「お疲れ、“メリーさん”。一旦仕切り直そうか」
清嘉は召喚体に駆け寄り、能力を一度解除した。ばらばらになった召喚体は煙のように消失し、再発動によって無傷の“メリーさん”が再び現れる。
『わたしメリーさん、からだ直ったの~』
「“メリーさん”、今、ターゲットはどこにいる?」
『今ね~……3本となりのほそい道にいるの』
「了解。ありがとうね」
『ん~』
召喚体は清嘉に頭を撫でられ、満足げに喉をころころと鳴らした。
「……それで? どうやってマナミちゃんに接近するんですか?」
“メリーさん”を抱き上げながら、燿子が尋ねる。
「まぁ……何とかするしか無いよなぁ……野火止さん、占いした時の紙ってある?」
「ありますよー、ほい」
燿子がポケットから引っ張り出した、タイプライターで出力された用紙を差し出す。折り畳まれたそれを開き、清嘉は目当ての事項に目を留める。
「……よし、備え万全」
「何見てたんですか?」
「スマホの番号。一応ね」
「“メリーさん”といえば電話ですもんねぇ」
電話帳にその番号を保存し、清嘉は路地から顔を出した。
「そんじゃ……行くかぁ……」
「すんなり仲良くなれると良いですねー」
「だと良いんだけどねぇ……」
清嘉が先を歩き、その後ろに“メリーさん”を抱えた燿子が続く。二人が薄暗い路地の奥を覗き込むと、物陰に人影が動いているのが目に入った。
人影は足元に転がる塊を、苛立たし気な様子で繰り返し蹴りつけている。否、それはただの塊ではなかった。生きた人間が身を守ろうと身体を丸めて、暴行を受けているのだ。
「…………どっちですかね?」
「多分…………加害者側? 蹴られてるの男子っぽいし……」
「仲良くなれそうですかね?」
「厳しい……かなぁ……」
「止めた方が、良いですよね?」
「喧嘩とか怖えんだけど……」
「超能力者が何をビビることがありますか。ほら行きますよー」
「はいはい」
2人が近付く足音に、暴力を振るっていた人影は動きを止めた。その隙に、足元の被害者は這いずるようにして逃げ出す。
二人は、学園から徒歩5分ほどにある最寄りの地下鉄駅で電車に乗り込み、5駅先で下車する。
「この辺にいるっぽいよ」
「分かるんですね。便利な『略霊』してますねぇ」
「どうも。そんじゃ、案内するよ」
「頼みますよセンパイ。ここじゃタイプライター引っ張り出すスペースも二人きりになれる空間も無いんですから。私は無能なものだと思ってください」
駅を出て、清嘉の先導で二人は追跡を続ける。やがて二人は雑居ビルの隙間の細い抜け道に潜り込み、薄暗く人気のない裏路地に出た。
「あ、いた……“メリーさん”!?」
清嘉が慌てて駆け寄ると、召喚体は、首と腰で切断されていた。完全に分断された脚だけが歩いており、胴体部は分離した下半身のスカートの裾と、頭に被ったボンネットを小さな掌で掴み、3つの部位が辛うじて生き別れにならないように繋ぎ止めていたのだった。
召喚体は清嘉の悲鳴じみた呼び声に足を止め、首を転がすようにして振り返る。
『あっ所有者ぁ~。メリーさん斬られたの~』
その声色は凄惨な現状に反して、あまりにも気の抜けたものだった。
旅に出る
眠ったまま
旅に出る
座ったまま
イン・マイ・インスピレーション
イン・マイ・インスピレーション
絵が描ける人間になりたかった
私には 足りない
寂しさが愛情に飢える瞬間、狂暴に成り果てる人、
ハグしてあげよう、今。
「世の中知らないことだらけですねぇ……えっと、略霊能力の効果は……あぁー!」
「ん、どうした?」
「だからあの写真の顔、全然印象に残らないんだぁ! 目ぇ外した瞬間に何か記憶が朧ろげになると思ってたんですよねぇ~」
燿子の言葉に、清嘉も出力された記述を確認する。
「……はー、なるほどなぁ……むしろよく写真残せたよなぁ。っつーか写真でも効果発揮すんのかすげぇ能力だな……」
