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ヌーナの音に21

一瞬、何が起きたか分からなかった。しかし冷静に考えてみると、可能性は限られていた。
「お前のお仲間が来たんだろうな」
キクラの言葉にリサは頷いた。指輪からの信号が途絶えたことで、ヨーヘイはおそらく潜入がバレたと認識し、仲間を送り込んだのだろう。自分が無事であることを伝えなければ、と思ったリサは急いで音のした方へと階段を駆け下りた。
煙が立ち込めていて視界は悪かったが、そこにいるのは誰かくらいは判別できた。大王のサトヤスと、イチローだ。サトヤスもリサに気付いたらしく、声を上げた。
「お、そこにいんのはリサか。作戦失敗したんだろ?帰るぞ」
「いえ、まだ大丈夫です。救世主さえ見つかれば」
「見つかれば何だよ?テチのこと忘れたのか」
痛い所を突かれて返答に困っていると、誰かの足音が聞こえた。キクラだ。
「はい、そこまで。面白そうなんで俺はこの子の助太刀するよ」
サトヤスは頭を掻いた。
「ヨーヘイになんて説明すりゃいいんだよ」
困惑しているサトヤスとは対照的にイチローは声を出して笑った。
「分かった。やり残したことがあるならやりきってみてよ。ヨーヘイ君には僕から言うから」
リサは深くお辞儀をした。
「ありがとうございます」
「いや、いいって。あ、それと、うちのゲスト今ヌーナっていう女の子なんだけど、その子多分救世主だから」
リサは突然のことにえっ、と声を漏らした。
「まあ、うちのゲストって言っても今頃研究室にいるだろうからもう管轄外だけど」
早く行った方がいいんじゃない、とイチローは諭した。リサはありがとうございます、と重ねて礼を言い研究室の方角へ向かい、キクラも後を追った。けれどその二人に立ちはだかる人影が見えた。
「裏切り者に感化されてんじゃねえよ、キクラ」
タマサが刀を手に持って立っていた。

  • ヌーナの音に
  • サトヤスは某人気バンドのドラムとは無関係です
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