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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 10.ウロボロス ①

寿々谷駅前の商店街の裏は、少々不思議な雰囲気を纏っている。
というのも、表通りと違って変わった店や建物がひしめいているのだ。
…正直、慣れている人でないと歩きにくい。
人通りが少ない事もあり、そこはわたし達コドモの溜まり場ともなっている。
もちろん、そこには常人じゃない人間も多く存在するが。
…だから裏路地は独特の雰囲気を持っているのかもしれない。
そしてわたしは今、”彼ら”と一緒に商店街の裏路地にいた。
「ねぇ」
わたしは何か写真を持った小柄な少女に話しかけた。
「…それ、何?」
あーコレ?と少女ことネロは答える。
「今回のターゲットの写真だよ」
ターゲット?とわたしは思わず聞き返す。
「あ、ターゲットってのはな」
わたしの様子を見て、ネロの隣にいる耀平が説明し始める。
「異能力を使っている所を見られたから、見た人の記憶を消して欲しいっていう依頼がネロの所によく来るんだけど、そのターゲット」
つまりこの写真の人は異能力を使っている所を見てしまった一般人だな、と師郎が言い換える。

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空の青さを知る君は明日海へ行く

舞には、かつて大学生の兄がいた。とても、優しくて大好きだった。でも、舞が小学生の時、ちょうど戦争が始まった年だった。両親が共働きで家ではいつも1人だった舞にとって兄はとても大切な存在だった。でも、ある時兄の元に真っ白な封筒が来てそのまま帰ってくることはなかった。そんなことを思い出したせいか、ぽつりと涙がこぼれた。幸い周りに人はいない。舞は小走りに近くの公園に駆け込みベンチに崩れるように座った。ここは、昔、兄とよく遊んだ公園だった。小学生になってからはゆっちとも遊んでいた。そう、ゆっちとも…。
放課後、帰る前に下駄箱で突然ゆっちからもう会えないことを告げられた。最初は、ただの転校だと思った。でも、答えは違った。
「ごめんね、舞、うち、親がこの前の空襲で死んじゃって…その…軍学校行くことになったの。」
軍学校。正式名称は忘れたけど、舞の住むM市には日本最大級の基地がある。その中に学校があることを聞いたことがある。そこは、児童養護施設も兼ねられている。だから、基本的になんらかの理由で親がいない子が通っているらしい。でも、自分の意思で一般校から転校してくる人もたまにいるらしいことを風の噂で聞いたことがある。でも、そんなことは舞にとってどうでもいい。これまでもこれからも関わることなんてないし、それに、通っているのは、どうせ命知らずの人しかいない…と思っていた。あの人と出会う前までは。
夏の公園は、珍しく誰もいなかった。だから、周りは蝉の声とたまに微かに吹く風の音だけだった。舞はしばらく涙がとまらなかった。何度か抑えようとしたけど蝉の声がいっそう心をかき乱した。
どれくらい泣いていたのだろう。暑さと泣いた時の疲れで頭がぼーっとし始めた時、ふと目の前に影が出来た。何事かと驚いて顔を上げると、背の高い高校生くらいの男性が立っていた。格好から軍学校の人だと一瞬で分かった。男性は舞の目の前に買ったばかりであろう水のペットボトルを差し出した。そして、淡々とした、でもどこか柔らかい雰囲気で口を開いた。
「突然、申し訳ございません。どこか体調が優れないように見受けられたので、声をかけてしまいました。良かったこれお飲みください。では」
「あ、ありがとうございます…」
舞はお礼を言おうと、立ちかけてまた涙がこぼれて慌てて手で顔を隠した。でも、相手はそれを見逃さなかったようだ。

