0

prologue~アーネスト旅立つ決心まで。

This is the way. [prologue] 1



ーーケンティライム特別収容所ーー

「えらく真っ暗だな…」
「夜だからな…。流石に今灯りをつけると大騒ぎになるぞ」
「ああ、だろうな、この血の気の多い奴らめ…。何かと文句をつけて騒ぎたがるんだから。この間だってそうだ、いびきがうるさくて眠れないとかで真夜中に大騒ぎしやがった。救護班も大忙しだったらしい」
「全く…。俺たちにはどうしようもねえよ。"ヤツ"以外はそれこそ何かにつけて騒ぎたがる野郎共ばかりなんだから」
「"ヤツ"って……あの、No.2のことか?」
「そうだ。…しかしそのNo.2の眼つきだ、No.1さえ凌ぐ凄みでいやがる。一体何をしでかしたんだか、まあせいぜい看守の俺たちには知るよしもないがな」
「だが、あの歳でNo.2たあ、さぞえらいことをやらかしたんだろうな。いつここに来たんだ?」
「ん?ああ、そうか。お前さんは十日前にここに配属になったんだっけか。"ヤツ"は、そう、ちょうど今日から三ヶ月前にここに来たんだ」
「三ヶ月前…ってことはまさか、"ヤツ"があの……?!」
「シッ、声をあげるな。そう、例の件の主人公だと、俺たちは踏んでる」
「ううむ…」
「ま、俺たちには関係のない話さ。俺たちは俺たちの仕事をする。それだけだ」
「うん…。故郷に置いてきた息子がちょうど同じくらいの歳で…うわあっ!」
「おい、静かに…!どうしたんだ」
「こ、こいつ起きてやがる…」
「ん?ああ、夜回りは初めてか?No.2はいつも目を開けたまま寝るって有名な話だぜ」
「これ寝てんのか…。なんて野郎だ」
「さあ、見回りを続けるぞ。ほら、気が散って足音がでかくなってる」
「ああ、すまんすまん。ったくそれにしても上は何を考えてるんだ。夜回りのやつにくらい、こんな軍靴じゃなくてもっと足音のたたない靴を.........」





「.........。」

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-10-29 13:20
  • 突然始まった小説です。どうか読んでやってってください。

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-10-29 16:06
  • 面白いです!
    前にLOST MEMORIESで受験の応援してもらった
    ヤジウマライダーです!
    LOST MEMORIESとThis is the way…!
    どっちも面白いですね!
    受験勉強の息抜きとして読んでいるのに、つい読み過ぎちゃいます。
    これからも楽しく読ませていただきます!

    ヤジウマライダー
    男性/20歳/愛知県
    2018-10-29 17:11
  • ヤジウマくん≫どうもありがとう。まさかLOST MEMORIESと並べてもらえるなんて...いやいやそんなおそれ多い。まだ始まったばかりです。息抜きがてらどうぞお付き合いください。

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-10-29 17:40

This is the way.[prologue]2



ーークリペウス要塞ーー

「陛下ッ、陛下ー!」
「どうしたガイオ卿、騒々しいぞ」
「陛下ッ、お告げの結果が出たのです!これをッ」
「ほう、お告げと言うと、アランビルだな」
「そうです、彼が三週間前から瞑想して...」
「ああわかったわかった。その話はあなたからさんざん聞いた。早く渡せ」
「あ、はい!こちらです、陛下。まだ封は開けておりません」
「当たり前だ、卿。私が見るより先にあなたが見ていたら、あなたはしばらくの間日を見ることはなかった」
「ささ、早くお読みになってください!」
「わかった、そう急くな。今開けるから」
「.........」
「.........」
「...............」
「...............」
「陛下、一体何が...」
「ええいうるさいッ!気が散って読めんだろうが!!!」
「も、申し訳ございませんッ!」
「いちいち叫ばずともよい!はあ......。どうしてこうも我が城の者はせっかちなのだ......」
「王よ、早く...」
「今読んでるッッッ!」



「...............」
「...もう急かさんのか」
「...叱られますから」
「学んだようだな」
「もちろんです」
「それでこそ我が僕だ」
「ありがたき幸せ」
「それに比べて奴らと来たらどんなにわ」
「陛下、わざと焦らしておられますか?」
「いや、すまない。今読み終わった」
「(溜め息)」
「...今溜め息をついたか?」
「いいえとんでもない」
「......なら良い。それにしても長い予言文だった」
「なんと、書かれていたのですか」
「......良くない知らせだ」
「.........!」

