しがみつきは離し、離しはやっぱりしがみつき思いだし。今が楽しく、少し不安で。慣れているちょっと前に戻りたくなる。思いでとかってそうゆうものなんだろうな。そういうものをもってるのはある意味幸せなんだろうな。
だるだるのダルメシアン。
ダルメシアンはだるかったの?
ダルメシアンはだるかったんだよ。
どうして?
ペットだったから。
ダルメシアンはペットだったの?
ペットペットサロペット。
なにそれ。
知らない。
*
ダルメシアンはペットであることに飽いた。
だから家を出ることにした。
野で暮らすのだ。
野で暮らすことを考えると不安だった。
不安なのでペットの先輩であるスコテッシュフォールドの意見をきいてみた。
「暗い展望しか持てない者はいまある材料、目先の材料だけでしか物事を判断できない小者なのだ。先のことはわからないのが当たり前。どうせわからないのだからなにもしないより行動を選ぶべきだ」
「わからないから行動しない。じっとしているというのが自然界の法則では?」
「たしかに。いま気づいたよ。だがスコットランドでは」
「スコットランド行ったことあるのかい?」
「ないけど……あのな、月に行ったことなくても月にはクレーターがあるなんて話しするだろ。それといっしょだ」
「なるほど。相変わらず理屈っぽいね」
「お互いさまだ」
「ぼくらは発想が似ている。おんなじ。おんなじだ」
「似てるってことは違うってことだ」
「名言がぽんぽん出てくる」
「いまのは昨日見たドラマのセリフだけどな」
「そうか」
「そうだ」
「なんか楽しいな」
「そうだな」
ダルメシアンはやはりペットであり続けることにした。そんで、かぷかぷ笑った。
するりと何かが落ちて行くから反射的に手を出して掴んだ。指の間をはらりと逃げる僕の影だった。