LOST MEMORIES CⅣⅩⅡ

はっとしたときには、目が覚めていた。
「夢だ……。」
人間界に来てから見る夢は初めてではなかったが、ここまで鮮明に残っているのは今日が初めて。身に覚えのない夢。
しかし、心臓がばくばくいっている。いつぞやの、チャールズによる心臓の労働過多とはまた違う、嫌な感じ。
見慣れた天井。ここは自分の部屋。額には生ぬるく濡れたタオル。
「保健室にいたんじゃ……。」
左手の薬指には、確かに英人に借りた指輪がはめられている。
上半身を起こすと、嫌な汗が背中を伝った。
目の前には白。瑛瑠のベッドのふちに突っ伏して眠るチャールズの頭。
体が重い。そして、状況を把握できていない。さらに、身に覚えがないとはいえ、夢の内容はパプリエールの過去に違いなくて。
壁にかかる時計を見る。午前2時。どおりで暗いはずである。目はその暗さに慣れ、いっそカーテンから漏れている月の光が眩しい。
濡れたタオルと突っ伏し具合からみて、ずっと付いていてくれたのだろうと察する。
彼こそ、夢に出てきた彼。やっぱり、初めましてじゃなかった。そう思う。しかし、瑛瑠はチャールズを忘れ、チャールズは瑛瑠に嘘をついた。なぜ。
さらに、エルーナを名乗るあの少年も、きっと知っている。しかし、あんな過去は知らない。狐のことも、知らない。
最後の浮遊感。あれは、投げ飛ばされたのだ。ジュリアという彼女に。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-17 23:44
  • PS》
    恥ずかしすぎるミスを発見。
    どおりで→どうりで、です。
    ごめんなさい。
    初歩的な間違いに穴があったら入りたい気分です。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-19 10:18
  • あー、たまにやるやる。気にしないでいいんじゃないwww穴から出てきてー!
    最近宿題に追われて埋没してました。久しぶりに見たら結構進んでた...
    これからもみてるよ(o^-')b !

    みー♪≫スマホデビューおめ!掲示板見放題だな!

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-08-21 21:50
  • みーちゃん》
    あああもう久しぶりっ!今度は甲子園にかまけて全然こっち来る余裕なくて(笑)
    携帯買ってもらったのねっ…!今の子は持つの早いなあ笑
    またちゃんと始めます(笑)
    眠るチャールズも起きるチャールズもお楽しみに!

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-22 19:51
  • めめんとさん》
    めめんとさぁん、お久しぶりです泣
    まずはまずは、大阪桐蔭おめでとうございます!これ、めめんとさんに絶対言わなきゃって思ってて笑 大阪ですしっ!
    やっぱり強かった絶対王者。最後まで闘志でぎらぎらのあの眼!本当にいい試合を見ました。金農もよかったよね!?ね!笑
    てな感じで、ひたすら甲子園にかまけていたんで、なかなかこちらへ顔を出せず(笑)また再開するので、ぜひ読んでください(笑)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-22 19:56
  • 大阪桐蔭、強い。
    自分的には地元最強校の桐蔭と、103年ぶり決勝進出の秋田金足農、どっち応援したらいいんか凄い悩みどころで。結局桐蔭が圧勝をおさめたけど、もう感嘆の息しか出ないっす...。
    うちはテレビ見れないんでリアルタイムでは見れなかったんだけど(残念すぎる)素晴らしい戦いをありがとう!高校野球100年!

    めっちゃ語っちゃったwww

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-08-22 21:14
  • みーちゃん&めめんとさん》
    ほんともー、マンガでした、金足農業高校(完全秋田贔屓ですすみません)。挙げればキリないし引かれるだけ語ってしまうから心のなかに納めておくけどもね…!?一回大会と百回大会で決勝とかほんと何っ…(ナイアガラの滝)。
    ただ、優勝の影にはやっぱりドラマはたくさんあったんだよねえ。ほんと高校野球最高です。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-22 22:40

LOST MEMORIES CⅣⅩⅢ

チャールズが前に、ものすごく優秀なヴァンピールがいると話していた。それがジュリアだとしたら。
そして、
「チャールズが私のお兄ちゃん……?」
いや、ない。聞いたこともない。
そもそも、王の娘は自分一人のはずだ。
「チャールズ、あなたは一体誰なの……?」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-22 19:49

LOST MEMORIES CⅣⅩⅣ

窓から零れる光が反射し、キラキラとしているその白い髪を、瑛瑠は自分の指でなぞった。
優しいその刺激に、チャールズは反応する。
「お嬢、さま……?」
「あ……起こしてごめんね、チャールズ。」
ぱっと引っ込めようとするその手首を、逃がすまいとチャールズに捕まれた。
「大丈夫ですか!?」
寝起きだというのに、こちらが驚いてしまうほど見開かれた碧い眼。ただでさえ白い肌はさらに白く、まさに顔面蒼白であった。
自分の部屋にいることに状況の把握は遅れているものの、瑛瑠としては軽く卒倒しただけである。それが、どれ程重いかの個人的認識は置いておいて。
「大丈夫だよ。焦りすぎ。」
ふふ,と笑ってみせると、チャールズは脱力したように項垂れる。
「2日も目を覚まさなかった人が、何をおっしゃっているんですか……!」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-22 22:34
  • あれれ、そう云えばこれって保健室から直帰だっけ?
    ヤバいね、死にかけてたんだエルちゃん!もしかしてキリがお見舞いに来てたりして…

    シャア専用ボール
    男性/31歳/岡山県
    2018-08-22 23:46
  • シェアさん》
    本来であればお久しぶりなはずなのに、ついさっきまで会っていたみたい(笑)