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-10-29 22:54
  • いきなり誤字すいません。
    「彼女が三週間前から~」ですね

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-10-30 07:05

This is the way.[prologue]3

「......良くない知らせだ」
「.........!」
「今すぐに対処せねば。守衛長!!!」
「   何でしょう、閣下!」
「城の警備を警戒体制その三に置け。夜間はそれの一・五倍だ」
「承りました、閣下!」
「陛下、その三と言えば、最大級の警戒ではありませんか。一体何が......」
「その名を聞けばあなたもわかろう。」
「.........?」
「......"ゼノ"が、現れた」
「.........!」
「ゼノの予言は知っておるな」
「もちろんです。子供の頃に叩き込まれますから。」

 必ずや人は彼を知る
 盾の城の夜も更ければ
 奇妙な声(ゼノ)は高らかに笑う
 朝は来るのだと高らかに笑う

「しかし、伝説だと思っていました。実在するとは...」
「予言はいつだって伝説のように語られる。ゼノはその最たる例だ。しかし、私もまだ先のことだと思っていた」
「アランビルの予言がその実不真だとは...」
「あなたはアランビルの予言が外れたことを知っているのか?」
「.........」
「彼女がする予言は占星術などのまやかしではない、神託そのものだ。これを無下になどできるものか」
「...では......?」
「あなたの配下に間諜がいただろう、エルムとアベデだったか」
「はい、陛下」
「彼らをトルフレアにやれ。ゼノを探すのだ、今すぐに!」
「わかりました、陛下。すぐにやりましょう。」




「ゼノ、か。百三十年ぶりに、それも一人ではない、か。これは面白いことになりそうだ」

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-10-29 22:57

This is the way.[prologue]4

ーーダルケニア国 ネウヨルクーー


「キャス、帰ったよ!」
「どうしたの、あなた。今日はえらくご機嫌ですこと」
「ほら、見ろよ!アーネストから手紙だ!」
「まあ!あの子、やっと手紙を書いたのね!それで、なんて書いてあったの?」
「まだ開けてないんだ。今読むよ。どれ...」

 ―――父さん、母さん、ウィル、元気ですか。僕がトルフレアに来てからすっかり年月が経ってしまいました。時が過ぎるのは本当に早いものです。暫く手紙を書かなかったことを許してね。忘れてたってのは、まあ、それもあるんだけど(ごめんよ)、何もかもが新しいことばかりで、そりゃもう大変だったんだ。最近になってやっと落ち着いたって感じかな。とにかく、ここには新しいものがいっぱいさ。
 今は僕の下宿の数百メタ先にあるパン屋で仮働きさせてもらってます。仮働きといっても、ダルクよりずっとお給料がもらえるんだ。まあ、そのぶん物価は高いんだけれども。と言うことで少しだけどお金を送ります。こっちに来るときにはいろんなものを用意してもらったからね。僕のできることをしなくっちゃ。これで何か美味しいものでも食べてください。
 じいちゃんとばあちゃんによろしく。あとリタにもよろしく言ってください。風の噂でダルクの人がトルフレアに来る予定があると聞きました。誰が来るんだろう。会えることを楽しみにしています。
              アーネスト


「元気にやってるみたいだ。安心したよ」
「そうみたいね。それにこんなにお金を送ってきて。やっぱり王国は違うのねえ」
「アーネストも頑張ってるんだ。俺もがんばんねえとな」
「そうね......新しい家族もできることだし」
「うん、そうだ.........何だって?!」
「なんかおかしいなと思ってお医者様に見てもらったの。そしたら......」



「...............」

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-10-30 19:39
  • P.S.(ピーターさんのマネ)因みにメタはメートルと一緒です。単位を少しだけいじって使うのでニュアンスで掴んでねw
    早々に次回から本編スタートです。

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-10-30 19:44
  • (題名を見て)まだプロローグだった!?(今更な気付き)
    ・・・本編までの情報量すごいですね。面白くなりそうな予感がぷんぷんと。

