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シミ

こびりついた心のシミを
隠すのは簡単だけど
綺麗にするのは難しい
ならいっそ其の侭でも君らしいと思うのは
冬の乾いた心の所為

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ファヴァー魔法図書館 #31

『シュガァリィスノォ』

「ねぇねぇユリ、シュガァリィスノォって何?」
「うーん、私は言葉が苦手だからねぇ...自分で見た方が早いと思うな。今日がその日だから見に行くかい?」
魔法都市ミコトには1年に1度特別な日がある。
その名も『シュガァリィスノォ』、
甘い雪が降ってくる日である。
空までもが無機質のこの街には雪どころか天気の概念もない。
それ故この街の住人にとってこの日は1年の中で5本の指に入るくらい特別な日となる。

ユリと少女はコートに着替えて外に出た。
アパルトマンのドアを開けた瞬間、少女はたまらず「ほわぁぁぁぁ...」と声をあげた。
一面の銀世界、
魔法の光に照らされ輝く魔法都市ミコト、
街から聞こえてくるパレードの音色、
全てが少女にとって新鮮であった。
「甘いよ、食べてご覧。」
ユリは雪を食べながら少女に言った。
少女は恐る恐る雪を食べてみた。
「......甘い。」
ユリは微笑みながらそれを見ていた。

ユリは暫く雪を食べていた。
雪を食べ終わってからユリは少女に話しかけた。
「ねぇ、こっちにおいで。こっちに来て目を瞑って。」
少女は言う通りにユリの近くに立って目を瞑った。
少女は何が起こるのかどきどきしていた。
ユリは唇で少女の唇にそっと触れた。
刹那、眩い光が少女を包んだ。

「どうかな?少しは何か思い出した?」
少女は少し考えてこう言った。
「......私の名前は、宝条ガラシャ。それ以外は分かんない。」
ユリは少し目を細めて、
「じゃあこれからはガラシャくんと呼ばせてもらうよ、よろしくねガラシャ。」
少女は笑って「うん」と応えた。

To be continued #32 ↙
『ガラシャのたぶんはじめてのお使い』

P.S.首都圏で雪が降ったって言うニュースを見る度に雪国の人間としましては不思議な気分がします。
「なんでたった数cmの雪でここまでなるんだよ」って。
慣れてないし、スタットレスに履き替えたりもしないから仕方ないんですけどね。




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ふくろう

なぜあなたは創作するのですか?
前頭葉を活性化させるためだ。前頭葉を活性化させないと思考が後ろ向きになり、作動記憶が衰える。それに怒りっぽくなるしな……典型的な年寄りになってしまう。前頭葉を活性化させるには創作がいちばんだ。年寄りくさくなるのは嫌だからな。
あなたにとって創作とはなんですか?
それはいま説明しただろう。
ちょっとさっきの質問とは違うのですが。
同じような質問をするんじゃない。
すみません怒りました?
怒ってはいない。
いやあ、ちょっと怒ったでしょ?
怒ってないよ……年寄りだと思って馬鹿にしおって……長生きしてもいいことはないな……
あれ? なんか思考が後ろ向きになってません?
なってない。
頑固だなあ。そういうのスゲー年寄りくさいっすよ。
帰れ!
へへへ。
へへへって……すまんなつい怒鳴ってしまった。年はとりたくないもんだ。
年齢関係なしにしつこくされたらみんな怒りますよね。でもあなたは自己コントロール欲求が強いから怒りをあらわにするのは恥だと思っている。
よくわかるな。
そりゃそうでしょう。わたしはあなたの創作物ですから。あなたの一部です。
一部だが、君はわたしではない。
ほー。
感心するほどのことじゃない。
ふくろうの真似です。
……帰れ。
なんか最近楽しくないなー。
前頭葉を活性化させてないから、そのような発言が出る。
それは自分自身に言ってるんですか?
まあそうだ。
前頭葉教でも始めたらどうですか?
そういうのは得意じゃないんだ……そろそろ飯にしよう。……わたしは孤独だ……孤独な人間が狂気に陥らないために創作はある。わたしがものを書くのは、わたしが孤独な人間だからだ。
はあ……ワインもう少し、いただいてよろしいですか?
勝手に注いで飲んでくれ。美味いだろう。産地は知らんが年代ものだ。
ほー。
またふくろうの真似か。
いえ、本当にふくろうになってしまいました。