「わー、異聞能力もシンプルに攻撃力高いですねー。ま、情報はゲットできたんで。作戦立てていきましょっか」
燿子はタイプライターから手を離し、自身の略霊能力を終了させた。
「それで、どうしますかセンパイ? 現状唯一の手掛かりなこの写真、目を離した瞬間証拠能力失いますよ。私の能力で何とかします? あのタイプライター、キーすっごい重いからあんま使いたくないんですけど……センパイが言うなら無理しますよ?」
(なら別の道具使えば良いのに……)
清嘉はその指摘を飲み込んで答えた。
「いや、写真1枚あれば、位置掴むだけなら俺ができるよ」
「へぇ~、そういやセンパイの能力知らないですねぇ。何なんです?」
「あぁ、【メリーさん】だよ。おいで、“メリーさん”」
清嘉が虚空に呼びかけると、何も無かったはずの空間に突如、背丈60㎝程度の赤と黒を基調としたロリータ衣装の少女が現れた。
「わぁ可愛い~。ほっぺたモチモチしてる~」
燿子はその召喚体を抱き上げ、両頬をもちもちと弄り始めた。
「やめたげて……“メリーさん”、この写真の子のところに行ってくれるか?」
召喚体は清嘉を見上げて頷くと、燿子の腕の中から一瞬で姿を消した。
「あー……もっと愛でたかったです……」
「後でね? あと、もう見つけたよ」
「はっや。足立センパイってもしかして天才?」
「“メリーさん”がすごいんだよ……あ」
「どしたの」
「いや……ターゲットが移動してるっぽい……とりあえず追いかけようか」
「りょーかぃ」
二人は空き教室の状態を入室前と同等に片付けてから、学校を後にした。
電車に揺られて 恋心に揺られて
名前で呼んでくれる日を待ってる
見慣れた風景に溶けて 君の心に溶けて
残り一口のアイスを分けあう
絵本で読んだ 架空の物語
魔法で好きって伝えられたら
いつかいつか枯れることのない
秘密の花を咲かせる ほら
おそろいのキーホルダー
色違いのシャーペン
「偶然だね」 言われても
実は合わせにいってる
一瞬の流星群に 思いを乗せて
灯した光の矢 狙う先は君なんだ
ドラマで見てた 架空の物語
隣で一緒に手を繋げたら
いつかいつか数えきれない思い出の
宝箱の鍵にしてよ ねぇ
消える 消える 君を好きなままで
見える 見える 切られた赤い糸
٠٠٠
٠٠٠
誰も知らない 架空の物語
一人一人が 思い描いて
握りしめたペンで綴った
あ し た の き み へ
タイプライターのキーボードに両手の十指を置き、燿子は一度瞑目して息を吐き出し、再び目を開く。
「それじゃ、始めるんで……」
「うん」
「…………」
「…………」
「何してるんですか先輩。早く手ぇ出してください。10円玉には参加者全員が指を置かなきゃならないんですよ? 今回はタイプライターですけど……ほら、早く私の手に」
「え、お、おう」
清嘉は燿子の背後に回り、彼女の両手に自身のものを重ねた。
「離さないでくださいね? 危ないんで」
「りょ、了解」
「それじゃぁ……『コックリさんコックリさん、今回のターゲットである娘のプロフィールを教えてください』」
数秒の沈黙の後、蝋燭の火が小さく揺れ、燿子の十指がゆっくりと打鍵を始めた。
その運指は少しずつ速度を増していき、流れるように数行の文章を打ち出してから唐突に停止した。
「……出力完了っぽいですね」
「これ何語だ……? n,a,m,a,e……あ、これローマ字だ読みにくっ!」
「しょうがないですよぅ、ブツが英語のやつなんですから」
「うえー……これ素直に10円玉使ってた方が楽だったんじゃ……」
「文字として残ってくれた方がじっくり読めますからねぇ。どれどれ……名前はキヨセ・マナミちゃん。高校1年生の女の子。……ふーん、センパイ、この『よくいる場所』のこの地名ってどこでしょ? 私田舎者なんで、こっちの土地勘とか無いですよ」
