今思うと、鏑木先生は私がこうなることを見越していたのかしら。
そう思わずにいられない瑛瑠は、頭痛に頭を悩ませていた。授業が始まった日は、まだ大丈夫だった。
完全に体調不良と名付けられるほど痛みが顕在化してきたのは、今日の、その授業2日目。変わったことは特にない。家でも学校でも。授業自体も、言葉や内容は人間界と魔界も変わることはないようだった。チャールズ曰く、世界は魔法で覆われていますから。そう言ったチャールズの飄々とした態度を思い出す。
瑛瑠が知る限り、魔力は攻防のみだ。盾か矛にしかなり得ない。ここの図書室に来てわかったのだが、人間の考えている魔法とやらは、やけに夢物語だった。魔法でなんでも出来たら、この世に魔法使い以外いらないのでは,そう思うほどに。
実際そんなことはできない。しかしそれでもチャールズが魔法で覆われているといったのは、そういったことを私が知っているかという品定めの意でもあったのだろうと瑛瑠は思う。事実瑛瑠は見つけたし、本当は違うということにも気付いている。パラレルワールド的なものなのだろうと言い聞かせるに留まった。
昼食はチャールズがお弁当なるものを持たせてくれているが、生憎食欲もなかった。
最後の授業前、毎度のごとく望が振り返ってくる。
「瑛瑠さん、大丈夫?今日本当に具合悪そうだよ。」
こうして何度も心配してくれる望。保健室いこうか?の問いかけに、今日何回断っただろう。
「明日明後日休みですし、大丈夫です。」
正直、限界だった。しかし、5日目にして保健室に行けようか。風邪なんかに負けてはいられない。
「今日はさすがに図書室はなしですね……」
あれから連日通っていた。とりあえず、地図を頭に入れておこうと思ったのだ。本当はもっと調べたかったのだが、望がついてきていた。変に思われないようにということを優先して、捗らなかった。ただでさえ質問の意図を取り違える自分に、不自然に思われるなと言うチャールズ。図書室に行くなんて言ったら、体調が悪いことを理由に望は確実についてくるだろう。
「ぼく、家まで送っていくよ。」
おっと、図書室を飛び越えてきた。
確かにひとりよりは、何かあったときのために二人でいる方が心強いけれど、迷惑になってしまう。答えられずにいると、明るい声。
「いんちょー、今日残れない?」
歌名だ。
飴は要らぬ。
ああもうもはや伏線があからさまだわ。どないしてくれんねん。情報量...。
今日やっと短編が一本できたのですが、とりあえず添削いれて(自分で)来週まで出す気が続いてたら出しますw
みーちゃん》
うん、休憩場所になっていればそれでいい(笑)
ここでみーちゃんに会えるの楽しみにしてるからねっ!
知らないうちに進んでたりしてね。あれ、この人誰、みたいな(笑)
めめんとさん》
わー、あからさまって言われちゃった。やめた方がいい?そっちのが楽しくない?ね?ね?笑
ふふ、情報整理しといてくださいねー?笑
おお!短編!楽しみにしてますね。気が向いたら、ですね。
望が、一瞬顔をしかめたように見えた。
瑛瑠のまばたきのあとは普通だったから、見間違いだったのだろう。
「さっき先生に捕まっちゃってさー、」
委員会の仕事だろう。
いつかのように瑛瑠は二人を眺めている。歌名の笑顔が眩しいと、今日もまた思う。
話に終止符がついたのか、望が振り返った。
「ごめんね、帰り送れなくなっちゃった。」
心配そうに、申し訳なさそうに言う望。
瑛瑠は、増してきた痛みに我慢して微笑む。
「ひとりで大丈夫ですよ。」
それでもまだ心配そうだ。自分が今どんな顔をしているのかわからなくなる。
「ごめん、歌名がいっぱい仕事もらってきちゃったみたいで、」
瑛瑠はふと気になって口を開いた。
「仲が良いんですね。」
特に深い意味はなかった。不意に口をついただけ。
しかし、望が驚き慌てる。
「そう呼んでって言われたからそう呼んでるだけで!別にぼくたちの間に特別な何かとかないから!」
何も言っていない。
思わず頭痛を忘れる。おかしくて笑ってしまった。
「私、何も言ってません。逆に、何か隠しているみたいじゃないですか。」
笑う瑛瑠に、表情を固くした望。
「ねえ瑛瑠さん、」
チャイムはいいところで鳴るものだ。
開きかけた口を閉じ、無理しないでねと言って前を向く。
瑛瑠は、今紡がれようとしていた言葉を恐れた。少しはやすぎる事の顛末に動揺もした。そして、とりあえずほっとする。
勘違いであって欲しい。いっそ、自惚れであってほしいとさえ思う。
頭痛だけではないような痛みに瑛瑠は耐えていた。
初めて慌てたハセガワくん(笑)
カナちゃんは別にいいけど(失礼)ちょっと前に霧って呼び捨てにしたよね…あれがアヤシイ。
たしかクラス替えの日にホームズ読んでたときには知らないって云ったよね?
