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Trans Far East Travelogue75

乗船時間になり,今回乗る船を見た嫁は「豪華客船ね。でも,海外行くのにパスポートチェックしないの?」と訊いてくるのだが,「俺はあくまでも鉄道を活用した観光PRに特化した部署で働いているのであって船の担当ではないのでよく分からないけど,博多でやるんじゃ無いか?」と返して乗り込むと新潟支社所属で航海士の資格を持った同期が俺の肩に手を回して「おいおい…奥さんは知らないにしても、お前は俺達のグループ会社に勤務してるんだから知らなくてどうするんだよ。ウチのグループ会社の船は全て日本だろ」と言うので嫁は疑問符を浮かべるが、俺は船に関する国際法を思い出して「そうか!船籍,つまり人に国籍があるように船にも国籍はあるけど,この船は日本の船だから法的にもここは日本なんだよ。だから,博多までは国内線扱い」と嫁に伝えると今度はソウルの同期が「荷物置いたら、会社の宣伝動画と,ライブ配信撮るから屋上デッキに来てくれ」と告げるので,了解とだけ返して頷き,嫁が「私も出演して良い?」と訊くので我が社は『社員は皆家族』というコンセプトで,社員が結婚したらそのパートナーも1人の社員とみなす方針の為許可は下りると思っていたが,案の定簡単にOKが出た。
ところが、今回の撮影は韓国にいくつかある支社群の合同撮影で韓国向けの放送らしく、台本は勿論撮影は韓国語オンリーになりそうだ。
そこで、俺がその場で内容を全て和訳して嫁に伝え,撮影班には嫁が韓国語を喋れない関係から通訳を挟んだ方が良いので、役者としての出番を減らして嫁が出るパートの通訳として参加するのはどうかと提案すると,通訳として参加するのは認めるが,役者の数に限りがあるし,今回は世界中の支社から人が来てるので韓国語を解する人が俺と同期の2人以外は全員撮影する側にまわっている関係から俺の出番を減らすことは出来ず,増やす一方になるという返事が来た。
仕方ないので俺が1人二役で撮影に参加する羽目になり,撮影が終わった頃には出航するどころか横浜みなとみらいの夜景が真横に来ていて,ベイスターズがサヨナラ勝ちしたのか海からでもハッキリ見えるほどの高さの花火が横浜スタジアムの辺りから上がり、浦賀水道に出る頃には日付が変わった。
そして,部屋に戻る途中で操縦士も交代の時間になったらしく,同期の航海士曰く博多入港は日付が変わった翌日の午前5時だそうだ。

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きゅう

急、会いたいの衝動に駆られて
糾、口からこぼれる思いを届けたくて
窮、苦しくなるようなごちゃ混ぜの気持ち丸ごと
吸、ぜーんぶぐっと飲み干して
九、数えて会いに行く