「ちょっとした、興味って奴?」
そう言って師郎はにやりと笑ってみせた。
その様子を師郎の左隣から不思議そうに黎が覗き込み、前を歩くネクロマンサーとコマイヌは立ち止まってこちらを見ている。
わたしは思わずポカンとしてしまうが、師郎は上着のポケットから濃いピンク色のキーホルダーを取り出した。
「ま、あの少年はコレ置いてってるし」
届けてやらにゃいかんだろ、と師郎はそれを眺めつつこぼした。
わたしは何も言えずその様子を見ていたが、やがて師郎が行くぞと言って歩き出す。
ネクロマンサー、コマイヌ、黎も前を向いて歩き出し、わたしもそれに続く。
暫く歩いて、わたし達は人気のない階段へと向かった。
そしてわたし達は階段を下っていった。
階段はほんのり薄暗く、人は誰もいなかったのでわたし達の足音だけが響いていた。
…と、わたし達の前を歩いているネクロマンサーとコマイヌが1階と2階の間の踊り場で立ち止まる。
わたし達の目の前の踊り場には、先程師郎とぶつかった少年が壁に背中を預けた状態でうずくまっていた。
「…」
少年はわたし達の気配に気付いたのか顔を上げるが、わたし達の姿を見とめた途端にひっと震え上がった。
ロノミアは踏み込み過ぎず、離れすぎず、『約1m』の距離を保ちながら、連続攻撃を放つ。ササキアは2枚の盾でそれを捌きながら、反撃の機会を窺う。
(まだ……)
斬撃が止まった一瞬を逃さず、ササキアが盾の側面で殴りつける。ロノミアは二刀を交差させて押し返すように受け止めた。
(まだまだ……)
刀と盾の押し合いは、盾側の優勢となった。ササキアが少しずつ、ロノミアを押し返していく。
(まだまだまだ……!)
突き飛ばされ転がされないように、ロノミアはじりじりと後退していく。それに気付き、ササキアは踏み込みながら盾で弾き飛ばした。ロノミアは後ろ足を大きく引くようにして耐えるが、上半身が大きく仰け反る。
((今!))
攻めに転じたササキアに、ロノミアは“緋薙躯”の切先を向け、伸長効果を発動する。ササキアは首を傾けて回避し、そのまま盾で殴りつける。その瞬間、ロノミアは自身の周囲に展開していた結界を縮小し、自身に薄く纏うように変形させた。
周囲の空間には、ボンビクス・モリの拘束糸が漂っている。ロノミアの結界術があることで、『安定化』の恩恵を失った糸からロノミアは身を守っていたのだ。そして、その影響は近距離で戦闘を繰り広げていたササキアにも及ぶ。
ササキアは彼女の固有魔法によって身体能力を強化していたことで、拘束糸を強引に振り切りながら行動することができていた。そして、彼女の魔法が『無効化』ではなく『強化』であるからこそ、新たに絡みつく不可視の拘束を再び振り切るためには、僅かな『タイムラグ』が生じる。
(この感覚……! 時間が止まったときと同じ、『魔力が絡みつく感覚』! マズい、振り切ることは不可能ではない。しかし、この状況は……)
「おっらああァッ!」
一瞬の隙を逃さず“チゴモリ”が振り下ろされ、ササキアは壁に叩きつけられた。
どうも、テトモンよ永遠に!です。
3月も折り返し地点に達しましたので、現在開催中の企画のリマインドです。
「何それ気になる!」って方はタグ「魔法少女学園都市レピドプテラ」かテトモンよ永遠に!のマイページから企画設定などを探してみてください。
では以下要項の再掲。
だいぶ前の予告通り、企画です。
タイトルは「魔法少女学園都市レピドプテラ」。
“魔法”と呼ばれる特殊能力を持つ少女たち“魔法少女”が集まる学園都市“レピドプテラ”で巻き起こる物語を皆さんに描いて頂く企画です。
開催期間は3/3(月)〜3/31(月)まで(遅刻投稿大歓迎)で、ルールはこの後投稿する設定と公序良俗を守った上でタグ「魔法少女学園都市レピドプテラ」を付けていただければあとはなんでもOKです!