ちなみにカナちゃんって小柄でよく喋るおきゃんな子ってイメージ…髪は長いか短いかわかんない。
んで、勉強わりとできるの(笑)教科によってムラがあるけど。って勝手な想像(笑)
シェアさん》
さすがに自己紹介後ですから、名前把握してますよ(笑)それに、瑛瑠ちゃんが気にしていた男子だから余計に…なんて。笑
私、高校入ってすぐ、それこそ副委員長をやりましたが、努めてクラス全員の名前を覚えました。体験談、ということで笑 委員長ならそれくらいしますよ、たぶん。笑
歌名ちゃんショートですよ。たしかどっかで明言してあったはずです。小柄かあ…どうでしょ。あんまりそこまで細かい設定ないので、ご想像にお任せですね(笑)でも、ショートです。笑
瑛瑠ちゃんがセミロングくらいなので、歌名ちゃんはショートです(しつこい)。キャラかぶりは避けたいじゃないですか(笑)
「ただいま……。」
思わず玄関に座り込み、壁にもたれかかる。
いつもは出てこないチャールズが、リビングから姿を表した。
「お嬢さま!?」
さすがに様子がおかしいと思ったらしい。すぐかけより、瑛瑠の額に手を当てる。ひんやりとしたその手は心地よかった。
「大丈夫。少し頭が痛いだけなの。」
心配させまいと微笑んで見せる。するとチャールズは、失礼しますねと一言言ったかと思うと、慣れたように瑛瑠の腰に手をまわし、膝裏に自分の腕を通した。嫌な予感がする。
「ちょっと、チャールズ!?」
そのまま横抱きにされ部屋へ直行。強制連行された瑛瑠は完熟トマト状態。
「さすがに着替えは手伝ってあげられないので頑張ってください。ちょっと無理をしすぎちゃいましたね。明日明後日は絶対安静としましょう。ね、お姫サマ。」
くしゃっと頭を撫でられ、悪戯めいた瞳を残して出ていく。
「病人にそれはキツいよー……。」
即行で着替え、倒れ混むように横になり、瑛瑠は顔を枕に押し付けた。
この2日のふたりの、主にチャールズの合言葉は絶対安静。瑛瑠としては、ピークがその日の夜だっただけに、外へも出してもらえないのは多少のストレスでもあり。
過保護だと言う瑛瑠に対し、お嬢さまの身に何かあったら旦那さまに顔向けできませんと言うチャールズ。そもそも学校にいればどうもできないのにと言い返したくなったが、それは違う気がしたので口をつぐむしかなかった。
瑛瑠の頭痛の原因がわからないことを、どうやらチャールズは気に病んでいるようで。ただの疲れだよと言う瑛瑠の言葉を、最後まで良しとしなかった。逆に思い当たる節があるのかと言いたくなる。
この2日でほぼ治った瑛瑠は、休日最後の夜を過ごしていた。この日はダージリンティー。チャールズの気遣いが見てとれる。
「大丈夫ですか?」
「もう大丈夫。」
口をつけると、ふわっとベルガモットが香る。相変わらず美味しい紅茶を淹れるなと感心していると、チャールズが尋ねてきた。
病人の世話にも紅茶の淹れ方にもソツのないチャールズ…
「旦那様」ってそりゃあ王様やもんね(笑)ほんまに怖い(笑)
いや、名前覚えてるくらいはまぁ当然としよう。だけど「キリがなに云ったか知らないけど」って無造作な口調に、なにか隠れた親密さを嗅いだ気がする。アヤシイ。知らないフリして陰ではツーカーだったりして(これは昔からのギワク)…
あ、エルちゃんは確かに長めっぽい。黒髪だったよね?あれ、瞳の色は?