    そうなんですよー、どうやってこの家にたどり着いたんでしょうね。チャールズさんがお迎えに来たんでしょうか。書くつもりがないからここに呟くっていう(笑)
    英人くんは…どうでしょう。こちらは触れないでおこうかな…笑

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-23 19:04
  • みーちゃん》
    チャールズさんイケメンよね…こんなに心配させるとか、瑛瑠ちゃん罪だわ。
    チャールズの髪はきっとさらっさら。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-23 19:05

LOST MEMORIES CⅣⅩⅤ

「……。」
聴力に難はないはずだけれど。
「ごめん、チャールズ。たぶん、聞き間違えてしまったと思うの。なんて?」
チャールズはねめつけて、もう一度口を開く。
「2日、目を覚まさなかったんです、お嬢さまは。」
どうやら聞き間違いではなかったらしい。それにしても、2日という時間が流れていたとは。
「よく、お医者さまに診てもらおうという思考にならなかったね。」
何もかわりないのだ。目を覚まして、そういえば保健室にいたよなということを思い出さなければ、深夜に目が覚めてしまったことと何一つ変わらないし、違和感もない。
心配されたいなんてさらさら思わないが、変に過保護なチャールズがこの状態をそのままにしておくとも考えられず。
どこから聞けばよいかわからず、思ったことがそのまま口をついて出てきてしまったのは仕方ないとも思う。
チャールズが何も言わなければ、自分の着替えをまさかチャールズがやったのかと聞こうかなんて呑気に思っていると、
「ウルフの魔力にあてられた体調不良を、どうお医者さまに説明するんです?」
と返される。確かに。
じとっと向けられたその目を見つめていると、チャールズは深い深い、それはもうマリアナ海溝より深い溜め息をつき、再びベッドの、瑛瑠にかけられた布団へと顔を埋めた。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-23 19:02
  • 魔界にもマリアナ海溝があるのか...?(愚問)

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-08-24 15:16
  • みーちゃん》
    嬉しいわっ…!
    うん、そこらへんは現実的っていうか、人間界慣れしてるよね、チャールズさん(笑)
    ここほんとは、よく病院に連れていかなかったねって台詞だったんだけど、王国の姫さまが病院いくかって笑 きっと専属のお医者様だよなーって思って、何気書き換えていた部分でした(笑)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-24 18:50
  • めめんとさん》
    はい、ではここでちょっとだけご説明。
    これは所謂神視点なんですね。限りなく瑛瑠ちゃんに寄せてますし、ところどころ瑛瑠ちゃんの心の声というか呟きも出てきますが、あくまで神視点。つまり、瑛瑠ちゃんが語っているわけでもなければチャールズさんが語っているわけでもなく。すべてを知り、その上で語る神視点はまあ結構なんでもありなわけで。
    マリアナ海溝は、人間界にあります。よね。笑
    魔界にあるという記述は出てきておりませんので、そこらへんはご想像にお任せしますが、語り手はマリアナ海溝を知っているようです。登場人物の気持ちや状況を好き勝手知ることができるのが、私がとっている書き方でございます。
    と、いうわけで!これからも、固有名詞がばんばん出てくる可能性が否めないので、ここで説明させてもらいました。

    余談ですが、神視点をとる芥川龍之介の『羅生門』は最後をもやっとさせているんですよね。まあ、『羅生門』だけではないですが…。神(ここでは第三者って表した方がいいのかな…?)でさえわからない(誰も知らないにどこまでの含みがあるかは置いておいて)という終わりが、すごく魅力的で。だからこそ個人的に、『羅生門』のつづきを考えようなどという授業はナンセンスだと思うのですが…まあ、はい。笑

    長々とすみません。つまるところ、マリアナ海溝は人間界には存在しています。神さまは(たぶん)何でも知っています。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-24 19:04
  • 羅生門の続きは僕もナンセンスやと思います。
    思いの外長かった...w

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-08-25 06:13
  • めめんとさん》
    ごめんなさい(笑)
    私は、一言えばいいことを十言わなければ気が済まない性格と言いますか、誤解を招く言い回しを避けたいがためにくどくどと説明してしまう質なので(もう知られてる…?笑)、どうかまた始まったよと思っていただければ…笑

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-27 14:32

LOST MEMORIES CⅣⅩⅥ

「正直、ここまでとは思っていませんでした。完全に私の落ち度です、すみません。」
顔はうずめたまま、彼にしては珍しく聞こえにくい声で話す。上半身は起こしたまま、黙って耳を傾けた。決してチャールズのせいではないのだが、とりあえずは。
「その指輪……例のヴァンパイアの彼ですか?」
「ええ、随身具ですって。彼、成人していたみたい。」
しばし沈黙。
「彼はどうしたんでしょうか。」
ぽつりと、心許ない声でチャールズは呟く。
瑛瑠は、もしかしたら自分は想像以上にチャールズに心配をかけたのだろうかと思い至る。ここまで不安げなのはみたことがない。
チャールズの呟きはもっともだ。同じ特殊型として、ウルフと相性が悪いことはわかりきっている。
“僕は大丈夫”と、たしかそんなことを言っていたか。あそこまで言い切れるのは、何か策があるからだろうと思っていたが、それが何なのかは思いつかない。
「まったく、自分が情けないです。」
吐き捨てるように言われ、瑛瑠は閉口する。
え、どうしよう。なぜ。学校にいたし、仕方のないことだ。
そう、声をかけようと思っていた瑛瑠が、あまりにも子供っぽい返答で呆れるまで、あと5秒。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-24 19:07
  • みーちゃん》
    えへへ、意外とね(笑)
    気付いてもらえれば嬉しいし、全然気付かなかったっていうのもまた嬉しい。

