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Trans Far-East Travelogue㊷

兄貴達は無事に仲直りして手を繋ぎ、俺達を呼びに来て「調印式しようか」と耳打ちするので「白の二の舞は踏むなよ」と返して兄貴について行くと嫁は「白の二の舞ってどういうこと?」と訊いてきたので,「旧ソ連圏で一時期対立が深刻化した地域が多いことは知ってるか?」と返すと「ナゴルノ=カラバフ・アルツァフ紛争とかグルジア・ジョージア紛争のこと?」と返ってきたので「それも旧ソ連圏で起きた歴史の悲劇だけど,俺が言いたいのはロシアとウクライナの争い,いわゆるドンバス戦争のことさ」と返すと「一度ミンスク合意で停戦してたよね?あの後数年で反故にされて色々あったけど」と返ってきた。
そこで,「そのミンスクの街があるのは何ていう名前の国?」と訊き返すと「ベラルーシよね?ルーシは確かロシアって意味で…ベラは白ね。もしかして,白の二の舞って…」と返ってきたので「その通り。白の二の舞はミンスク合意の二の舞,つまり一度仲直りしたのにそのことを反故にしてもう一度いがみ合うことさ」と返すと兄貴が「ブラウヴォルフ,早く来い」と怒鳴るので「卒アルで俺のクラスが世界史選択でなぜかモンゴルの紙幣にあるチンギスハンの肖像画を差し替えられて俺がチンギスハン扱いになったからって,チンギスハンをはじめとするモンゴル遊牧民の伝説にある蒼い狼呼ばわりかよ…しかも,ドイツ語だし」と笑っていると兄貴が4人分冊子とペンを用意し出してそれぞれの冊子にサインした後お互いに冊子を回し合うので本当に国際会議のようになった。
「卒アルの寄せ書き交換会かよ!」と言う俺のツッコミの声と多摩川のせせらぎだけが田園調布の街に響いていた。

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