話がどう造物茶会に繋がるのか?」と思っているかもしれません。
正直これらの物語の共通点はたった1人のキャラクターだけであり、それ以外の要素は全然違うんですよね。
これらの物語がどう繋がっているのかはこれから「造物茶会シリーズ」の中で語っていきたいと思いますが、唯一言えることは「緋い魔女」→「緋い魔女と黒い蝶」→「造物茶会シリーズ」の順に時が流れていることです。
自分の執筆・投稿ペースから考えると全容が明らかになるのは先になると思いますが、まぁ気が向いたらでいいのでお付き合いください。

では今回はこの辺で。
来週から「ハブ ア ウィル」の新エピソードを投稿するよ!
テトモンよ永遠に!でした〜

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2023-09-14 22:24