表示件数
1

ムーンライトステーション #7

前回の続きです。知らない方は検索してもらえるとうれしいです!
……ちょっと読んでいただく前に一言。この第七話からもうほとんど原曲とは関係ありません!ご理解の上読んでください笑ではどうぞ!
 -ザザーンー 規則正しい波の音が静かに僕の耳に入りこんでくる。頬をなでる潮風が心地よい。熟しすぎた蜜柑のような夕日がクルクルと沈んでいく。
「海……?」
背後から声がした。
振り向くと夕日色の君が、この前プレゼントした麦わら帽子を押さえながらこっちに歩いてくるところだった。
「うん。言ってたじゃん。電車で海にでも行こうかって。思い出は多い方がいいでしょ」
君はクスっと笑って言った。
「にしても、急すぎるよ。財布の中身も確認しないで出てきたでしょ。それに、ここ長野だよ。あと八時間もしないうちに私、行かなきゃいけないんだよ」
そんなことは分かってる。だからこそ、来たんだ。
 「僕はこの夕日に何度も助けてもらってる。この近くに僕の実家があるんだ。僕はどうしようもなく悩んだ時、三時間かけて東京からここまで来ていた。第二のふるさとだよ。本当の実家に帰れなくたって、この夕日が僕を支えてくれた。背中を押してくれた」
話ながら、目に涙がたまっていくのが分かった。
「だから君にも、この夕日をどうしても見てほしくて。君の心の支えになるかは分からないけど、君の、月の次のふるさとにしてほしいんだ。君と離れるのはとてつもなく辛い。でも、ここが君のふるさとなら、僕は、いつか帰ってきてくれると思えるんだ。ただの自己満足だってことはわかってる。けど、最後のわがまま、きいて」
そっと顔をあげると、もうほとんど沈んでしまった夕陽をバックに、君は涙を流して微笑んでいた。
「あのね、月からもね、太陽が見える時があるの。海はないけど、君と同じ太陽、第二のふるさとにするね」
今回はここまで!

1

ムーンライトステーション #6

前回の続きです。知らない方は検索してもらえると嬉しいです。ではどうぞ!
 そのあと二人で他愛もない話をしながら朝食をとり、皿洗いを当番の僕が済ました。ガムを食べながらソファーでテレビを見ている君に、意を決して言った。
「ちょっと、話があるんだけど」
君はテレビを消して、そこにあったガムの容器を僕の方に向けると、「何?」と言って首を傾げた。僕は首を横に振って軽く断った。
「昨日の焼鳥屋でのこと、覚えてる?」
「なんのこと?」
君はそう言ってソファーに座り直した。僕は少し前のめりになって声を大きくした。
「『帰りたくないよ』って、なんのこと?」
君は目を丸くして小さく「えっ?」と声を漏らした。その後、長い沈黙が流れ、時計が時間を告げる重低音を鳴らしたころ、やっと意を決したように言った。
「酔った勢いで言っちゃったんだね。もう、君には全部話すよ」
 それから、君は自分のすべてを教えてくれた。
 あの時花火に驚いたのは初めて見たからだということ。
 あの汽車と君は月から来たということ。
 そして、君はかぐや姫の生まれ変わりだということ。
 僕はその話を息をのんで聞いていた。最後に君は困ったように笑いながら言った。
「それとね、これはこの間知ったんだけどね、もうすぐ、あの汽車が迎えに来るの。私、帰らないといけない。今日の夜12時には出発するんだって。もう、ここには戻ってこられないの」
僕はガバッと時計を見た。まだ昼の11時、あと十三時間もある、立ち上がると、泣いている君の手を取った。
「行こう」
僕は財布をつかみ取り、君の手を引いて駅へと走った。
今回はここまで!

0

ムーンライトステーション #5

前回の続きです!知らない方は検索してくださるとうれしいです。ではどうぞ!
 僕はガタッと立ち上がった。隣に座っていたカップルがチラッとこっちを見た。運動もしていないのに、心臓が激しく波打ったのが分かった。嫌な予感がした。君がどこか、手の届かないところへ行ってしまうような、そんな気がした。今すぐにでも君にその発言の意味を確認したかったが、眠り始めた君に無理やり聞いてもまともな答えが返ってくるとは思えなかった。僕は支払いをすませ、寝ぼけている君を連れて家に帰った。
 リビングに入り電気のスイッチを押すと、まず初めに僕の伸長ほどもある振り子時計が目に入る。今は亡き神戸の祖父ー唯一僕の居場所を知っている人物ーが、去年の冬、送ってくれた代物だった。
 君を部屋へ連れていくと、午前二時を告げる濁った低い音が鳴り響いた。僕は君が寝たのを確認し、自室へと向かった。
 朝起きると、リビングから君の足音が聞こえた。目覚まし時計に目をやると、もう九時を回っていた。
 着がえてリビングへと急いでいると、ジュ―という何かをフライパンで焼く音が聞こえた。ドアを開けると、君が二人分のベーコンエッグを焼いている所だった。
「あ、おはよう。ご飯よそってくれる?」
僕はうなずきかけて急に思い出した。昨日の夜の会話を。今すぐ聞こうと思ったが声が出なかった。拒んでいたのは、頭だったのか、心だったのか、それとも体だったのだろうか。
 とにかく、あの話について、詳しく聞くことが嫌だった。うれしい答えが返ってくるはずがないから。百%、嫌だったわけではないけど。
「ちょっと、きいてるの?早くしてよ」
君に催促され、僕はあわててしゃもじを握った。