    うん、そういうことでいいと思う。笑
    あんまり意識してないんだけど、書きやすいんだよね、第三者と主人公をちょっと織り交ぜて書くの。前までは、完全に主人公視点で書いていたのだけれど。

    えー嬉しいよー。なんだかすごく変な文章かきそうだ。笑
    作文…何をテーマに書こうねえ(笑)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-24 23:10

LOST MEMORIES CⅣⅩⅦ

「一番近くでお嬢さまを守らなければならない私が傍にいて、何が悲しくて成人したてのヴァンパイアにマーキング紛いの行為をされて返されなければならないのです。」
何だろうこの感じ。
相変わらず顔は上げないチャールズの、その髪に触れる。
もしかして。
「妬いてるの?」
いいとこどりしたヴァンパイアに。年下の、成人したばかりの彼に。
要は、ウルフに対する注視をあまり優先しなかったために付き人としての任務を果たせず、一方で承けたばかりの随身具を左手の薬指につけるなんていう意味深なメッセージとともにマーキング紛いのことをされた状態で家に返されたことが気に喰わないと、そういうことではないのか。
「……ちょっと違います。」
小さい声が聞こえる。
天の邪鬼、違うくない。
不貞腐れるようないじけているような。
「娘を嫁に出す父親の気分なんです。なんなら、彼氏に妹を取られた妹離れできない兄でも構いません。」
娘もいなければ一人娘の瑛瑠はお婿さんを迎えるはずで。
兄とはまたなんとも……。
キャラ崩壊も甚だしい。
そうだ、あの夢の内容を聞いてみようか。
黙りこくってしまった空気を、ふたりは少しの間共有した。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-27 20:14

LOST MEMORIES CⅣⅩⅧ

透き通るような白を、瑛瑠はほんの少し弄ぶ。そして、チャールズもまた、静かに弄ばれていた。
あなたは私のお兄ちゃんなの?人間界へ何しに行っていたの?プロジェクトって何?あの狐は何なの?ジュリアさんやレイさんは仲間?みんな無事だったの?
――どうして隠しているの?
一度考え始めると、聞きたいことは山のように出てくる。
そしてふと引っ掛かりを覚えてそれが何なのか繋がったとき、思わずチャールズの頭を叩く。
「ねえチャールズ!学校は!?」
静かに毛先を弄ばれていたチャールズは、いきなり頭を叩かれ、宇宙人にでも会ったかのような顔をする。瑛瑠に容赦なく叩かれた部分をおさえながらも、
「登校日は今日で今週最後です。お嬢さまが眠っていた二日間は、欠席扱いになっていますよ。」
と丁寧に答えてくれる。
よかった、まだ休日ではない。英人と話さなければいけないことが増えた。
英人の指輪が、なんとなく心強い。きっと、学校へ行っても大丈夫だろう。
そんなことを瑛瑠が考えているのを、まるで見透かしたかのように、チャールズが手首を掴んで言う。
「まさかお嬢さま、学校へ行くおつもりですか?」
「……まさかチャールズさん、止めるおつもりですか。」
チャールズは、綺麗なその顔を歪ませた。チャールズの必殺技、質問には質問で返すを盛大ブーメラン。
なんだかチャールズが過保護になっている気がすると、なんともなしに考えた。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-27 23:45

LOST MEMORIES CⅣⅩⅨ

「綺麗な顔が台無しだよ。」
「だとしたらお嬢さまのせいです。」
「あら、私ってば罪な女ね。」
こんな軽口により、だいぶチャールズは目を覚ましたらしい。
ずっと隣にいて瑛瑠の身を案じていたのだろう。彼は疲労困憊に違いなかった。その上、心配も先走っていた。もっと早く気付くべきだったなと少し反省してみる瑛瑠。
夢のことはあとででいい。
チャールズを早く休ませることを優先に、これからの動きを軽く組み立てる。
「もう万全なので、今日は学校に行きます。ちょっと寝過ぎちゃったので、もう学校に行くまで起きています。遅れた分の授業、取り戻さないとね。夜明けまでまだ時間があるし、外へは出ないし、家の中は安全なので、チャールズは休んでください。
私が眠っている間、ずっと看ていてくれてどうもありがとう。」
自らの確認のために、声に出してみた。チャールズに微笑んでみる。
すると、やっと今日初めて微笑んでくれた。
「顔色も良くなって、本当に良かったです。二日眠っただけありますね。
本当に心配しました。心臓がいくつあっても足りないので、無理をすることはもうやめてください、金輪際。」
「金輪際。」
思わず復唱してしまう。
微笑みとともに、嫌みも忠告も置くことを忘れない。
「本当は、ベッドに縛り付けてでももう一日休ませたいところですが、顔色とその元気に免じて登校を許可しましょう。」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-28 20:32
  • みーちゃん》
    お帰りなさい!
    そんなことを思ってくれているのね、嬉しい…。
    書いてて私が楽しいっていうだけな可能性濃厚←
    私は瑛瑠ちゃんにめちゃくちゃ感情移入しています。笑

