寿々谷市で一番栄えている所は?と聞くと、多くの人が「寿々谷駅前」と答えるぐらい、寿々谷駅前は栄えている。
市内に1つしかない鉄道路線が通り、駅前には大きなバスロータリーがある。
近くには市内で一番大きいらしいアーケード商店街があり、学生たちのたまり場、ショッピングモールもある。
他にも病院、市役所など、様々なものがあり―市の中心部、という言葉が相応しい場所だ。
わたしは、駅自体を使うことは少ないけれど、ショッピングモールや塾へ行くために、よく近くまで行く。
だが今週は、ショッピングモールに行こうとは思えなかった。―なぜなら、”彼ら”に出会ってしまうかもしれないと思うからだ。
一緒にいて、とにかく楽しかった”彼ら”。友達がほとんどいないような状態だから、友達になれると思ったのに、―なのに。
―”異能力”にまつわる物事に、常人は下手に関わっちゃいけない―
手を伸ばせば届きそうなのに、”彼ら”は自ら離れて行ってしまった。
もしかするとわたしは”誰かと一緒”は無理なのかもしれない、そう思った。
でもさすがに独りは嫌だった―が、かと言ってまた”彼ら”に会いに行くと、嫌がられそうな気がする。
学生が多く集まるショッピングモールに行って鉢合わせたら、ものすごく気まずくなりそうな気がして、今週は行こうとは思わなかった。
レスありがとうございます!
そうですね、セイレーンは人の頭した海鳥の幻獣ですね… さてこれからどうなるのか。今日も連載します!
でも、そうすると明日、日曜日は暇になってしまう。
だから何をして暇をつぶそうか―と考えながら、わたしは駅前を歩いていた。
というのも、今日は塾があって、ついさっき終わったばかりなのだ。
夕方の駅前は、土曜日とはいえ人が多い。
ふと、道行く人々の中に、クラスメイト達を見つけた。2人仲良く連れ立って歩いている。
自分もああなれたらな…でもなれそうにないかも。そう思うと、彼女らを見ているのが嫌になって、バス停近くで歌う路上アーティストの方へ目を向けた。
さて、明日何をしようか…ラジオでも久しぶりに聴く? でもラジオは壊れて使えないし…
そう悶々と考えながら、帽子を目深に被って歌う女の人を眺めていた―その時だった。
ふっ、と人々の視線が、一瞬だけど、その人に集まったような気がした。
でもわたしがそれ以上に驚いたのは―その人が目深に被った帽子の下から、ちらりと見えた目が、ほんの一瞬光っていたのだ。
え、と思った。まさか、と。
「異能力者」わたしはとっさにそう思った。
こんな、ところにも? こんな風に…ここにも?
そう思った時、”彼女”の言葉が脳裏をよぎった。
―この街、異能力者多いもん…
”彼女”の言う通り、この街は異能力者が多いのかもしれない。
いつの間にか路上アーティストの周りには、さっきよりも少しだけ、人が増えていた。
”彼ら”と同じ”異能力者”かもしれないと思うと、自然とその人に興味がわいた。
だから、その人のライブが終わってから、周りの聴衆がいなくなるのを見計らって、話しかけてみることにした。
もちろん、ただの見間違いだったらと思うと、話しかけるのは怖かったけど。
でも無性に気になったから、その人がギターなんかを片付け始めた時に、そっと近づいて話しかけた。
「あの…」
ん?とその人は片付けの手を止めてわたしを見た。
「さっき…目…光ってました…よね…?」
その女の人は暫くの間、わたしの目を見ながら考えていたが、不意に顔を上げ、帽子をくいとちょっと上げてから笑った。
「…キミ、面白いねぇ」
その人の目がまたほんの一瞬だけ、鮮やかな紫色に光った。
すいません、部活がきつくなってレスできなくなって来ました。レスしてなくても、必ず読んでいるので、これからも頑張ってください!
Fc No. 1 北西の侍
レスありがとうございます!
毎回レス付けなくても全然OKですよ! 応援ありがとう。北西の侍さんも、部活頑張ってくださいね!
面白くなってきましたね(元から面白かったんですが)。やっぱり能力者同士は引かれ合うんですね!続きを楽しみにしています。
Fc No.2 何かが崩壊している者
レスありがとうございます。
ふーっふっふっふ(笑) さてここからどうなるのでしょうねぇ⁇ 今日も連載します!
