そうして、キヲンは路地裏で出会った謎の人工精霊と共に商店街の方を目指し始めた。
その最中に、2人は色々な話をした。
「へぇ、アンタ、ここの動物園に行ったのか」
「うん、すごかったよ!」
人工精霊の言葉にキヲンは飛び跳ねつつ答える。
「キミは行ったことある?」
「うち? 行ったことないなぁ」
キヲンの質問に対し、人工精霊は上を見つつ呟いた。
「実はあたし、この街に来てから日が浅いから、意外とこの街のことよく分かってないんだ」
人工精霊がそう言うと、キヲンはふーんと頷く。
人工精霊は続けた。
「それにうちはそんなに自由に動ける身でもないから…」
その言葉にキヲンはどういうこと?と目をぱちくりさせる。
人工精霊はキヲンの方を見やって、あぁそれは…と言いかける。
しかしここでトゥイーディア?と2人の後方から声が聞こえた。
2人が振り向くと、そこにはサイバー風ファッションのジャケットを羽織りフードを目深に被った誰かが立っていた。
傷があるということは
誰かの盾になっているということ。
こんなに強いあなたを私は心から尊敬致します
あなたに問いかけた。眠そうだね。と
「うん」と頷くあなた。
数分後、あなたがゴロンと横になっていた。
私は「今日はゆっくりと休んでくださいね」と言い彼の傍にいた。
君が笑うに値する
僕のジョークが陰になる
目に入っても困らない
どうにでもなる夜の群れ
トキオ 極めてラビリンス
君が崩してるバランス
今夜僕らが何者かに
該当するとして
それが希望の名前では
なかったとして
僕と君とで笑えるかい?
それなら良い
「…ねぇ、よかったらでいいんだけどさ」
キヲンは不意に相手に尋ねる。
相手はなんだ?と聞き返す。
「ボクのこと、大通りまで案内してくれないかな?」
「…は⁇」
キヲンの言葉に相手は素っ頓狂な声を上げる。
「なんでうちがアンタに付き添わなきゃいけないんだ」
「あ、嫌ならいいんだよ、嫌なら」
でもボク1人で大通りに出られる自信がなくて…とキヲンは恥ずかしげに頭を掻く。
相手は少しの間考えるように黙り込んでいたが、やがていいよと返した。
キヲンはその返事にホント?と聞き返す。
「あぁ」
まぁこの辺りの地理には詳しいしなと相手は頷く。
「それにこの辺りは“商会”のナワバリだから、明らかな部外者のアンタが1人でうろちょろするのは危ないし」
うちが付いていた方がいいかもしれない、と相手は呟く。
キヲンはその言葉に引っかかりを覚えたが、まぁいっかと思い、ありがとう!と返した。
ここは九州最大の鉄道駅にして陸海空の交通機関のターミナルに直結する博多駅。
職場の企画旅行でオーストラリアを目指していたのだが国際情勢の変化により日本への帰国を余儀なくされ、帯同してくれていた新妻を労うために彼女の故郷・福岡県春日市に行こうとしたが公共交通の最終便に間に合わない関係で小倉に泊まっていた。
そして実際に泊まってホテルの朝食を食べて九州も同じ日本と言えど出汁や醤油、味噌といった調味料をはじめ故郷の東京とは異なる文化が根付いており、そんな九州の食文化が合わなくて地元が恋しくなった俺に気を遣ってくれたのか、妻からとある提案を受けた。
妻曰く、彼女の親友に彼氏はできたけれど相談したいことがあるとのことで福岡市内に行くことになりチェックアウトをしてすぐに乗り込んだ新幹線みずほ号でつい3分ほど前に博多に着いたところだ。
妻の後を追って待合せ場所につき、実際にもう一組のカップルと合流したは良いもののお相手の彼氏さんが近くの公園の敷地内にある陸上競技場の側から2時間が経っても動こうとしないのを見てご立腹な女性二人の表情を見て俺が思わず声をかけた。
「もしかして、プロ野球好きなの?」と言う俺の一言に彼が「はい。もう亡くなったけれど優しかった祖父はかつてライオンズの球団職員で当時の話を何度も聴いて育ったので」と返すのを聞き、「そっか。俺はそちらとは真逆の球団のファンなんだ。」と返すと「巨人ファンですか…昔はよく日シリで対戦していましたね。僕はその最後の対戦の年に生まれたので実際に経験していないですが。」と言うのを聴いて女性陣が首を傾げるので「ここにかつてプロ野球の本拠地があったんですよ。今はそのチームの親会社が変わって西武ライオンズと呼ばれていますが、元々は福岡の西鉄という名前だったんです。まあ、僕が応援しているチームのOBがかつて監督として西鉄と対戦して何度か乱闘になり、何度も殴られた場所でもありますが」と説明すると、その監督だった人が誰か察した彼氏さんが「あの34番の人ですか。あの性格だし高齢で亡くなったので、天国で似たもの同士のあの闘将と喧嘩してそうですね」と笑い飛ばしているがその表情はどこか哀しそうだ。
そして、俺たち夫婦で二人の相談に乗ることになるのだが、拍子抜けする程あっさり解決したのはまた別のお話。
「空飛ぶなにかがこっちの方に向かってたから、追いかけてる内にここに迷い込んじゃったの」
その回答に相手は…ふぅんと答える。
キヲンはねぇねぇと尋ねる。
「キミ、こっちで空飛ぶなにかを見なかった⁇」
ボクすっごく気になってるんだけど、とキヲンは相手に近付く。
しかし相手は一歩下がって、い、いや…と含みのある返しをした。
「うちはそういうの見てないぞ…」
「そうなのー?」
キヲンは首を傾げる。
暫くの間、その場に沈黙が流れたが、やがて外套を纏った人物は話題を変えるようになぁとキヲンに声をかける。
「アンタ1人でこの街に来たのか?」
その人物が聞くと、キヲンはううん!と明るく首を横に振る。
「保護者やお友達と一緒に来たの!」
キヲンの言葉に相手はそうかと答える。
「じゃあ、ソイツらの元へ戻らなきゃな」
うん!とキヲンは返す。
「でも、みんなどこへ行ったのか分かんないんだよね」
みんなボクのこと探してるだろうし、とキヲンは続ける。
相手は確かにと呟く。
「…誰だ」
人影は電柱の陰からキヲンに尋ねる。
「え、誰って」
キヲンが思わずこぼすと、人影は…なんだよと不満そうに言う。
「名乗らねぇのか」
「あ、でも知らない人に名前を教えちゃいけないって」
「アンタ小学生か」
キヲンの言葉に人影は突っ込む。
「明らかに魔力の気配がするってことは、アンタも人工精霊だろ」
人影がそう聞くと、キヲンはあ、うん…と頷く。
「ていうか、アンタ“も”ってことはキミは…」
キヲンが聞き返すと、あぁと人影は言って電柱の陰から出る。
「うちも人工精霊だ」
その人物はボロ布のような外套を身に纏っており、背丈はピスケスより少し小さいくらいだった。
キヲンはその人物の言葉に驚く。
「…そう、なの?」
「まぁな」
その人物は頷く。
「それにしてもアンタ、どうしてこんな所に迷い込んだんだ?」
ここはうちらのナワバリなんだが、とその人物は腕を組んで尋ねる。
キヲンはえっと、と上を見上げる。