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見える人々その③

そういえば、私にはこの部屋がずたぼろの廃墟に見えているけれど、他の人にはどう見えているんだろうか。
「宮城さん宮城さん」
「何でしょう」
「この部屋の中、どんな風に見えてます?」
そう訊くと、宮城さんは少し考えてから、こう言ってきた。
「……そうですね。その場から前に2歩、左に3歩、少し大股で歩いてください」
何が言いたいのか分からないが、とりあえず言う通りにしてみる。
「言う通りの場所に来たけれど……?」
「はい。私の眼には今、宮嵜さんがローテーブルと重なって見えてます」
「……? それはどういう……」
「私の能力は、所謂『霊感』なんです。もっと正確に言うと、『見えてはいけないものが見えてしまう』、そういう能力なんです。まあ、家具の霊というべきか、部屋の記憶というべきか、そういうものが見えてるんでしょう」
「…………え、それ、私大丈夫?」
「今大丈夫なら大丈夫なんじゃ無いんですか? ヤバいものだろうと、そういうのは大体、認識できているかが問題なんですから」
「あっはい」
あと、今話を聞けるのはあの男性とトモちゃんくらいだけど、トモちゃんの周りでは相変わらず変な腕がうぞうぞしていて近付きたくない。
「あー、トモちゃんだぁー」
昨日のあの少女が突然部屋に入ってきた。トモちゃんに体当たりするように駆け寄り、また高い高いされている。
選択肢は増えたものの、実質増えていないので仕方なく、あの男性に訊こうとしてみると、いつの間にか部屋の壁際に誰かが立っているのが目に入った。せっかくだし、家主じゃないあの人に訊いてみることにしよう。
「あの、すみま」
「ストップ」
宮城さんに強く肩を掴まれ、思わず口を噤む。咄嗟に動けないでいる私の横を通り過ぎ、宮城さんはその人の目の前で振り返り、壁に寄りかかった。宮城さんとその人の身体が重なるのを見て、ようやく理解できた。
「あー……」
宮城さんはサムズアップをこちらに示し、私の横に戻ってきた。
「どうですか?」
宮城さんが訊いてくる。多分奴の事だろう。
「さあ……もういませんね」
「そうでしたか。それなら良かったです。私に見えるってことは、そこまで良いものじゃ無かったんでしょうから」

  • 能力モノの小説を書きたい欲が高まって来たので
  • 宮城さん:見えてはいけないものが見える
  • 宮嵜さんの能力もそっち系のやつ
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