作品形式・分量・数は問いません。
自由に設定に沿った作品を作って投稿し合うだけの企画ですので、よかったら気軽にご参加ください。
ちなみに企画者はまだ参加作品を完成させておりません(笑)
見切り発車で投稿し始めてもうまくいかない気がするので最後まで書き切ってから投稿しようと思ってるのですが…企画期間内に最後まで投稿できるかどうか。
ちなみに今回以降も企画を開催する予定はあるのですが、正直最近の参加者数を鑑みると期間を設けずにやった方がいい気がしてきたのでこの形での企画開催は最後になるかもしれません。
なので「期間を設けた形がいい!」って方はぜひ参加してみましょう(一文だけのポエムでも構いませんので)。
という訳で皆さんのご参加待ってまーす。
ロノミアは左手に握った直刀“ヒナギク”を振り上げ、照準を定めた。その様子に、ササキアは警戒を強める。
(奴の構え……足を止めている? まさか、遠距離からでも当てられる刀なのか?)
ササキアの装備していた大盾が、2枚のやや小さくなった盾に変化し、両手に収まる。
(奴の攻撃力は把握できた。これで十分対応できる)
「駆けろ……“緋薙躯”!」
振り下ろした“ヒナギク”の刀身が伸長し、ササキアに迫った。ササキアは2枚の盾を構え、防御の姿勢を取る。
刀身は盾に衝突する直前、直角に軌道を変え、防御を掻い潜り切先を首に向けた。ササキアは身体を傾けるようにしてその刺突を回避する。
(刀身の『伸長』と『変形』!)
後退し、ササキアは双盾を構え直した。その隙に距離を詰めていたロノミアが、右手に握った太刀“チゴモリ”で斬りつける。ササキアは双盾で挟み込むように受け止め、そのまま刀身をへし折った。
「あ、テメ! よくもやってくれたな……!」
ロノミアがササキアを睨みながら距離を取り、“チゴモリ”の柄を強く握ると、鎺の隙間から赤い流体が溢れ出し、折れた刀身を埋めるように再形成した。
(あの刀も修復効果があるのか……)
「くそぅ……こいつを直すの、しんどいんだぞ? だから……」
ロノミアが両手の刀を真上に放り上げる。二振りは回転しながら上空で交差し、再び諸手に収まった。“ヒナギク”は刀身の変形効果によって“チゴモリ”と区別のつかない形状に変化している。
「これで、どっちがどっちか分かんないだろ」
「どちらが何であれ、防ぎ、砕く。それだけだ」
「良い答えじゃん」
ロノミアが二振りの刀を提げたまま、再び突撃する。
師郎にぶつかった少年が立ち去ってから暫く。
わたし達は異能力を発動させたネクロマンサーとコマイヌを先頭に、ショッピングモールの通路を歩いていた。
「ねぇ師郎」
わたしがふと前を歩く師郎に声をかけると、彼は、ん?と歩きながら振り向く。
「…どうしてさっきのあの子を追いかけようと思ったの?」
わたしが聞くと師郎は、そりゃああの少年が気になったからだよと答える。
「気になった?」
わたしが聞き返すと、いやだってさと再度前を向く。
「あの少年…ほんの少しだが異能力に匂いがしたんだ」
その言葉にわたしは、え、じゃあ…と言いかける。
すると師郎は、いやと遮った。
「この前のメドゥーサの時とは違う」
俺はネクロみたいに知っている異能力を気配で判別することはできないし、と師郎は続ける。
「別にあの少年は見ず知らずの赤の他人だ」
師郎はそう言いつつ上着のポケットに両手を突っ込んだ。
「じゃ、じゃあ何であの子を追いかけようと思ったの?」
わたしがそう尋ねつつ師郎の右隣に行くと、師郎はさぁ?と言って立ち止まる。
始業開始のチャイムが聞こえた。
「あぁあ…そ、そろそろかなぁ…」
銀色の髪の毛を指に絡ませて呟いた少女_シオンは二学期からこの私立中学校へ通うことになった転入生である。転入という経験は初めてのことで、彼女は妙に緊張していた。
「…ふぅ」
そっと息を整えると、ちょうど担任がシオンを紹介したところだった。
『_では転入生を紹介します。どうぞ』
担任の声と共に教室のドアが魔法によって開く。
「!はい!失礼します」
大きな返事をしてシオンは一歩を踏み出す。_と、その瞬間だった。
「いたっ!」
シオンはドアの枠に頭をぶつけ、思わず悲鳴をあげる。……教室が静まり返った。痛みと空気感に耐えられず俯いたシオンに、担任は声をかける。
「…大丈夫ですか?」
「…大丈夫です」
シオンは緊張で失念していた。自分の身長がとても高く、大体の建物は入るときに頭を下げなければならなかったことを。