「いや~珍しいね~、常人なのに異能力のこと知ってるなんて~」
近代的な寿々谷駅の入り口近くの柱の陰で、その不思議な女の人は笑った。
「そうですか…」
「アタシだって、今までの記憶を漁っても、そんな人間に遭ったことないよ~ま、アタシが知らないだけで、わずかながらにいるかもしれないけど」
その人は苦笑する。意外なことに、異能力者であることがバレても驚いている様子はなかった。
「ねぇキミ、アタシが異能力者だって見抜いたってことはさ、異能力のこと結構知ってるってことだよね? 知り合いとかにいるの? 異能力者」
その女の人は、面白いものでも見るかのように、わたしの目を覗き込んでいた。
わたしは、自分が興味を持った人に、逆に強く興味を持たれてしまって、ちょっと彼女に気圧されていた。
「あー…まぁ、知り合いにいますね、異能力者」
わたしの言葉を聞くや否や、その人は目を輝かせた。
「マジで⁈ すごい! 異能力のこと常人にカミングアウトする人っているんだ! すっごい度胸の持ち主じゃんその人!」
「あ、いや、教えてくれたっていうか、バレちゃったってやつなんです、わたしのせいで…」
何か勘違いされたような気がして、わたしは慌てて付け加えた。
「あーバレちゃったってヤツかぁ…それは、しょうがないね」
その人はふふっと笑った。
ひとまず会話が落ち着いたところで、わたしはふと、さっきのことを思い出した。
「そういえば…さっき、能力発動してましたよね?」
「うん、そうだけど」
さっきわたしが見たのは、ただの見間違いではなかったと分かって、ちょっと安心した。
「あなたの能力って…『周りの人の視線を集める』能力?」
「ん~、ちょっと違うね。アタシの、ていうかアレは”セイレーン”っていうんだけど、『周りの人の意識を集める』って言うのが正しいかな」
その人は、水の入ったペットボトルのフタを開けながら続ける。
「あ、あと、アタシの名前は船戸 セレンって言うんだ。キミは?」
「え、わたし?」
思わず聞き返すと、船戸さんはそう、とうなずいた。
「…不見崎 清花(みずさき さやか)っていいます」
「へーいい名前じゃん」
船戸さんはニコッと笑った。
「…そうだ、船戸さんってさ」
「セレンでいいよ、苗字じゃなんかかしこまりすぎ」
そう言ってセレンさんは、ペットボトルに口を付けた。
「…寿々谷の人?」
わたしの言葉を聞いて、セレンさんは軽くむせった。
主人公そんな名前だったのか。
レスありがとうございます。
えーと、清花の名前自体は「2.コマイヌ」のわりと最初の方に出てきてますが…? まぁ、以後お見知りおきを。
今日も連載します!
「あ~いや、アタシは寿々谷の人じゃないよ。もっと田舎の方。大学行く時よく電車で通るから、学校帰りによくここでライブしてるだけ」
「へぇ~」
「まぁ、寿々谷は異能力者多いからね…普通はもっと少ないよ。アタシも高校生になって町の外の学校行くようになるまで、同級生に異能力者いなかったから」
「そうなんですか?」
そう聞き返すと彼女は、バスロータリーの方へ目を向けた。
「まぁね、アタシが住んでるところは、もともと人が少ないってのもあるけど。でも寿々谷は多いよ~ それで昔から、異能力者たちの間では有名でね… ま、こういうところはどこの国にも最低1つはあるらしいけど」
そうなんだ…とわたしは心の中で呟いた。
ずっと、この街はありふれた地方の街だと思っていたのに、実はかなり普通じゃないことが、不思議で仕方なかった。
「そういえばセレンさん、何でここで能力使ったんです? 人が多くて目立つのに…」
1番わたしが気になっていたことを尋ねると、セレンさんは苦笑した。
「あ~アレ? 今日はいつもより人の集まりが悪かったから、つい使っちゃったの。普段は絶対使わないんだけどね、バレたくないから…でも今こうして気付かれちゃったから、もう二度とここで使ったりしないよ」
そう言って笑っている彼女を見ながらふと、ある疑問が浮かんだ。
「…セレンさんって」
そう言いかけた時、スマホを見ていたセレンさんが言った。
「あ、ゴメン。そろそろ行かなきゃ…明日もまたここにいるからさ、続きは明日にしよ」
じゃあね、と言いながら彼女はギターケースを背負うと、駅構内へと小走りで行ってしまった。
「明日…」
去って行く彼女の背中を見ながら、ふとわたしは、明日することができたことに気付いた。
翌日、わたしは昨日と同じ時間帯に、寿々谷駅前のバスロータリーに向かった。
昨日言っていた通り、セレンさんは今日もそこにいた。
バスロータリーの片隅でライブをする彼女の周りには、昨日よりも人が集まっていた。
タイトル提供ありがとうございます!このシリーズ、とっても面白くて素敵だと思います。これからも楽しみにしています!
