夜7時、すっかり日も暮れて辺りが暗くなった頃。
今日の塾の授業も終わり、わたしは塾が入っている建物をあとにした。
同じ授業を受けた子たちは授業が終わったあとも建物の前で駄弁ったり、親の迎えを待ったりしていたが、わたしは家が塾から近く友達もここにはいないので、いつもさっさと帰る事にしている。
まぁ今は寒いので早く帰れるに越した事はないのだけど…
そう思いつつ暗い道を歩いていると、ふとわたしは小さな交差点の角の”止まれ”の標識に寄りかかるように、誰かが立っているのが見えた。
白いコートに白いミニワンピース、そしてツインテールにした長髪に赤黒く輝く目…
わたしはそんなバカなと思った。
「ご機嫌よう」
その人物…ヴァンピレスはわたしに気付くと、笑顔でそう呼びかける。
わたしは驚きのあまり動けなかった。
まさか、ヴァンピレスに遭遇するなんて。
しかもネロたちと一緒ではない平日に…
わたしが呆然としていると、ヴァンピレスはあらと首を傾げる。
「わらわが平日に貴女に会いに来た事に驚いているの?」
それとも、わらわの事が怖い?とヴァンピレスはいたずらっぽく笑った。
12月、クリスマスが近づく頃。
すっかり外は寒くなったが、地方の街である寿々谷もクリスマスという一大イベントが迫ったことで、心なしか商店街もショッピングモールも賑わっているように見える。
まぁクリスマス商戦って奴で人々も浮き足立つのは仕方ない事と言えた。
しかしそんな中で、わたしは重い足取りで通っている塾へと向かっている。
…何せ期末テストまであと数日のところまで来てしまって、かなり追い詰められているのだ。
親からは毎週末”友達”と遊んでいるからいけないのよと言われるが、それだけではないとわたしは思う。
今回は学期末テストだし、範囲は広いし、ついでに3年生になるのが近付いているために先生達が気合を入れているのがよくないのだ。
こんな事になるのは仕方ない。
…と、色々考えつつ塾がある寿々谷駅の方へ向かって歩いているわたしだったが、不意に何か視線を感じた。
何だろう、と思って視線を感じる車道向こう側に目を向けるが、特にそちらには誰もいない。
あるのは普段の街並みだけだった。
「気のせいかな」
最近はネロ達と一緒にいるとヴァンピレスに遭遇することが増えているから、彼女かと思ったが多分違うだろう。
わたしはそう思うとまた塾へ向けて足を進めた。