「まぁ…ここ田舎だし、みんなここに集まっちゃうし…」
「これだから田舎は! もう…」
赤いウィンドブレーカーの少年 耀平はあきれ気味に呟き、ネロは地団駄を踏んだ。
その後ろにいる師郎は苦笑いするばかりだったし、黎は相変わらず沈黙し切っていた。
「…つか、なんでまた異能力者と一緒にいるの? 関わらない方がいいって言ったハズだよねぇ?」
ネロは怪訝そうにわたしの顔を覗き込む。
わたしはちょっとびっくりして思わず後ずさってしまったが、1つ自分の中で引っかかるものに気付いた。
「待って、どうしてセレンさんが異能力者ってこと知ってるの? もしかして、知り合い?」
さすがにそうだったら嫌だな~と思いながら、わたしは彼らに尋ねた。
「いや、別に、アタシはこの子達のことぜーんぜん知らないよ? てかこの子達が、キミが異能力を知るキッカケになった子達?」
セレンさんは明るく笑いながら言う。
「ちょ、お前ーーーっ! ボクらのこと人に話したな⁈ マジ許さ」
「待て待て待て」
自分たちのことを他の人に話されたことが癇に障ったのか、ネロはわたしに飛びかかろうとし、耀平はそんな彼女を慌ててなだめた。
「こらこらケンカしなーい。じゃないとアタシが能力使って周りの目集めるよ?」
「わ、それはちょっとやめてください」
「う…」
セレンさんのちょっと怖い発言に、わたしはまた後ずさり、ネロはちょっとうなだれた。
「…まぁ、話した相手が異能力者だっただけ良かった方だろ、な?」
耀平はそう言ってネロの肩を叩いたが、その直後に一瞬わたしに向けられた視線は痛かった。
そしてわたしは彼らに向き直り、さっきの質問をもう1度した。
「…すごい気になるんだけど、何でお互い初対面なのに、異能力者であることが分かるの?」
「それは…」
セレンさんがぽつりと口を開く。
「本能的に分かるの」
「へ?」
あまりにもシンプルな回答に、わたしの頭は真っ白になる。
「異能力者はね、気配で周りの異能力者が分かるんだ。説明するのは難しいけど…なんとなく、勘みたいなもので分かるの。あの人は異能力者だって」
「え、ちょっとすごすぎません? というか…ホントに?」
わたしは、自分がまだ知らない異能力者の”特性”を聞いて目を丸くした。でも当の本人達は何ともなさそうだ。
「別に、ボクらにとっちゃ普通のことだし… もちろん本当のことだよ? 例えばあの人とか、異能力者だし」
そう言ってネロは、商店街の入り口付近を歩く女の人を指差した。
「あーあとそこの人とか」
「それと、あっちにいる2人組とか」
耀平や師郎も、それぞれ駅前を行く人々を指さしていった。
「本当に分かるんだ…それに、異能力者って結構いるもんなんだ」
「ね? アタシが言った通りでしょ?」
セレンさんはわたしに向かって片目をつぶってみせた。
「あと、能力によって他の能力者を察知できる範囲が変わるんだ。俺の場合は半径80メートルぐらい」
そう師郎は異能力者たちの、他の能力者を察知する”特性”について補足した。
「…まぁ、この特性みたいなのがなかったら、おれ達は多分出会ってないだろうな…」
「だよねー」
「だな」
そんな彼らの呟きを聞きながら、やっぱり異能力者はすごい、とわたしは思った。
何かもう、なし崩し的に主人公のこと受け入れちゃってますね、異能力者s。
そぉですかね~(笑) まぁでも、そうも見えるかもしれないですね…
今日も連載します!