レスありがとうございます。
まだまだこの物語も面白くなっていく予定です! どうぞお楽しみに!
「やっぱり、来てくれたんだね」
ライブが終わって周りから人がいなくなってから、セレンさんは自分の方に近寄って来たわたしに言った。
「まぁ…暇なんで…」
「暇って言ってられるのは今のうちだよ? 多分だけど」
セレンさんは、アコースティックギターをギターケースにしまいながら笑いかけた。
「そういえば…昨日、何聞こうとしてたの?」
「へ?」
わたしのポカンとした顔を見て、セレンさんは口を手で覆って笑った。
「昨日。アタシが時間だからって、会話が強制終了しちゃったでしょう? あの時、何が聞きたかったのかな~って」
「あ~っ」
そうだった、わたしは昨日、セレンさんに1つ聞こうとしたのだけれど、時間がなくてちゃんと聞けなかったんだっけ。
「じゃあ、聞いていいですか」
「どうぞ」
彼女はそうわたしに促した。
「…セレンさんって、いつもここでライブしてるんですよね?」
「まぁ忙しいから週1、2回ぐらいだね」
「もしかして、将来歌手とか目指してるんですか?」
「あ~、まぁね。本当になれるか分かんないけど。ここだけの話、家族に内緒でこういうことしてんだ」
セレンさんは恥ずかしそうに頭を掻いた。
「あの~、わたしが言うのは何か変な感じがするんですけど、…セレンさんの能力、上手く使ったら夢叶うんじゃないのかな…」
自信なくうつむきながらわたしは言った。
そんなわたしを見ながら、セレンさんは苦笑いした。
「まぁ、ね…確かに、”セイレーン”の能力って、上手く使えば人の注目集めて、有名になれるかもしれないけどさー…やっぱり、違うんだよねー」
セレンさんは、遠くの方を見つめながら続ける。
「結局さ、能力使って人の注目集めたとしても、それは”アタシ”じゃなくて、”セイレーン”の力なんだよねー。アタシ、”船戸 セレン”の力じゃない―歌手になりたいと願っているのは”セレン”だから、アタシの力で頑張らないと」
「…やっぱ、そうですよね…」
”使わない理由”は、なんとなく予想がついていたから、返答が思った通り過ぎて、聞いた自分にちょっとあきれてしまった。
「あと、”異能力”って、使い方間違えると危ないから…」
え、とわたしは思わず言った。どうして…?
「例えば、”セイレーン”。『周りの人の意識を集める』能力なんだけどさ、あんまり長時間使っていると、周りの人の”意識”がアタシに集中して、周りの人が周りの人自身がやっていることに対する注意が散漫になるでしょ? …色々事故とか、トラブルとか起こるかもしれないから、アタシも、”セイレーン”も、この能力はむやみに使いたくないんだ… ま、光る目が目立つから、ってのもあるけど」
彼女はうつむきがちに苦笑した。
「”周りに影響を与える”系の能力は下手すると周りに滅茶苦茶な影響を与えちゃうから… いつの時代も、そのせいで自滅する異能力者がいるんだけど…ま、それを防ぐために”記憶の継承”が起こるんだろうね」
”過去に同じ能力を持っていた人間の記憶を引き継ぐ”―異能力者たち共通の特徴が存在する理由が、分かったような気がした。
「…やっぱり、すごいですね、異能力者は…」
「そぉ? アタシにとっては当たり前のことだから、何とも思わないんだけどね~」
セレンさんは宙を見上げながら呟く。その目にはきっと、わたしとは違う風に世界が見えているのだろう。
「…わたしも、異能力者の”当たり前”理解できたらなぁ…」
「なんで?」
セレンさんが、わたしのほうを見て首を傾げる。
「いや、もし分かってあげられたら、仲良くなれただろうな~って」
「…もしや、”異能力”を知るキッカケになった子?」
「あ、まぁ”子”っていうか…”人達”なんですけど…」
言いながらわたしは、ちょっと恥ずかしくなって下を向いた。
「仲良くできないってヤツ?」
「…そう、です」
ドンピシャすぎて、顔を上げる気にならなかった。
「ま~そりゃね~、バレちゃいけないのにバレちゃったら関わりづらくなるよね~ アタシであっても、そうするかも」
そう言いながらセレンさんは苦笑いした。…やっぱり、そうなんだろうな…
「わたしも、異能力者だったら話は違ったのかな…」
「そういうifを考えたって無駄だよ。これが現実。―キミはこれまでも、これからも、普通の人間であることに変わりないよ。…それに、他者を理解するのは難しいから…時間をかければ上手くいくかもしれないけどね」
「そうですかね…」
時間ををかけたとしても、”彼ら”と仲良くするのはかなり無理がある―あの通り、突き放されてしまったし…
そう思いながら、おもむろに顔をあげたその時だった。
「あ」
双方からほぼ同時に、同じ言葉が飛び出した。
「なんで…」
その次に口を開いたのはわたしではなくあちら側。
「なんでここにいるんだよ!」
「わ、わたしもそれ言いたいよ!」
黒いパーカーのフードを被った少女―ネロがわたしを指差し叫んだ。
ありゃー、再会しちゃいましたねー。仲直りできるかな?
