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ヌーナの音に14

一軒の小屋が見えると、あれが研究室なのだとエジーは教えてくれた。研究室という言葉からもっと仰々しい建物を想像していたヌーナは拍子抜けした。
そこでエジーはじゃあ、と言って歩き出した。ヌーナはありがとうございました、とエジーの背中にお辞儀をした。
小屋をぐるっと見渡してもインターホンが見当たらなかったので、大きな扉をノックした。はあい、と女性が応答した。扉が開き、ショートボブの女性が現れた。
「あ、ヌーナさんね。ザッキーから話には聞いたわ」
イチローを看病していた女性にザッキーと呼ばれる女性がいたことを、ヌーナは思い出した。
「どうぞ、入って」
お邪魔します、と小さく呟いてヌーナは中に入った。白を基調とした綺麗なラウンジは、研究室という名前にはおよそ似つかわしいものではなかった。透明な窓越しに見える中庭に植えられている色とりどりの花。紅茶の香り。シャンデリア。
中にはその女性の他に二人の女性がいた。誰に言われるでもなく、三人はラウンジの椅子に座った。ヌーナも促されて向かい側の椅子に座った。
「よく来たね、ここまで」
一人の女性がそう労った。肩までかかるほどの黒髪のストレートが特徴的だった。
「大変だったでしょう」
ポニーテールの女性も同様の言葉をかけた。
「お菓子食べる?」
テーブルの上にはさまざまなお菓子が置いてあった。クッキー、マフィン、マカロンのいい匂いがした。
「これはどう?放課後ベリー味」
差し出されたのは細長いチョコ菓子だった。放課後ベリー味とは一体どんな味なのか予想できなかった。
「じゃあ、一つもらいます」
ヌーナはチョコ菓子を歯で半分に折って食べた。美味しかった。
「美味しそうに食べるね」
ショートボブの女性が微笑んだ。その笑顔に思わずヌーナはドキッとした。それを誤魔化すかのようにヌーナは喋り出した。
「あ、私ヌーナです。あの、ここに来たら箱が貰えると聞いたんですが」

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