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-29 22:23

LOST MEMORIES CⅤⅩ

「ヴァンパイアの彼にはお礼を。彼のおかげで、私も多少は安心してお嬢さまを送り出せます。」
指輪のことだろう。まだ薬指にはめているそれを見る。
「これ、返さなくてもいいのかな。」
チャールズを見やると、
「返す必要は、今はまだありませんよ。」
と言われる。
また、含みのある言い方。では、いつ返すというのだ。
「有り難く借りていましょう。」
質問の余地なしな間合いには口をつぐむしかない。
「でも、さすがに指は目立つよね。どうしよう。」
そう瑛瑠が言うと、チャールズはやっと立ち上がり、徐に瑛瑠の部屋を後にする。
一人残され、少し重く感じる自分の体をベッドから持ち上げようとすると、チャールズが戻ってきた。
「リングネックレスにしましょう。」
チャールズが持ってきたのは、チャームのつけられていないネックレス。
「それは?」
「ただのネックレスですよ。」
誰かの随身具とか、そういった魔力物の類いではないらしい。
指輪を外す。エタニティリングだ。それも、ハーフエタニティ。改めて綺麗だと思いながらチャールズに手渡す。そして彼もまた、その輝きに劣ることなく流れるようにチェーンを通すその姿は様になっていて。
そつのない動きを黙って見ていると、後ろを向いてください,という指示が聞こえる。
ベッドからやっと降り、チャールズの前に背中を向けて立つ。すると、今しがた通したばかりのそのネックレスを、瑛瑠に着けた。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-29 20:36
  • ハーフエタニティ…くぅう、こう云う無駄なディテールが…!(知らなかったから調べてきた)
    やっぱり指先の動きや物腰が美しいチャー坊。なにもんだこいつ←

    シャア専用ボール
    男性/31歳/岡山県
    2018-08-30 11:10
  • シェアさん》
    へっへっへ…要らないと言われればそれまでな超絶自己満足描写ですが、わざわざ調べてくれてありがとうございます(笑)

    そっち方面の英才教育を徹底的に叩き込まれたフェミニストではないでしょうか。彼の正体もまた謎…。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-30 18:30
  • ハーフエタニティ...ふむふむ。またひとつ勉強になったなwてかなんでそんな洒落たもんもってんだ?

    お久しぶりです。新学期も始まってあまりの多忙さに撃沈しておりました。
    落ち着いたらまた僕もなにかあげたいですね
    (o^-')b !

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-08-30 20:38
  • めめんとさん》
    ほら、成人した証ですから。特別なリングでないと。ね?笑
    フルエタニティと迷ったんですが、やめました。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-30 22:31

LOST MEMORIES CⅤⅩⅠ

「はい、いいですよ。」
そんなに重い筈ではないのに、首には確かな重みを感じる。不思議なその感覚とともに、チャールズに向き直る。そして、努めてにっこり微笑う。
「チャールズ、着けてくれてありがとう。
さあ、チャールズはお休みになって。」
一瞬呆気にとられた彼をくるっと反転させ、今来た道を戻るよう背中を押す。
「ちょっと、お嬢さま!?」
顔をこちらへ向け抵抗しようとするが、そうは問屋が卸さない。
「このままじゃ、隈が永住権を獲得してしまいますので、あしからず。」
お役御免だと追い出してしまう。チャールズの休息が最優先事項である。
追い出し、部屋の扉を閉めてしまうと、しばらく気配がしたものの、諦めたように立ち去ったようだ。少しして、再び扉を開けて顔を出してみたが、チャールズはいなかった。さすがに寝に行ったのだろう。
それを確認した瑛瑠は、ノートを取り出す。書き出すのは授業内容なんかではなくて。
忘れないうちに書き留めておかなければならないこと、それは夢の内容だった。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-30 22:35
  • ちゃんとまだ夢覚えてんだ...。流石王族の娘(違う)表現の一つ一つがいい。好きだなあ

    みー♪≫すげーわかる。住野よるさん最高だよな。「青くて痛くて脆い」めっちゃ良かった(*-ω-)
    でも映画見てない...。なんかがっかりしそうな気がして。今まで実写化で「良かった」って思えたのは「永遠の0」だけやなあ(シミジミ)

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-08-31 19:09
  • みーちゃん》
    マンガの省略は致し方なしだよねえ…原作ファンからするとちょっぴり悲しいっていう笑
    私は実写化基本見ないな。めめんとさんと同じように、がっかりしちゃいそうで笑 本で持つイメージってなかなか強いからね。
    でも、感動するのかー…映画館で大泣きしそうだから、そういう意味でもいけないかも(笑)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-31 20:11
  • めめんとさん》
    わーい、褒められた!
    表現褒められちゃうと嬉しくてにやにやしちゃう笑
    今回の夢はちゃんと覚えてました←

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-08-31 20:12

LOST MEMORIES CⅤⅩⅡ

一通り書き留め、チャールズと英人のふたりに向けた疑問をさらに書き出してみる。
とりあえず英人には、お礼を言ってから聞いてみよう。今日行けば終わりということだから、明日明後日は休日ということだ。そのどちらかで英人とは話せればいい。チャールズへは今日帰ってきてから、もしくは休日のどちらかでいい。ゆっくり話せなければ意味がないから。
ノートを閉じる。
カーディガンを羽織っているとはいえ、少し肌寒い。それでも、何故だか無性に月が見たくなって。
部屋の明かりを消し、カーテンを開く。チャールズに怒られそう,なんて、くすりと笑みを雫し、月を見つめる。だいぶ傾いてきていた。夜が明けるには、まだ時間があるけれど。
見上げる空には、星がいくつか見える。何のあてもなく見上げていた瑛瑠は、北斗七星に目を留める。柄の3点から線を伸ばす。その先に繋がる一際明るいその星は、うしかい座のアルクトゥルス。
じゃあ、その先は?
おとめ座のスピカ。
誰にともなく問いかけ、自分で答える。
春の大曲線。
今、こんな時間にこの星達を眺めている人が、一体どれくらいいるだろう。自然と微笑んでしまうくらいには贅沢なことをしている。瑛瑠はひとりそう思った。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-31 19:55

