LOST MEMORIES 番外編

「秋の哀しい心、ねえ……。」
黒板に残る字を見て、ふと瑛瑠は呟く。先程の授業は国語であった。
そういえば、最近は秋桜を見かけるようになったっけ。
「歌名は、秋を哀しく思います?……歌名?」
瑛瑠はランチボックスを開けながら、向かいにいる歌名に尋ねる。勿論、チャールズお手製だ。
何やらがさがさとやる歌名は瑛瑠の声など聞こえていない。
「歌名、それは何?」
歌名が持つのはビニール袋。そして、いつものお弁当箱が見当たらなかった。
「一回、やってみたかったんだ!」
取り出したのはおむすび。
見ててね,そう言って、仰々しく包まれたおむすびを手に取り、奇妙な開け方をし始める。
瑛瑠は思わず凝視してしまう。
「じゃーん!海苔がぱりぱりのコンビニおむすび!」
呆気にとられた瑛瑠は、無惨な姿に成り果てた包みを手に取る。
「の、海苔が乾燥したまま入ってたってことですか……!?」
忘れがちだが、パプリエールはお嬢さまなのである。
「ふっふっふ、科学の進歩は凄まじいのよ!
あとね、スイーツも美味しいらしいの!今日の帰り寄ってみない?」
きらきらと効果音が鳴るレベルには目を輝かせている瑛瑠に、歌名は笑いかけた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「さっき瑛瑠さんが話してたのって、このことだよね?」
黒板の白い字を消しながら望は言う。投げ掛けた言葉の相手は、教卓へプリントを置きに来た英人で。
「少なからず、今は哀しいなんて感情とは程遠いだろうな。
こういうの、何て言うか知ってるか?」
――食欲の秋。
「今日、柿持ってきた。」
「……食べたい。」
望は一言そう返し、『哀愁』をそっと消した。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-09-14 22:52
  • ちょっと笑っちゃったwいいね、こういうの

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-09-15 10:29
  • めめんとさん》
    えへへ、嬉しい。笑
    描いてて楽しかったです。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-17 14:19
  • みーちゃん》
    本編と全く関係ない日常を描くっていうね(笑)
    疲れなくていいでしょう?笑 何も考えずに読めるのが素晴らしい←

    シュンって(笑)躍動感伝わるものね…

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-09-17 20:14

LOST MEMORIES~番外編Ⅱ~

真っ先によぎったのは、何かあったなという確信だった。
いつもより早い時間に帰宅する瑛瑠は、制服を着替えず、リビングのテーブルに大量の紙を重ねあげていた。スカートのひだが崩れるのもお構いなしに座っている。
チャールズは彼女へ、とりあえずお帰りなさいと声をかけた。
「今日はどうなさったんですか。」
乾いたホチキスの音が響く。
ただいまと言った彼女は顔を上げずに、友人の手伝いだと話す。
「あまりに忙しそうだったから、手伝いを申し出たの。書類とじなのだけれど。」
チャールズはすっかり慣れた手つきでコーヒーを入れる。そして、いつもより覇気のない、愛しいその声に耳を傾けた。
「みんなと一緒にやろうと思ったんだけど、教室も図書室も使えないから、これを借りて家でやろうと思ったの。」
ホチキスをちらつかせた瑛瑠の声は、やはりいつもより暗くて。
彼女が帰宅してから、やっとかち合った瞳。
ああ、もう。彼女も、こういう顔をする子だ。
チャールズは2つのコーヒーカップを、離れたい位置に、丁寧に置いた。書類にかかってはいけないから。
そして、後ろから瑛瑠をふわっと包み込む。瑛瑠の体が強張るのを感じた。
違う、怯えさせたいわけではない。
「ち、チャールズ!?」
「珍しく感傷的みたいですね。」
驚いたことで悲鳴に近いものをあげる瑛瑠に、努めて茶化すように言う。
その顔を見るのは辛い。どうか、笑って。
瑛瑠の体から、力が抜けたように感じた。瑛瑠を包み込むその腕に、少し笑って彼女は手を添える。
「ちょっと寂しかった。ずっと独りだったはずなのにね。」
胸が締め付けられる想いだった。思わず顔が歪む。
さて、そんなことはいさ知らず、瑛瑠は顔を上に向け、チャールズの瞳を見つめてくる。
「ね、ぎゅってしてもいい?」
悪戯っぽいその眼に苦笑する。そういうところだと言いたい。
どうぞという返事に、彼女は嬉しそうに、そしてはにかむように微笑んで、照れ隠しの意味もあるのだろうが、立ち上がると勢いよく抱きついてきた。
あったかい。くすりと笑って放たれた言葉に、既視感を覚える。
ほら、スカートにはすっかり皺がついてしまっている。
願わくば、彼女が笑顔でいられますように。
自分の罪を贖う術を想いながら、今度はぎゅっと抱き締めた。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-10-12 23:40
  • いやあヤバイぞこれは。思わず二三回読み直してしまった...。
    好きだよこういうの。うあーーーーってなる。

