「まぁ良いわ、助けて貰ったんだし」
にしても、とグレートヒェンはナツィが持つ大鎌に目をやる。
「蝶が象られた鎌、ね…」
やっぱり、”黒い蝶”と呼ばれるだけあるわ、とグレートヒェンは呟く。
それを聞いたナツィの手から大鎌が消えた。
「なぁに、隠さなくたって良いのよ」
お前の武器なのだから、とグレートヒェンは微笑む。
「…とりあえず、帰るわよ」
もう寒いでしょう、と言って、グレートヒェンは元来た方へ向かって歩き出す。
少し経ってから、ナツィは黙ってグレートヒェンの後に続いた。
「…という訳で件の精霊を見つけられたんだけど」
「逃した、と…」
まぁ仕方ないのよ、とグレートヒェンは食卓の上にティーカップを置く。
「もう辺りは暗くなり始めていたし、第一こちらもまだ準備が整っていなかった」
下手に抵抗するよりはマシだと思うのだけど、とグレートヒェンは真顔で言った。
…はぁ、と依頼主である屋敷の主人は答える。
寒いとあなたに会いたくなるのは、私だけですか。
きっと私だけだから、
すれ違うだけで充分なのです。
私の心を、あっためて。
人懐こい猫に逢う
みんなに人気の猫に逢う
傷を誰もきにしない
褒めるってなんだっけ
傷に気付ける愛で居たい
隣の芝は青いんだから信じちゃいない
愛に縋れる猫であろうか