「んー、電車で15分くらいかな」
「はぇー。んじゃ、センパイも何か質問してくださいよ」
「え、なんで?」
「当然でしょう。私はもう1回質問しちゃったんですから、次はセンパイの番ですよ。何か適当に質問してください。『コックリさん、コックリさん』って頭につけるんですよ」
「おう、えっと、じゃあ……あー……こ、『コックリさんコックリさん、キヨセさんの能力について教えてください』」
再び燿子の指がキーボード上を動く。
「どれどれ……じゃっく、ざ……」
「じょせ…………『ジャック・ザ・リッパー女性説』……? なんで『切り裂きジャック』じゃなく『女性説』……?」
「僕は、きみを、止めに来た」
「そんな、どうして」
ヴァンピレスはつい後ずさる。
「わらわは、別に、悪い事なんて、そんな」
「君は、たくさんの人に迷惑をかけた」
ヴァンピレスの言葉を遮るように、逢賀さんは続ける。
その瞳は鮮やかな鮮紅色に輝いていた。
「たくさんの人の”大切なもの”を奪い、”大切な絆”を、壊した」
その”報い”は、必ず受けなければならない…と逢賀さんことヴァンパイアはヴァンピレスに近付く。
ヴァンピレスはおびえたように後退するが、その途中でつまずき尻もちをついた。
「これ以上、きみに誰かの”大切”を壊させないために、きみ自身の手を、これ以上汚させないために」
僕はきみを、止める‼とヴァンパイアは右手に銀色の長剣を生成し、ヴァンピレスに向かって走り出す。
ヴァンピレスは後ずさろうとするが、身体が思うように動かないのか地面の上で身じろぎするだけだった。
このままでは、ヴァンピレスの異能力は、奪われる。
…つまり、記憶が奪われるという事。
ただでさえ寂しい思いをし続けてきた彼女が、記憶を失ったらどうなるだろう。
ただでさえ、1人で物憂げな表情をしていたというのに…
2人が校長室を出て最初に向かったのは、空き教室の一つだった。
「あーだちセンパーイ、あの写真もっかい見せてくださいよー」
「ん」
道中、清嘉に強請った燿子は差し出された写真を奪うように受け取ると、まじまじと眺めながら口を開く。
「……性格キツそうな面してますねー」
「そうかぁ?」
写真を返してもらい、清嘉も写真を再確認する。角度と被写体の様子からして隠し撮りされたものであろうそれに写る少女は、確かに敵対心を剥き出しにしたような鋭い目つきをしていた。
「……そうかも……?」
「もっかい写真見せてくださーい」
「また?」
「良いじゃないですかぁ」
「はいはい……」
やり取りをしながら、2人は校舎端の空き教室に入った。燿子がそのまま奥に進んで窓の鍵とカーテンを閉め切り、清嘉は入り口扉を施錠する。
「これで良いのか?」
「はいはいありがとございますセンパイ。んじゃ、こっち来てください」
「おう。で、何すんの?」
「決まってるじゃないですかー、情報収集ですよぅ」
そう言って燿子がリュックサックから取り出したのは、一台の手動式タイプライターだった。
「……パソコンですら無く?」
「やだなぁ、ググって出るものじゃないんですから……私の『能力』を使うんですよ」
「……タイプライターを使う怪異なんていたっけ……」
「元ネタだとちょっぴり違いますけどねー。ま、うちの子は結構融通利かせてくれるんで……」
燿子は使われていない机にタイプライターを起き、その奥に蝋燭を1本立てて火をつけた。
「さ、始めますよセンパイ。協力者いないとできないんですから」
「な、何を?」
「決まってるでしょ? “コックリさん”ですよ」
舞台は大学野球をはじめ,学生野球の聖地,東京・神宮球場
ヤクルトスワローズの若い右のエース奥川が,左のエースの山野が、抑えのキハダが,東京の野球ファンにとっての憧れの舞台,夢の国と呼んでも差し支えないスタジアムで,屋根のない東京の野球場で吠える
