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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑭

「…あ」
不意に雪葉が声を上げたので、わたし達は顔を上げる。
立ち上がる雪葉が目を向けている方を見ると、見慣れない小柄な小学生位の少年がこちらに近付いてきていた。
「榮(えい)」
雪葉はそう言って彼に駆け寄ろうとするが、榮と呼ばれた少年は気まずそうに立ち止まる。
「あれ、どうし…」
雪葉が不思議そうに呟いた時、榮は両目をエメラルドグリーンに光らせた。
「!」
雪葉が驚いたような反応を見せた瞬間、榮の姿は見えなくなった。
そしてわたし達の目の前から走り去るような足音だけが聞こえた。
「エインセル‼」
雪葉はそう叫んで走り出す。
「追うわよ、ネクロマンサーとコマイヌ!」
穂積も立ち上がって走り出す。
「ボクはネロだっつーの!」
ネロは両目を赤紫色に光らせると、同じく両目を光らせた耀平と共に駆け出す。
わたしや黎、師郎もそのあとを追った。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑬

わたしが自分のそっくりさんを目撃してから30分程。
わたし達はいつもの駄菓子屋の前に座り込んでいた。
「…ねぇ、”人を呼ぶ”って言ってたけど、まだなのか?」
ココアシガレットをくわえながらネロが呟く。
「まだだよ」
相手も色々あるみたいだし、と雪葉は駄菓子屋と路地を挟んで反対側の建物の前でしゃがみ込みつつ両手で頬杖を突きながら答える。
「そうなの~?」
ネロは思わず口を尖らせた。
…”わたしのそっくりさん”に心当たりがあると言った雪葉が誰かに電話をかけてから、わたし達は駄菓子屋の店先でその人を待っていた。
ネロや耀平はヴァンピレスではないかと不安がっていたが、雪葉が違うと言った事、そもそも雪葉にとってもヴァンピレスは厄介な異能力者である事から、その可能性は低いと思われた。
とにかく、わたし達は謎の人物によって待ちぼうけを喰らっていたのだ。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑫

しかし目の前の十字路にさしかかった所でわたしはぴたと足を止める。
視線を感じてハッと右手側を見ると、路地の奥に”わたしと瓜二つの人物”が立っていた。
「え」
わたしが思わずそう呟くと、先を歩く耀平達も足を止めた。
「どうした?」
耀平がそう尋ねてきたので、わたしはあそこ!と路地の奥を指さす。
しかし耀平達が路地の奥を覗き見た頃には、そこに誰もいなかった。
「誰もいねーぞ」
「さっきから多いよな、そう言うの」
耀平と師郎がそれぞれ呟く。
「またそっくりさんって奴かい?」
師郎がそう聞くので、わたしはうんとうなずく。
「…そっくりさん、か」
不意に雪葉がポツリと呟いたので、わたし達は彼女に目を向ける。
雪葉はわたし達の視線を感じて、あぁこっちの話と手を振る。
「何、心当たりでもあるのか?」
耀平がそう尋ねると、雪葉はまぁねと答える。
「心当たりがあると言うか、そういう事ができる人を知っていると言うか」
雪葉がそう言うと、穂積はそれって…と言いかける。
雪葉は穂積に目を向けるとこう笑いかけた。
「…まぁ、そういう事さ」
雪葉はそう言って上着のポケットからスマホを取り出した。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑪

ヴァンピレスに遭遇してから暫く。
わたし達は路地裏を駆け抜けていた。
「何でヴァンピレスがこんな時に出てくるのよ!」
「穂積を狙ってきたんじゃない?」
「そう言う事言わないでよ雪葉‼」
穂積と雪葉がそう言い合う中、わたし達は路地裏を走っていった。
「…ここまで来れば大丈夫かな」
耀平がそう呟いて道の真ん中で立ち止まる。
わたし達も立ち止まった。
「奴の行動を考えるとどこが大丈夫とかほぼないけど…まぁ、そろそろ休まないとな」
走り続けるのって難しいし、と師郎はこぼす。
だなとかうんうんと耀平や黎はうなずくが、ここで穂積が口を開く。
「…それにしても、何であいつが急に襲ってきたのかしらね?」
やっぱりあたしを狙って?と穂積は腕を組む。
「でもおれ達もよく狙われるから何とも言えないよな」
そう言って耀平は師郎に目を向けると、彼は静かにうなずいた。
「…ま、とにかくさっさと大通りに出て奴を撒いちまおうぜ」
そう言って師郎は歩き出す。
そうだなと言って耀平達4人も歩き出す。
わたしもそう言って歩き出そうとした。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑩

