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1

無題

言葉をください。
出来損ないの私にも。
温もりはない。心もない。
それだけのつながり。
それでもいいから、どうか言葉を。
それさえあれば、生きていけるの。

1

鬼ノ業~序章(拾壱)

草の茂みに隠れる。
それは__
「あ、蒼!?」
「しっ。静かに。」
泣き止まない薊をぎゅっと抱き締めて、嗚咽が響かないように、そして、安心させるように言う。
「大丈夫。またすぐ逃げるから。」
朔は懸命に堪える。
「蒼、紗那が殺されたって…。」
「本当のことだ。俺が帰ったら殺されてた。玄関の前で。
だけど、俺は朔の母上を疑うつもりはない。」
朔は涙目だ。
「あんなに優しい母上などいない。」
ごしごしとこする。
「僕はこれからどうすればいい。
…それを教えに来てくれたんだろう?」
蒼は笑う。そうだ、と応え、
「このままここで隠れてろ。ただし、物音ひとつ立てるな。
きっと、朔達の叔父上が来てくれる。 」
「叔父上…?」
「朔の母上のお兄様だ。」
「なんでそんなこと知って__」
蒼は、これには不思議そうな顔をした。
「おばさんが…俺に、そう伝えてきたんだ。今日、帰り際に…。」
少々考えるようにしてすぐ戻る。
「でもおばさんがいっていたんだ。俺は朔達を信じている。
…でも、俺はこの村に留まらないきゃいけない。紗那のこともあるから。」
朔は強く頷く。
そこで、少し蒼は笑った。
「でも、いつかきっと会いに行く。探しにいくから、二人のこと。…妹殺した犯人も見つけてやる。」
朔は、蒼のその言葉が嬉しくて、涙が出てきた。
「待ってる。僕も、強くなるから。」
「あぁ!」

2

手放す

たぷたぷに詰まった脳みそ。
レヴィンとレヴィナスとレヴィ=ストロースの違いとか。
地雷はオタワ条約で、クラスターはオスロ条約だとか。
ニーチェもフーコーもキルケゴールもフロムも、本居宣長に新井白石に安藤昌益。法然だとか源信だとか。
ウパニシャッドとジャイナとヒンドゥーとか。
そんな知識は、もう、要らないなんて。
この一年、何をしてたのか。
私の一年、何だったのか。
(倫理を一番勉強してた。色んな思想で、頭と心がおかしくなるような受験科目。好きだったのにな。)

4

透明な花束

少し濡れた、睫毛の先。
赤い頬に溶けた貴方の夢。

その窓から覗く世界を、
好きになってしまった私を
その世界の入口まで連れていってくれますか。

何処までも透明な空気を泳ぐ言葉と、
ふわり、漂う貴方だけの色が、

好きだと言ったら、
困ったように笑って、
空をみるのかな。

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果ての記憶

忘れようと望んでる、でも居ないとなんか違う、なんなんだろう、この感じは

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flower head

人間関係に悩みなんて無いのは 悩むほどの関係がないからだ。
僕の幸せな脳味噌には 僕ひとり分の空間しかない。
さよならの数より はじめましての数のほうがずっと多い。
さよならしないうちに お別れしてたんだろうな。
思い出せないあの人と またはじめましてしてたりして。
いつだって新鮮な気分さ。 空虚。
どうせ空っぽなら せめて花畑を満載にしてたかったな。
かち割れたときに ぶちまけるために。
無意味な僕の人生が まるで美しかったかのように。
さらば現世 嫌いじゃなかったぜ。 来世は別にいらないけど。

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想い、想われたい。

あなたはどれくらい私のこと、私と同じくらい想っていて、今さらだから言わないけど、けっこう想ってるよと言われたい。

困った時にくしゃっとなる顔はキライじゃない。泣いていてくしゃっとなる顔は見たくない。ただ笑っていてほしい。それだけでボクは今日もボクでいられるんだ。

想いはいつも一緒なのに。いつもいつも。

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本日の魔法講座 その233

だって
キラキラの銀世界は
こすも の今日を塞いでしまったのだ

でも あなたを待ってる人がいるよ

ぽこぽこ 白を凹ませて
雑踏もしがらみも闊歩して

どうか ここまで やってきてよ

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ファンタジックスノウデイズ。

ざくりざくりと 白い世界に足跡を残す。夢みたいだった輝きは、すこしだけ遠くに見えた。
小さな夢の延長線、今日だけは描いてみてもいいよね。
明日には消える魔法。せめて今だけ、この目に焼きつけて。明日また、いつもの日々に戻れるよう。少しだけ白を思って、僕は白銀の世界をあとにした。