シェアさん》
ほー…そんなところまで(笑)
確かに、無造作に言い切らせるようにはしましたが…ふふ(意味深)。
いや、瑛瑠ちゃんの髪、蜂蜜色です(笑)いわゆるハニーブラウンってやつですね。どっから黒髪がでてきたんでしょ笑
眼の色は淡褐色で。ほんとはピンクとかにしたいんですけど、高校でそれはだめだよなーということで自制(笑)まあ、なんでもアリな世界ではあるんですけど、そこはちょっとこっち側にひっぱって。笑
「何か、悩みはありますか?」
この、ほぼ軟禁状態だった2日間、学校であったこと、調べたことを、細かいところまでチャールズに報告していた。瑛瑠だけでは意図を図りかねた他人の言動など。例を出すなら、鏑木先生の性格を加味した上でのあの発言だ。
たしか、それを教えてから、チャールズは外に出てはいけないという2日間命令を出したはずで。鏑木先生が瑛瑠を見て何か思ったのかと思いつつも、人の体調不良を予言できる人がいようか。
そんなわけで、瑛瑠の中では出し尽くした感があった。だからこそ、ここで可愛いげのない回答をすることも容易だったのだ。イニシエーションについて、共有者について、ヴァンパイアの彼について。しかしそれは、チャールズの厚意にそぐわないのを知っていた。
だから、大丈夫だよと言おうと思ったのだが、ぶつかったチャールズの視線にそんなことは許されなくて。
そうして沸き上がってきたひとつのこと。
「お嬢さま?」
「ねえ、チャールズ。」
姿勢を正す。
「チャールズは恋をしたことがある?」
うおおい。(驚愕)
それだけ。
めめんとさん》
はい。笑笑
鳩が豆鉄砲を食らったような顔。
「は……?お嬢さまは恋をしたんですか?」
「もう、また質問に質問で返す。」
ぷうっと頬を膨らませる瑛瑠と、動揺を隠せないチャールズ。
「あの、お分かりかと思いますが、」
「私が自由に恋愛できないことくらいわかっています。」
私じゃなくて,と切り返す。
「何かっていうと、すごく気にかけてくれる人がいるの。最近、帰りは途中まで送ってくれる人。
一昨日、クラスの女の子にその彼と付き合っているのか聞かれて。私はこの生活をしたことがなくてわからないのだけれど、周りからはそんな風に見られているのかと思ってね。
もしも彼が想ってくれているなら、私のこの態度は思わせ振り?相手に失礼な態度だったのかな。そもそも、彼のこの態度はそういうことでいいの?自惚れであるならそうであってほしいのだけれど。」
一気に話す。
仮にも一国の姫。そして、パプリエールには存在を知るだけのフィアンセがいた。自由に恋愛をできるはずがないのは、幼いときから言い聞かせられてきたことでもある。だから、経験がない。
もしもチャールズにそのような経験があるのなら、望の行動の真意がわかるのではないか、そう思っての言葉だった。
一瞬、チャールズは目を光らせた。
「それは、ヴァンパイアの彼に気を付けろと言われた人物ですか?」
やはり質問には答えてくれない。
「そうだよ。」
「いつから一緒にいましたか?」
「……初日から。前の席って、言わなかったっけ?」
「そうでしたね。あと、鏑木先生には何と言われたんでしたっけ。」
「体調管理には気を付けろと……。」
なぜこんなことを聞くのだろう。
「お嬢さまはその彼についてどう思いますか?」
彼とは望のことでいいのだろうか。さらに、どう,とは。
「好い人だなと思うけれど……ねえ、どうしてこんな質問をするの?」
チャールズにまっすぐ見つめられる。もちろん、質問には答えない。
「明日もし体調が悪くなったら、すぐ鏑木先生へ伝えてください。いいですね?」
チャールズの目には、珍しく余裕の色がなかった。頷くしかない。チャールズも予言者になろうとしているのだろうか。
悩み事はと聞かれたから答えたのに、これでは解決になっていない。
「つまるとこ、私はどうしたらいいの?」
はい、ベネノムの色が見えます。
なんとなくの繋がりが目まぐるしくビシバシとはまっていく...。ついていけないw
今日うちの学校の文化祭の中止が決定して。なんかすごい寂しいです。
めめんとさん》
ふふ、過去のの少しずつ思い出してねーという気持ちを込めて書いています(笑)ということは、絡まないわけはないんですねー笑
そのなんとなくは正しい勘ですよ…たぶんね。笑
平和そうに見えて実はちゃんと繋がってますよ…??笑 注意深くご覧くださいな。
えー…なぜ…。めめんとさん、最後ではないですか?寂しすぎますね…。どこへも向けられない気持ち、ここへでも、もちろん掲示板へでも、ぶつけてみては…??
