LOST MEMORIES ⅧⅩⅨ
「それは、ヴァンパイアの彼に気を付けろと言われた人物ですか?」
やはり質問には答えてくれない。
「そうだよ。」
「いつから一緒にいましたか?」
「……初日から。前の席って、言わなかったっけ?」
「そうでしたね。あと、鏑木先生には何と言われたんでしたっけ。」
「体調管理には気を付けろと……。」
なぜこんなことを聞くのだろう。
「お嬢さまはその彼についてどう思いますか?」
彼とは望のことでいいのだろうか。さらに、どう,とは。
「好い人だなと思うけれど……ねえ、どうしてこんな質問をするの?」
チャールズにまっすぐ見つめられる。もちろん、質問には答えない。
「明日もし体調が悪くなったら、すぐ鏑木先生へ伝えてください。いいですね?」
チャールズの目には、珍しく余裕の色がなかった。頷くしかない。チャールズも予言者になろうとしているのだろうか。
悩み事はと聞かれたから答えたのに、これでは解決になっていない。
「つまるとこ、私はどうしたらいいの?」