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ヌーナの音に17

リサはキクラに向かって訥々と喋り出した。
「使用人としての主な仕事は宮殿での家事でした。掃除、洗濯。食事はコックが別にいましたので私はしませんでしたが。その日々は充実していました。神であるフカセさんとサオリさんのお二人、そしてお二人の友人のナカジンさん、ラブさん。皆さん、私を家族のように扱っていただいて」
「でもそんなある日、俺達の存在を知った」
神の存在を危惧する思想。神を支持する立場の人間にとっては野放しにしてはいけない思想。
「はい。どうにかしてそれを阻止できないかと思っていた矢先に、貴方が捕まったと聞きました」
「それを利用して俺達に近付こうとしたのか」
「鍛冶屋で指輪を作ってもらって、牢獄に潜入しました」
キクラの口角が上がった。
「無茶したな」
「このことはヨーヘイさんにしか伝えてません。勝手なことをしたと、自分でも思ってます。でも、居ても立っても居られなかったんです。それは、キクラさんだって同じじゃないんですか」
「俺?」
「鈍臭くて一人だけ捕まったなんて嘘ですよね。わざと捕まったんですよね、政府の人間と接触するために」
キクラは頭を掻いた。
「まあ、人を殺すのは嫌いだからな。できれば神を殺すなんてしたくはない」
「やっぱり」
「でも買いかぶりすぎだ。俺があんな、出ようと思えばいつでも出られるような牢に入ったのはただの暇潰し。政府の人間に接触できなくてもそれはそれで良かったし、実際その可能性も低くはなかった」
「だけど、目論見は成功した」
「思いの外」
リサは大きく息を吸い込んだ。
「二人で、妥協案を見つけましょう」
神に危害が加わることなく、かつ霊魂のバランスも保たれるような案が見つかりさえすれば、この問題は解決する。

  • ヌーナの音に
  • サオリ、ナカジンは
  • 某人気グループのメンバーとは無関係です
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