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逃鷲造物茶会 Act 14

「エマさん‼︎」
寝室の扉をばたんと勢いよく開け、かすみは自室へと飛び込む。
しかしそこには誰もいなかった。
「あれ…?」
エマさん…?とかすみは首を傾げる。
昼間に自室へ行くようかすみが言ったから部屋にいるはずなのに、エマは部屋にいない。
どこへ行ったのか…とかすみは一瞬考えるが、ふとあることに気付く。
「まさか」
かすみは慌てて自室を飛び出した。
そして向かった先は、この建物の屋上だった。
屋上への階段を駆け上がり、塔屋の扉を開けると屋上の柵から下界を見下ろす人影が見えた。
「…」
かすみが静かにその人影に近付くと、その気配に気付いたように人影は振り向いた。
「ハァーイ」
その人影…エマは小さく手を振りながらかすみに笑いかけた。

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心の中は摩訶不思議

貴方の心を見透かして 硝子細工にしてみたい
 
それを窓辺に飾って見つめていたい

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遠のいて

「また会おうね」って言葉が
切なく感じるのは
もう当たり前じゃなくなったって
気付いたから

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厄災どおるtutorial:嘘吐き煌星 その⑥

「マスター……手足が無くなったので負ぶって運んでください。マスターは筋力だけはある成人男性なんですから」
気を失った少女の下から、サユリが呼びかける。
「えっ、でもこの子も運ばなくちゃだし……」
「マスター、妹にばっかり構ってるとお姉ちゃんは拗ねちゃうんですよ。2人とも負ぶえば良いのです」
「いや流石に二人背負うのはちょっと……」
「頑張ってくださいよ。何ならもう少し手足削りましょうか? 軽くなりますよ」
「それはしなくて良いよ……ごめん、本当にごめんイユ。この子のこと、運ぶの手伝ってくれるかな」
男性に言われ、気絶した少女の傍らに膝をついて頭や背中を突いていたイユは徐に立ち上がり、少女の足を掴んだ。
「ソぉーラぁー、頭の方持てぇー。新しい妹分連れて帰るぞー」
「はーい」
少女が退かされたところで、男性はサユリを抱き上げた。
「サユリもかなりダメージを負ったし、どおるも一人増えたし、一度戻ろうか。何にしてもサユリのダメージは直さないとどうにもならないから」
「「りょーかい」」
イユ、ソラの返事を聞いてから、男性は歩き出した。

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逃鷲造物茶会 Act 13

「実は我々、“魔術学会”の者でして…」
このような“人工精霊”を探しているのです、と女は主人に1枚の写真を見せる。
そこには明るい茶髪に白いワンピースの少女が写っていた。
「え…」
かすみは思わず後ずさる。
なぜならその写真に写り込む少女は、かすみがこっそり匿っていたあのエマそのものだったからだ。
「今日、ここにそれらしい人工精霊がいたという情報が入りましたので、我々は直接伺ったのですが…」
ご存知ありませんか?と女は主人に尋ねる。
「あぁ、確か昨日似たような人がお客さんに来ていたような気がしますが…」
今日は来てないよなぁ、と主人は傍にいるかすみの方を見た。
しかし既にそこにはかすみはいなかった。
「あれ?」
主人は思わずポカンとしてしまった。

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厄災どおるtutorial:嘘吐き煌星 その⑤

「……あなたの仕業か」
目だけをサユリに向け、少女は低く言う。
「だとしたら?」
「まず、あなたから」
倒れた体勢のまま、少女がロケットのようにほぼ水平に飛び出した。サユリは再び地面を揺らしたが、空中にいる少女に影響は無く、一瞬のうちに接近した彼女によって、サユリは両足首を切断されてしまった。
「っ!」
既に切断されている右腕を伸ばすが、透明な体内液が飛び散るばかりで、少女を止めることはできない。
更に踵を返した少女が、心臓目掛けて刺突を放ってくる。サユリは倒れ込みながらも身体を大きく反らしながら躱し、心臓の代わりに左の肩の辺りに刀剣が突き刺さる結果となった。
「……捕まえた!」
右腕の肘を刀を握る少女の腕に絡みつけ、残る左手で肩の辺りを掴み、自身の倒れる勢いも利用して引き倒す。
「は、離せ……ぎッ⁉」
サユリの左手から少女の身体に、強烈な振動が一瞬伝わる。全身へのダメージで一瞬意識が飛び、気付いた時にはサユリを下敷きにうつ伏せに倒れ込み、後頭部を呪術師の男性に抑えられていた。
「ぅぁ……」
「悪い子だ……少し大人しく、してもらおうか!」
男性の手から、呪術的エネルギーが直接注ぎ込まれる。少女は一度大きく痙攣し、脱力しきって動かなくなった。

