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川べり(第一話)

  窓外が藍色から群青色に変わる頃、私は夢見眼をこすってパンをくわえ、テレビをつけた。
  代わり映えのしない通販番組を流しているそれは、もうすぐただのガラクタになろうとしている。(最も、私はそんなことなど気にしていないが。)それを眺めて数十分、ようやくパンを食べきった私は、最低限の身支度をして、家を出た。雨が降っている。
  「雨なれば雨をあゆむ」。種田山頭火の句だ。雨は汚れた街を洗ってくれる気がする。だから僕は雨が好きだ。いっそ僕の心ごと洗ってくれたらいいのに…。そう思ったりもして。
  冬と春の間をさまよっているここは愛媛県山寺町。人口5000人の小さな町だ。そんな町の真ん中のホールでは、いつも吹奏楽団が活動している。私、樋口修三は、団の常任指揮者(すなわちマエストロである)を務めている。
  さて、バスを待つこと十五分。ようやく始発のバスが来た。(田舎は1便でも逃すと大変だ!!!!!!下手すりゃあ2時間待ち…)早速乗車すると、一番後ろの女性と目があった。軽く挨拶をする。彼女は三田園 薫(さんたぞの かおる)さんで、我が吹奏楽団の1stホルン奏者だ。はっきり言って彼女の演奏は美しい。ノスタルジックな空気を漂わせながら、ときには勇壮にときにはノリノリに…それらは彼女の絶対的な演奏の正確さと、センスによるものだった。(ここだけの話ね、私にはそんなセンス無いから、めちゃくちゃ嫉妬シテル…) 
  さて、私は座席に座った。バスは走りだす。まさに
「雨なれば雨をはしる」って感じで。

    第一話 完

注1)この小説はフィクションであり、実際の個人・団体・地名等とは関係しておりません。(種田山頭火を除く)
地2)夢見眼(ゆめみまなこ)とは僕の創作熟語で、夢うつつな状態を表したいだけです。
地3)僕のラジオネームはうつつ夢ですが、ペンネームは「Fuyabu」(フヤブ)とします。よって、この作品はうつつ夢名義での作品ではなく「Fuyabu」名義の作品とします。
(これ自体そんなに深い意味はありません。)