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-10-13 07:06
  • 今日この物語を見つけて、読ませてもらいました!!
    夢中になってここまで読んでしまいました
    続きを待ってます!!

    みどり〜ぬ
    女性/19歳/滋賀県
    2018-10-13 17:53
  • レス見落としてた。

    いや、あの、うれしい。なんか、うん、うれしい。(語彙力metoo)誉められんの苦手なんだよなあ

    ホッチキいじってたら「ガチャン!」って音がしてなんだ?!って思ったら人差し指に銀色の線が。いぶかしげに引っ張ってみて初めてホッチキの針だと気がつく。ああ言うのって案外いたくないもんなのな。血めっちゃ出たけど。w

    危ない文房具多いから気を付けないとね(←不器用)

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-10-15 17:04
  • めめんとさん》
    ふふふ、とっても嬉しい(笑)
    この話、ほんとはもっと長かったんです。この掲示板にいて初めて、文章が長すぎますという赤字が現れたの。びっくりしちゃった笑
    頑張って短くしてこう(笑)ちょっと力作です。

    あ、気付いていただけた笑
    めめんとさんもガッチャン経験あるのか。私は痛かった(大真面目)。はさみ、カッター、よもや紙から攻撃を受けたこともある。文房具危ない。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-10-15 17:38
  • みどりーぬちゃん》
    いやもう、とっても嬉しいです。なんでこう、みんな私を喜ばせるの上手いかな(笑)
    長い長いこれまでの話を読んでいただけるなんて、むしろありがとうございます。まとめもね、最近のやつ更新されなくて、遡るのも一苦労だよね…うう、嬉しい、ありがとう(*´ー`*)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-10-15 17:41

LOST MEMORIES~ハロウィン編~

ハロウィンとは、死者のために祈る日である。

「ハロウィンパーティーがしたいの。」
珍しく元気のない歌名は、瑛瑠にそんなことを持ちかけてきた。
これは――
「会いたい人がいるんですか?」
柔らかく問いかける。歌名が、ハロウィンの知識を持っているのならば、ソウリングをしたいのだろうと思い至ったから。占いをして、ゲームをして、ソウリングをする。残った主賓は魂に囲まれるのだ。
歌名には、会いたい魂があるのだろう。
「うん、お父さんとお母さん。
毎年やってたんだけどね。今年はそうはいかないでしょ。」
毎年、というくらいだから、両親が亡くなってしばらくたつのだろう。友人についての新しい情報に、少し動揺する。歌名のこと、全然知らない。
「やるって言ったら、来てくれる?」
「もちろん。」
顔を輝かせる歌名。
そこで、瑛瑠は提案してみる。
「英人さんと望さんも誘ってみません?きっと来てくれると思います。」
強く頷く歌名を見て、きっと歌名にとってとても大切なパーティーなのだろうと瑛瑠は微笑んだ。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-10-31 19:50

LOST MEMORIES~ハロウィン編(中)~

「それなら、クリスピン王は歌名ですね。占いはどちらでした?ナッツクラックとアップルボビング。」
クリスピン王とはハロウィンの主賓。そして、パーティーでは占いをする。胡桃を使ったナッツクラックか、林檎を使ったアップルボビング。ゲームはスリッパ捜しと決まっている。そのあとにソウリングだ。ソウルケーキをくれない人には罰を与える、子どものお菓子集めの元になったもの。
歌名は少し考えて言う。
「ずっとナッツクラックだったから、今年はアップルボビングやってみたい。」
瑛瑠は、お互い名前を刻むのが大変だねと笑ってみせる。
「旗とジャック・オ・ランタン、塩入れとアクアマニールはありますか?」
これらは、テーブルに置くもの達。
「ジャック・オ・ランタンはこれから。他はあるよ。」
「カボチャで作りますか?」
瑛瑠の問いに、不思議そうに頷く歌名。にこっと笑いかける。
「どうせなら、カブにしましょう。」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-10-31 19:56