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月の魔術師【10】後編

三人で暫く星をぶらぶらと歩いた。やはり砂漠が永遠と広がっているだけの景色が続いた。
「…ニト、みずがのみたいぞー」
「はいはい」
ロマは退屈で少しうとうとしている。
「殺風景ですね…」
ロザリーは座りこんだ。ニトも座って呟く。
「…魔術には、禁忌のものがいくつかあります」
「え?」
「呪術、蘇生術…とかいろいろあるんですが」
ニトはふぅ、と息を吐いた。
「土地には、思い出があり…蘇らせることもできます」
「それって…」
「生き物は復活できないけれど…自然や建物なら蘇生ができます」
ニトはロマの柔らかい髪を撫でた。
「ロマ様の記憶、戻るでしょうか」
「試してみましょうか」

ニトは掌を切り、地面の砂を一握り持った。その瞬間、風が止む。
「まほうだ!」
ロザリーは目を見開いた。いつの間にか、足元に枯れかけの草が生えている。その草は、じわじわと活気を取り戻し…。
「わぁ……」
あっという間に、砂漠は鮮やかな草木と清らかな水で満たされた。
「綺麗な星だなぁ」
ニトの呟きは、穏やかな風に流された。

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あなたにとっての自動ドアになりたい。

例えば今日、僕が花びらを片付けていること
ささやかな諸々の根回しとか

全部。
知らないままで、大きくなっていってほしい

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逃鷲造物茶会 Act 12

夜、日が暮れて暫く経った後。
かすみが客のいなくなった喫茶店内を箒で掃き掃除していると、店の裏口のインターホンがピンポーンと鳴った。
「?」
今喫茶店の主人は1階にはいないため、応対できるのは1階にいるかすみだけである。
こんな時間に誰だろうと思いながらかすみは店の奥に向かい、裏口の戸を開ける。
そこには見慣れない女が立っており、後ろには物々しそうな男が2人立っていた。
「こんな時間にすみません」
“鵜沼(うぬま)さん”はいらっしゃいますか?と女はかすみに尋ねる。
「いますけど…ここのマスターに何か用ですか?」
かすみが不思議そうに答えると、女は淡々と告げた。
「ちょっと鵜沼さんと我々だけで話したいことがありまして」
彼を呼んでくれませんか?と女はかすみに言う。
「あ、はい」
かすみはぱたぱたと2階へ行き、喫茶店の主人を1階へ連れてきた。
「こんばんは」
裏口へとやってきた喫茶店の主人である老人がそう女たちに挨拶すると、女たちはこんばんはと返しつつぴしりと背筋を正す。
「それで、なんのご用でしょう」
主人がそう聞くと、女はこう答える。

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厄災どおるtutorial:嘘吐き煌星 その④

「そ、ソラ?」
「はぁ……我らが主さまはこれだから……コイツの手が見えないんですか」
ソラの言葉に男性が改めて少女の右手を見ると、手の中には長さ数㎝の刃が握り込まれており、それは男性の胸元にまさに突き立てられようとしていたところだった。
「なるほどォ? コイツ、まだ呪力が足りてないモンで暴走状態が収まってねーわけだ。言っとくけど私は手伝わないぞ?」
イユの言葉に男性は頷いた。それと同時にソラが少女を押し返すが、少女は飛び退くように躱し、それまで握っていた小さな刃の代わりに刃渡り50㎝ほどの片刃の刀剣を生成した。
「サユリ! その子を止めてくれ!」
「了解です、未熟なマスター」
向かってきたサユリに、少女が斬りつける。サユリは身体を大きく反らせて回避し、刀剣を持っている方の手を掴もうとする。少女はそれを素早く手を引きながら躱し、ついでとばかりに伸ばしてきたサユリの手首を切断した。
「っ……! 速い……」
少女が飛び退き、サユリは呪術師の男性を庇うように位置取りを調整した。
「サユリ。何とかしてあの子に直接触れたいんだ。手伝ってくれるね?」
「……まぁ、マスターはすっ鈍いから、1人じゃあの子に近付く前にナマスにされちゃうのは分かりますけど……たぶん、あたしじゃ抑えられないと思うので、粘っていられるうちにさっさと決めてください」
「ああ、やってみよう」
少女が再び距離を詰めようと駆け出す。その瞬間、突如バランスを崩し勢い良く転倒した。
「あれ……? 足元が、急にゆれた……?」
立ち上がろうとして、再び頽れる。

