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世にも不思議な人々⑥ 彼らとはまた別の人たち

私の住む街は、都会と言うほど発展している訳では無いですが、田舎と言うほど未開でもない、近くの都市のベッドタウンです。
子供の遊び場はもっぱら、駅近くのショッピングモールか、噴水のある大きな公園。気候は温暖で治安も良く、人々はみんな優しい、そんな平和な街です。地元であるのを差し引いてもかなり良い所だと思います。
この間、男の子が二人、とんでもないスピードで追いかけっこしているを見ましたが、特に変わったところもない所です。
しかし、事件は無くても事故はあるようで、目の前で私と同じくらいの歳と思われる女の子が、トラックに轢かれそうになっているところに遭遇してしまいました。何とか助けられないかと考えていると、頭の中に声が聞こえてきました。
『ネェ貴女、願イガアルデショウ?』
(はい?ああ、はい。あの子を助けたいです。けどここからじゃ間に合わない……)
『大丈夫。私ノ力ヲ貸シテアゲル』
(力?)
『イメージシテ。貴女以外ノ全テノ時間ガ止マッテ、貴女ダケガ自由ニ動ケルノ』
三日前に読んだ漫画に、時間を止める能力者が登場していたので、それは簡単でした。ちなみに私は、少年漫画も好きです。
『イメージシタラ、後ハ信ジテ。貴女ニハソレガデキルト』
こんな不思議な事は中々無いものですから、すんなり信じてしまいました。すると、頭の中に聞き覚えのある楽しげなメロディが聞こえてきて周りのあらゆるものが止まりました。
そして件の女の子を歩道まで引きずり、これで安全とため息を吐いた瞬間、また周りは動き出しました。
『ありがとうございます。あなたが助けてくれたんですよね?』
「うん。……あれ?」
助けてあげた彼女の声は、さっきの声みたいに頭の中に直接聞こえてきました。
「……どういうこと……?」
『あなたも能力者なんでしょ?私にも力があるんだけど、頭に聞こえる曲は、NHKみんなのうたで初めて放送されたボカロ曲、「少年と魔法のロボット」。能力は、自分から相手への一方通行のテレパシー。あなたはいったいどんな能力なの?気付いたら歩道に瞬間移動してたけど』
「えーっと、私の能力は…」
『貴女ノ能力ハ、自分ガデキルト信ジタコトヲ現実二デキル能力ヨ』
「できると思えばできる能力……?」
『アハハ、何それ!』
彼女は障害で話せないんだとか。ちなみにお友達になりました。