    月影:つきかげ
    男性/22歳/宮城県
    2018-10-30 20:36
  • つきかげさん≫そうなんです。伏線を張らないと気がすまない質でして。明日から本編なんでよろしくっす。

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-10-30 21:52

This is the way.[Ahnest]1



 気づけば、仰向けに倒れていた。赤茶けた土。あちこちで燃え盛る木々。ハッと右手の方を見た。手から離れて転がっているスパタ。必死に手を伸ばして掴もうとした。が、どこからともなく誰かの足が現れ、それを踏みつけた。顔をあげると、傷だらけの男が凄まじい形相で立っていた。
『.........が、俺............イツァ様の.........でもらわ......』
 炎の音と耳鳴りで男がなんといっているかほとんど聞き取れない。
 不意に男が剣を振り上げた。
『..................!!!』
 何かを叫ぶと、男は凄まじい勢いで剣を振り下ろす。とっさに空いていた左腕でかばった。ガスッ!という鈍い音が響いた。
 「ぐッ」
 あまりの激痛に気が遠くなりかけたが、なんとか耐えると、男にこう言った。
 「お前、【   】の.........!!!」
 男は何も言わないで振り下ろした剣に力を込め始めた。必死で押し返す。鉄が骨に当たる感覚。次第に男の剣が下にさがっていく。腕の力が抜けていく。男の口がわずかに歪む。目を見開いた。最後の力もむなしくその剣は額を



「うあああああッッ!!!!!!」

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-10-31 20:34

This is the way.[Ahnest]2

「......はあッ!!!」
 ガバッ!と、アーネストは突かれたように跳ね起きた。荒い息だ。全速力で100メタ走った時だって、こんなに汗ビッショリになったことはない。
「...はあ。また夢か...」
 このところこんな夢ばかり見る。しかし、どんな夢だったか、ハッキリとはいつも思い出せない。つい昨日のおいしかった晩御飯がなんだったか思い出せないみたいに、凄く悪い恐ろしい夢だったことは覚えているのだが、その情景が思い出せないのだった。
 アーネストは布団から出ると、
「うぅっ、さっみい!」
 ブルリと身を震わせた。ケヤキの月もじき終わりだから当然と言えば当然だ。窓際まで歩いていくと、サッと両のカーテンを引いた。朝の光がシャラリと部屋に差し込む。
「うーん、いい朝!...あれ?」
 ふと気づいた。いつもより人通りが多い。こんな時間におかしいな...。今日は何の日だったかな。いや、それとも...。
「まさか...」
 アーネストはドアのちょうど真上の壁に掛かっている時計に目をやった。

 8時40分。

「......?!」
 もう一度時計をよおく見た。やっぱり8時40分。アーネストは青ざめた。なんでこんな時間なんだ...!
 のんびり「いい朝!」なんて言っている場合ではない。アーネストは慌てて支度を始めた。昨日枕元に今日着る服を置いていたことも忘れて大騒ぎだ。見る間に彼の部屋に足の踏み場はなくなった。
 支度を終えると、アーネストは転がるように階段を駆け下りた。そこで気づく。
「あっ、そうだ奥さんいないんだった...!」
 アーネストの下宿の奥さんは昨日からバヴェイルに観光に行っているのだ。それをすっかり忘れていた。
『留守の間よろしくね。私がいないからって、朝ごはん抜かしちゃダメよ?』
 ごめん奥さん。早々に守れなかったよ。明日はちゃんとするから...。そう一人で呟くと、ミルクを一杯だけ飲んで、大通りへ飛び出した。

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-11-01 18:54
  • LOST MEMORIESファミリーの人達と違って俺は全然鋭くないから、まだどんな話か想像がつかない~

    これから何が始まるんだろう?

    ヤジウマライダー
    男性/20歳/愛知県
    2018-11-01 19:23
  • ヤジウマくん≫はい。だと思います。今のとこは本題とほとんど関係ありません。w
    アーネストがどんな人かわかってもらえたらうれしいです。

    ロスメモも面白くなってきたね...