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友達

一緒に居て楽しいし素敵な日々を有り難う

大好きだよ

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企画予定

実は4月から開催したい企画があるんだけど、あまりにも内容が実験的過ぎちゃって普通に開催しても参加者が出て来ない可能性があるのよね。
だからここにちょっと概要を載せておくので、「興味がある」「参加してみたい」って人はスタンプでもレスでもなんでもいいから反応を付けて欲しいな(反応があればある程開催確率は上がります)。
という訳で以下概要。

タイトル:テーマポエムを作ろうの会
内容:誰かがオリジナルキャラクターの設定をここに投稿し、別の誰かがその設定を元にそのキャラクターをモチーフにしたポエムを制作して投稿する。
開催期間:3ヶ月を予定

ちなみに開催期間を長めにしたのはここは遅筆な人が多そうなのと、今後開催する企画との連動的なことも考えているため。
反応が多かったら開催するのでよろしく〜

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私の友達

『言わない優しさもあるけど
言う優しさも私はあると感じています』

と言われたときにこう感じました

私のことを本当の友達と思ってくれてるんだって

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逃鷲造物茶会 Act 11

「…」
なんだったんだろうね、とキヲンが青髪のコドモことピスケスと赤髪のコドモこと露夏の顔を見る。
ピスケスも露夏も不思議そうにエマが去っていった方を見ていたが、不意にピスケスがこう言った。
「あの子、もしかして…」
「え、何」
お前の知り合い?と露夏がピスケスの顔を覗き込む。
ピスケスは暫く考え込むような顔をしていたが、やがてこう呟いた。
「ちょっと、調べたいことができたわ」
その言葉に、は?と露夏は返す。
「調べたいことって…」
露夏はそう言いかけたが、ピスケスは廊下に出て階段を下りようとする。
「えちょっと待てって!」
お前なんかアイツのこと知ってるのか⁈と露夏はピスケスを引き止めようとしたが、ピスケスは振り向かずにこう答える。
「別に」
ただ、なんとなくきな臭い気がしただけよとピスケスは言うと、そのまま階段を下りていった。

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ほーりーふぁいと せってい

一応設定を端的にまとめて投下します。題名に他意はないです。普通に聖なる喧嘩です。

世界観︰田舎。堕天使(片羽)への偏見がすごいとこ。人間が地上に神殿作ると、天使が別荘的な扱いで住んでくれたりする。

ティノ
種族…堕天使。元は普通の天使。
権能…でかいスピーカー。羽を失う前は、半径2km以内の生物の鼓膜を破くこともできた。今は市販のスピーカーレベル。
性格…勇気はあるが押しに弱い(?)巻き込まれ体質で何もやらかしてないのに片羽になったりする。可哀想。

リリィ
種族…天使。この地域では稀有な四枚羽。
権能…レーザービーム。当たると焼き切れる。一気に光線を隙間なく出せる範囲は最大で半径5kmくらい。(現状小説では使ってない)
性格…めっちゃ強気。短気。一応女の子として生きてる。昔やんちゃした頃いろいろあったのでアーサーは嫌い。虫と同じくらい嫌い。

アーサー
種族…悪魔。この地域では稀有な二又。
権能…武器の生成。本人が武器だと認識しているものに限る。また、内部が複雑なものは生成に時間がかかる。本人が銃好きなので銃ばっか作る。
性格…女心わかんないタイプの運動神経良い男子。偏見はない筈だがデリカシーとか倫理観が足りないので失礼なこと言いがち。リリィは嫌い。

