あの人の瞳は、毒だね。
見た途端劇薬が目から流れ込んで
喉を伝って心臓へ流れ込む。
毒、といってもすぐ死ぬ訳じゃない。
心臓で鳴りを潜めてるんだ。
そう、君の心臓に埋め込まれた銀の輝きこそ
君を蝕む猛毒。
毒は、心臓を刺す。
あの瞳をトリガーとして。
何遍も何遍も突き刺すような痛み。
鮮血の伴わない、されど新鮮な、
蕾の綻ぶような、否、綻びそうな
もどかしさ。
痛みは、ときに快楽と数えられる。
あの瞳に出会うとき、君の心臓は毒に飲まれる。
じわりじわりとにじり寄るようなスピードで。
そして痛まない心臓を自覚したならば
その毒を、君は更に求めるかもしれない。
あゝそれこそが、かの毒の術。
嵌ってはいけない。
といったところで聞く耳はもう駄目にされている。
万事休す。
鈍色の心臓は、重いぞ。
痛みでさえ、刺すのではない、もはや鈍痛と成り果てる。