LOST MEMORIES CⅤⅩⅢ

忘れかけていたが、自分にとっての日常はこちらである。様々な色が飛び交っているあの時間ではなく、黒一色にちょっぴりの飾りが煌めいているこの時間。
久しぶりに見上げる見慣れた空。そのはずなのに、どうしてこうも特別輝いて見えるのだろう。
なんだかひどく独りを感じてしまう。決して太陽より暖かくはない月は、やはり暖かくはない。
今この瞬間、この景色は瑛瑠のものだ。
アルクトゥルス、スピカ、デネボラ。
呟きながら線で結ぶ、春の大三角。
ちょっとくらいならいいよね。
窓を開けると、寒いながらも昼には暖かさを運ぶ、確かな春の夜風が入る。
「夜って、どこまでが夜なのかしらね。」
ふと、夢を思い出す。
「……あなたが教えてくれるのかな、東雲さん…?」
空が東雲色に染まるまで、まだもう少し。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-08-31 23:27

LOST MEMORIES CⅤⅩⅣ

やっと、太陽さんおはようだ。馴染みのなかったこの言葉にも、そろそろ違和感を感じない。シャワーを浴び、早くも制服に着替え、顔を出したばかりの太陽を見る。太陽はやはり暖かい。
再び、窓を開ける。朝の冷たい空気を欲している。今度は合法である。別に、夜に開けることが違法とかではないのだが。
まだ人の気配は無い。人間の活動時間には少しばかり早すぎる。
そのはずなのに聞こえる物音。それも家の中から。
「どうして起きているの、チャールズ。」
まさかと思ったけれど、ちょっと早過ぎやしないか。
リビングへ行くと数時間前に言葉を交わした彼がキッチンに立っている。
「おはようございます。」
華々しいその微笑みは、なんだか久しぶりに感じる。それもそうかもしれない、数時間前は疲弊していたわけだし、2日間瑛瑠は、文字通り夢の世界へ身を預けていたのだから。
しかし、睡眠というよりかは仮眠ではないのかこの付き人。
ふと生じる疑問。
「おはよう。
……チャールズは、どれくらいの間こっちにいるの?」
朝食を作っているときの音は、人間界へ送られてからよく聴くようになった。その良い音をBGMに、チャールズに尋ねる。ついでに、何か手伝おうか?と付け加えるのも忘れずに。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-03 18:26

LOST MEMORIES CⅤⅩⅤ

では、これを運んでください,と渡されたので受け取る。綺麗な黄色い卵焼き。人間界へ来て初めて出されたそれはとても美味しく、瑛瑠の好きな食べ物へのランキング入りを果たしたひとつである。ちなみに、白だしを使うと絵に描いたような黄色になるのだそう。絶賛したところ、なかなかの確率で食卓に並ぶようになった。
「お嬢さまの中で私は、お嬢さまの付き人として限定的に送られた存在とは考えられないんですか。」
仮眠はとったのだろう、数時間前より幾分かよくなった顔色のチャールズからは、苦笑いが送られる。
確かにそうなのだが、
「チャールズ、やけに生活感あるから……。」
ずっと人間界にいたのではないかと、そう錯覚してしまうのだ。
「鋭いのは良いことです。」
ふっと目を伏せ、キッチンへ向き直る。
この反応は――
卵焼きののったお皿をそっと置く。
「チャールズ。私、夢を見たの。」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-03 23:02
  • みーちゃん》
    私のおすすめです。白だしをぜひ使ってみて…!本当に美味しいし、めっちゃ黄色くなる(笑)

    なんか魔力とかいう力あるらしいけど、人間と変わらないよ??種族によっては飛べるけど、人間と変わらないのよ。だから、別に食べるものは人間とおんなじなの。
    だからね、みーちゃんが夕方にすれ違った人とか、はす向かいのおうちの人とか、もしかしたら人間とはちょっと違ったりすることもあるかもねえ…。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-04 21:18
  • みーちゃん》
    そうよお。人間界ですし、ね?笑
    それともあれか、カエルとかトカゲを食すって、あの魔女が出てくる某物語には書いてあるからねえ…笑
    私の描く魔女や西洋妖怪は違いますよ。ほぼ人間。ふふ。

    お金持ち…そうか…。
    あれ、はす向かいって言わない?感じで書くと斜向かいって書くんだけどね。田舎じみていて好きな言葉。

    そろそろ歌名ちゃんを解禁します。歌名ちゃん可愛いから、ぜひイラストも見に来てっ…!

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-04 22:46

LOST MEMORIES CⅤⅩⅥ

「おはよ!」
ぽんと肩を叩かれる。
朝のやりとりを回想していたことと、今までされたことがないということ、さらに後ろからというのは意外と心臓に悪いもので、驚いて振り返ってしまう。すると、叩いた本人が一番驚いた顔をしていた。
「ち、ちょっと!驚きすぎだよー!」
「い、伊藤さん……!?」
肩につかないほどの茶色がかった髪を揺らし、目を丸くしている歌名。
「びっくり、しました。おはようございます。」
ばくばくしている心臓を落ち着かせるように、努めて落ち着いた声を出す。
「ごめんね、前歩いてるの見かけたからさ。
一緒に行こ。」
にっこりという言葉が合う、お手本通りの眩しい笑顔を向けられた瑛瑠は、不意を突かれて言葉が喉を通り抜けなかった。
歌名とふたりきりで話すのは初めてだ。ごめんねとは言うものの、反省する気は無いらしく、からっと笑いかけられる。その笑顔は、もしかしたら初めて見るといっても過言ではないような、そんな笑顔だった。
「風邪って聞いたよ。大丈夫?」
チャールズか、英人か。情報源は鏑木先生だろうか。
とりあえず、風邪ということになっているらしいことは把握できた。
「大丈夫です。ありがとうございます。」
歌名は一瞬、少し哀しそうな顔をした。
「授業のノート、いつでも貸すからね!」
瑛瑠が見逃すはずもなければ、見間違いのはずもない。
しかし、思い当たる節もなければ、言及しようとも思わなかった。
歌名が、また笑顔に戻ったから。
けれど、この顔は見たことがある。所謂、作り笑いってやつだ。
「瑛瑠ちゃん。」
声が固い。
「……どうしましたか?」
思わず身構えてしまうのは許してほしいと思う。
「あの、さ――」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-04 21:57
  • うおい。ひと悶着ありそうな予感...。目が離せませんですね~。

    卵焼きにマヨネーズを使うとふわっとなるよ。あと胡麻油(o^-')b !

