自分の弱さから逃げまとっていた。
強さをひたすら追いかけていた。
そのはずなのに
どんどん弱くなっていったんだ。
弱さから逃げるな。
強さばかり追いかけるな。
弱さと向き合い、その存在を認めろ。
そして
それに勝る強さを見つけろ。
時間がかかっても大丈夫。
それが人生だから。
「お疲れ様」
こうやって言われるだけでおちつくよね。
だから私もこの言葉を届けたい
「今日も1日お疲れ様」
マンションの電灯がひといきにつく時間の、ずっと抱いていたい炊飯器の、誰かのための晩ごはんの、バスケットボールに添えられた左手の。
「これでも私、中学生の頃は真面目だったの」
急に始まるこの語りに、この後輩はもはや慣れてしまった。私の話と関係のあることなんですか、なんてつまらないことは聞かない。それが、この子の好きなところだ。
「今でも十分真面目だと思いますけど」
「ううん。今はだいぶ不真面目になっちゃった。そうしている人たちが自由に見えて羨ましかったし、だから努めてそうしようとしていた時期があったからね。あの頃が1番真面目に真面目をやっていたな」
そして、褒められることにも慣れていた。
そう言うと、なんとなくわかりますと返される。嫌味なんかではないし、そういう風に受け取らないことをわかっているから、彼女にはこんな話ができる。
「私は、勉強ができる子の部類だったんだな。そして、そういう自覚もあった」
「……だから、真面目?」
そうじゃないことを知っているくせに、そういうことを聞く。でも、そういう質問は嫌いじゃない。
「そういうことじゃないって、わかっているくせに」
言うと、いたずらっ子のような笑みを見せ、彼女は再び黙った。