わたし達がパッと声のする方を見ると、わたし達の進行方向にツインテールで白ワンピースを着ている白い鞭を持った少女が立っていた。
「わらわのことをお呼び?」
少女はそう言ってにんまりと笑みを浮かべる。
ネロはヴァンピレス‼と声を上げて具象体の黒鎌を出した。
「アンタなんか呼んでねーぞ‼」
ネクロマンサーがそう怒鳴ると、あらとヴァンピレスは小首を傾げる。
「わらわの噂を、していたのではなくって⁈」
ヴァンピレスはそう言って白い鞭を振るった。
「っ‼」
ネクロマンサーは咄嗟に黒鎌を構え、伸びてきた白い鞭を受け止める。
「逃げろ皆‼」
ネクロマンサーがそう叫んだので、わたし達は走って逃げだす。
ネクロマンサーはそれを見届けると、ヴァンピレスの鞭を払って彼女に向かい駆け出した。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑨

「おい、どうした?」
師郎がポツリと尋ねたので、わたしはハッとして彼らの方を見る。
「あ、いや…あそこ!」
わたしが十字路の奥を指さすと、ネロ達もその方角を見る。
わたしも路地の奥を再度見たが、そこには誰もいなかった。
「あれ…?」
わたしは思わず首を傾げる。
さっきまでそこに”わたし”がいたのに…
「何もいねーぞ」
「見間違いじゃね?」
師郎と耀平はそれぞれそこぼす。
「何だよ、てっきりヴァンピレスだと思ったじゃねーかー」
ネロは不満気に言って両手を後頭部に回す。
「で、でもいたんだよ」
わたしのそっくりさ…と言いかけた所で、不意に高笑いが聞こえた。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑧

穂積達と遭遇してから暫く。
ネロと穂積の言い合いが落ち着いた所で、わたしたちはいつものショッピングモールに向かっていた。
「…何でアンタ達もショッピングモールに行こうとしてるんだよ」
裏路地を歩きながらネロが側を歩く穂積を睨む。
穂積はそんなのあたしの勝手じゃないとそっぽを向く。
「そもそもアンタ達も何でショッピングモールへ向かってるのよ」
穂積がそう尋ねると、ネロは答えたくないと口を尖らせる。
「何よソレ」
「何よって何だよ」
ネロと穂積は立ち止まっていがみ合う。
師郎や雪葉はまぁまぁ…と2人をなだめようとした。
わたしはその様子を見て苦笑いする。
しかし十字路にさしかかった所でわたしは交差している道の奥から視線を感じた。
わたしはふと十字路の奥に目をやる。
そこにはわたしと瓜二つの人物が立っていた。
「…え」
わたしは思わず呟いて立ち止まる。
それに気付いたネロ達も、立ち止まってわたしの方を見た。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑦

周りの皆は言い合うなよと諫めようとするが、2人は全く気にしない。
わたしは思わず呆れてしまった。
…と、不意にわたしは視線を感じた。
?と思って辺りを見回すと、路地の奥の方に見覚えのある人影が立っている。
それはどこかわたし自身のようにも見えた。
「…おい」
不思議そうな師郎の声でわたしは我に返る。
「どうした?」
急にぼーっとしやがって、と師郎が聞く。
わたしはあーと言いつつさっきの方角を見る。
そこには誰もいなかった。
「…何でもない」
わたしはそう言って笑う。
師郎はそうかいとだけ言って、またネロと穂積の言い合いに目を向けた。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑥

「それはそうとして、チョウフウ…じゃなくて穂積、アンタに1つ聞きたい事があるんだけど」
ネロが質問すると、穂積は何よと呟く。
「アンタ、ヴァンピレスと繋がってたんなら奴について何か知らない?」
個人情報とかさ、というネロの言葉に皆が穂積に注目する。
穂積は溜め息を1つついて知らないわよと答えた。
「は、何で⁈」
アンタ奴と繋がってたんじゃないのかよとネロは立ち上がって語気を強めたが、穂積は知ってる訳ないじゃない!と言い返す。
「相手はあのヴァンピレスよ!」
徹底的に自分の事は人に教えないような奴だからあたしが知ってる訳ないじゃないと穂積はそっぽを向く。
「何だよ連絡先とか知らないのかよ」
「電話番号は教えてもらってたけど今や音信不通よ!」
「何だよソレ‼」
ネロと穂積の言い合いは過熱していく。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑤

「あとヴァンピレスはやべー奴だからな」
それ位はやって当然、とネロはココアシガレットを咥える。
わたしははぁ…とうなずいた。
「でも今見るからに異能力も記憶も奪われてないみたいだけが」
それはどうしてだい?と師郎がふと尋ねる。
「あーそれはね、うちがたまたま助けたんだよ」
今度は短髪の少女が話し始める。
「うちがこの間、偶然ヴァンピレスを見かけて何気なくあとをつけたらたまたまあの子が穂積を襲おうとしてて」
それで助けたんだと短髪の少女はウィンクする。
「…うちの異能力を使ってね」
そう言って彼女はつぶっていない方の目を一瞬青白く光らせた。
「うちは薬師丸 雪葉(やくしまる ゆきば)」
…もう1つの名前は”ジャックフロスト”、と雪葉は続ける。
「”指定した人間の動きを凍ったようにうごけなくする”能力さ」
まぁ異能力を使っている時は気軽に”フロスティ”と呼んでいいよ、と彼女は笑った。
「ふーん」
ネロはそううなずくと穂積の方に目を向ける。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ④

