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小説the dinner⑤ ―spoon―

「二品目は『スープ』。当店特製のダシをふんだんに使った自慢の一品です」

透き通った、琥珀色の液体が入った皿がコトンと置かれる。青年はもう遠慮するような素振りは見せず、一も二もなくスプーンを手に取った。
「ん、これも美味い」
特にダシが良いなぁ、と青年がそう漏らすと、執事がいきなり「そうでしょう!?」と嬉々として饒舌に語りだした。
「このダシを使って『拉麺』なんて作ったらきっと美味しいだろうなぁ…豚骨醤油、いや塩も捨てがたい…いっそつけ麺でも悪くな…ーーおっと」
こほん、とばつの悪そうに咳払いをする執事。
「失礼。取り乱しましたね」と、すぐに居ずまいを正す。いったい何だったんだ。

「お客様、デザートはいかがですか~?」
するとどこからともなく金髪のメイドが現れた。おもむろに小皿をテーブルに置く。
「『ラム酒がけアイスクリーム』です♪」
「どうぞー」
アイスクリームの上に、ウェイターがとくとくとラム酒を回しかけていく。品の良い香りがふわりと広がった。
「これからも当店のシェフが腕によりをかけた料理をお出ししていくので、楽しみにお待ちください」
「ええ、ぜひ」
そうして青年はスプーンを手に取り、絶妙な甘さのアイスクリームに舌鼓を打つのだった。

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