文化祭で作れたであろう思い出を上書きできるほどの思い出をつくりましょ。
PS》
ファ、ファイトスタンプ…!笑
ありがとうございます、瑛瑠ちゃんにむけられたやつかな…?笑
初めてだ(笑)ちょっといつもと違うの嬉しくてレス書き込んじゃいました笑
ファイトスタンプはおもろいw
一応まだ二年生なんで最後ではないんすけどね。それでも来年は受験やし、全力ではやりにくいかなあ、と思う次第で。
とりあえずできることをやりきったる!そう思うこの夏です。
めめんとさん》
お誕生日迎えてらしたんですね!笑
早とちりすみません。
中2高2はフリーダァァァァァァァムじゃないですかー…私、あれ言いたかったのに…。
うんうん!いい夏にしましょ!!
正直、近づくなと言われても無理な話である。瑛瑠が気にしているのは、今後どう対応していくべきかということ。
少し思うところがないわけではないが、好い人であるという感想は変わらない。今、気まずくなりたい人物ではない。
「暗に牽制するなんてことはできますか?」
これまた無茶なことを。
瑛瑠の表情を見て苦笑いのチャールズ。
「1度、断ることを覚えましょう。ひとりがいいと伝えるのです。図書室へ行くときなんてベストじゃないですか。傍に居させてくれる存在を1度離れ、あくまでクラスメートを振る舞う。
そうですね、お嬢さまは正直ひとりでやっていけるのはわかりますが、女の子の御友人がいれば心強いと思いますよ。まあ、作ろうと思って作るものではないですが。」
友人とは。考えたこともなかった。
自分は驚くほど大人に囲まれた生活だったのだと自覚する。またもや難題がつき出された気分だ。
「チャールズにはいるんだよね?そう呼べる存在。」
「はい。」
久しぶりに柔らかく微笑うチャールズを見た気がした。
いつもわくわくしながら読んでます(^○^)
チャールズ、ミステリアスなので どんな友人がいるのか気になりますね^ ^
パプリちゃんにもすてきな友人ができると良いな……
カチョフさん》
わわわ!とっても嬉しいレスをどうもありがとうございます!!