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-09-05 09:08
  • めめんとさん》
    ふふふ。そして流れにのせてあげないのが私なのです。長谷川望召喚。ターンエンド。

    味付けにマヨネーズ使ったことはあるけれど、なんだかくどくなったので、もう使ってなんかやらないんだからねって思ったことがあります…。
    めめんとさんお料理もするの…!?

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-05 19:59

LOST MEMORIES CⅤⅩⅦ

「おはよう。瑛瑠さん、歌名。」
聞き覚えのある声。
「おはようございます、長谷川さん。」
そっと制服の上から指輪を握りしめる。
大丈夫。そう、自分に言い聞かせる瑛瑠。
「……邪魔、しないでよ。」
背筋に何かが走った。暖かい春の気温の中に、1ヶ所氷点下の地点がある。
思わずぎょっとして歌名を見るが、先の殺気じみた氷点下はなくなっていた。
見据えるその目の先には望。
「おはよ、望。」
にっこり笑う歌名は、会ったばかりの雰囲気そのものだった。
この子も、何かある。
正直、歌名には何のアンテナも張っていなかった。どんな子だろうかと今までを思い起こすと、望と話しているときにしょっちゅう同じ場に居合わせているのだ。
「あ!私、昨日先生に頼まれていたプリント、コピーするの忘れてた!
望、お願い、手伝って!ひとりで敵う量じゃないの!」
さっと青ざめた歌名は望の腕を引っ張る。
この子、表情豊かだ。そして、わかりやすい。
「え、ちょ、待って!歌名!?」
「瑛瑠ちゃんごめん!先学校行ってる!」
つんのめる望は引っ張られるがまま。朝から元気だなあなんて考えてしまうのは、2日間のブランクが原因だと思いたい。
台風のような勢いで去っていったその場に残された暖かい空気は、春を告げていた。
そして、またひとりに戻る。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-05 20:00
  • な、なに...ハッセーだと...?
    メメントニ9652ノダメージ!!!
    カナちゃんが何やら冷たい...!
    メメントニ348ノダメージ!!!
    メメントハタオレタ!!!

    お料理するよー。
    三、四ヶ月前くらいまで学校掲示板で夜食投稿してたなあ(遠い目(そんなに遠くない))
    またやろっかな

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-09-05 22:08
  • みーちゃん》
    歌名ちゃんめんこい…。色々話したいけどまだやめておこう。とりあえず歌名ちゃんめんこいのよ。

    はすむかいですねー。日本語って感じがするよね。
    うんうん、好きなアーティストとかが歌詞にすごく拘っていたりすると、感化されちゃう笑
    好んでそういう言葉を選択したり目で追ったり…。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-05 23:45
  • めめんとさん》
    テレレレレレーレ テレレレレレーレ テレレレレレッテッテテー
    ピーターノ レベルガ 1アガッタ
    HP11296→11853
    MP2236→2259

    歌名ちゃんが何やら冷たいってやつが私のツボを刺激しました。何やらってのがまたいい。

    なるほど。面白いことをしていたのですね…。
    お料理男子はポイント高いのではないでしょうか←

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-05 23:54

LOST MEMORIES CⅤⅩⅧ

歌名は魔力持ちだ。種族は何だろう。そこまでは探れなかった。
邪魔?望に対して言ったのだろうが、何に対する邪魔という言葉だろう。
私に、何かしようとしていた?
そういえば、と思い起こす。歌名は何か言いかけていた。あの続きは何だったのだろう。
息をついた瑛瑠。英人なら何か知っているだろうか。そう思うも、何だか癪になったので考えるのをやめた。英人には、確かめなければいけないことがある。
チャールズに夢を見た旨を話したとき。
碧玉のような眼を丸くし、少し体が強ばったようにさえ見えた。何か思い当たる節があるかのように、今日の夜聞かせてくれますか?とだけ伝えられる。声が堅いよ,そんなこと、言えるはずがなかった。
あんまり反応が薄いようなら、お兄ちゃんと呼び掛けてみようかなんていう悪戯心が働いていたが、ここまで好反応だと面白がることもできないではないかと、瑛瑠は大人げなくも思っていた。どうやら、彼の弱点のひとつに瑛瑠がいるようだから。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-06 20:09
  • 現代文得意(ドヤア)

    魔力持ち増えてきたな...。なんかじきにひと悶着起きそうなよか(これ前も言ってたような)んがするぜ...(o^-')b !