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此の春にて

移ろいの季節にて
次の場所へ行く君へ

白く冠る山々から吹くであろう冷風が
我々を戸の内に押し留めんとしているのに

出会いと別れを祝福する桜でさえ
まだ咲き始めを惜しんでいるのに

近く君は、遠くへ行く

気軽に帰ってきてくれていい
世間話をしに来てもいい

誰の愚痴を言おうったって構わない
悲しいことを呟くだけでもいい

いかな艱難辛苦をその身に背負おうとも
死に体になる十歩前には帰ってきて

できれば笑う顔がいい

とにかく、いつでもいいから

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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 おまけ

企画参加作品「Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼」のおまけ…というか設定です。

・ルシファー/サタン
種族:堕天使(追放)
権能:光を操る
今回の主役。
紫髪で片翼の堕天使。
元々は天界の天使たちのトップ“天使長”だったが、色々あって反乱を起こし追放された。
実は多重人格で、“サタン”は“ルシファー”の別人格。
実際の所天界で反乱を起こしたのは“サタン”の人格の方で、“ルシファー”の方はほとんど関わっていない。
“ルシファー”は常識的で割と大人しい性格。
“サタン”は掴みどころがなく割と明るい。
先の反乱の際にアモンと共に戦ったそうだが、このことを認識しているのは“サタン”の人格で、“ルシファー”の人格は認識していない。

・アモン
種族:悪魔
権能:火を操る
天使たちに追われていた悪魔。
普段は帽子を被っており、異形態は蛇のような尾を持つ狼の姿である。
先の反乱でサタンと共闘したそうで、物語の中でもサタンに助けられている。
サタンに対し当人でもよく分からない感情を向けている。

・ベベ
種族:堕天使(逃亡)
権能:闇を操る(設定上)
ルシファー/サタンの世話を焼いている堕天使。
べべはあだ名で本名は“ベリアル”。
金髪で背中に1対の翼が生えている。
設定上は先の反乱以前に色々あって天界から逃亡し、その後元々付き従っていたルシファー/サタンが堕天したことで再会、世話を焼くようになった。
お茶目な世話焼き。
ルシファーの別人格“サタン”の存在に気付いていないらしく、それ故にアモンのことは知らない。

・下っ端天使たち
種族:天使
権能:不明
アモンを追いかけサタンにボコされた天使たち。
サタンが手加減したので気絶しただけである。

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厄災どおるtutorial:嘘吐き煌星 その③

呪術師の男性、イユ、サユリが一足早く現場に駆け付けると、中年男性が血のついたナイフを振り回しながら滅茶苦茶に周辺の人間に切り付けようとしていた。周囲には数人、倒れている人間も見られる。
「イユ!」
「あー? 私に何か頼むんじゃねーぞ? 殺すぞ?」
「……分かったよ。サユリ、悪いけどあの人の気を引いてくれる?」
「了解です、マスター」
通り魔の男にサユリが滑るような動きで接近する。それに気付いた通り魔は彼女に向けてナイフを突き出したが、サユリはそれを片手に突き刺させることで止め、通り魔が動揺している隙にナイフを持っていた手ごと捕える。
「捕えました」
「ありがとう、これで……!」
男性はボックスから封人形を1つ取り出し、通り魔の男に向けて投げつけた。まっすぐに飛んでいったそれは通り魔の額に直撃し、そこを起点に暗紫色の煙のようなエネルギーが渦を巻いて噴き出した。
数秒後、エネルギーの渦から気絶した通り魔が吐き出されるように放り出され、渦が霧散する。そこには、白いワンピースを着た少女が立っていた。
「んー、細っこいがなかなか背ぇ高い子ができたじゃん。なァ呪術師?」
少女を見ながら、イユが笑う。
「そうだね……これで終わりなら良いんだけど……」
少女は枯れ枝のように細い自分の手足をしばらくぼんやりと見やり、不意に呪術師の男性の方に顔を向けた。
「……あなたが、わたしをつくってくれたんですか?」
「えっ、あ、ああ、そうだけど……」
少女はふらふらとした足取りで男性に近付いてきた。
「ありがとうございます、わたし、あなたのおかげで今、ここにいるんですね……」
少女がふわふわとした口調で言いながら距離を詰め、手が届くほどの至近距離にまで辿り着く。
「このご恩……どうお返ししたらいいか…………」
少女の伸ばした腕を、ちょうど追いついたばかりのソラが掴んで止めた。