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僕の創作っ子

気弱に笑う君 僕にとてもよく似ている
そりゃそうさ
君は「僕自身」を投影した者なんだから
君と一緒にいると とても心が落ち着くよ

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好きな子ほどいじめたくなる

強いあなたが好きだから

あなたならこの程度の逆境、越えてくれると信じているから

ボロボロになりながら戦い続けるあなたの輝きを、もっと私に見せておくれ。

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描く 書く

描けるようになりたい
誰かの心の中に
自分の世界を描けるような人に

なりたい


ぎゅいんと心を掴んで
ぱふぁんと舞わせて
しゅぴっと刺激を与えて
誰かに返してあげたい




書けるようになりたい
私の心の中を
言葉巧みに書けるような人に

なりたい

消した言葉の分も
遺せるような新しい言葉で
丁寧に 丁寧に
誰かに届けたい



描けるようになりたい

書けるようになりたい

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旋律 #3

 その日の迎え時間、事件が起きた。
 私は貴方を待って園庭のジャングルジムに登っていた。今もなお連絡を取り合っている美亜と、アイカちゃんも一緒だった。幼さというのは恐ろしく、数時間たてば二人ともあの険悪な雰囲気などすっかり忘れていた。
 「ねえ、お休みの日、何して遊んだの?」
美亜は私たちの顔を交互に見て尋ねた。
「美亜ちゃんは?」
「私はね、ゆみちゃんと縄跳びしたよ」
ゆみちゃんというのは彼女の妹だ。当たり障りのない答えだった。
 するとそれに対抗するように、アイカちゃんが口を開いた。
 彼女が自慢げに話したのは、なんとも優雅な休日だった。今思えばどう考えても見栄を張った嘘なのだけれど、滞りなく話すアイカちゃんを見ると、幼い私は信じ切ってしまった。
 海辺の別荘、ママの作るアップルパイ、白いリボンのついた麦わら帽子。
 どれも私には縁のないものだった。
 ふと、アイカちゃんを妬んでしまったのだ。
「私は、蓮くんと市民プールに行ったよ。スライダー楽しかったな。そのあとデパートに行って、蓮くんはジュースとぬいぐるみも買ってくれたんだ」
一息でしゃべってからアイカちゃんに目を向けると、起こっているはずなのに冷たい瞳が睨み返してきた。
 何も気づかない美亜が一人何か話していたが、少しも耳に入らなかった。アイカちゃんの刺すような視線を受けると、なぜか罪悪感に襲われた。
 逃げるようにあたりを見回す。門から入ってくるお母さんたちの中に、一人妙に派手な格好の、金色の頭が見えた。遠目でもわかった。
 「蓮くん!」
 アイカちゃんから逃れられたことにほっとして、思わず大きな声を出してしまった。みんなが一斉に貴方の方を向き、当然アイカちゃんも視線を動かした。
 貴方はまとわりついてくる園児をよけるように大股でゆっくりと近づいてくる。ジャングルジムの下まで来ると、のんびりと顔を上げた。

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どうかあなたに祝福を

断捨離中に見つけた 汚れた首飾り
見ると何故か 笑みがこぼれる
何故持っているのか、誰から貰ったかは分からない 曖昧な記憶の輪郭しか思い出せない
だからまだ 手放すわけにはいかないな

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ロータリーのビル風は
留まることを知らない街を象徴するようで
逆らうつもりもない僕に当たり続ける風
休むことは刃向かうことなのか?
風に乗れるならどんなに楽だろう
それだけ軽くなれたら
こんな悩みも一息で飛ばせるのに

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復讐代行〜第8話 遅刻〜

「優しいとしたら?」
「俺の体に対してだ!お前、俺の体で何をメソメソしてくれてるんだよ、なんか気持ち悪いわ!」
言っていて恥ずかしくなって思いっきり顔を背けた。
「あ…あんたの体が悪いんでしょ!私こんなんで泣くような女じゃないもん!」
「女って言うな!パニックになる!」
「私は女だもん!なんなら明日女の服きてやろうか!」
まるで友達かのようにテンポよく言い合いが始まってしまった。
「あぁ!もう!なんでお前とこんな楽しく話さなきゃいけないんだよ!俺とお前はあくまでも体を入れ替えた、というより体を入れ替えられただけなんだぞ!」
むず痒くなったのともしも他人に見られたらという不安から突っぱねたくて仕方なかった。
「…もしかして?意識しちゃってる?しちゃってるんだ!自分の体にー!」
「気色悪いこと言うなー!」
俺が言い返した瞬間にとてもタイミングよく予鈴が鳴った。
「まずい、授業遅れる!」
駆け出して1歩目で気がついた。
「お前、先帰れ…俺が遅れる分には目立つという目的のためにもなるが、お前が俺と会ってて遅れたなんて知れたら計画はオジャンだ」
「わかった!じゃ、お先に!」
足を止めることも無く“俺”は走っていった。
その抵抗の無さと俺の体が明らかな女の子走りしている姿に改めて現実を感じた。
「少しは遠慮しろよ」

to be continued…
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前回の話数間違ってましたね
失礼しました。

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真実

T「発表のテーマを食文化と歴史、どちらがいいかグループで決めてください。」

A「え〜歴史とかつまんなすぎない?」
(食文化やりたい)
B「だよね〜ちょっとね〜」
(お城とか興味あるんだよね……)
C「だね〜」
(歴史、めっちゃ好きなんだけどなぁ……)
D「じゃあ食文化にする?」
(どっちかっていうと歴史やりたかったけど……)
A「そうしよ〜」

誰か教えてください。
この世の中、何が本当ですか?

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気づかないでね、

気づかないでね
いつもよりハイテンションなのは
悲しいことがあったからだけど

気づかないでね
手が震えてるのは
不安と孤独の表れだけど

気づかないでね
早口になってるのは
そんな私を隠したいからだけど

気づかないでね
本当は、本当の本当は
気づいてほしくて堪らないのだけど