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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 25.ヴァンピレス ③

「なぜかって言うか、わたしが好きで彼らの近くにいるだけなんですけど…」
他の人からは変な風に見えてるんですね、とわたしは頭をかいた。
青年はその一言を気にしていないのか、まぁともかくと話を切り替える。
「きみはヴァンピレスに追われている、異能力を本当に知ってしまった一般人、である事は分かった」
それならいい、と彼はうなずく。
わたしはそんな彼の様子を見て、彼はなにを考えているのだろうと不安になった。
「…あ、ぼくの事、怪しんでる⁇」
彼の急な質問に、わたしはついえっ、と驚く。
「あー、あ、いやー、それは…」
「まぁ仕方ないよね」
ぼくもまだ名乗っていないし…と言って、青年は苦笑いした。
わたしはそ、そういえばと呟き、青年は笑う。
「…ぼくは宇都宮 逢賀(うつのみや あいが)」
もう一つの名前は”ヴァンパイア”と彼は名乗った。
「異能力は”他者の記憶を奪う能力”だ」
それを聞いてわたしは、それってと目を丸くする。
しかし、彼…逢賀さんは大丈夫だよと微笑んだ。
「ぼくはヴァンピレスみたいにヒドい事はしないから」
だから安心して、と逢賀さんは続ける。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 25.ヴァンピレス ②

わたしがそう色々と考えを巡らせていると、目の前に座る青年が近くを通った店員さんに声をかけ、ホットココアを注文した。
そして店員さんが立ち去るのを見届けてから、わたしに向き直って、ねぇきみと話を始めた。
「単刀直入に聞くけど…”ヴァンピレス”に追われていたね?」
その言葉にわたしは、じゃああなたはと聞き返す。
「異能力者、なんですね?」
わたしの言葉に彼は静かに頷く。
「よく分かったね」
やっぱりきみは、異能力を知ってしまった常人なんだと彼は続けた。
「あ、はい…」
一応、そうですねとわたしは答える。
すると青年は、やっぱりそうかと呟く。
「”情報屋”から存在は聞いていたよ」
異能力や異能力者、そしてヴァンピレスの存在を知ってしまった普通の女の子…と彼は続けた。
「そして、この街では数少ない、ヴァンピレスと互角に渡り合える異能力者…ネクロマンサーとなぜか一緒に行動している子、だね?」
彼に聞かれたわたしは…そうですねと苦笑いする。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 25.ヴァンピレス ①

冬は、日が暮れるのが早い。
それは当たり前なのだが、それ故に夕方の薄暗い時間帯以降はなにが起きるか分からない。
…例えば、得体の知れない人に遭遇する、とか。
だから気をつけなさいとよく言われるのだが…
わたしは今、そんな”誰だかよくわからない人”と寿々谷駅前の喫茶店にいた。
「…大丈夫?」
なにか飲み物でも頼む?と、喫茶店のテーブルを挟んだ向こうに座る男の人はそう尋ねる。
「い、いえ、お気になさらず…」
わたしはそう答えるのに精いっぱいだった。
というのも、3日前に受けたヴァンピレスの提案を丁重に断ろうとした所、見事に彼女の逆鱗に触れて追われることになり…そしてこの青年と出会って、この喫茶店に連れられてきたのだ。
正直自分でも情報が多すぎて、整頓できない節はある。
特に、なぜこの男の人はわたしを喫茶店に連れてきたのだろうか。
そもそも、わたしはこの人と全くの初対面で、さっきぶつかりそうになった時に初めて遭遇したのだ。
そんな人がなぜ…まるでヴァンピレスから逃げるかのようにわたしの手を引き、そしてここまでやって来たのだろう。
まさか、この人は…