東京生まれで日本初のプロ野球チーム,巨人ことジャイアンツの若手の西舘も、右の山﨑も,助っ人外国人のマルティネスも、多くの野球少年が憧れるこのスタジアムでまた吠える
男と男の一騎打ち
この東京で生まれ育った少年が憧れた,狭くてホームランの沢山出る神宮球場で応援するジャイアンツが勝つ場面
昨年までは当たり前のような光景だったが…
今年は,それぞれのチームでホームランバッターが1人ずつ抜けて,監督も代わって逆にジャイアンツに競り勝つスワローズという構図が見受けられる
聖地でプレーする矜持と,伝統と誇りを胸にプレーするチームの意地がぶつかり合う
両チームとも東京のチームだから,ユニフォームの胸の文字はそれぞれのチーム名ではなく「TOKYO 」
今年の東京シリーズは,優勝候補の三つ巴のうちの二者同士で競い合うことになる
勝つのはどちらか
それぞれ三チームと試合をする9連戦の第二試合が今年も始まる
「彼女は“八王子昆明学園”中等部から来てくださった……せっかくだから自己紹介してもらえるかな?」
「はーい」
校長の言葉に、少女は気の抜けた声で答えて立ち上がった。
「んぇー、初めましてー。“ダイサン”の中学2年生、野火止燿子でーすよろしくお願いしゃっす」
「あ、ども。俺は足立清嘉」
「足立センパイね、りょーかぃ」
燿子は軽く会釈を返し、清嘉の隣まで移動してきて校長のデスクに向き直った。
「さて……メンバーが揃ったところで、今回の事案について説明させてもらおう」
校長がデスクの上に滑らせるように置いた1枚のポラロイド写真を、2人は並んで覗き込む。そこに写っていたのは、清嘉と同年代程度であろう少女だった。
「その子が、今回のターゲットだ」
「……普通に人間っすね?」
「何、“語部”退治?」
「『退治』、という言い方は少し語弊があるな。強いていえば……『監視』といったところだろうか。彼女を発見し、動向を観察してほしい。そして、能力による危険行動を取っているようであれば、捕獲してほしい」
「捕獲て、そんな野生動物みたいな……」
「えーなんでですかー。このお姉さんどこの学校の人? “ダイニ”? 埼玉? そこに任せちゃえば良いのに……」
燿子の言葉に、校長はこめかみを押さえて溜め息を吐いた。
「彼女は養成校への入学を固辞したのだよ。そのせいで、野放しのような状態になっていてね……能力も厄介だから、できれば目の届く範囲に置いておきたいのだが……」
(養成校に編入するのって断れたんだ……)
清嘉はその言葉を飲み込んで、再び写真を確認する。
「まぁとにかく、この人見つけて勧誘しちゃえばいい感じですか?」
「それができれば一番いいが、具体的な方針は君たちに一任するよ。大人が出向くのが一番良いのだろうが……不用意に近づいて怪しまれても困るからな。初めての任務で不慣れだろうが、頑張ってほしい」
「「了解」」
燿子は一度ソファの方へ戻り、足元に置いていたリュックサックを拾って戻ってくる。
「んじゃ、行きましょセンパイ」
「ああ、うん」
Glory fades in the wake of a momentary catastrophe. Yet it is a fact that glory once existed there. So why do people insist on viewing things through the lens of negative outcomes?Verloren
What do you see?
The Weimar Republic symbolized freedom and influenced legal systems around the world.
But how is Deutschland perceived now, following that sudden shift toward A?