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-11-01 20:48
  • あ、いい忘れてました。
    ケヤキの月はだいたい11月くらいです

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-11-01 21:37

This is the way.[Ahnest]3

ガチャッ、バタン!!!
「おはようございますッ!!!」
「全くお早くねえわッ、何しとったんじゃ貴様ァ!!!」
「すっすいません!!!」
「このクソ忙しい日に寝坊たぁいい度胸だ、それなりの覚悟あるんだろうなあ!!!」
「すいません、ガルタさん!!!」
「もういいからさっさと着替えんか!」

 [ガルタのパン屋]はいつも賑やかだ。ダルケニアにあったパン屋はみんなおおらかでふくよかでなんか、こう、フワッとしたパン屋特有の香りがあったのだが、ガルタはそれとは全く違った。ゴリッゴリのムッキムキなのである。短く刈り上げたごま塩の髪、そのガタイには全く似合わないエプロンをつけて、アーネストや他の店員に始終怒号を飛ばしている。
 なんでそんなパン屋で働いているのかというと、ガルタのパンは、それはそれは美味しいのだ。歯で弾けるようなバゲット、口の中でほどけていくクロワッサン、あり得ないほど甘いバターロール。
 別にアーネストはパン屋になりたいわけでもなんでもないのだが、なぜかここで働きたい!と思えたのだった。
「オーブン止まったぞ、さっさと開けんか!!!」
「なんだその切り方は、肉でも切ってるつもりか!向かいの肉屋にでも行ってこい!!!」
「とろとろしてんじゃねえよこのノロマ!!!」
「そんなんはいいから手を動かせ手を!!!」
「アーネスト!!!」
 とはいっても、思った通りではあるが相当に厳しかった。なんでこんなことやってんだろ、といいたくなるときもあったが、それが妙に楽しくもあった。別にマゾヒストではない。

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-11-01 21:58

This is the way.[Ahnest]4

 [ガルタのパン屋]の営業時間も終わって、明日の準備をしている頃。
「アーネスト、ちょっと来い」
 不意に、ガルタに呼ばれた。朝の遅刻の件だろうか。またこってり絞られんだろうなあ、等と考えながら、厨房の奥にある小部屋に入る。
「...何でしょう、ガルタさん」
「今朝はどうして遅れた。珍しいじゃないか、いつも俺より先にここに来るのによ」
「すいません」
「怒ってる訳じゃない。理由を聞いておきたいと思ってな」
「はあ...それが、夢を見たんでして」
「夢、なあ」
「ええ、ひどい夢でした」
 ガルタはなぜか訳知り顔のようである。気のせいか?
「どんな夢だった」
「それが全く覚えてないんです。ひどく恐ろしい夢だったことはしっかり覚えてるんですが」
「ふん...そうか。まあそんなことはもうどうでもいい。それよりお前......何かしたのか?」
 アーネストは首をかしげた。ガルタは何の話をしてるんだ?全く見当もつかない。一体なんのことだろう。
「どういう意味ですか、僕がなんかしましたか?」
「いやな、昨日のことなんだ。お前が帰ったあと、俺はまだ暫く仕込みを続けていたんだ。したら、突然ドアが開いて、数人の兵士が入ってきたんだ」
「!」
「そりゃあ驚いたよ。もうとっくに店は閉めていたから、何のようですか、と聞いたんだ」
 ガルタのことだ、きっとそんな穏便に訊ねたのではないだろう。アーネストはそう思った。
「そしたら、その兵士たちはお互いに顔を見合わせて、うちの一人がこう言ったんだ」

『アーネスト・イナイグム・アレフはいるか。』

 アーネストは怪訝な顔をした。なんだそれは?フルネームで訊いた、と言うことは、たぶん僕の知り合いじゃない。
「怪しいと思うだろ?俺も何がなんだかわからなかった。で、もちろん俺はいない、と答えた。するとその兵士はこの手紙を寄越したんだ」
 そう言うとガルタは一通の手紙を取り出した。

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-11-01 22:27

This is the way.[Ahnest]5

「これがそれだよ」
 そう言ってガルタはその封筒をアーネストに手渡した。いぶかしげに眺める。すると、その封筒の封印に気がついた。
「ガルタさん、この封印って......」
「ああ。王都の紋章だ」
「王都?!」
 永世トルフレア王国王都ケンティライム。世界で最も優れた街とされる。アーネストはトルフレアに来て三年あまりだが、まだケンティライムには行ったことがなかった。
「だからお前が、連行されるような何かやばい事でもしたんじゃないかと思ってだな...」
「余計なお世話です」
 とは言ったものの、一体何の件か全く覚えがない。アーネストは少し不安になってきた。僕の知らない間に何かとんでもないことをしでかしてやしないだろうか。まだトルフレアの法律はマスターしてないからな...。いや、そんなことはない。もしそうだったとしても、そんな大したことではない。しかし王都の兵が来たとなると...。
「とにかく、帰って読んでみることにします」
「ああ、そうするといい。気を付けろよ」
「はい。ありがとうございます。」
 
