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体育

 小学生の時、「好きな教科は?」と聞かれたときに「体育」と答える子が多かった印象がある。しかし私は、体育の時間を好きになったことはない。
 理由は単純だ。運動が苦手だからである。
 50m走で10秒をきったことがないし、ドッジボールで投げた球は必ずキャッチされてしまう。いや、そもそもドッジボールで球を投げた記憶がほとんどない。私にはボールすら回ってこない。

 なぜこんなにも運動が苦手なのかと考えてみる。すると、幼少の頃の自分が原因なのではないかという結論に至る。
 幼少の頃の私は、とにかく人見知りで、“友達と外で遊ぶ”ということをほとんどしなかった。そのまま、体を動かす習慣が身につかないまま成長した結果、体育の成績がいつも3の人になってしまった。

 運動が苦手で一番困ったことは、「一生懸命やっても伝わらない」ことだ。
 私自身は手を抜いているつもりなどさらさらない。でもできない。団体戦のスポーツでは、同級生から疎まれ、笑われる。自分がどれほど不格好であるか自覚しているから、授業中はずっと、公開処刑の時間だ。
 あまつさえ、体育の先生は、当たり前のように運動ができる人たちだから、できない人のことなんて理解してくれず、一生懸命やっても成績は上がらない。

 あぁ、運動が苦手な人用の体育があったらなぁ。

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アイスクリーム

 こーんにーちわー。ほんとあのコ可愛いよねっつってから、らぶたんも可愛いよ、または、らぶたんのほうが可愛いよってゆーセリフを待ってたけど言われなかったJKのらぶたんだよー。
 ところでみんなゎアイスクリームにウエハースをそえるのって、どうしてか知ってる?
 そーだよー。冷えてマヒした舌をリセットして最後まで美味しく食べるためだよっ。
 って、はあ?
 実際アイスクリーム食べてるとき、よさげなころあいでウエハースかじってみたことあるけど大して変わんなくない? むしろ口んなかぱさぱさになっちゃってアイスクリームの食感邪魔するだけじゃない?
 言われてみれば、じゃね?
 ほんとのこと教えちゃうね。
 ある日ぃ、アイスクリームを売ってたぁ、あたしのおじいちゃんのとこにぃ、知り合いのウエハース受託製造メーカーの社長がぁ、注文がなくて困ってる。よかったらアイスクリームと一緒に出してみてくれないかって言ってきたのぉ。
 おじいちゃんはしぶしぶだったみたいだけど、やってみたらおしゃれなものに敏感な層にばかうけ。それが広まって現在にいたってるってわけ。
 なんてね。うそうそー。
 そもそもウチのおじいちゃん、アイスクリーム売ったことねぇし。
 あ、ところでこのエピソード、きいたことある?
 コーンにアイスクリームをのせるようになったのゎぁ、アイスクリーム屋さんがアイスクリーム売っててぇ、アイスクリームのせる紙皿がなくなっちゃったときにぃ、隣のワッフル屋さんの人が紙皿代わりにワッフルで巻くのをすすめたからってゆーやつ。
 これはほんとだよー。
 かなぁ?
 アイスクリームの量に見合った数の容器用意してないなんてずいぶん間抜けな話じゃね?
 商売人として失格じゃね?
 いったい何が言いてーんだって?
 もっともらしい説をすぐうのみにしちゃ駄目だってことをるなは言いたいのだ。かといってやみくもに疑うのも駄目。疑ってみてちゃんと考えて、妥当だってこたえを選ぶのがベストなんだよっ。
 それじゃこのへんで。バイビー。
 閲覧数は少ないわいいねはないわですさんでいたのでJKを装ってブログを発信したら、いいねが100万件ちょっと。コメントが30万件ちょっとついた。

