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わた詞

人生はつまんねぇけど、人間は面白いんだよ

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黄昏時の怪異 その①

学校からの帰り、あの男性のアパートに立ち寄り、宮城さんはいないかと探してみた。宮城さんは今日もあの部屋の前に立っていた。
「あ、どうも宮嵜さん」
「どうも宮城さん」
この人はどうも、毎度私が挨拶する前に私の気配に気づいているらしい。
「ああ、そういえば宮城さん」
「はいはい何でしょう」
「昨日の夜中……いや、1時くらいだから今日なのか。宮城さんの姿のオバケみたいなものに会ったんですよ」
「何それ怖い。私は良い子なので、毎日夜11時には寝てますよ。昨日も例外ではありません」
「じゃあ、あれはマジでオバケだったのか……田んぼに引きずり込まれそうになったもの」
「生きてて良かったですね……。私もお友達には生きていてほしいです」
恐怖体験はあったけれど、そんなことより彼女からはっきりと「お友達」と言ってもらえたのが嬉しかった。これなら、たまにオバケと遭遇するのも悪くないと考えてしまうのは、流石に危険すぎるか。考え直せ、私。
「……なんでお前らは、何をするでも無く扉の前に屯してるんだ」
あの男性が部屋から出てきて、私たちと鉢合わせざまそう言ってきた。
「ちょうどいい場所で出会ったので、立ち話してました」
宮城さんが答える。
「そうか。まあ好きにしろ」
「はいはいお邪魔します」
2人の後に続いて、私も部屋に入る。部屋の中は相変わらず廃墟にしか見えなかったけれど、今日は知らない顔がいた。私や宮城さんより少し年上くらいの男の人。宮城さんが話しに行っているってことは、話しても大丈夫な人なんだろう。
「宮城さん、その人は?」
宮城さんに近付いて行って、そう尋ねる。
「え、そんな名前だったの?」
青年がびっくりしたように反応した。
「あ、はい。申し遅れてましたね。ミヤシロといいます」
「ああ、うん……」
「そうそう、この人が誰かでしたっけ」
突然、宮城さんの会話の対象が青年から私に移った。
「あ、はい」
「えっと、この人は……茨城さん?」
「千葉です」
青年、千葉さんは食い気味に訂正してきた。
「そうそう千葉さん。昔から千葉と茨城ってごっちゃになっちゃうんですよね」
「地名じゃなくて人名なんだよなぁ……」

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忠烈のグランギニョル

悲しい話をしましょうか
『ある国に孤独な王に仕えた忠臣がおりました
その名はオリヴィア 小説家でもありました
美しい花が咲き誇る頃
オリヴィアは余命いくばくもない王の話し相手として選ばれました
最初は「選ばれたくなどなかった」と言っていたオリヴィアでしたが だんだん心を開くようになりました
しばらくして王の容態は悪化していき
冷たい風が吹き荒れる日に亡くなりました
亡くなった王の表情は苦しげでした
オリヴィアは「笑って、ください」と泣きながら王の枕元で命を絶ちましたとさ』