嬉しいなあ…ぜひぜひ、私の楽しみを一緒に楽しんでくださいね。
学校生活編まだまだ続きますから、瑛瑠ちゃんにもきっといいお友だちができるはず…
「どんな人?」
形の整った眉をちょっとあげ、考える風にする。
「馬鹿でお調子者でどうしようもなくて、」
おっと。貶しているのだろうか。
「とてもかっこいい人です。」
「……褒め言葉?」
「もちろん。」
チャールズはとても楽しげだ。こんな表情もするのかと思う。
「あとは、腹が立つぐらいかっこいいやつもいますね。」
「かっこいい人がいっぱいいるのね。」
「かわいい人もいますよ?」
とんでもない皮肉めいた言い方。しかし相変わらず楽しそうな表情。チャールズにこんな顔をさせる友人とは、さぞ、
「素敵な人たちなんでしょうね。」
華やかに微笑むチャールズは肯定しているということなのだろう。
「ねえ、チャールズ。その人たちとはどこで知り合ったの?」
僅かな間があった。
「高校です。」
瑛瑠と同じとき。
「それって、」
「人間界に来たときですよ。」
今度の笑みが儚げに見えたのは瑛瑠の取りようだろうか。
「彼らは、すごく大切な存在です。」
初めて、瑛瑠が聞いてないことを、自分の言葉で紡ぎだすチャールズ。
「無条件に信じられる、そんなそんな存在。」
きっと、瑛瑠が驚き、それでもはにかむように微笑んでいたことに気付いたのだろう。
少し自嘲気味の笑みを溢したチャールズ。
「ですから、お嬢さまにもきっとそんな存在が現れますよ。」
ここへ持っていきたかったらしい。見事な帰着に瑛瑠もにっこりする。
確証もないありがちな言葉は、今の瑛瑠にとって何よりも嬉しいものであった。
「チャールズから自分の話をするのは初めてだったから、嬉しかった。」
ぽろっと零れた言葉がチャールズに苦笑をもたらした。
「少々語りすぎました、すみません。」
瑛瑠がいかにも興味津々といったように碧い眼を覗きこむ。
「個人的興味として、チャールズの恋愛を聞きたいのですがっ……!」
そんな瑛瑠をいつものように
「はいはい、それはまたの機会に」
とあしらっていたのだが、言いかけて止まる。
すると、微笑んで言うのだ。
「お子サマには少々刺激が強すぎると思われるので話せません。」
成人したらお話ししてあげてもいいですよ?と、そんなことを口走る。その笑みがあまりに魅惑的であてられそうになった瑛瑠は、顔を引きつらせておやすみと言わざるを得なくなった。
みーちゃん》
久しぶりだね(笑)
わー、チャールズさん色々やらかしてたよ…??笑
まとめないと最近の話読めないね。時間を見つけてやりましょうか。
今思えば、その手の話をかわしたいだけだったのかもしれない。しかし、チャールズのことだ。何があってもおかしくないと考えを改めた。
そして、昨夜の華やかな笑みに共存していた儚さを想う。一変した魅惑的なそれを思い出し、朝ながら小さくため息をつく。チャールズの過去に触れるには、自分は幼すぎる。それを悟った瑛瑠は、いつも通りチャールズにおはようと声をかけた。
ぐぬう...。
それだけ。(最近多いな)
みーちゃん》
前回と今回の話だけ読むと、チャールズどうしたってなる笑
実はチャールズの過去に触れた話を書いたこともあったんだけど、それってここに載っけていいのかな…っていう笑笑
めめんとさん》
ふふふ、はい。笑
無理しないでくださいねと送り出された瑛瑠は、朝の調子はよかった。むしろ、久しぶりの外で清々しい気さえする。
名前を知ってからまだ口の聞いたことのなかった霧英人と、何日かぶりに玄関でご対面。何も言わないのはおかしいので、仕方なくおはようございますと声をかける。彼は無表情でおはようと返してきた。棚の扉を閉めた彼は口を開く。
「体調、大丈夫?」
この人も予言者だろうか。それとも、
「私、そんなにわかりやすいですか?」
体調を崩したのは3日前。言葉も交わしていないその日に体調を崩し、後2日は顔すらあわせていない。となると、その言葉を交わしていない3日前から瑛瑠の不調に気づいていたということだろうか。
瑛瑠も扉を閉める。何ともなしに英人の横に並ぶ。英人が待っている風だったから。
「君、今どのくらいカードを持っている?」
こいつもか,と思わないでいられなかった。自分で話しておいて質問に答えない。
チャールズでの慣れもあり、思考の切り替えは早く、その台詞の意味へとすぐ繋がる。
たぶん、情報のこと。
おっ、ついに胸襟を(ほんの数㍉)開いた!
しかしちゃんと会話をするとは云っていないこの半端さ加減…こいつもSなのか、それともただ不器用で無愛想なのか。
あれ、そう云えばこの子ひとりでホームズ読んでたし、ほかの子とは喋らないの?ハセガワくんとは密約が(まだ云ってる)
シェアさん》
ちょっぴりだけ、ね。
個人的に後者を推します。笑 かわいいかっ…!
本を読んでいたのは、先生方の朝会議により静かにしてろという命令があったからですね。イケメンさんですし、友だちはいるはずで女の子からも騒がれていることでしょう。
あくまで瑛瑠ちゃんよりの神視点なので、長谷川くんとの密約とやらは瑛瑠ちゃんの目につかないところで行われているハズです。
※当レス内容は本編とまったく関係はありません。
シェアさんのせいでこんな注釈つけなきゃいけなくなった!笑
シェアさん》
ちょっぴりだけ、ね。
私は後者を推します(笑)かわいいかっ…!