不安と若干の好奇心を手に、アーネストは下宿へ帰った。この手紙が、彼の運命を大きく変えることになるとは、彼に知るよしもなかった。

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-11-01 22:57
  • 手紙…何かが起こりそう…!
    アーネストとゼノにはどんな関係があるんだろ?
    てゆーかその前にゼノって何なんだろ?

    これからの展開が楽しみ!

    ヤジウマライダー
    男性/20歳/愛知県
    2018-11-02 15:42

This is the way.[Ahnest]6

帰り道。大通りはすっかり人気(ひとけ)をなくし、昼間の喧騒が嘘だったかのように静かだ。二三人の働き人が肩をすぼめて歩いている。アーネストは、下宿への道を歩きながら考える。

商業の街、ソルコム。国内最大の港を持つトルフレアの玄関。しかし、ケンティライムの人間が来ることは滅多にない。なぜか。それは、ソルコムとケンティライムを隔てる、アイネ・マウア山脈のためだ。
何千メタとある山を越えることは難しく、山脈の北端まで行かねば、歩いていっても厳しい。それゆえにソルコムの物価はケンティライムよりも断然安い。つくづく滞在先にケンティライムを選ばなくて良かった.........。
そんなことはどうだっていい。ケンティライム兵の話だ。彼らでさえあの山を越えることは難しいだろう。わざわざ僕のためだけに来たわけではなかろう。きっとソルコム港に何か用があったのだ。そのついでなのだ。

「ただいまー」
「おお、坊主。帰ったか」
「帰ったかー!」
家に帰ると、二人の元気な声がした。下宿させてもらっている家のご主人と二歳のカルクが既に帰っていたようだ。
「今日は早かったんですね、ライネンさん」
「ああ、今日はボスの機嫌がよくてな。週末ぐらい家族とゆっくり過ごせーって。エナはいないんだけどな」そういうとライネンはわっはっはと笑った。
ライネンは鉄道会社で働いている。夜遅くに帰ることが多いのだが、今日は珍しい。

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-11-05 21:34
  • P.S.エナは奥さんの名前です

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-11-05 21:56

This is the way.[Ahnest]7

「しかしアーネスト。お前はえらく遅かったじゃないか。何かあったのか」
「ええ、まあ。大したことじゃないです。ガルタさんと話していただけで」
「ガルタのじいさんとか?お前、また何かしでかしたな?さてはあれか。今朝お前が寝坊したことか」ライネンはニヤニヤと聞いてくる。
「違いますよ。て言うか、僕がまだ寝てるのに気づいてたんだったら起こしてくれたって良かったじゃないですか」
「悪い悪い。夢の途中で起こしちゃいかんって言うしな」トルフレアの迷信だ。
「夢が現実に侵食してくるって言う話ですか。にわかには信じがたいですけどね」
「しかし否定もできんだろう」
「まあ、ね」
ライネンと話すときはいつもこんな風だ。頭がいいんだか悪いんだか。
「さ、俺は飯を作ろう。部屋で待ってな」
「へえ、ライネンさんも料理できるんですか」
「あったり前だ。自分が食う飯も作れんで男とは呼べん。期待しとけよ?」
またニヤリと笑うと、キッチンの方へスタスタと歩いていった。いつの間にかカルクはスヤスヤと毛布の上で寝ていた。いつの間に寝かしたんだ。

部屋に戻ると、すぐあの手紙を取り出した。封筒には、やはり「ケンティライムの封印」が捺されている。
アーネストは、ゆっくりとその封を開けた。中の手紙には、こんなことが書かれてあった。

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-11-05 21:54
  • フークレエって何ですか?