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廻るは因果、故に舞い散る桜の刃 十二

担任は空き教室から埃っぽい机一式を出してきた。
ガタン、と音を立てて桜音の隣りに置き、

「じゃあ、一時間目は体育だからな。早めに着替えろよー!」

と言って教室を出て行った。
桜音は、更衣室は混んでいるので、トイレへ向かおうとする。
普段は更衣室だが、混んでいるし、葉月がいる上に昨日の仕事で背中に大きな痣を作ってしまった。
そういう意味でもトイレで着替えた方が都合が良かった。
トイレの個室に入ろうとすると、クイ、と袖を引っ張られる。
振り返ると。

「あの、桜音様?少々お話が...」

葉月が立っていた。
しっかりとジャージに着替え済みだ。

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変わったことを悲しく思う誰かは

好きでいたかった人


変わっても一緒にいたい誰かは

好きな人

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逃鷲造物茶会 Act 10

「ナツィ?」
3人組の内の1人、金髪に白いカチューシャを付けたコドモ…キヲンが尋ねる。
「何してるの?」
キヲンに聞かれてナツィは、え…とポカンとする。
「な、何って」
「て言うかその人誰⁇」
キヲンがエマの方に目を向けると、エマはハ〜イと小さく手を振る。
「わたしはエマよ」
ご機嫌よう、人工精霊の皆さんとエマは笑いかける。
「もしかしなくても、かすみのお知り合い?」
エマがそう聞くとキヲンはうん!と元気よく答える。
「かすみの所にお茶しに来たの〜」
キヲンがそう笑みを浮かべると、あらそうとエマは言う。
「それじゃ、わたしはちょっとお邪魔かしらね」
そう言いながらエマは物置の出入り口に向かった。
「どこ行くの?」
キヲンがそう首を傾げると、エマはかすみのお部屋に行くわと答える。
「じゃ、皆さん楽しんで」
小さく手を振りながら、エマは入り口に立つ3人組の横を通り過ぎていった。

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月の魔術師【10】前編

いつのまに到着していたのか、ロマの騒ぐ声でニトは目を覚ます。例によって低血圧なので、動くことなくゆっくりと瞬きを繰り返した。
「ニトーっ!ついたぞ!」
ロマがニトの太腿を叩いて起こそうとしてくる。
「ああ、うん…わかったわかった…」
しぶしぶ身体を起こして見渡すと、ロザリーがロケット内にいないことに気づく。
「あれ…」

外に出ると、砂嵐がニトとロマを襲った。ロザリーは呆然とまわりを見ている。
「ぅわ」
小さく声をあげたロマに気付いたのか、ロザリーが振り向く。
「ニトさん…」
「ここは、あなたとロマの故郷ですか?」
「ええ…恐らく。こんな、広い砂地はなかったんですが…」
改めてまわりを見てみる。そこにあるのはさらさらとした砂ばかりで、先が見えない。本当にそれだけだった。
「位置的には、ここで間違いないんです」
ロザリーはぽつりと呟いた。
「焼けちゃったんですね、もう」
戦争は既に、ずっと前に終結していたようだ。ロザリーたちの種族が敗戦したであろうことは明らかだった。

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少年少女色彩都市・某Edit. キャラクター紹介②

・“受動的ノーツウォーカー”魚沼理宇(ウオヌマ・リウ)
年齢:14歳  性別:女性  身長:147㎝
芸術:アーケード音楽ゲームプレイ  衣装:学校制服風衣装(ブラウス、セーター)
タマモの戦闘スタイルに憧れてリプリゼントルになった少女。趣味は音ゲー。体力の都合で1日3クレジットまで。
戦闘時は長さ30㎝程度の棒を2本描き、リズミカルに攻防一体の連打を放つ。多少の変化はソフランで慣れてるから大丈夫だけど、やっぱり一定のリズムの方が楽だなー……って。
絵はあまり得意では無いので簡単なものしか描かないというか描けない。代わりにインキに手を突っ込んでコーティングするようにガントレットを生成したりもする。
個人的「打撃ダメージによって内臓ズタボロにして血を吐きながらも強気に笑って戦い続ける姿が似合う子」No.1。ナニガシの寵愛を受け、出てきたら大抵酷い目に遭う。