「そ、それってどういう…」
ネロが困惑したように呟くと、短髪の少女は文字通りの意味だよと返す。
「あの子は穂積を切り捨てた、ただそれだけ」
短髪の少女は人差し指を立てつつ言う。
「…切り捨てられたって、どういう事だよ」
ネロがそう尋ねると、今度は穂積が口を開く。
「この間、ヴァンピレスに会った時に”貴女はもう用済み”って言われたのよ」
「用済みって」
ネロの言葉を気にせず穂積は続ける。
「あの女曰く、あたしとあの女が繋がっている事があんた達にバレたから、この関係は終わりにしよう、だってさ」
穂積は呆れたように肩をすくめる。
「…ま、そのせいであたしはヴァンピレスに異能力を奪われそうになったんだけど」
穂積の発言にわたしはえ、と驚く。
「奪われそうになったって…」
「そりゃ口封じのためだろ」
ネロはジト目をわたしに向ける。
「アイツと繋がっていたって事はある程度奴の内情を知る事にもなるから、関係を断つ時にそれ位やるだろ」
ネロは淡々と言う。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ③

「たまたまこの辺を通りかかっただけだよ」
ねー穂積、と短髪の少女は側に立つ長髪の少女こと穂積に目を向ける。
しかし穂積は嫌そうにそっぽを向いた。
「あーちょっとそんな顔しないでよ~」
短髪の少女はそう言うが、穂積はそっぽを向いたままだった。
「何やってんのコイツら」
「夫婦ゲンカじゃね?」
耀平と師郎はお互いに顔を見合わせる。
「どうしてそんな顔するのさ」
「あたしはコイツらと関わりたくないだけよ」
「えー何で~」
短髪の少女と穂積は暫くそう言い合っていたが、やがて短髪の少女はこう言った。
「そんなに拗ねてるんなら、”あの事”、この人達に言っちゃうよ~」
短髪の少女がにやけると、穂積はなっ‼と驚く。
「ちょ、ちょっと、それは…」
「はーい今から言いまーす」
「やめてやめてやめて」
穂積の制止を気にせず短髪の少女はわたし達に向き直る。
「実はこの人、あのヴァンピレスと繋がってたけど今は縁が切れたの」
「え」
短髪の少女の言葉に、わたし達はポカンとする。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20。エインセル ②

「チョウフウ、だっけか…面倒な敵が増えちまったよ」
なぁ?と師郎は隣に座る黎に目を向ける。
黎は黙ってそっぽを向いた。
「何だよ、チョウフウと同じ学校なのを気にしているのかい?」
お~い~と師郎が黎を右肘で小突くと、黎はちょっと師郎から離れた。
「…別に、同じ学校ってだけで学年違うし」
あんまり自分は奴の事知らない、と黎は棒の付いたアメをくわえる。
「ただ、部活で使っている所が近いってだ…」
黎がそう言いかけた時、不意にあと聞き覚えのある声が飛んできた。
わたし達がパッと声の主の方を見ると、カラフルなピンで前髪を留めた少女と、メガネをかけた長髪の少女が近付いてきた。
「あ、アンタら!」
ネロは2人に気付くとバッと立ち上がり、目を光らせる。
その様子を見た短髪の少女はあーもう殺気立たないの~と笑みを浮かべる。
「また会ったね、あんた達」
短髪の少女はそう言って手を小さく振る。
しかしその後ろにいる長髪の少女がムスッとした顔をしていた。
「一体何の用だ」
目を光らせるのをやめたネロは2人を睨みつける。
短髪の少女はいや~ちょっとね、と笑う。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ①

11月、秋も深まり切って冬が近付く頃。
人々の服装も厚着になっていき、冬が近付いているんだなと感じられる。
かく言うわたしも、今日は寒くて厚手のコートを引っ張り出して”彼ら”の元へ向かったのだ。
着実に冬が、今年の終わりが近付きつつあった。
「それで、奴の目撃情報は?」
「全然」
北風が吹いて寒い中、わたし達はいつものように駄菓子屋の店先に溜まって駄弁っていた。
そしてもちろん会話の話題は、最近行動が活発になってきている”ヴァンピレス”についてだ。
「なーんでこうも涼しくなってきてから動きが活発になるかなー?」
「奴、暑がりなんじゃね?」
耀平と師郎はそう言いながら、駄菓子屋で買ったスナック菓子を口にする。
「いや、春も夏も多少はアイツ動いていたから、暑がりってのは言い過ぎかも」
ネロは手の中のココアシガレットの箱を見つめながら呟く。
黎はそれに賛同するようにうなずいた。
「とにかく、奴に協力している異能力者が存在している事が問題だな」
耀平はポツリとこぼす。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 吸血姫と竜生九子と雪の精 ②

