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寝落ちしたのだろうか。そろそろ自分も目を瞑ってみることにして、その前に、ふと、写真フォルダを開く。隠し撮った一枚きりの写真だ。辛うじてブレるのは避けられたが、正面からはさすがに撮れなかったのでアングルはあまり良くない。けれども____ああ、と思った。
こんな顔で彼女は自分と話しているのだ。
それだけで胸がきゅっと詰まった。

初めて電話越しに聞いた声が柔らかかった、それだけでこの人のこの声の瞬間、どんな顔をするのかを残しておきたいと思った。撮った写真をしつこく見返すのだろうと予感すらした。
本当に叶ってしまった。これ以上は叶えていけない気がした。だから一度ゴミ箱に移動した。目を瞑る。

目を瞑っていられたのは30秒ほどだった。がばと起き上がり、写真フォルダを再び開く。ゴミ箱から彼女の写真を復元した。

黒い目隠しを強引に巻くように、眠りに落ちることにした。

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