    最近やっと卵が片手で割れるようになったよ

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-09-06 22:50
  • みーちゃん》
    そうそう!東雲さんも、東雲色からとったしなあ…曙色と迷ったんだ。あのときの私に何かあったら、お狐様は曙さんになっていたかもしれない。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-07 00:04
  • めめんとさん》
    私も現代文得意…好き…むしろ国語だけあれば知的欲求はすべて満たされるといっても過言ではない←

    むしろ魔力持ちしか出てきませんよ笑(って前も言った気がする←)
    もし人間だとしたら、相当重要な人物ですねえ(意味深)

    ふええ、すごい。二個割りできちゃうやつだ。行きつけだったお店のマスターがやっていた技…

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-07 00:08

LOST MEMORIES CⅤⅩⅨ

教室に入ると、前の席には鞄が置かれてある。歌名の手伝いへ行ったのだろう。歌名の席にも、ストラップがついた彼女のであろう鞄が置かれてある。自分も手伝うと申し出たらよかっただろうかと席につきながら思う。
登校時間は比較的早い瑛瑠だが、本を読んでいる彼はそのさらに前についていたのだろうことが伺える。
瑛瑠は鞄だけ机の上に置き、彼の隣の席を借りることにした。
「おはようございます。」
声をかけると、ここへ瑛瑠が来ると見越していたように、驚くこともなく読みさしの本を閉じてしまう。
「おはよう。体調は?」
「お陰様で。……邪魔をしてしまってすみません。」
英人は僅かに首を振った。
「あの、お借りしていたリングはネックレスにして持ち歩いています。ありがとうございます。このまま私が持ち続けていてもよろしいんでしょうか?」
瑛瑠が確認として聞くと、何を今さらと微笑う。
「勿論。持っていていい。」
やはり余裕そうな彼だが、心配は拭えない。
「何かアテでも……?」
すると、ぴくりと形の整った眉をあげる。
「聞いてないのか?」
何を、だろう。
こんな質問をされるくらいだ、聞いていないということだろうと思うが、生憎何のことか見当がつかない。
英人は苦笑して、
「ごめん、聞かなかったことにして。」
なんて言うものだから瑛瑠は不貞腐れる。
「何のことですか。」
「そのうちわかるから。」
やっぱりこいつ、気に食わない。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-07 18:43
  • エルなんか苛ついてない…?
    軽いだけの望なんかよりキリのがよほど頼りになるし恰好いいと思うんだけど…

    シャア専用ボール
    男性/31歳/岡山県
    2018-09-07 20:33
  • シェアさん》
    そう見えるような描き方であったのなら、私もまだまだですね…機嫌は悪いっちゃ悪いですけど、ご機嫌斜め程度です(笑)
    瑛瑠ちゃん自身が王族として自分の力を自負しているため、プライドが高いんですよね。あまり表には出してきませんが。それを、余裕そうにしている彼はきっと自分よりも出きるのだろうという思いからくる嫉妬ですね。悔しいんです、彼女。だから、好んで協力を仰ぎたくないって気持ちで。それを言ってしまうと望に対してはどうだということになってしまうのでノーコメントでお願いしたいのですが、思春期って難しいですから…。英人くんを嫌っているわけでは決してないです。
    精進します(笑)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-07 23:18

LOST MEMORIES CⅥⅩ

すっかりご機嫌斜めな祝瑛瑠さん。
しかし、目的があって彼のところへ来たのを思い出しました。
「あの、英人さん。」
声を発したものの、どこから聞こうかという思考へと足を突っ込んでしまった瑛瑠。
本当に確かめたかったこと、それは夢の内容。10年前のこと、英人のこと、会ったことがあるのかということ、イニシエーションのこと。
どれも重い。そして、できれば時間をとって話したいことだ。
「瑛瑠?」
「英人さんには、」
軽くて、yes/noで答えられ、導入にもなる質問。あるではないか。
「お姉さんはいらっしゃいますか?」
英人は訝しげにこちらを見る。たしかに、家族のことに関してはいきなりではあったかもしれないと、音にしてから反省する。ある意味で踏み込んだかもしれない。しかし、これが導入になるのだから、答えさせなければならない。
「それも、10歳ほど年の離れた。」
今度は目を丸くする。
沈黙は肯定ととるぞ、イケメンヴァンパイア霧英人。
しかし彼から出た言葉は、予想を見事に裏切ってくれた。
「僕に姉なんていない。」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-07 23:10

LOST MEMORIES CⅥⅩⅠ

祝瑛瑠思考停止。
では、あの反応は何なのだ。訝しげな目、そしてその目を丸くしたのは確かに見た。
そもそも、夢の中の少年エルーナの面影をバリバリに残したお前は一体誰だと言いたくなる。
否定されるとは、万が一、いや億が一にも予想していなかったので、続ける言葉が迷子である。
では、あの夢はあくまで夢だったということだろうか。
チャールズの夢を思い出す。そして、考えを元に戻した。
たとえ夢だとしても、何らかの意味がある。そうでないと、チャールズの様子に説明がつかないから。
「明日、」
学校は休みだ。
瑛瑠は一言。
「私に付き合ってください。」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-07 23:56
  • うええいパプちゃん行動派ぁ。「はぁ?!」とか言うのかな(言わないなこれは)

    二つ割りは流石にできない(苦笑)片方に気がいってうまく割れない、と、思う。やったことないwギターしててもドラムしてても不器用なものは不器用なんです(自虐)

    そろそろ次の短編の準備を...。

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-09-08 15:43
  • めめんとさん》
    場面変わりました…ご期待に添えずごめんなさい…笑
    ですよねー、パプちゃん行動派。てっきり受け身かと思いきや何気積極的(笑)
    「はぁ!?」って言わせたいですけど、パプちゃんなら「……は?」or「……はい?」だと思う。

    できたらもはや特技欄に書いていいぐらいですしね(笑)

    なんと。短編。いいですねえ。私も、1話で終わるようなの書きたいんですよー。でも、内容に困っちゃって(初歩的)。
    私、めめんとさんの旋風機めちゃめちゃ好きです。詩も、気が向いたら是非。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-10 18:40
  • みーちゃん》
    そこ書いてるときに、私のテンションがちょっとどうにかしてて、「私とデートしてください。」 にするところでした←
    英人くんがさらっと言うのはなんかわかるんだけど、さすがに自重した…パプちゃんキャラ崩壊するところだった笑
    んねー!パプちゃんに誘われたら二つ返事でついて行きます。

