翌朝、日がそれなりに高く昇った頃。
夜の間に雪が降り積もった森の中に、2つの人影があった。
1つは何かが入った袋を持つ赤い髪の少女。
もう1つは外套に付いた頭巾を目深に被った、少年とも少女とも言えない黒い怪物。
2人は無言で足跡一つない雪原を踏み締めて行った。
「…」
ふと、赤い髪の少女ことグレートヒェンが、木の根元で足を止める。
大木を少し見上げ周囲も見回した後、グレートヒェンは手に持っている皮袋から液体の入った瓶を出した。
ぽん、と音を立ててコルク栓を抜くと、グレートヒェンはそれをほら、とナツィに投げ渡した。
ナツィは黙ってそれを受け取る。
さらにグレートヒェンは皮袋から、先に布がきつく巻き付けてある木の棒を取り出した。
そしてそれを瓶の中の液体に浸した。
棒の先に液体を染み込ませると、グレートヒェンはそれで雪原に何やら幾何学模様を描き出した。
曲線や直線、そして文字の様なものを複雑に組み合わせた大きな文様を、グレートヒェンはすらすらと描き出していく。
一通り描き終えると、グレートヒェンは棒を近くの雪原に突き立てた。
一息ついてから、今度は皮袋から何か黒くて小さい石ころの様なものを取り出す。
グレートヒェンはそれを自らが描いたものの上に撒いていった。
クリスチャンとして育ってきた僕
クリスマスは、「イエス様のお誕生日」だと
そう言われて大きくなった
でも今日、街に賑わいをもたらすのは、
いちゃいちゃする恋人たちの笑い声
僕だって、好きなやつと一緒にいたいのに
クリスマスはいつだって、
家族と過ごす苦痛な日。