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異端児たちの集う夜

ある夜のこと、巧妙に隠された恋心を、想い合う想い人が暴いた。
ある夜のこと、響いた歌声は、世界を物理的に震わせた。
ある夜のこと、その眼は良いも悪いも記録した。
ある夜のこと、彼女は辛いにも幸いにも寄り添った。
ある夜のこと、異能を切欠に思想と自由が論じられた。
ある夜のこと、己の才を知らぬ絵描きは、ただ只管に描き続けた。
詩にも文にも満たない想像力の欠片の中で尚、彼らはきっと、今夜も異能を振るい続けるのだろう。何のためでも無しに、それが彼らの一部なのだから。
『常人』を外れた異端の異能者たちは今夜も、人外の領域、黄昏の更に先でただ集う、と、良いな。

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そういうわけで、先月いっぱいまで開いていたちょっとした企画『異端児たち』には、それなりの方々に参加いただけました。よく知る名前の人も居て、大変嬉しゅうございました。
ちなみに先月のうちにこれが書けなかったのは、単に気付いたら日付が変わっていたってだけの話なのです。
素敵な文章を書いてくださった皆さんも、広義にいうところの「異能者」と呼んで良いんじゃないですかね。どうぞ誇りに思ってもろて。

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無血悪魔戦争

スニップ・スナップ・スノーレム。
「おい天使ィ、お前8の札4枚持ちしてんだろ。ズリィなァ」
悪魔が細長い腕で天使を指しケタケタ笑う。
スニップ・スナップ・スノーレム。
「それがどうした?」
天使はそちらに目も向けず答える。
スニップ・スナップ・スノーレム。
「ンだよつまらねえ。もっとノッてこいよォ。そんなつまらない性格してっから万年人材不足なんじゃねえの?」
スニップ・スナップ・スノーレム。
「天使様、剣は使わないルールのはずですが」
場違いに混じる人間が言った時には、悪魔の片腕は既に斬り落とされていた。
スニップ・スナップ・スノーレム。
「イタカ様。しれっと場札からカードを抜き取ろうとしないでください」
「ゲェッ、バレた」
イタカと呼ばれた悪魔の腕を、人間がピシャリと叩く。
スニップ・スナップ・スノーレム。
「イタカ様、それは私の手札です」
「鮮やかなスリの技術だろう?」
「如何様はご法度と最初に申し上げたはずですが……」
スニップ・スナップ・スノーレム。
「……上がり」
「ゲェッ、堕天使ィ!」
「こいつ……注意が向かないように掛け声以外何も言わずに……!」
「堕天使様、おめでとうございます。今回のDaemonium Bellumは、堕天使様の勝利によって、悪魔天使ともに引き分けということで」