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道化師のツカイ1

[1]
合宿1日目。時刻は午前10時。
「ねぇ、アオイ。聞いてもいい?」
「ん? なんだい? このアオイおねーさんが聞いてやろう」
「いや、同い年だし、それでも誕生日でいうと僕の方が年上…。そうじゃなくて」
「なんだい来栖(くるす)ナギくん」
「ねぇ、僕部活に入ってないよね」
「うむ」
「なんで、強化合宿とやらに連れてこられてるの」
「えー? 何でわかんないの? ナギはボクの所有物だからだよ」
「……」
「納得した?」
「……呆れて物も言えません」

…ということで。
僕はアオイの所有物(であるらしい)ので、彼女の入っている部活の強化合宿に(無理やり)参加させられた。
…ん? アオイの入ってる部活?えっと…
バスケ部、卓球部、バレー部、テニス部、柔道部、弓道部、射撃部、吹奏楽部、美術部、イラスト研究会、コスプレ研究会…ってところかな。これ以上だった気がするし、これより少ないかもしれない。
僕の彼女は挑戦することというか、知らないものを知ることが大好きすぎる。だから、どういう仕組みでシュートが入るのか、うまくコートに入るのか、技を極められるのか、矢がど真ん中に刺さるのか、音が鳴るのか、絵を自分なりに描けるのか、自分で確かめないと気が済まない。
まぁ、そこがアオイのいいトコであり、小説の推理部分を頼んだ要因であり、僕が惚れる原因だったんだけど。

僕の家から歩いて五分。
私立檜(ひのき)高校は、極端な坂の上の学校だ。なんでこの高校にしたんだと言いたくなるだろうけど、しっかりとロープウェイっていう便利道具があるので心配はない。1台50人乗りで、5台くらいが行き来しているので電車を待つ感覚に近い。荷物の制限もほとんどないし。
僕とアオイは待つことなくロープウェイに乗ることができ、ゆっくりと到着まで待つことにした。
きっと、彼女はまだ知らない。
この後に起こる恐怖と、降りかかる災厄を。

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