本を読んでいたのは、先生方の朝会議により静かにしてろと言われたからですね。イケメンくんですし、友だちはいるはずですよ。女の子にも騒がれていることでしょうし。
これは瑛瑠ちゃん寄りの神視点なので、長谷川くんとの密約とやらは瑛瑠ちゃんが見ていないところで行われているハズです。
※当レスは本編とまったく関係ありません。
シェアさんのせいでこんな注釈つけなきゃいけなくなった!笑
正直、何を基準しているのかわからないが、ここで下手に出てはいけないだろう。そして、彼に仮面の笑顔は通じない。だからこそ、にっこり微笑んでみる。この精一杯の嫌味が伝わるだろうか。ここまでの思考およそコンマ5秒。
「あなたと同じか、それ以上です。」
一瞬の驚きを見せたが、ふっと嘲笑った。
「やっぱり賢いのか。ただ現時点では、君の体調不良の原因に気付いている僕の方が上手。」
体調不良の原因。わざわざ口に出すほどでもない疲れやストレスといったことではないと英人は言いたいのだろうか。
「霧さん。」
「英人でいい。」
「……英人さん、あなたはどこまで掴んでいるのですか。」
何でもないといったように言う。
「まだ1週間だし、特には。」
優秀者の余裕、だろうか。先の自分の言動を省みて恥ずかしく思う。
「祝。」
「瑛瑠でいいです。」
せめて、対等に立ちたいと思った。
既視感ある状況に、横を歩いていた英人が少し顔をこちらへ向けた。
「……瑛瑠、まだ君は1番気付くべきことに気付いていない。」
前のような嫌味の色は抜けていた。
違うな,そう小さく呟いたのを瑛瑠の耳はキャッチした。
教室の扉の前で立ち止まり、瑛瑠を向いた。
「気付こうとしていない。君のその頭があって、なぜ気付けない?」
英人は視線と語意を強くして言う。
「君が欲しがっているものは目の前にある。
最優先事項を見謝るな。」
PS》
下手→したて
上手→うわて です。
へた,じょうずって読まれかねないよなあと思ったので、一応の注釈をつけておきますね。
わ、しかもめちゃくちゃ決めなきゃいけないところで誤字!
見謝るな→見誤るな ですね…英人くんほんとごめんなさい…。
(意外と優しいキリ氏の微かな苛立ち…一体なんなのだ)
ねぇピーたん一つ訊きたいんだけど、魔法で人体に微かな影響を与えて体調をいじくれるのはまぁ、ヨシとしよう。そのパワー(?)の残滓みたいなものを感知するのってどれくらいの難題なの?本人を差し置いてわかっちゃうキリ氏(と云うかヴァンパイアの血?)がすごいのは認めるけど、チャールズ氏にもわからなかったんだよね、話をちゃんと聴くまでは?あれ、チャールズ氏ってなに族にあたるん?
※以上の考察・疑問点はいち読者の無責任な推測、個人的感想によるものであり、本編ストーリーになんら影響を及ぼすものではありません。すべての着想はシャア専用ボールもしくはシェアさんによるため、TOKYO FM及びちょっぴり成長したピーターパンは一切責任を追いかねますことをご了承ください。関係者一同。
あああ。気にかけてるくせに素直じゃない。典型的な無愛想男ですねえ。パプリがハセガワと喋ってるときも気が気でないんだろうなあ(ニヤニヤ)
恥を忍んで短編投稿しちゃいます。
シェアさん》
英人くんは優しいんです。その真意とは――!?