    待って(笑)なんで二個できるの、やったことあるの。ピアノやってたって私二個割りとかそもそも挑戦したこともないから笑
    え、普通なの?なあに、みんなできちゃうの?笑

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-10 18:44

LOST MEMORIES CⅥⅩⅡ

おかしい。おかしいといったらおかしい。
瑛瑠はお昼前最後の授業を受けながら、授業内容とは全く違うことを考えていた。二日の授業遅れはどうにかなると判断したこともある。それ以上に、集中できないほど気になってしまうことがあった。
長谷川望。彼は、朝の授業以来言葉を交わしていない。後ろを一度も振り返ってこないのだ。こうも急に避けられるような態度をとられてしまったので、悶々としていた瑛瑠。
終業を告げるチャイムと共に、望の背をつつく。瑛瑠から話しかけるのは初めてかもしれなかった。
振り返る望は、変わったところは見受けられない。つまりはいつも通り。
「瑛瑠さんから話しかけてくるなんて珍しいね、どうかした?」
「あの、私、長谷川さんに何かしましたか?」
周りではクラスメートが動き始める。やっと来たお弁当の時間。瑛瑠はその前に確認したかった。
ガタガタと机を移動させる音を横で聞きながら尋ねる。
「長谷川さん、私のこと避けてますか?それって、私が何かしたから?」
理由もなく避けられるのは、辛い。
目の色が弱くなっていることに、自分では気付いてはいない瑛瑠。
一方の望といえば、思ってもみなかった、そんな言葉が聞こえそうなほど目を丸くしていて。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-10 18:28
  • 甘いぞ、エルちゃん…そう云うとこほんとに甘い…!
    何故ことばが万能なもののように振る舞うんだ…
    なぜ他人の懐を不用意に探るんだ…!

    く〜っ…もどかしい(笑)

    シャア専用ボール
    男性/31歳/岡山県
    2018-09-10 19:44
  • 旋風機嬉しい。ワーイ(ノ゚ー゚)ノそうなんです。小説とかより詩の方が書けるんですよねえ...。アイディアと文法力をくだせえ(あと語彙力)

    来週のどっかであげるよ

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-09-10 22:06
  • みーちゃん》
    えええ嬉しい…(喜びを噛み締める)。
    前も似たようなこと呟いた気もするけれど、台詞だけで誰が話しているかわかるように努力しております。だから、個性とか言われると本当に嬉しさの極み…。

    わあ、私と逆なのか。結局ないものねだりよね。もうちょっと頑張って1話で終わるようなお話を考えてみよう…。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-10 23:16
  • めめんとさん》
    私からしたら詩を描けるようになりたいですよお。思っていたのと違うってなります。笑
    文章考えてる方が性に合っているんでしょうね、くどいくらい言葉を出したいから(笑)
    楽しみにしてまーす(*^^*)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-10 23:20
  • シェアさん》
    わああレスきてた…!?ごめんなさい…!

    瑛瑠ちゃん、何でも言っちゃいますね。躊躇いがないというか。
    同年代が周りにいなかったということが大きな要因なのではないでしょうか…。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-12 00:33
  • 何気なく読み返してたらなんかパプちゃんの目の色が弱くなってるとか書いててビックリした。ちゃんと読んでるつもりで見落としてるとこってあるんだなあ。反省。速読癖治さなきゃね。

    で。でだよ。どーゆーことですかピーターさんっっっ!!!(いずれ出てくるってわかってるのに...)

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-09-13 20:48
  • めめんとさん》
    ぱぷちゃん、ちょっと弱気になっちゃってます。可愛いですね。
    意外とそこ重要だから!笑 ちゃんと見つけてもらってよかったわ(笑)

    長谷川くんについてですかー??待っててくださいよぅ笑
    ちゃんと、伏線やら会話の予定やらは回収しますんで(笑)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-13 23:29

LOST MEMORIES CⅥⅩⅢ

「避けてる?僕が?瑛瑠さんを?」
「はい。」
見事な鸚鵡返しと重ねクエスチョンに一言で返す瑛瑠。
そして、少し考える素振りを見せた望は、華麗に瑛瑠の質問をスルーした。
「放課後、図書室に行くの?」
誰かさんにも似たようなことをされたなあと思いつつ、今日は行くつもりはなかったです,と律儀に答える。
「ちょっと寄れない?僕、瑛瑠さんと話したいことがあるんだ。」
雰囲気が変わった気がするのは、気のせいだろうか。
「わかりました。放課後、図書室、ですね。」
そこで、瑛瑠の質問に答えてくれるということだろう。
「瑛瑠さん、」
会話を終わらせようとしていたのを引き留めるように望は続ける。
「さっきの。避けているように感じたのなら、たぶんそうなんだと思う。
嫌な気持ちにさせていたらごめんね。でも、瑛瑠さんが何かしたとかじゃないから。」
正直、これだけ聞ければ十分だ。
胸を撫で下ろし微笑む。
「はい。図書室で、ちゃんとお聞きしますね。約束、です。」
すると望は、困ったような悲しいような、それでも少し嬉しそうに、
「うん、約束。」
そう返した。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-10 23:22
  • みーちゃん》
    意外と伝わらないものよねえ…有名な台詞なのに(涙)

    そういう風に合わせるとはどれのことだ…。
    瑛瑠ちゃんのこと?死んでもいいわのこと?笑
    色んなところに会話の布石を置きすぎて話題が迷子っていう(笑)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-11 21:00