LOST MEMORIES~ハロウィン編(下)~

スクオッシュでもいいのだが、どうせなら本格的にしてあげたいではないか。
瑛瑠の言わんとしていることがどうやら伝わったようで、抱きついてくる歌名。
「ほんっとうに瑛瑠のことが好き!」
はいはいとその背中を叩いてあげる。ソウリングケーキは私が持っていきますね,そう言うと、歌名はばっと離れた。
「さすがにそこまでさせられない!」
「専属の家政婦がいるので。」
ウインクをすると、泣きそうになる歌名がいる。
シナモンと干しブドウ、ナツメグの入ったバタークッキーを思い浮かべ、瑛瑠は微笑んだ。

ハロウィンとは、死者のために祈る日である。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-10-31 22:55

LOST MEMORIES~番外編Ⅲ~

放課後の教室。机に、コトンとあったかい缶コーヒーが置かれた。
「休憩しましょう。お疲れ様です。」
凄まじい勢いで動かしていたペンを一旦置いた英人は、瑛瑠を見上げた。
「お砂糖は要りませんでしたよね。」
そう言って瑛瑠は向かいに座る。『Dandelion』で注文したコーヒーには、砂糖は入れなかったから、そのことを言っているのだろう。
ありがとう。そう微笑んだ英人は、コーヒーに口をつける。瑛瑠も同じものを手にしている。聞けば、瑛瑠も砂糖は使わないと言う。しかし、続きがあった。
「ただ、角砂糖なら入れたくなります。」
「……何故?」
「魅力的な形じゃないですか。立方体って美しいと思いません?」
英人は呆れたように笑った。広げている数学の問題集に目をやる。瑛瑠が数学が得意だということで、教えを乞うていたのだ。別段、数学が不得手というわけでもないのだが、始業早々のテストで点数負けをしたことの悔しさから、こうした待ち時間に付き合ってもらっていた。
瑛瑠の言葉を思い、改めて苦笑する。自分が好きな分野が文学や哲学だから、数学好きはどうにも理解できない。
「待っててくれたの!?遅くなってごめんね!」
教室に飛び込んできた望と歌名。今日はいつもより会議が長引いたようで、外もだいぶ暗くなり、夜が顔を見せ始めている。
缶コーヒーはまだ温かかった。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-11-06 23:49
  • おおっ!!
    角砂糖!!
    それは思いつかなかった!!!
    すっごい自然!!
    私は、まだ考え中で…
    お題が難しいです…
    頑張って授業中に考えよう笑

    りんごのおひたし
    女性/20歳/奈良県
    2018-11-07 15:47
  • 文学や哲学は大好きだけど、数学も好きだよ(またどうでもいい話)苦手だけどね

    俺も数学教えてほしい。

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-11-07 19:45
  • りんちゃん》
    私も全然思い浮かばなくてね(笑)
    ひらめいたときは天才かと思った。笑
    楽しいよね、三題噺。

    めめんとさん》
    私はね、苦手なの。数学が本当にできない完全なる文系(笑)理科科目も、計算が絡むとさっぱり。
    語学が一番好きなの。でも、英人くん語学って感じじゃないし、高校一年生はまだ好きな分野は大きい幅の方がいいかと思って、ざっくりね笑
    文系男子と理系女子って良くないですか()
    たぶん1番成績良いのは望くん。
    瑛瑠ちゃんと英人くんは互角なんだけど、英人くんは総合取りで瑛瑠ちゃんは数学強い。歌名ちゃんは暗記得意なイメージ。
    こういうのあると面白いよね(個人的に面白いと思います笑)。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-11-07 21:56

