「いいよ、ナツィ」
今度の定休日、空いてるからとジャンパースカート姿のコドモは嬉しそうに返した。
それを聞いてナツィと呼ばれたコドモは驚いたように顔を上げる。
「いい、のか?」
かすみ、とナツィが呟くと、かすみと呼ばれたコドモはもちろんと頷く。
「ナツィが言うのなら」
かすみがそう微笑むと、ナツィはつい頬を赤らめる。
その様子を覗き見ていた金髪のコドモは、その様子を見届けると笑顔でその場を離れていった。
数日後、喫茶店の定休日。
喫茶店の裏口の前では黒髪のコドモ…ナツィがズボンのポケットに両手を突っ込んで、誰かを待つように立っている。
ナツィはちらちらと喫茶店の裏口の扉を見やるが、扉は開く気配がない。
…と、不意に扉がガラリと開いた。
「あっ、待った?」
白いブラウスの上にジャンパースカートを着たコドモ…かすみは、扉の目の前に立っていたナツィを見てそう尋ねる。
ナツィは、別にとそっぽを向くが…ただ、とかすみに視線だけ向けた。
「せっかく出かけるのに、いつもと服装がそんなに変わってないのが気になるだけ」
ナツィはそう呟いてかすみから目を逸らした。
暖かい光が辺りを照らす昼下がり。
路地裏を金髪に白いカチューシャをつけたコドモが、鼻歌交じりにスキップしている。
金髪のコドモはやがて小さな喫茶店が1階に入る建物の裏口の前で立ち止まると、おもむろにその互い違い戸に手をかけ開いた。
そしてなんてことない雰囲気で、コドモは玄関に入り扉を閉めて靴を脱いでから、薄暗い廊下を歩いてその中程にある階段を上っていく。
しかし、金髪のコドモは階段を上がり切って廊下の奥にある物置の手前でぴたと足を止めた。
どうやら中から聞こえる話し声が気になったようである。
「…つまり、自分と一緒に出かけたい、ってこと?」
金髪のコドモが開きかけの物置の扉から中をそっと覗くと、室内には紅茶セットが置かれたテーブルの傍に置かれたイスに短い黒髪でゴスファッションのコドモが座っており、その傍にジャンパースカートにエプロンをつけたコドモが立っていた。
「まぁ、要約すると、そう」
黒髪のコドモは恥ずかしそうに俯く。
「最近あんまり2人で出かけてないし、たまにはいいかなって…」
黒髪のコドモは両手の人差し指を突き合わせてモジモジした。
それを見てジャンパースカート姿のコドモはふふと笑う。
二人して黙り込み様子を見ていると、突然下から大きなアリエヌスを貫いてドリルが現れた。
「うおー!!ドリル!!でかい!!」
「先輩のレヴェリテルムだ…!」
ブケファルスとフスはお互い顔を見合わせて安堵のため息をつく。
「あ、連絡。先輩からだ…親分らしきアリエヌスはこちらで片をつける。カウダトゥスを頼む…だって」
「カウダ?なんで…あ、対大型戦だと使えないからか」
「ちょ、言い方!あとそれ間違っても本人に言わないでよ!?後が怖いから、ほんとに」
喚くフスを横目にブケファルスは大きなアリエヌスの方を見る。向こうからカウダが駆けてくることを確認し、改めてアリエヌスを貫いたドリルを見た。
「すげー…ん?」
ドリルに抉られたあたりが何かおかしい。小刻みに震えるように動き、そして。
「うわぁあああ!!分裂しやがった!!」
「はっ!?」
アリエヌスはいきなり真っ二つに割れたと思うと、片方はバランスを崩して地面にぶつかって轟音を立て、もう片方は口らしきものを開けた。
そして走るカウダに向かって凄まじい勢いで滑り込んできた。
あの日あなたは夢の中で、私の部屋にいて
とても優しかった。
私はあなたに好きだと言った。
あなたは頷いた。
あなたは私を抱きしめてくれた。
あの日あなたは夢の中で、私の部屋にいて
とても優しかった。
私はきいた。「抱きしめてもいい?」
あなたは無邪気に笑って受け入れてくれた。
あの日あなたは夢の中で、
ああ……優しかったかしら。
「何しても嫌がらないでくれる?」
「うん」
私は間違えてしまった……
あなたは私を拒絶した。
何度やっても全部
あなたは私の知ってるあなたなの。
だからこわいの。
愛されて生まれてきたんだよ、私。
お父ちゃん、お母ちゃんが愛でてくれたんだ。
いっぱいおもちゃ買ってくれたね。
いつも食卓は皆で囲んで、楽しいね。
私の心はたくさん満たされていたんだ。
風邪をひく。
体が元気という名のものが限界を迎えたのかな
心は元気なんだけど、
体がどうしても元気になれない
なぜなんだろう。
体の元気が戻ったら沢山のエネルギーが舞い込むのかな
そこまで待つのは、
苦痛を乗り越えなきゃいけない
そこまで待つ
体が元気になるまで。
ああ 叫び声が聞こえる
ああ 誰かに裏切られる
ああ どうやっても癒せやしない
ああ どうやったら どうしたら
もとに戻るんだろう
喜怒哀楽が感情を操作してる
あのときは怒りが多かった
だから叫ばれるわけ。
そんなん誰にでも嫌われるよね
そんなことを何も知らない昔のあの時あの時間
その様子を見て霞さんはふふふと笑うが、ここでわたしがさっき思った事を思い出す。
「…そう言えば、霞さんって異能力者だったんですね」
わたし、全然気付かなかったですとわたしは言うと、霞さんはそうだろうねと頭をかいた。
「君が一般人だから言わなかったけど、ネロちゃんが堂々と異能力を使っているのを見て大丈夫だと思ったからさ」
だからあの通り使ったんだ、と霞さんは一瞬両目を菫色に光らせる。
「ちなみに、僕のもう1つの名前は”オウリュウ”だよ」
霞さんの言葉に対し、わたしはそうだったんですねとうなずいた。
「…まぁ、そんなことは置いといて」
そろそろ駅へ向かおうぜ、とここで師郎が手を叩いてわたし達の注目を集める。
「そろそろ霞も帰らなきゃだろ?」
師郎がそう言うと、霞さんはそうだねと答えた。
わたしと黎もうなずき、ネロは耀平に近付いて、行こうよーと腕を引っ張る。
耀平は不満そうな顔をしていたが、うんとうなずくと駅へ向かって歩き出した。
辺りはもうすっかり日が暮れ切っていた。
〈23.オウリュウ おわり〉
人の痛みを知って、それを受け入れることが出来る優しい人。そして人の痛みを和らげる塗り薬的な、そんな言葉をくれる人。
あなたがいたから私は生きてこれた。
ありがとうございます。
本当に強い人って、他人の為に動ける人だと思う
そして自分の持っている力を惜しげもなく他人に使える人だと思います。