『生徒の呼び出しです。1年4組、足立清嘉さん。至急、校長室までお越しください』
放送スピーカーから流れた指示を、清嘉は忠実に実行した。放課後、未だ往来の激しい時間帯の廊下をやや急ぎ足で進み、校長室の扉をノックする。
「失礼しまーす、1年4組足立でーす」
『どうぞ』
引き戸を開けると、高等部校長は自席に着いて入室してきた清嘉を射貫くような眼で見返していた。
「それで、呼ばれたんで来たんすけど……」
「ああ、すまないね。この後部活や用事は無かったかな?」
「それは大丈夫ですけど……俺何かしちゃいましたっけ」
「いやいや、お説教の類じゃないんだよ。ただ、頼みごとがあってね」
「頼み?」
「ああ。“実習”に出てくれる気は無いかい?」
依頼実践演習――通称“実習”。高等部以上の生徒が受注可能な、人外存在や“語部”への対処依頼だ。『基本的には』、提示された依頼の中から希望者が選択して受注する段取りとなっている。
「やりますけど、実践演習って指名制あったんですね」
清嘉の言葉に、校長は渋い顔をしてみせた。
「基本的には生徒の自主性を尊重したいところなのだがねぇ……本事案に関してだけは、君たちが適任だと判断したのだよ」
「はぁ……え、“たち”? 俺以外に誰かいるんです?」
校長が応接スペースを指差す。清嘉が釣られてそちらに目をやると、3人掛けのソファの左隅に、セーラー服姿の小柄な少女が掛けていた。
(セーラー服……ってことは“ダイサン”の子か)
清嘉の通う能力者養成校は、東京都23区某所に建っている。東京に存在する3か所の能力者養成校のうち最古のものであり、学生間では俗に“ダイイチ”と呼ばれているものだ。それに対して少女の制服は、八王子市某所に位置する通称“ダイサン”のものだった。
いつも、笑顔だった
クルクル踊り
掴みどころがなく
みんな道化師のことを
いつもの事かと、馬鹿にして笑ってた
戦乱の中、道化師は皆を笑わせるべく踊っていた
空中からミサイルが飛んだ。
戦乱の中、道化師は自らミサイルに当たりに行き舞い踊った。皆を守る為
希望を失うことは絶対にしたくない。
幻覚と興奮に身を浸して苦しみを満たす。
大多数の感性に虚偽のイデアを抱き寂しさを満たす。
堕ちに堕ちた余命宣告者は、実質的、精神的自殺を行う。しかし生きたいと言う。
一時的なもので希望を見ようとし、蜃気楼を掴もうとする。
異質だろうか。いいや、そんなことはないと私は思う。
君と抱き合うともう
君と抱き合うともう
うれしいな 柔らかいな
ほどけてくな 続けたいな
傷つけあうときも
傷つけあうときも
目をみたいな 逃げたくないな
そしていつか 笑いあいたい
ミルキーみたいに甘い考えが
夜中ボクを飲み込んでた
濁った唾液にレンズが汚れて
なにも見えない 白い部屋の中
キズの舐め合いはもう
キズの舐め合いはもう
最高だな 楽しいな
うそくさいな あたたまるな
気づかないふりはもう
気づかないふりはもう
やさしいな 鏡のなか
ボクにだけは やさしいんだ
・依頼実践演習
”妖記廊”から能力者養成校に対して提示される、低脅威度または子供が向かうべき事情のある事案を、生徒・学生が実践する形式の演習。危険性などの観点から基本的には高等部以上の”語部”のみが受注できるが、例外的に高い能力や適性を有する場合は、中等部の生徒が推薦・選出されることもある。初等部以下の児童は絶対に参加できない。
参加者には危険手当と報酬が入る。また、演習参加実績は”妖記廊”及び関連企業・組織への就職時に加点要素として考慮される。
ちなみに高等部進学時に、専用の保険に加入させられる。中等部で参加推薦された場合は、参加を了承した際に加入する。
サクラボーズと銘打って
若い時代から早いが九年
学年末試験 パスしてエイデイ
ここにいた そんな不自然
無限かも なんて思えた筆
必然に疎遠 落ちていくペース
ログインに関するアレやコレ
いろいろ忘れて諦めて寝る
が、俺に言わせりゃここはブルペン
見違え 持ち替えた新しいペン
名前はLL多聞だって
しかし早くも再度アカウント失念
そして迎えた今週末
言ってみりゃもう十分フューチャー
諸般の事情でまたも改名
あれ 俺って今なんて言うんだっけ
イタい言葉も大人モードだと
ようやく受けとれるのかも
文字通りのヤバい厨二病ポエム
よくやってたよ あの頃の俺
ここにいる誰かにいまさら告ぐ
カラフルなスタンプ 消えても続く
ご老体 in the ポエム掲示板
またもカムバック しつこく描く
電車に揺られて
吊り革持たずに
スマホ見ながら
笑ってた
短い時間だったけど
何か、初めての感情だった
これが一目惚れってもの?
