遥かなる過去から
過ぎ行く今から
果てない未来から
星に向けて祈る
願いは ひとつ
貴女が選んだカードはこれですか?
そうです‼︎
貴女が選んだカードはこれですか?
違います。
貴女が選んだカードはこれですか?
あの〜…。
貴女が選んだカードは
すみません。
貴女が選んだ
話を聞いてくれませんか?
貴女が
あんまり人を疑うものじゃありませんよ。
わかりました。
貴女が選んだカードはこれですね。
違います。
独特の声の出し方が、いつもあなたであることの確信を持たせる。すこし鼻にかかった、語尾を抜くような話し方が心をくすぐる。
そっと囁いて、耳元で。もっとあなたを感じていたい。
娘が男を連れてきた。驚いた。娘は内向的なおたくタイプだったからだ。SNSで知り合ったのかと思ったが、娘から居酒屋の店員である男に声をかけたそうだ。娘が酒をたしなむことも知らなかった。驚くことばかりだった。いちばん驚いたのは男がうさぎ族だったことだ。うさぎ族は挑発と自慢話以外に他者とコミュニケーションする術がない幼稚な種族であるという記述を文献で目にしていたが、まったくそんなことはなく、むしろ好青年だった。
「民族学者だそうですね」
「うん?……ああそうだ」
「ぼくの村に今度きませんか? うさぎ族に興味は?」
「まあ、あるかな」
「村祭りが近いんです。よろしかったら儀式に参加しませんか」
「そうだな」
何事も経験。ペーパードライバーじゃ意味がない。文献をあさるより参加したほうがいいだろう。
「行くよ」
で、この後適当なエピソードをはさんでから、期待どおりの怖い展開が待っているのだが、あまりにも型にはまりすぎているため割愛することにする。