あたしはフンと鼻を鳴らした。
「意味不明な奴」
さっさと奪いたいなら奪ってしまえば良いのにとあたしは呟く。
ヴァンピレスはそれを聞いてうるさい!と声を上げた。
「貴女、大人しくわらわの餌食に…」
ヴァンピレスはそう言って白い鞭を振り上げる。
あたしはもはやこれまでかと目をつぶった。
しかし鞭が振り下ろされることはなく、代わりにヴァンピレスがうっとうめく声が聞こえた。
あたしが目を開くとヴァンピレスが白い鞭を振り下ろそうとする体勢で動きを止めていた。
「⁈」
あたしが驚いていると背後から聞き馴染みのある声が聞こえた。
「穂積」
思わず振り向くと、短髪で前髪をカラフルなピンで留めた、瞳を青白く光らせた少女が立っていた。
「…”フロスティ”⁈」
あたしがつい声を上げると、彼女はこちらへ駆け寄ってくる。
「逃げよう、穂積」
「え、でも」
「さっさと逃げようか」
フロスティはあたしの手を引いて元来た方へ走り出した。
暫くあたし達は走り続け、気付くと駄菓子屋の前まで辿り着いていた。
「ここなら大丈夫だね」
駄菓子屋は異能力者の緩衝地帯だし、とフロスティはあたしの方を振り向く。
その目はもう光っていなかった。
「…雪葉、どうして」
「どうしてもこうしても、親友がピンチだったからうちが助けてやったんだよ」
あたしの言葉を遮るように、フロスティこと雪葉はあたしの顔を覗き込む。
「あんたさ、たまに悩み事を1人で抱え込む事があるからよく警戒してたんだよ」
最近怪しいと思ってたら、案の定だったと雪葉は笑った。
「別に、あんたに助けて欲しいなんて」
あたしはそう言いかけるが、雪葉は友達なら助け合うのが普通だと思うよーと続ける。
「特に親友ならなおさら」
雪葉はそう言ってウィンクした。
「…もう」
あたしは呆れたように呟いた。

〈番外編 吸血姫と竜生九子と雪の精 おわり〉

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 吸血姫と竜生九子と雪の精 ①

路地裏というものはアングラな雰囲気を纏っている事が多い、とよく言われる。
大通りに対して建物が密集しており空も狭く見えるし、上から入ってくる光も限られる。
だから”常識の外の存在”も当たり前に存在するのだ。
例えば、この路地裏を歩くあたしのような…
「うふふふふふふ」
不意に聞き覚えのある高笑いが聞こえたので、あたしはパッと顔を上げる。
しかし周囲を見回しても誰もいない。
一体奴はどこに、とあたしが思った所で後ろの首筋に気配を感じた。
「ご機嫌よう」
チョウフウ、と背後に真っ直ぐな棒状にした白い鞭をあたしの首筋に突き付ける少女…ヴァンピレスは言う。
自分の後ろに回っているため顔は見えないが、きっとその顔は笑みを浮かべている。
「…何の用」
あたしが聞くと、ヴァンピレスは貴女にお知らせがあって来たのと答える。
何、とあたしが聞き返そうとした時、ヴァンピレスはこう言った。
「貴女を利用するの、やめにしたわ」
「は?」
あたしは思わず振り向く。
「何で…」
「単純に貴女の事が、”彼ら”に気付かれてしまったからよ」
淡々としたヴァンピレスの言葉にあたしは…なるほどと呟く。
「あの常人と死霊使い達にあたしがアンタと繋がっている事がバレたから、消しに来たって訳ね」
あたしがそう言い切ると、ヴァンピレスはうふふふふと笑った。
「貴女を消してしまうのはもったいないかもしれないけど、どちらにせよ貴女の異能力は使わせてもらうから感謝なさい」
「感謝なんてするかよ」
あたしは思わず言い返す。
「あんた、あたしの親友の異能力を奪おうとしやがって、それを止めようとしたらその代わりにあたしに協力を持ちかけてきて…」
こんな自分勝手な奴に感謝なんてしな…とあたしが言いかけた所で、やかましい‼とヴァンピレスは声を上げる。
「特別使える訳でもない異能力のクセに偉そうな口を利いて…!」
せっかくわらわが奪おうとしてやっているのに…と彼女は身体を震わせる。