「ワタシはカオル。ワタシの可愛い青葉の愛刀だよ」
少女は天狗を一度大きく振り上げて地面に叩きつけてから、右腕で青葉を抱き締め答えた。
「愛刀…………って、〈薫風〉⁉ 付喪神⁉」
「さあ、そうなんじゃないかな? そんなことどうでも良いよ、ワタシの可愛い青葉。……ああそうだ。そこの妖怪」
青葉に頬ずりしながら、カオルは目だけを足元に倒れる天狗に向けた。
「何かは知らないけど……お前の火の玉のお陰で身体が作れた。それだけは感謝する。それから」
言いながら、カオルは自然な動作で刀を握っていた青葉の指を1本1本、右手で丁寧にはがし、落ちてきた〈薫風〉を機械人形のそれのような外見の左手で受け止めた。
「貴様、どんな雑魚種族か知らないが、よくもワタシの可愛い青葉を傷つけようなんて馬鹿をしてくれたな?」
「なっ……雑魚だと……? ボクは『天狗』だぞ!」
天狗は叫ぶが、カオルの注意は既に天狗から逸れ、青葉を撫で繰り回すのに夢中になっている。
(クソ、コイツ……、突然出てきておいて、このボクを舐め腐っていやがる……!)
再び天狗火を生成し、青葉達に向けて転がす。しかしカオルが〈薫風〉を火球に向けると、その刃先に吸い込まれるようにして消滅してしまった。
「……霊障、呪詛、妖術。特に人外の力で青葉を傷つけようだなんて、考えないでほしいね。やるならワタシを殺してからだよ。無理だろうけど。ねー、ワタシの可愛い青葉?」
「え、うん……あと離して……」