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小説the dinner⑦ ―maindish―

その後も、調理場からは続々と料理が運ばれてきた。
「付け合わせのフランスパンです」
「鳥の丸焼きです」
「マカロンとフルーツ盛り合わせです」

テーブルをどんどんと埋め尽くしていく料理の数々。青年は狂ったように、それらを次々に平らげていく。

「林檎のカップケーキです」
「腸詰めのボイルです」
「フライドチキンです」

ウェイターとメイドが入れ替わり立ち替わり、休み無く料理を運ぶ。その異常とも言える光景の中心で、青年の食べる手が止まることは無い。
ただただ食らう。
ひたすら食らう。
ーーー泣きながら。

「か、体が、勝手に…っ!」
涙目になりながらも料理を貪る青年。次から次へと口の中に料理を運び、詰め込み、飲み下していく。もう腹は満腹だというのに。これ以上食べたくないのに。そんな青年の意思などお構いなしに、その手は料理を食べることをやめない。

「クス」
「クスクス」
「クスクスクス」
「クスクスクスクス」

部屋の隅から不気味な笑い声が響き、振り返る。
そこにいたのは、四人の人影。
赤髪のウェイター。
金髪のメイド。
眼鏡の執事。
ピエロのコック。

薄気味悪い笑顔にぞっと戦慄すると同時に、全てを悟った。
あぁ、あぁ…もしかして。

ワイン。
サラダのドレッシング。
スープのダシ。
そして…ハンバーグステーキ。
あれらは全部、もしかして…!

ーーー堪らず、嘔吐した。

嘘だ。嘘だうそだうそだ。
まさかそんな、そんなことって、
あの料理が皆"そうだった"なんて、そんなのいったい、誰が思うぅ!?
想像するだけで、今にも胃液がせり上がってくる。形容し難い悪寒が、背筋を這いずった。

***

前にも投稿したのですがグロかったのか載らなかったので修正して再投稿。

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小説the dinner⑤ ―spoon―

「二品目は『スープ』。当店特製のダシをふんだんに使った自慢の一品です」

透き通った、琥珀色の液体が入った皿がコトンと置かれる。青年はもう遠慮するような素振りは見せず、一も二もなくスプーンを手に取った。
「ん、これも美味い」
特にダシが良いなぁ、と青年がそう漏らすと、執事がいきなり「そうでしょう!?」と嬉々として饒舌に語りだした。
「このダシを使って『拉麺』なんて作ったらきっと美味しいだろうなぁ…豚骨醤油、いや塩も捨てがたい…いっそつけ麺でも悪くな…ーーおっと」
こほん、とばつの悪そうに咳払いをする執事。
「失礼。取り乱しましたね」と、すぐに居ずまいを正す。いったい何だったんだ。

「お客様、デザートはいかがですか~?」
するとどこからともなく金髪のメイドが現れた。おもむろに小皿をテーブルに置く。
「『ラム酒がけアイスクリーム』です♪」
「どうぞー」
アイスクリームの上に、ウェイターがとくとくとラム酒を回しかけていく。品の良い香りがふわりと広がった。
「これからも当店のシェフが腕によりをかけた料理をお出ししていくので、楽しみにお待ちください」
「ええ、ぜひ」
そうして青年はスプーンを手に取り、絶妙な甘さのアイスクリームに舌鼓を打つのだった。