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新体操の妖精

 空腹で、変な時間に目を覚ましてしまった。ミネラルウォーターをひと口飲んで、再び眠りにつこうとしたが、全然眠れない。朝練があるのに。寝不足でけがをして、やめざるを得えなくなった娘のことを思い出す。
 太りやすい体質なのに、どうして新体操なんてスポーツを選んでしまったのか。スープが残ってないかと望みをかけ、キッチンに降りる。ない。母は若いころバレエをやっていたから体重管理に協力的なのだ。誘惑に負けて食べてしまわないように、大会が近づくと残りものは基本的に全部捨ててしまう。インスタント食品のたぐいも、置かない。着替えて、そっと家を出る。
 缶のスープと栄養補助スナックを購入し、自動ドアから一歩足を踏み出したわたしは凍りついた。セーラー服を着たおじさんが、街灯の下に立ってこちらをじっと見ていたからだ。
 踵を返し、店員さんに助けを求めようとしたが、なんと言ったらいいのかわからない。何かされたわけではないのだ。
 雑誌を物色するふりをして、外の様子をちらりとうかがう。おじさんは、こちらをじっと見ている。ターゲットはわたしだ。決意を固め、店員さんに近づく。
「あの。すみません」
「はい」
 よさそうな人だ。勢いづいてわたしは続ける。
「外に、変なおじさんが立ってて」
 店員さんがレジから身を乗り出し、外を見る。
「誰も、いませんけど」
 一応警察に通報しておきます、と奥に消え、戻ってきてからほどなくして、パトカーがやってきた。一緒におまわりさんに説明すると、無線で何やらごにょごにょ言って去った。
 怖かったが、いつまでもコンビニにいるわけにはいかない。わたしは店員さんに礼を言って家路についた。帰宅すると、結局スープとスナックには手をつけず、気絶するように眠ってしまった。
 そんな出来事から三か月、インターハイで、わたしは優勝した。初出場で個人が優勝するのは十年ぶりの快挙だそうだ。
 興奮さめやらぬわたしの耳元で、コーチがこう言った。
「あなたも見たのね。セーラー服おじさん」
 わたしは微笑むコーチを見返し、驚くのと同時にがっかりした。このまま続けていても、せいぜい高校新体操部のコーチで終わるのだ。

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ドラニキとシャラポワ

 世界中の飢餓を救い、不毛と考えられていた極寒の地への民族の進出を促進し、また、その地における人口の増大にもつながった生命力の強い作物といえば何か。
 じゃがいもである。
 その性質、人類への貢献度から花言葉は、恩恵、慈愛、慈善、情け深い、である。ちなみに、五月一七日の誕生花。五月一七日生まれの人の誕生日にはぜひ、じゃがいもの花を贈ってほしい(じゃがいもの品種は二,〇〇〇種類以上あるそうだから選ぶのも楽しいね)。
 そんなじゃがいもの消費量世界一はベラルーシ。生産量も当然多く、ウォッカの原料としてロシアに輸出もしている。 
 そうそう、じゃがいもは酒の原料にもなっているのだった。
 飢餓を救ったばかりでなく、日々のうさを晴らす薬のもととしても重宝されるじゃがいも、果てしなく懐が深い。
 ところで、ベラルーシだけでもじゃがいも料理のレシピは一,〇〇〇におよぶといわれている。ベラルーシほどレパートリーが豊富な国はまずないだろうが、民族の数だけじゃがいも料理があるわけだから、もしかしたら卵料理よりも多いかもしれない。いや、多いに違いない。
 わたしのおすすめのじゃがいも料理は、ドラニキである。ロシアやウクライナにもあるが、発祥はベラルーシ。じゃがいもを使ったパンケーキだ。
 千切りもしくはすりおろしたじゃがいもと、みじん切りにした玉ねぎを卵、薄力粉、ベーキングパウダーと混ぜ両面をきつね色になるまで焼く。それ、卵が入っているから卵料理でもあるよね、なんて突っ込みは無用。あくまでメインはじゃがいもなのだ。これにサワークリームをのせ、いただく。両脇にはベラルーシ美女、なんて演出も欠かせない。
 ベラルーシ美女といってもぴんと来ないという人はロシアの元プロテニスプレイヤーのマリア・シャラポワ(両親はベラルーシ人)を思い浮かべてほしい。知らない人は検索してね。
 だいたいあんな感じ。
 お顔、スタイルはともかく、ベラルーシの女性の平均身長は一七八センチ(シャラポワは一八八センチ)だから日本人男性は萎縮してしまうかもしれない。
 そうですね。ベラルーシ美女のことは忘れてください。
 さて、つらつらじゃがいもについて書いてきたが、カレーが好きな人はともかく、意外とそんなに普段、じゃがいもって食べないよね。みんなはけっこう食べる? 俺は食べない。