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LOST MEMORIES CⅡⅩⅧ

もう少し近づこうと、どちらともなく移動する。ふたりの身長では、見渡せる景色に限りがある。
「今、"しののめ"って言ってたよね。てきの名前かな……。」
少年が呟いた。
少女は少し驚く。
「え、てきなの?」
今度驚くのは少年の番だ。
「だって、しんでんをはかいすることは悪いことだ。わるいことをするのは悪いやつだ。」
しかし、少女にはどうしてもそうは思えなかった。
ひときわ甲高い声がする。聞いたことのないこの響きは、胸が締め付けられるほど悲しく、痛く突き刺さる。
敵という言葉で表すのにはどうしても違和感が生じる。
何か言わないと、そう思って口を開きかけたとき。文字では表しがたい、鈍い大きな音がした。それも、ふたりのすぐそばで。
それは、横の壁に何かが叩きつけられた音だ。
そのままどさっと床に落ちたそれは、
「お兄ちゃん!?」
白髪で碧眼の彼。

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