LOST MEMORIES~恋の定義編~

「望は瑛瑠のことが好き。」
目の前で書類整理をする同士の言葉に、思わず手が止まる。
「……うん、好きだよ。」
「それは、恋なの?」
そう言う歌名の目は、興味や好奇心というよりもずっと、純粋な質問の色をしていた。
ここで冗談を言おうものなら、しばらく口をきいてくれないだろうことは目に見えていた。
「たぶん、はじめは。」
だから、真面目に答える。これが、今出せる1番近い答え。
思った通り、歌名は怪訝そうにこちらを見る。
「今も好きなんだよね?」
「もちろん。」
わからないと顔で訴えている彼女に、微笑いかける。
「控えめに笑うところが可愛いし、何かしているときに手伝いを申し出てくれる優しさとか、周りをよく見ているところとか、意外と隙があって心配になるのも愛しいと思うよ。
――はじめは、それにどきどきしていたし、独占したいと思った。」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-11-21 16:29
  • PS》
    恋って、自分本意だと思うんです。
    相手を好きな自分がいて、どきどきするし独り占めしたいとも思う。主語は自分。
    それぞれ反対に表すのなら、愛は相手本意でしょうか。
    自分の好きな相手がいて、相手を困らせないよう考えるし相手の幸せを願う。受け身といえど、主語は相手。
    さらに大きな違いとして、個人的にキーワードは「信頼」だと思っております。それも、かなり強いもの。
    愛は簡単に作り得るものではないと思います。恋と愛をない交ぜにしている表現が多いような気はしますね。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-11-21 17:58

LOST MEMORIES~愛の定義編~

歌名は、僅かに頬を赤らめる。
「そこまで言ったことなかったよね。
はじめはって……今はどきどきしないの?」
歌名の問いに、少し考える望。
「しないわけじゃないけれど、独占したいと思っていたんだ。ぼくの横で笑っていてほしかった。
……今は、ただ笑ってくれればいいかな。真剣に想いを伝えれば伝えるほど、彼女は困る。困ったように笑ってはほしくない。」
止まっていた手を動かす。言葉にして初めて、自分の想いや考えを再認識する。
「それは、愛なの?」
「……どうだろう、たぶん愛になるにはまだ何かが足りないと思うよ。やっぱり、ぼくの横で笑っていてほしいと思うし、霧と仲良く話すのを見て妬くくらいにはまだまだ恋だろうし。
……ただ、それ以上に四人の時間や関係が好きなんだ。これを、壊したくない。」
望は歌名を見つめる。
「ぼくが壊してはいけないし、みんな壊さないと信頼してくれている。もちろん、ぼくもみんながそういうことをしないと信頼している。だとすれば、みんなとの時間や関係に対する想いは愛かもしれないね。」
歌名は一通り聞いて、長テーブルに突っ伏す。
「なんで私の周りはそういうことを恥ずかしげもなく……!」
私もみんなのこと大好きだよと、消え入りそうに紡がれた言葉は、穏やかな空間に吸い込まれた。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-11-21 16:30
  • PS》
    望くんの瑛瑠ちゃんへの想いをただの恋ではないことを描きたかったのですが、愛というにはまだ幼く、恋と愛の淡いみたいな感情になってしまいました。いや、そういうことなのですが。

    ちなみに、恋は和語ですが、愛は輸入語なんですよね。たしか江戸時代かな。
    だから、愛はわりかし最近現れた言葉なんです。「思う(想う)」や「慕う」という方が、性に合っている気がします。
    愛に信頼は必須という私の考えを挿入したくて、結果友愛で締めました。
    愛は恋よりずっと広い意味で使われていることを伝えたい。そう思ってのこの文章でした。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-11-21 17:58
  • ご参加ありがとうございます
    恋編と愛編、楽しく読ませていただきました。
    大きなピースとして「信頼」がありましたが、なるほど確かにと一人納得していました。僕一人で悩んでいたら出てこないキーワードで、盲点でしたね。相手の態度や行動にいい意味でも悪い意味でも振り回されてしまうのが恋で、そこに信頼が入ってくると愛になると。
    解釈違ってたら申し訳ない限りですが、妙に納得です。
    そうだとしたら長い時間が必要ですね。信頼って一日にしてなりませんし。

    ロスメモと訳させてもらってますが、いいですね。この四人。こんなグループ学校にいたら思わず観察してしまいそうです。見てるだけで幸せを貰えそう。
    実は最初の方は読んでいて途中で挫折した人間なのですが、今度最初から読んでみようと思います。追いついたらレスも送りたいです。

    長文失礼。連載以下、楽しみにしてます。

    fLactor
    男性/22歳/宮城県
    2018-11-21 22:07
  • fLactorさん》
    長文レス大歓迎です。読んでくださり、ありがとうございます。たいそう考えさせられ、文章をまとめていてとても楽しかったです。
    解釈違いなんてとんでもない。合っています。
    ですから、愛は簡単に作りあげられるものではないと思うんですよね。
    納得だなんて、嬉しいです。