・“モデラー”ぬぼ子
年齢:10代後半  性別:女性  身長:159㎝
芸術:3Dモデリング  衣装:サイバーパンク
『雨野ぬぼ子』の名前で活動している動画投稿者。主な動画ジャンルは3DCGアニメーション。とある目撃者の証言によると、「3Dモデリングソフトを起動して、直方体のCGモデルを生成した。そこから腕組みをして何やら考え込み始めたので、5分ほど席を外し飲み物を買って戻ってきたところ、姿勢は全く変わっていなかったにもかかわらず画面の中に極めて精緻なヒトの腕のモデルがあった」とのこと。ガラスペンの使い方も独特で、3点を指定することで直方体を瞬時に生成し、拡大・複製して相手を押し潰す戦法を得意としている。
よくコーヒー飲料やエナドリを飲んでいるがカフェインはもう効かない。美味しいから無問題。
素の性格は引きこもりの陰キャだが、人前では行動力ある明るく面倒見の良いお姉さんを演じるようにしているため、他のリプリゼントルからは大人気。

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逃鷲造物茶会 Act 9

「…」
暫くの間その場に微妙な沈黙が流れたが、やがて耐えられなくなったかすみが手を叩く。
「あ、もうすぐ開店の時間だ!」
そろそろ行かなきゃ!とかすみはわざとらしく言う。
「じゃ、また後でね」
そう言って、かすみはそそくさと物置を後にした。
「…」
またその場に沈黙が流れたが、ナツィが手に持つ大鎌を消してこうこぼす。
「お前、かすみの知り合いじゃないだろ」
ナツィの言葉にエマはふふふと笑う。
「あら、勘がいいわね」
ナハツェーラー、とエマは顔から笑みを消す。
ナツィは別に、と目を逸らす。
「何年生きてると思ってんだ」
お前のことだって、知ってて当然だぞとナツィは再度エマに目を向ける。
「そうねぇ」
わたし、有名人だもんねぇとエマは笑う。
「有名人て」
ふざけてんのか、この…とナツィが言いかけた所で、ガチャと物置の扉がまた開く。
2人が扉の方を見ると、ナツィにとっては馴染みのある3人組が立っていた。

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少年少女色彩都市・某Edit. Modeling Master Amenonuboko その⑥

「すごかったじゃない、新人くん。この調子なら、私なんかいなくても十分やっていけると思うよ」
勝利を収めて呆然としている新人くんの背中に声を掛ける。
「あ、ぬぼ子さん。いえそんなこと無いです。ぬぼ子さんが後ろ盾になってくれたおかげで、安心して戦えたので」
「けど君、すごいねぇ。動物描くの上手いし、あのうさぎさんなんか勝手に動いてくれたよ?」
「え、何それ知らない……あのウサギ、何したんです?」
「あの芸術家さんについて行くように言ったらその通りにしてくれたよ」
「へー……。と、取り敢えず」
新人くんがガラスペンを軽く振ると、馬やサイたちは消えてしまった。きっとうさぎさんも消えたんだろう。
「今日はついて来てくれて、本っ当にありがとうございました!」
新人くんが頭を下げてきた。
「良いよ。また何か困ったことがあったら遠慮なく言ってね? 夕方以降と土日は大体空いてるからさ」
「はい、また機会がありましたら、ご指導よろしくお願いします!」
「うん。それじゃ、私はのんびり歩いて本部に戻るから、じゃーね」
新人くんに向けてひらひらと手を振りながら別れの挨拶をして、眠気を思い出しつつあった身体を引きずりながら本部の私の休憩室を目指した。

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厄災どおる tutorial:嘘吐き煌星 その②

呪術師の男性がサユリにも声を掛けようとすると、彼女は既にそれまでいた場所から離れており、肩掛けベルト付のボックスを男性に対して差し出していた。
「はい、マスター」
「え、ああ、ありがとうサユリ。助かるよ」
「気にしないで、マスターはただの人間だからわたし達が助けないと無能のクソ雑魚ナメクジだから……」
「あっはい」
机上の籠から封人形を十数個ボックスに放り込み、男性はボックスを肩にかけ扉に向かった。
「じゃあ、行こうか」
「「「了解」」」
3人の答えを背に、男性は部屋を出て、そのまま街へと繰り出した。