レスありがとうございます。
いや~まさかの(?)展開になっていますが、一体全体どうなっちゃうのでしょうねぇ?
今日も連載します!
昼とも夕方ともいえぬ時間帯、路地裏を歩く俺を、誰かが呼び止めた。
「あら、」
振り向くと、そこには長い髪を一つに束ねた長身の少女がいた。
「…フン、お前か。一体何の用だ」
「…別に用なんかないわ。たまたまアンタを見かけて話しかけただけよ…そう言うアンタは何してるの?」
少女はわざとらしく首を傾げる。その顔に浮かぶ笑みはいつになく憎たらしい。
「ちょっとコンビニにノート買いに行くところだ…お前は、塾にでもいくところか?」
俺は、彼女が背負うリュックサックに目をやりながら言う。
「ハズレ。友達ん家に遊びに行くところよ。…今思ったけど、アンタ、ホントはコンビニ行くついでに駄菓子屋にでも寄るつもりなのでしょう?」
「ぎくっ」
見抜かれた、と思った。やはりこの女を、俺は昔から騙しきることはできない。
「ふふふ、当たりね。どっちにしろ”ココアシガレット”のソーダ味バージョン買いに行くんでしょう? 私にはお見通しよ?」
「”サワーシガレット”な。いい加減名前覚えろ… てか、お前も行くんだろう? 駄菓子屋」
あら、お見通しなのね、と彼女はにっこり笑う。
「まぁな…お互いに色々お見通しなんだよ。そうでなけりゃこんな風に会話するようなことはなかろう?」
「そうね。一応私の方が年上だし、学校が違うのにこうやってお喋りできるのは、お互い似たようなものだからね…」
そう言い終えて、彼女はふっと目を細める。
「…こういうのを”腐れ縁”とかって言うのかしら」
それを聞いて、俺は違うな、と苦笑いした。
「…”悪友”が一番ちょうど良いな。…俺達は」
読んでて楽しい!小説家みたい!
ふぇ⁈ あ、レスありがとうございます…
え、楽しい?ですか⁇ 読みにくくありません⁇ 下手っぴだと思うんだけどな…
ポエム掲示板の他の人たちのほうがずっと上手だと思うんですけど…
「悪友、ねぇ…」
私は彼の言葉を反芻する。
「確かに、よくヒドイ言葉をぶつけあったり、互いにイタズラを仕掛けたり…そういう意味では、”悪友”はピッタリね」
「そうだろう?」
鮮やかなコバルトブルーのウィンドブレーカーを羽織っている彼は、そう言って歩き出した。
「…そうだ、面白い話教えてよ」
私は、彼の後ろに付いて行きながら言う。
「お前はお前で面白い話とかがあればしてやってもいいが」
「それがあいにくないのよ」
「フン、じゃ無理だな。俺のモットーは等価交換なんで」
そう言って彼は後ろを向くと、にやりと笑った。
彼は知り合いが非常に多く、常にたくさんの、色々な人の話を持っている。だからよく、情報屋みたいなことをしているのだ。
「…代わりにジュース1本ぐらいはおごってやるわ」
「そんなんじゃ俺は乗らないぜ」
彼はそう吐き捨てた。でも私はここで引きはしない。
「じゃあどっかの誰かさんと、ココアシガレットとサワーシガレットのどっちが素晴らしいかで小競り合ったとか言う話を言いふらされてもいいの?」
「うぐっ…」
彼の余裕そうな顔がゆがんだ。私は得意げに続ける。
「どうする?」
彼は数秒考えこんだが、すぐに口を開いた。
「しゃーねぇ、ジュース1本プラス俺のオヤツ代おごれ」
「OK、でもおやつは500円以内まで」
厳しいなぁ、てかアニメの中の小学校の遠足かよ、と彼は苦笑いする。
「…で、何の話がいい?」
「別に何でもいいわ。とにかく聞かせて頂戴」
私は、よき悪友に駆け寄った。
あ、タグミスった(笑) 「1.の視点違い」というより、「1.の続きだけど視点が違う」が正しいや。
今度はセイレーンですか。人間の頭した鳥の化け物でしたっけ。主人公ヘコまないで!