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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

「ねぇ先生、見て!!新入生。」
私は新入生を指差して、先生の方を向く。

『今日は、制服の採寸の日だ。』
「へぇー。もうそんな季節か……。」
『なんだ?その言い方。不満か?』
「そりゃそうでしょ!先生が他の人と仲良くなったらどうするの!?」
『そんな事気にしてるのか(笑)?』
先生は笑いながら、私の頭をぽんとする。

「そりゃ気にするでしょ!!!」
『君は私の性格を知っているだろう(笑)?』
「えぇ。でも、本当は先生、凄く優しいって事も知ってる。悪いとこだけじゃないでしょ?」
『だが私は、他の人とは仲良くする気はない。君は私の格言を知っているだろう?』
「尊敬してくれる人を尊敬するだけ。でしょ?」
『君は私を尊敬してくれているが、他の生徒はどうだ?新入生もきっと同じだ。』
「でも私は違う。それって、新入生の中にもそういう人がいるかもしれないって事だよ?」
『私の噂は悪いものばかりだ。仲良くする生徒はいないさ。』
「も〜!先生ってばマイナス思考すぎ!!!!先生、凄く良い人なんだから、もうちょっと自信持てばいいのに!」
『私は自信満々だぞ!』
「も〜、そういう意味じゃないってば!!」
『自信満々だからこそ、個人主義を貫き通しているのだ(笑)。』
先生は悪戯っ子のように笑う。

「私もそうだけどさ(笑)。先生、他の人と仲良くなってもいいから、この時間だけは変えないでね。」
『あぁ。もちろん。心配するな(笑)。』
「先生、ほんとうは優しいから(笑)。」
『私にとっても、君と喋る時間は大切だ(笑)。』
「ありがとう(笑)。」

私達は微笑みながらニヤニヤお互いを見つめた。
笑いが収まった頃には、新入生は見えなくなっていた。

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大きくなったつもりでいても
まだまだちっぽけで。
だけれど少年少女最期の春よ、
大人になる覚悟を持ってこい

明日は我が身、
使われ古したことばには
それだけの重みがあるの
流行りものとは違う
酸っぱくてえぐい匂いがするの

嫌いな人間を殺せないなら
大好きな人を大切にしよう

曖昧と選別を持ちあわせて
ありきたりだけれど、前を向こう
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お久しぶりです、SOL。ポエム掲示板。私は大学生になり、今、大学の仲間との詩の展示会真っ只中です。展示のテーマが「高校生」で、ふとこの掲示板を思い出して、久しぶりにここにきました。

なんて遠い過去のようにいうけれど、まだ一・ニ年前のこと。振り返ると「高校生」という名前は思ったよりもキラキラして見えます。ここに載せている詩(らしきもの)が、思ったよりも今の自分から離れていなくて、過去の自分に安心させられました。

詩を載せはじめたのは、「人に見られる」と意識したのは、この掲示板から。展示会や本に詩を載せてもらったり、弾き語りで詞を披露するようになったり。目の前に「他人(ひと)」がいるようになっても、それが(これからの目標として)もっともっと大人数になっても、変わらないものがありますように。もっともっと変われますように。あまりにも、まだまだこれから、です。


高校生が遠い過去になっても、たまに帰ってこよう。

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1月1日君と一緒に No.2

「うっそ。○○知ってるの⁉」
「え?あっ、うん。そっちこそ知ってるの?」
「うん!うん!ちょっと後で話そう!」
自己紹介の後もそわそわしすぎて先生の話が全く頭に入らなかった。
○○というのは4人組ロックバンドで、デビューはしてるけど世間には知られていないバンドなのだ。
チャイムが鳴るとすぐに彼女の席に行った。班が同じなのだから近くて当たり前だが2歩で着いた。
「えっと…さっきも言ったけど、結花って言うの。普通に呼び捨てで呼んでくれていいからね。○○、私大好きなの!ここちゃん?は何の曲が好きなの?」
「あ、ここでいいよ。私は『together with you』かな。歌詞が好きで」
「あ~!いいよね!私『One day we』かな。これも歌詞がいい!っていうか本当に全部良い曲だよな…」
「そうだよね。私存在が薄いから、でもそういう時に○○の曲聴くとこれでもいいんだって思わせてくれる」
「分かる!あのさ、次の時間も話さない?」
こうして今に至る。私たちはすっかり仲が良くなった。向こうも徐々に心を開いてくれ、関西弁になった。それに安心して私も関西弁になった。
これまでにも友達はいたがこんなに趣味の合う友達に出会えたのは初めてだ。
今が1番、幸せな時間だ。