呪術師の男性を中心に、3mほど前方にプラスチック製のバットを肩に担いだイユ、隣にサユリ、2mほど後方に通信端末を手にしたソラがついていく形で一行は街を見回っていた。
(はぁ……めんどくさ……。いやたしかに戦闘能力でいえば私が1番弱いよ? だからって電話番任せるとかさぁ…………我らが主さまはさぁ…………あ、良いこと思いついた)
ソラは能力を発動し、自身の周囲に微弱な電磁波を流した。
(はーいジャミングかんりょー。これでもう電波が悪いので連絡つながりませーんざーんねーんでぇしたぁー)
内心だけでほくそ笑み、ソラは空中を漂う電波から電脳世界の情報を閲覧し始めた。
「……あ」
「どうかした、ソラ?」
小さく呟いた声に、呪術師の男性が立ち止まり、振り返って尋ねた。
「主さま、近くに通り魔が出たそうです」
「具体的な位置は」
「進行方向から右に2ブロック、前方3ブロック」
「分かった。みんな、少し走るよ」

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肌荒れ

カサカサだ

なぜかは、恋をしていないから

恋をしていたら肌がカサカサしないから

潤いは雨の雫

雨に恋してるのかな

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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 Act 9

「⁈」
アモンは思わず駆け寄ろうとするが、すぐにサタンはむくりと起きた。
「…?」
あれ、わたしなんでこんな所に…?とその堕天使は首を傾げる。アモンは何か話しかけようか迷っていたが、不意に上空から声が聞こえた。
「あ‼︎」
ぼすぅー!と金髪の天使が舞い降りてくる。ぼすと呼ばれた堕天使はべべ、と呼びかける。
「急に走り出したから探しましたよ〜」
「え、そうだったの?」
2人は暫くそう話していたが、ふとべべがこちらを見ているアモンの存在に気付いて目を向ける。
「…この人は?」
「え」
堕天使はポカンとした様子でアモンを見る。
「…誰だろ」
堕天使は思わず呟くと、べべはえええと驚く。
「知らない人って」
「いやわたしだって気付いたらこんな所で倒れてたんだから」
よく分かんないよと堕天使は言う。
「…とにかく、家に帰りましょう」
べべがそう言うと、あ、うんと堕天使は立ち上がる。そのまま2人はアモンの前から去っていった。
「…」
アモンは去っていった2人の後ろ姿を見送る。
「また、会えるかな」
誰に言うまでもなく、アモンは呟いた。

〈おわり〉

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円環魔術師録 外伝9

木から落ちてきたのは、

「は...?鳥...?」

一羽の鳥だった。
ぽかーんと突っ立っている僕を横目に、
鳥、否、鳥の死体を回収するマスター。
少し死体を観察して、

「成程ね、じゃあ大丈夫か。」

と呟いた。
何がだよ。何も大丈夫じゃない。
内心そう思いながらマスターに駆け寄る。

「うん、ご苦労様。先帰ってていいよ?」

早く帰りな、と言うマスター。
思い切って聞いてみる。

「いや、そうじゃなくて...その、アリス、は?」

数秒黙った後に、これ、と鳥を指すマスター。

「え?」
「遠隔操作の魔術。本来は人形とかにかけるんだけどね。流石、やる事が非道いね。」

淡々と説明するマスター。
結局、アリスと会う事はなくこの騒動は終わってしまった。

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逃鷲造物茶会 Act 8

「うるせぇ‼︎」
ここは俺たちの溜まり場なんだぞ!とナツィは鎌でエマの箒を押し返す。
「溜まり場なんて知らないわよ!」
大体アンタ…!とエマが言いかけた所で、かすみがストーップ‼︎と叫ぶ。
2人はかすみの方を思わず見た。
「2階で騒ぐと下に響くから‼︎」
マスターに怒られちゃう!とかすみが声を上げる。
ナツィとエマはポカンとしたようにかすみを見た。
「だから、2人共静かにして」
かすみがそう言い切ると、ナツィとエマは互いの持ち物を下ろして顔を見合わせる。
「…んなこと言われても」
そもそもコイツ誰なんだよ、とナツィがエマを指さす。
「え」
あー、あー、えーとかすみは困惑する。
「そ、その人は…」
「わたしはエマよ」
かすみの知り合い、と言った所かしらとエマがかすみに助太刀をする。
「あ、そうそう!」
知り合いみたいな人!とかすみは慌ててエマに合わせる。
「…本当かよ」
怪しいと言わんばかりにナツィはかすみにジト目を向ける。
かすみはホントだよ〜と笑った。