アスファルトの反射熱は南風に乗って和らげられる。
逃げ水を眺めながらドアノブを引く
「うぁっ」
車内に溜まった熱が一気に私を攻撃する。
夏の夢、とは年齢とともに減点方式のように儚くなる。
いつだろうか、私は馬鹿げた夢をわすれていた。
夏だというのに
カチッ
この800℃近い物体が私を満たす。
レインボーブリッジから望む海は輝いていた。
中身を感じられないだけで表面だけを取る。何もかわっちゃいないのにモノは0に見える。これも歳のせいだろうか
ワタシシャ、サイテイダ
ワタシシャ、ヤッパジコチューダ
コンナワタシがキライダ
自分が思い通りに行かないとき
いざというとき
パニックになってしまったとき
などなどなどそんとき
最低で邪悪な本性がお目覚めになる
だから私は嫌われちゃうのかな
離れていっちゃうのかな
1人考えちゃう
やんなきゃよかった
言わなきゃよかった
もっとこうすればよかった
ごめんね
ごめんね
ごめんね
最低で邪悪な本性で
こんな自分で
またひとりになっちゃうのかなあ
陰口、悪口、噂にされちゃうのかな
ほんとバカだ
こんな私もその本性性格大っ嫌い
ごめんねこんな本性で
ごめんねほんとに
こんな私だけど友達でいてくれる?
仲良くしてくれる?
愛してくれる?
こんな最低で邪悪な本性の私が
お目覚めになっちゃっても。
覚醒しちゃっても。
初めこそ驚いたものの、今は何でもないことだ。
職員は他のリニアーワルツ同様診察する。
その最中、いつも如何に自分とアッドの仲がいいかを語る役割しかない口から、不安そうな音色が漏れた。
「……ファナ、アディくんに嫌な思いさせたくないの。アディくん怒るとき、なんか泣きそうな顔する」
「ファナ、ちゃんと分かってるじゃないの」
「でもいっつもひどいこと言っちゃうし、アディくんがやめてって言うことばっかりしちゃう」
「どうして?」
「構ってほしい……ううん、ずっとファナのこと考えててほしいの。アディくんは優秀で、ちゃんとしてて、ラボの人たちもアディくんのことは気に入ってる。それにアディくんはファナがいなくたって平気なの」
「なんでそう思うのよ」
「あんた、アディくんがいつも何してるか知ってる? 本読んでんのよ。毎日何冊も。ファナは本読まないから話合わないし、アディくんは1人でも平気」
「アッドは1人じゃ戦えないわ」
「ほら。そういうことよ。ファナは、持ってるジェミニにしか価値ない、から、アディくんがそれに気づかないように、どんな気持ちもファナにだけ向けててくれるように、嫉妬させたり怒らせたり困らせたりするの」
「ファナはそういう負の感情を向けられたいの?」
「そんなわけないわ! ……でも、ファナのために感情が動くなら、もう何でもいい。ファナはバカで性格悪くて戦闘も弱いから、アディくんのこと喜ばせられないもん。ただ、ファナのことどうでもよくなって、アディくんがどっか行っちゃうのが怖い」
「本当に健気な子ね」
「どう見たらこんな汚れた女が健気に見えるのよ」
「まあ、自分でそう思えるようになるのは難しいわよね。……全部診終わったから服着ていいわよ」
ファナはまた黙ってしまった。
職員がアッドの検診のために立ち上がって、隣の診察室のカーテンに手をかけたとき、振り返らないままでファナに言った。
「そういうの、アッドには言ってるの?」
「……」
「折角いつも一緒にいるんだから、ちゃんと自分の気持ちは言いなさい。愛する人とは、本音で語り合うものよ」
ファナは黙ったままだった。
診察室に入ると、アッドがうなだれていた。