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非現実ーおとぎ話ってそういうものー ⑤

そんな2人のことを、ローズとリリーはもちろんよく思っていませんでした。とくにリズに対して、とても怒っていました。2人はいろんな方法でヘンリーとリズを邪魔しようとしましたし、リズにもたくさんの嫌がらせをしました。リズはとても優しいですから、なにかの間違いだと思ってとくに気にせず暮らしていました 。でもヘンリーは2人のいやがらせに気づいていました。そして、そのことをヘンリーが知らないと思ってローズとリリーが近づいてきていることにも。
王さまとお妃さまももちろん気づいていました。2人はリズとヘンリーがせっかく結ばれそうなのに邪魔をさせるわけにはいかないと、ローズとリリーを遠い田舎の別荘にしばらく泊まらせることにしました。素敵な男性方とのパーティーが毎晩あると聞かされた2人は、喜び勇んで出かけていきました。
さあ、これでヘンリーとリズの邪魔をする者はいなくなりました。2人はこれから、相手の良いところや悪いところを知り、長い年月をかけて受け入れあっていくでしょう。そしていつの日か本当に夫婦になるかもしれません。もしならなくとも、2人ならお互いをいいパートナーとして、生涯付き合っていけるでしょう。
誰もが結婚するだろうと思っていたカップルが破局するように、一生の友だちだと思っていたひとといつしか疎遠になってしまうように、先のことなんて誰にもわかりません。
けれど、願わくばすべてのひとが、そのひとだけの幸せで満たされていますように。

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甘い生活

 世界じゅうどの国も、中央が豊かなのは当たり前だ。
 埼玉がどうちゃらとか群馬がどうちゃらとかいう漫画が流行った背景にあるのは、日本は豊かなようでいて全体的に見たら貧しいってこと。東京という強国のもとに、地方という属国があると考えたほうが日本のありようを把握しやすい。
 日本はひとつではないのだと、関東エリアの外の人はよくわかってるんじゃないか。
「かなのこと親友だと思ってたのに、こんな形で裏切られるなんて思わなかった」
 トイレから戻ったるなの声で、考えごとに没頭していたわたしははっとした。
「あ、ごめん。悪気があったわけじゃ」
「悪気があったわけじゃないって!? 親友だったらわかんじゃん!……もういいよ。友だちやめよ」
「ごめん。ほんとごめんなさい。新しいの買ってくる」
「そういう問題じゃないから」
 ずっと仁王立ちのまま、るなはわたしをにらんでいる。わたしはただ、とけかかった氷を見つめるばかりだ。
「もうこれからシェアなんてしない。翔君もわたしが占有するから。かき氷ほとんど一人で食べちゃったあんたが悪いんだからね。さよなら」
 そう吐き捨てるように言って、るなは店から出て行った。
 一週間後、翔君にふられたのでやけ食いするから甘味処につき合ってと、るなからLINEがあった。
「わたしたち、やっぱり親友だよね」
 あんみつのバニラアイスを頬張りながら、るなが言った。
 わたしは笑顔でうなずき、ところてんをすすった。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

最近、先生が校長になるという噂が流れている。
手を伸ばしてもスルリと抜けていく先生に、少し寂しく思っていた。

廊下の角を曲がろうとすると声が聞こえた。
現校長の声だったので、隠れて会話を聞く。
先生と話をしていた。
“先生、校長になる気はありませんか?”
『今、答えを出さなければなりませんか?』
先生は質問を質問で返す。
“いやいや〜。今でなくていいんです。考えておいて下さい。”
『わかりました。考えておきます。』
会話が終わりそうだったので、私は静かに、でも急いで、踵(きびす)を返した。

私はお気に入りの窓に腰掛け、空を眺めていた。
『またここにいたのか?』
先生の声がするので振り返る。
「あ〜、先生。なんか久しぶり?」
『昨日会ったばかりだ。』
「そうだった、そうだった。」
『何かあったか?』
「別に何もないよ?」
『またここに来てるし、何もないと言ったときは大体何かある。』
「じゃあ、本当に何もないんだけど、1つ聞いていい?」
『あぁ。もちろん。何だ?』
「先生は校長になるの?」  『え?』
「先生、校長になるの?」  『何で?』
「噂がウジャウジャしてる。」
『私が校長になると君に何か不都合があるのか?』
「別にないよ?」
『じゃあ何でそんな事を聞くんだ?』
「先生が昇格すれば、おめでたいよ、そりゃあ。でも、今みたいに一緒にいれない。先生がどんどん遠くに行っちゃう気がする。ただそれだけ。」
『そうか。ただ、私は校長になるつもりは無い。』
「本当?」
『あぁ。本当だ。君もそう言ってくれているし、踏ん切りがついたよ。』
「何でならないの?校長。」
『私には似合わぬ職だろう?笑 それに、今のままで私は十分満足だからな。』
「ありがとう。」
『何でお礼を言うんだ?』
「今のままで良いって言ってくれたから?」
『何なんだ?それ(笑)』
私達は少しの間笑い合った。

先生が、これ以上スルリと抜けてしまわないように私はそっと“レプラコーン”にお願いをした。