かつて君はそこにいた
小さなアパートのベランダで
細く煙を吹きながら
驚くほど静かに口笛を鳴らした
あの日と同じような
うだるような夜の中で
同じ煙が燻った気がして
音も立てず窓を引いた
夜空は青く
雲は青白く
街灯に照らされて光っていた
眩しそうに光っていた
ああ、
夏の風だ
どうか灯りを消してくれ
その星に点る命さえも
全て失った暗がりで
君の煙草が光るのを見たい
どうか音を立てないでくれ
その脈打つ拍動さえも
やがて息絶えるその刹那に
君の口笛が鳴るのを聞きたい
青い幻想は終わって
僕はグラスを流しに置いた
賑やかな夜はまた続く
このくだらない命みたいに続く
だから夏なんだよな
君の言葉を思い出して泣いた
今日は部活に行くんだ
ちょっと空気感の違う
寂しげな感じの学校に
午前中だけ顔を出すよ
みんなの荷物が無くて
がらんと広い教室と、
しんと静まり返る廊下
君の気配も消えている
多分虚しくなるだろな
たった一日前、ここで
君が笑ってたんだって
静かな教室に思いそう
学校が好きと言うより
私が好きだったのは、
君がいる空間だった。
その事に今更気づいた
今日私が向かうのは、
君のいない寂しい学校
午前中だけだけど、私
帰りたくならないでね