はい、一つ訊かれました。
まず、体調はいじくれません。なんかもう、シェアさんが微妙に本編先走ってるのであれですけど、ちゃんと 魔力と体調やら何やらについての説明は後々でてきます。というか、昨日その場面を書き終えたところなんです(笑) 魔力には相性があるというフレーズをどこかで挿入したはずなのですが、それもひとつ気にしててよ?というメッセージでもあり。気にしててよ?のメッセージに説明を入れないほど不親切でもありませんから。笑 もう少しお待ちください。
さて、魔力の残滓ですか。普通にしていれば彼らは人間と変わりません。と、瑛瑠ちゃんが話しているので変わりません(本編談)。
銃の保持が許されている国がありますね?銃と魔力は同格です。そもそも、安全保持のために身についてしまったもの、それが魔力です。本当は読者のみなさまに魔力についての認識は委ねようかとも思ったのですが、シェアさんがつっこむので明かしてしまいました。笑 加えて、こちらの記述も、刃物という例を出して軽く触れてはいたので、不要な説明であればすみませんでした。
チャールズ氏は、魔力を感知できなかったなどという発言は一切しておりません。さらに、チャールズ氏は学校へ行っていませんし、瑛瑠ちゃんのクラスメートには誰一人として会っていません。しかも、彼の性格を考えてみてください。気付いてても、お嬢さまに言うと思いますか?
チャールズに関する様々なことが明かされていない今、詳しいことは何も言えませんが、彼は相当な人物です。侮ってはいけませんね。ふふ。
まったくもう。シェアさんは先走りすぎなんです!
※当レスはもしかしたら本編に関わる節が出てきているかもしれませんが 一切責任はおいかねます。
責任おうとしたらシェアさんじゃないですか!?笑
PS2》
シェアさんからつっこみをいただいたので、少しまとめますね。
チャールズ→ウィザード(魔法使い)
祝瑛瑠・パプリエール→ウィッチ(魔女)
霧英人→ヴァンパイア(吸血鬼)
さらに、英人くんの付き人はヴァンピール(吸血鬼,女性)ということが、すでに明かされている魔力持ちです。
カタカナ表記にしてあるのは、そちらのほうが雰囲気を壊さないからという理由です。さらに、魔法使いと吸血鬼に関しては男女分けました。そのため、混乱する方もいたかもしれませんね、すみません。
というわけで、チャールズは魔法使いさんです。
これからも少しずつ登場してきますよ、お楽しみに。
みーちゃん》
遡ってくれるだなんてありがとう…!
タグからはいればいいよ、そうすればロスメモ1発ででてくるから(笑)
めめんとさん》
英人くんはどう思ってるんでしょうね、長谷川くんのこと笑
長谷川くんも長谷川くんで英人くんに対する想いは複雑なようですし(笑)
短編いいですねー、私も書きたい笑 でもなんだかんだいって短いのはほとんど書いたことないに等しいんです。いつかやってみたいな。楽しみにしてますね。
瑛瑠の欲しいもの。きっと共有者のことだろう。同じ境遇であろう英人もそうだろうと考えるのは容易い。
目の前にある とは、英人自身がなるという解釈でいいのだろうか。
では、最優先事項とは。
英人は、今1番気付くべきこととも言っていた。その前には まだ、とも。
似た台詞を聞いたことがある。
"どうせ気付いてないんだろ?"
彼の正体がヴァンパイアだと、そういうことではなかったのだうか。まだ気付いていない に引っ掛かりを覚える。
上手と言った英人が直前に気付いていると言ったことは、瑛瑠の体調不良の原因。
瑛瑠は何か繋がりそうなのをひたすら紡いでいく。
挨拶の後に1番に言われたのは体調についてだ。瑛瑠がわかりやすいかどうかの前に、すでに知っていたのだ、原因となりうるものを。それに瑛瑠が気付いていないから、警鐘を鳴らした。
しかし瑛瑠は、その事実を受け入れたくなかった。そしてその理由が非常に人間的なことが、自身を苛立たせた。
慣れが早いのか、流されやすいのか。
ようやく瑛瑠は、現実に目を向け始めた。
帰りは、多少の頭痛のために大事をもって早く帰ることにした。できるだけ、人に会わないようにすぐに教室を出たはずなのだが。
「あれ、今日は図書室に行かないんだね。」
「……はい。」
なぜ今日はここにいるのだろう。
「もう帰るんだよね?送っていくよ。」
「いえ、今日は大丈夫です。」
望は目を丸くした。どうして,と言いたかったのだろうが、それは明るい声に阻まれた。
「いんちょー!あ、瑛瑠ちゃんだ!ふたりとも帰るの?