    ロスメモでいいです。笑
    ふふ、ありがとうございます。今回は望くんと歌名ちゃんを番外編に出演させてみました。
    私は、詩よりも物語にした方が想いや考えを伝えやすいので、他の方とは違った描き方になってしまい、結果長い文章となることが多々。2編を最後まで読んでくださって本当にありがとうございます(笑)
    本編も、お時間あるときにたまに見に来てくれると私が喜びます笑
    改めて、レスありがとうございました。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-11-21 23:36

LOST MEMORIES~幸露運ぶ天使編~

「うぅ……眠い……。」
目の前の歌名が弱々しい声で呟く。
お昼ご飯を食べたあとの麗らかな春の午後。暖かい空気が睡魔を呼び寄せる。
「天使の羽落とし、ですね。」
歌名だけでなく、横にいる英人や望も興味深そうにこちらを見る。
この言葉について、少しの説明をすると、会話に花が咲いた。
そうして、ふっと沈黙が落ちる。
瑛瑠はくすりと微笑む。
「天使が、通った。」

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-11-23 19:16
  • PS》
    造語をふたつ入れました。
    1つ目は、タイトルの“幸露”。これは、日常のなかで起こる一つ一つの小さな幸せのことです。露のような決して大きいものではない幸せを拾うことが、生きていく上の大きな幸せに繋がると思い、日本語として沢山の形容詞をつけなければならないような幸せを造ってみました。
    2つ目は、“天使の羽落とし”。これは文章にもあるように、食べたあとに眠くなる衝動のこと。最終文と繋げようという意図も多少あったのですが、暖かさや包み込まれている感じ,ゆりかご,羽,のような連想によるものです。
    最終文の“天使が通る”は、ふとした瞬間に会話が途切れ、沈黙が落ちるあの場面のこと。これは、フランスのことわざだったかな。これは造語ではありませんが、表現として知ってほしいなと思い、導入しました。

    短いのもかけるんだよってことを伝えたい文章でした。
    難しくてびっくり(笑)
    めめんとさん、楽しいリクエストをどうもありがとう。

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-11-23 19:34
  • いや、もう流石としか言い様がないと言うかなんと言うか(以後割愛)
    このリクエスト思いついてから、これはピーターさん巧そうだな、折角だから字数制限設けるかって今回の条件になった訳なんですが、予想の遥か上を行く結果になってしまいました。何て言うか良い意味で出し抜かれましたね。
    ありがとうございましたm(_ _)m

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-11-23 21:06
  • めめんとさん》
    一度の投稿におさめることっていう表記を見た瞬間に、「あ、これ、私への宣戦布告だわ。」と思いました(笑)
    この前の恋の定義リクエストは2編だったものね。笑
    だからね、ちょっといつもよりも違う風にしてやろうと思ったのです。短い文章にして、造語二個入れて、知る人ぞ知るみたいな表現と造語に関連性を持たせる小細工(笑)
    すべて自己満足でたいへん楽しかったです。
    お粗末様でした(*^^*)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-11-23 21:50
  • ばれてたテヘッ(^-^ゞ
    一度「300字以上400字以内」なんていう凄まじくきつい制限でもかけてやろうなんて前に思ってたことがあったのですが、造語のことを思い付いてやめました(正解)創意が伝わってたみたいで良かったです(何か違う)
    また気が向いたらやるんでよかったら。

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-11-23 22:34
  • 素敵〜〜〜!!
    私は、難しくて参加できませんでした…
    造語のセンスがやばい!
    私の語彙力もやばい笑

    りんごのおひたし
    女性/20歳/奈良県
    2018-11-24 20:28
  • りんちゃん》
    ありがとう(笑)
    難しかったよねえ…ほんと、お題が高度すぎてなんなのと思いましたtoめめんとさん。

    やばいってね、使いがちなやつ(笑)
    でも、ここではやばいって使わないようにしているんです。たぶん、ないはず。…たぶん。笑
    歌名ちゃんもたぶん使っていないはず。まだ(笑)
    綺麗な日本語で伝えたいよね。でも、表現出来ずにただただやばいって言いたくなることもあるけれど(笑)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-11-26 16:14