    (本文関係なくてすいません)

    ヤジウマライダー
    男性/20歳/愛知県
    2018-11-07 15:54
  • ヤジウマくん≫蒸しパンっぽいやつ。


    それ以外言いようがなかった

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-11-07 17:47

This is the way.[Ahnest]8

手紙には、こんなことが書いてあった。

『アーネスト・イナイグム・アレフ殿
 陛下の謁見望まれる故
 疾く疾く冬宮まで来るべし。
  ルーガル・トルフレア二世側近
     アズマルディ・ユン』

以上。
..............................なんじゃこら。
用件もわからない。ただ王が会いたいそうだ。僕に?ただのしがない留学生の、僕に?わからない。留学試験の時に「王室枠」というものがあるらしいとは聞いたが、三年近くたってしまった今さらそんなことは考えられない。
それとも国王の気まぐれだろうか。そうだとしたらかなりの傍迷惑なんだが。まあ王命なんだろう、行かねばならんだろうか。とりあえずライネンさんに相談するか。
そんなことを考えていると、飯できたぞー、というライネンの声。呼ばれてアーネストは腰かけていたベッドから立ち上がり、手紙を手に階下へと降りた。

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-11-12 22:17

This is the way.[Ahnest]9

「ねえ、ライネンさん」
「どうした坊主」
夕食中。ライネンが腕によりをかけて作ったのは真っ赤な鶏肉の料理だった。辛いのはあまり得意ではないアーネストはひぃひぃ言いながら食べていた。
「王都から手紙が来たんだけど」
「へえ、お前ケンティライムに知り合いでもいたのか」
「いや、そうじゃないんだけど」
「で、誰から来たんだ」
「ルーガル・トルフレア二世」
「ふーん」
「知り合いですか」
「知り合いも何も.........って、なぁにぃい???!!!」
ライネンはひどく体を仰け反らせ、目を見開いた。
「おまっ......ルーガルって......おまっ...」
「『おまっ』ってなんですか、ひらパー兄さんですか」
「ひら...何だって?」
「すいません忘れてください」
作者の地元愛が出てしまった。失敬。
「とっ、とにかくだ。お前なんで国王陛下から手紙貰ってんだよ」

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-11-13 07:47

This is the way.[Ahnest]10

「正確にいうと側近の人なんだけどね、なんか王さまが僕に会いたいって言ってるらしい」
アーネストは手紙を取り出すと、ライネンに手渡した。
「ふんふん...。来るべし、ねえ.........」
「何かありますか」
「うむ......この、『冬宮』ってとこが気になるな」
「んっ、どこですか?」
「どこですかって聞くほどたいした手紙じゃないだろう」
「そういえばそうでした」
『冬宮』というのは、王宮ケア・タンデラム城のことだ。寒さの厳しいトルフレアの冬季に最大の防御力を誇ることから呼ばれるようになった通称だと聞いたことがある。
「『冬宮』ってのは俗称なんだ。それも国民よりも外人が呼ぶ呼び方だ。それをましてや宮中の人が使うかな、とは思うんだが」
「確かに、それもそうですね...。まあ、トルフレアも丸くなったってことじゃないですか」
「そうか......まあ、なんにせよ、お前はどうしたいんだ。行くのか?」
「そう、ですね......。ケンティライムには前から行きたいと思ってたし、行ってこようと思います。王宮に行けるなんてまあなかなか無いことでしょうし」
「なかなかとかじゃなくて、普通ねえんだよ!」
そう大声を上げたライネンは、どこか寂しそうな気もした。
「ま、ちゃっとケンティライムまで行って、ちゃっと王様に会って、ちゃっと観光して、ちゃっと帰ってきますよ」
「ちゃっとってなんだよ、ちゃっとって」

そんなこんなで、アーネストのケンティライム行きは決まった。それから一週間、アーネストは外回りや旅の支度など色々な準備をするのだが、その辺りは割愛。

memento mori
男性/23歳/大阪府
2018-11-13 07:50
  • ひらパー兄さん気になったので調べてみました~
    想像だと関西のピン芸人かな~って思ったんですけど、想像と違いすぎて笑っちゃいました笑

    愛知はひらパー兄さんのCMが流れてないから
    めっちゃ気になりました

    行ってみたいな~

    ヤジウマライダー
    男性/20歳/愛知県
    2018-11-13 16:19
  • ヤジウマくん≫岡田准一はかっこいいと思います。(んなことはどうでもいい)

    今ひらパーは渋谷侵食計画進行中ですw

    開始早々アーネストが旅に出そうな雰囲気です

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-11-13 20:12