なら途中まで一緒に帰ろー。」
瑛瑠が口を開く前に望が口を開く。
「ごめんね、歌名。瑛瑠さんと一緒に帰るんだ。」
「え?」
一緒に帰るなんて言っていない。歌名がいることに言及なんてしていない。
「だから、一緒に帰れないんだ。」
歌名は悲しそうな顔をする。
「そっか……。」
慌てて望の腕を掴む。
「待って、長谷川さん。私、あなたと一緒に帰るなんて一言も言ってないです。」
望は望で顔をしかめる。
「いつも一緒に帰ってるよね?」
どうしてそんなこと言うの?まるでそんなことを言いそうな顔である。
頭痛が増していく。
「一緒に帰ろう。」
掴んでいた腕と反対の手で瑛瑠の手が掴まれる。
思わず振り払ってしまった。
「ひとりがいいんです……ひとりにさせてくださいっ……!」
みーちゃん》
んねー、ウィザードとか書くからわからなくなる(笑)
魔法使いさんなんですよー、チャールズになら魔法かけられたいね。まあ、私たちの思う魔法とは、この話の本業の方々からすると夢物語みたいだけど…。
ふふ、このふたりなー…どうだろうね?笑
なんか可愛いんだよなー、ふたりとも。何とも言えない感じがね(笑)ああ、瑛瑠ちゃん軽く逆ハーなってるからはやく女の子のともだちつくってあげたい…。
一匹狼瑛瑠ちゃん強し。
玄関に座り込んだ瑛瑠は、チャールズに待てをする。
「私は犬じゃありません。」
「またお姫様抱っこされたらかなわないもの。」
「……お嬢さま。」
「っ!」
チャールズのひんやりとした両手が、瑛瑠の頬を覆う。ずっと伏せていた顔を、チャールズによって無理矢理上げさせられた。自分でも視界がぼやけているのがわかる。
「どうしてっ……どうしてこんなに関係が拗れるの!?どうしてこんなに嫌なことがあるの!?」
思わずチャールズにぶつけてしまう。八つ当たりだとはわかっている。でも、抑えられない。涙がとめられない。
「私が悪いの?縛られているように感じるのはなぜ?私は誰かのものなの?」
瑛瑠の体が強張る。チャールズが抱き締めたのだ。迷子になってしまって、出口が見つからない瑛瑠を落ち着かせるために。
「こんなことになるなら気付きたくなかったよ……。」
チャールズを受け入れた瑛瑠は、やっと静かに泣き始めた。
ぬおう。
家と学校のキャラがはっきり分かれてるタイプだね、エルちゃん。ドラマチックな展開が続きすぎてそろそろこっちの息が切れそうっす。
やっと気づいたんだがローマ数字の使い方ヤバイなwww気にしてなかった
XCIX、かな?
みーちゃん》
効果音(笑)
そうよねえ、かっこいい。あとチャールズ、たまに軽くホスト感でるよね←
私がこんなこといっちゃいけないかあ。笑
おばあちゃんの心臓には悪いよ…(笑)
そろそろ英人くんにも出番をあげてよ私。
めめんとさん》
そうなんですよね。まあ、敬語を使う使わないっていうのもありますが、基本壁を作ってかかるタイプですね。だから、まあチャールズはすごいわけで…。
彼女の家のキャラを出せる人こそが、大切な人というか、仲間というか友人というか…。
あああ気付かれちゃった。黙っていようかとも思ったんですけど、正しくないんですよねこの表記。ただ、私が見やすい分かりやすいって理由なだけなんですけど(笑)
私語(←辞書的な意味ではなく、私が作り上げた言葉という意味の私が作り上げた言葉)みたいな感じで、よくまあ存在しない単語も、あれ間違いじゃない?とかいうのも頻繁にあると思います。それは、私語なんです。このローマ数字も、私の分類しやすいようにしただけの私語。いうなればこだわりです(笑)
本当はルビふりたい!っていうのもたくさんあるのですが(下僕で、"げぼく"か"しもべ"かでだいぶイメージが違うように)、しかたがない。
ほんとうは、90はめめんとさんのいうようにXCです。笑
みーちゃん》
瑛瑠ちゃん偏頭痛か…?笑
了解よ…!頑張れ!!応援している。
たぶんいつでもここにいるからたまに遊びにおいで(笑)