朝早く起きて 窓を開けて
秋の風が頰に当たれば
それは物語のはじまり
いつもの通学路で
塗りたてアスファルトの匂い
それは物語のはじまり
久々に会ったクラスメイトの
急に大人っぽくなった姿
それは物語のはじまり
新しく買った短編集の
風の表紙の新品の手触り
それは物語のはじまり
何が始まる時、怖くて
消えたくなっちゃうけど
五感 研ぎ澄ませて
小さな変化に気づいたら
勇気を出して心の表紙
めくってみよう
私だけのプロローグ。
雨上がりの街路樹に
黄色い絨毯が続いている
ふたりは歩く
銀木犀たちに見守られて
9月7日、
駅までの遠い道のりを
初めて一緒に歩いた。
風に吹かれただけで
散ってく恋の花びら
近くじゃないと分からない
君の甘いソノ香り
9月8日、
信号待ちしているあいだ
初めて手が触れた。
君と帰るようになってから
駅までがとても近くて
気まぐれにつけた日記の
数字が早く老けるから
9月9日、
わざと遠回りして
初めて黙って歩いた。
君の声が聴きたくて
イヤホンを耳にあてると
流れてきたのはadvertisement
スキップ スキップ スキップ…
何回しても見つからない
僕の一番好きなうた
恋はいつもSHUFFLE再生
スキップは5回できるけど
PLAYBACKはできないの
寂しさ紛らわそうと
イヤホンを耳にあてると
流れてきたのはオススメの楽曲
好きって 好きって 好きって…
何度言っても伝わらない
僕の一番好きなひと
恋はいつもSHUFFLE再生
好きって5回以上言っても
君のPLAYLISTは作れない
文化祭も近づいた頃
あみだくじが回ってきた
席順が一番後ろの私は
最後の最後に番号書いた
あの人の隣の線の上
ずっと気になってた
話したことも数えるほど
自分からは近づけない
だから、"席替えの神様"
どうか私に微笑んで
鱗雲が流れて消えた
窓ぎわは私のお気に入り
あの人の顔が映るから
もの静かでシャイだけど
笑う顔がステキな人
教科書忘れちゃった
少し後ろめたい嘘ついて
机をぴったり重ねたら
心の中で鳴り響いていた
恋の開始のチャイム
途切れそうな発車bellで
滑り込んだ9番ホーム
今、髪と心だけふるわせて
ワサビ色の電車 見送った
SEPTEMBERはさよならの駅
恋に乗り遅れた人たちが
SEPTEMBERに立ち止まって
次の出会いを待っている
daytimeの一瞬 この駅は
0番ホームまで見渡せる
今、折り返し電車が遮った
カラシ色したワンピース
SEPTEMBERははじまりの駅
隣には似合いの誰かさん
SEPTEMBERに君は変わった
新しい人と出発するんだ
SEPTEMBERは恋のターミナル
皆んなこの駅で折り返す
SEPTEMBERでゼロになって
僕が次の電車に乗っても
REMEMBER 君との夏は忘れない
La La La La La La La …
あの子が残して云ったのは
飲みかけのクリームコーヒと
ドアについてある鈴の音
苦い想いまぎらわそうと
シュガーポット取ろうとして
右腕がグラスに触れた瞬間
こぼれた こぼれた 床に こぼれた…
ふたりのガマンが
こぼれた こぼれた 遂に こぼれた…
まだ残ってたのに
おぼれた おぼれた 恋に おぼれた…
ヒゲを生やしたマスターが
代わりにと持ってきてくれた
冷たいカフェ・ド・オレ
思い出の苦いコーヒーと
マスターの優しさのミルクを
飲み干したら夏が終わった
La La La La La La La …
恋がリンスINシャンプーならいいのに
なくなる時は2人一緒
だから寂しくなんかない
シャンプーの彼とリンスの私
先になくなるのは彼の方
私はまだ半分残ってるのに
だから恋が終わった時
いつも傷つくのは私の方
恋がリンスINシャンプーならいいのに
なくなる時は2人一緒
だから寂しくなんかない
シャンプーの彼とリンスの私
恋の汚れ落とす役の彼と
2人の仲滑らかにする役の私
なくなる前に詰め替えて
満たせあげれば長持ちする
メリット・デメリットもあるけど
やっぱり彼は私にとって
とってもessentialな人
なぜここへ足を運んだのか
自分でも分からない
ツタのからまる野球場
浜風のアルプススタンド
双眼鏡をのぞきこんで
ゆがんだ背番号 追いかける
シワクチャなユニフォーム
ちっとも変わってないね
空高く飛んだボール
今、グローブの中に消えた
私の元まで届かなかった
彼の心の行方のように
マネージャーだった時には
ずっと彼の背中見ていた
ただ振り向いてほしかった
もうすぐ片想いが終る…
試合終了のサイレン
今、オレンジの空に消えた
このゲーム勝てなかった
私の恋の結果のように
風の通り道のリビングで
昼寝してたら
西日が眩しくて目が覚めた
秋の気配は
時計の針と短編集のページ
勝手に進めて
いつのまにかエピローグ。
ツクツクボウシのBGMが
middle tempo のコオロギに
今、心の表紙 閉じるとき
何台の車見送っただろう
キズだらけの
君の車が走ってゆかないか
夏の魔物は
君と僕が紡いできた短編集
勝手に閉じて
いつのまにかエピローグ。
ツクツクボウシのBGMが
middle tempoのコオロギに
今、心の表紙 閉じるとき