LOST MEMORIES~チャールズのモノローグ~

傘を閉じ、マフラーに顔をうずめ、寒そうに白い息を吐いた瑛瑠を、チャールズは見やる。
雨だったはずの外は白く染まり、冬を実感させられる。蒸気させた頬の彼女は、雪が降ってよかったねと微笑みかける。その既視感に痛みを感じ、そうですねなんて当たり障りのない言葉を吐いた。
雪が降ってよかったねに起因するのは二人の目的地。煌めく光に彩られた夜を目の前に、隣の彼女は眩しそうに目を細めている。その横顔があまりに綺麗だから、思わず笑みが零れる。
チャールズは、ひとりの女性を思い描く。すれ違ったままはぐれてしまった言葉に想いを馳せるけれど、そんな想いはとうに記憶の彼方で。
歯痒かったこの気持ちを、友人は恋と言うけれど、残ったのは今も時々疼く傷だけ。
雪が振り、また彼女を見失う。彼女の影を探しても意味はない。
隣から自分の名前を呼ばれ、やっと浮上したチャールズは、瑛瑠の手をとる。
「行きましょう、お嬢さま。」
――彼女のことは、傷つけない。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-12-14 23:49
  • PS》
    瑛瑠ちゃんの頬は上気しているんです。
    蒸気ではありません、すみません(--;)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-12-17 18:14

LOST MEMORIES~Christmas ver.~

「瑛瑠、付き合ってくれないか。」
帰り道、時はクリスマス。ケーキを囲む家族や甘やかな時間を過ごす恋人たち、かたやクリスマス商戦に追われたバイトとクリスマスなんていらないと追い込まれた受験生。
そんな喧騒に飲み込まれていた瑛瑠は、英人の言葉に応える。
「いいですよ、どこへいくんですか?」
薄暗い帰り道さえ光で彩られ、浮き足だった街並みを体現している。
ふっと笑った英人は、デートと一言。瑛瑠は呆れたようにため息を吐く。
「行き交うカップルのクリスマスムードにでもあてられたんですか。」
「横に何の申し分もない女がいて、見せつけたくないわけがないだろう。」
瑛瑠はじとっと横目で見てやる。その目を見て、肩を竦める英人。
そうして瑛瑠はふと思うら、
「たしかに、隣にイケメンを置いてクリスマスの街を闊歩できるのは光栄なことですね。」
すると、今度は英人が好戦的な目を瑛瑠に向け、艶やかに微笑む。
「お手をどうぞ、プリンセス。」
ダンスパーティーにおけるマニュアル通りのエスコートを演じられてしまったので、瑛瑠はその手をとる。
「ほんと、いい性格してますね、王子様。」
どちらともなくきゅっと握った手は、冬の帰り道にも関わらず、あたたかかった。

ちょっぴり成長したピーターパン
女性/24歳/秋田県
2018-12-24 23:54
  • みーちゃん》
    最初の一言で、「えっ!?」ってなってもらいたかったので、大成功(笑)
    メリークリスマス(*^^*)

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-12-25 14:46
  • みーちゃんに同じ(笑)
    ったくこいつらは…これでも必死で駆け引きだか対決だかに向き合ってるんだろうけど…可愛いぞこの野郎。

    シャア専用ボール
    男性/31歳/岡山県
    2018-12-25 16:52
  • いーや、俺は引っ掛からなかったぞ(フフン)毎度のことだからなこいつら(言葉づかい)

    それな。

    memento mori
    男性/23歳/大阪府
    2018-12-25 18:34
  • シェアさん》
    クリスマスなので、ちょっと可愛い感じに。
    本編はもはや可愛さの欠片もないから…笑
    ふたりともほんと…((

    めめんとさん》
    引っ掛からなかったかー、さすがです(笑)
    まあ、いつもだもんねえ…懲りないなあ。笑

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-12-25 20:44
  • て、手を繋いでおるではないか⁉(←誰⁉)
    可愛いし。
    素敵な関係ですわ。
    ちょびっとジェラシー笑

    りんごのおひたし
    女性/20歳/奈良県
    2018-12-25 21:06
  • りんちゃん》
    お手をどうぞ、プリンセスですよ。罪ですね。
    これくらいの距離感が大好きだとバレてしまう(時既に遅し)。
    ジェラシー(笑)
    たまには彼らを照れさせたりしてみたいですね。笑

    ちょっぴり成長したピーターパン
    女性/24歳/秋田県
    2018-12-25 22:32