「…っていうか、何で異能力者とまた一緒にいるの?」
ふと思い出したように、ずい、とネロはわたしに詰め寄った。
「い、いや、たまたま能力使ってるところ見て、それでもしやって話しかけたんだけど…」
「え、ダメじゃん」
ネロはぽかんとした顔でセレンさんを見た。
「いや~、バレないようにしたつもりなんだけどね~、この通り見抜かれちゃったんだよ~。ま、他の普通の人に言いそうにないから大丈夫だと思うけど」
セレンさんはちょっと申し訳なさそうに頭を掻きながら、相変わらずニコニコ笑っていた。
「一体どこにそんな信頼要素があんのか分かんねーけど、こっちはこっちで脅しをかけてあるから大丈夫だと思いますよ?」
そう言って耀平はセレンさんに向かってにやっと笑った。
「お、どんな脅しー?」
「もしもバラしたら、こいつとボクの能力で探し出して、見つけたら問答無用でボクが記憶奪取!」
ネロはすいっと耀平の手を取り自慢げに言った。
「ほー、なかなかやるじゃん。それなら清花も絶対他人には言えないね」
「見つけたらさっさか奪うから、異能力関連の記憶以外のモノも奪っちゃうかもね~」
「え、ちょっとそれは怖い」
わたしは、ネロの発言だけでなく、傍から見ればかなり恐ろしい彼らの会話内容に後ずさった。
「…そういえば、さっき何でここにいるのって聞いてきたけど、逆にあなた達は何でここにいるの? わたしは暇を持て余してというかそんな感じなんだけど」
わたしはさっきのネロの言葉を思い出して、彼らに尋ねた。
「それ言いたくな」
「ショッピングモールからの帰りだよ。毎週日曜ぐらいにあそこに集まってんだ」
「ちょ師郎それ言っちゃう⁈」
「いやはぐらかそうにも無理があるだろ」
言いたくないことを師郎に言われてしまったネロは、頬を膨らませて抗議したが、すぐにがっくりと下を向いた。
「週1、なんだ…」
確かに前にこの4人にあった時は日曜日だったし、場所はあのショッピングモールだった。
「…そりゃ、みんな普段は部活や塾で忙しいし、学校は違うし、ついでに今受験生が約2名いるからほぼ必然的に日曜に会うことになるだろ」
ぼそっと黎は呟いた。
「ま、テスト前とかは無理だけどなーっ。あーでも、ネロは例外。コイツはいつも暇こいてる」
「?」
わたしは耀平の言葉にちょっと首を傾げた。例外って…
「暇って言うか…やることないんだよ。第一ボク不登校だし」
「えソレ、サラっと言えること⁇」
自分だったら言うのをためらいそうになる言葉を平然と言い放ったネロに、わたしは唖然とした。
ネロさん何か複雑な事情あったりするんでしょうかね?それよりもこの場に何となく主人公が馴染んでるのが嬉しくて嬉しくて……。
レスありがとうございます。
そうですね、まぁかなり複雑な事情があるのでしょう、あの子には…
清花がなじんでることが嬉しいなんて、彼女に言ったら喜んでくれるかもしれません…
今日も連載します!
「いやもう何年もこうだから… 家にいるのも嫌だし。あ、耀平たちに出会ったのは2年ぐらい前だからね? こうやって集まるようになったのはホント最近」
「はぁ…」
ほんの短い間、わたしと異能力者たちとの間にゆるい沈黙が流れた。
…と、不意に、ネロが何かに気付いたように口を開いた。
「…アンタ、意外とボクのことこれ以上聞かないんだね」
「?」
わたしは何のことか一瞬分からなくて、ちょっとぽかんとしてしまった。
「いやアンタ、先週会った時は”異能力”についてガンガン聞いてきたのに、今回は…」
ここまで聞いて、わたしはネロが何を言いたいのかやっと分かった。
「あー…あれ…内容的には聞こうとは思わないよ…」
さすがにああいう不登校とかの、暗そうな話は、ね…とわたしは苦笑いした。
「そりゃな。アイツの話、絶対時間かかること目に見えてるし」
「そーいやこないだは、こっちがちょっと嫌な顔しても”異能力”のことメッチャ聞いてきたもんな…」
耀平や師郎は、わたしに対してあきれ気味に呟く。
「…まさに知識欲の権化」
ぽつっと黎が言った。
「それな。ま、それだから人間は今の今まで繁栄してこれてるんだろうよ…」
師郎はどこを見るともなく宙を見上げた。
「どうでもいいけどキミ達仲良いよね~。もうフツーに仲良くやれば?」
知らない間に話の輪から外れかけていたセレンさんが、わたしと異能力者たちの顔を見ながら言う。
「え、ヤダ」
真顔でネロは即答する。
「えぇ何で⁈」
「…そりゃ、」
耀平があきれたようにわたしに言う。
「ちょこまか付いて来てメンドくさい」
「えぇぇぇぇ⁈」
「いやえーじゃねーだろ」
師郎はがっくりとうつむいた。
「まぁさー、仲良くするのはいいんだよ。いいんだけどさ…なーんも言わずに付いて来るトコがもう…」
耀平は気まずそうにわたしから目をそらした。
「ついでにさ、こういうのってたいてい何か起こすし」
「いやー、もうすでに何か起こってるけど」
ネロは不満げにわたしを見、師郎は苦々しく笑った。
黎は無言でうなずいている。
「…そんな」
予想外の理由に、わたしは体から力が抜けていくような気がした。
あっ、ナンバリングミス発見。⑰じゃなくて、これ⑱だったね(笑)
これからは気を付けねば…
「アンタ…そんなんだから友達いないんじゃない? 実際にいるかどうかボクは知らないけど」
グサッ、とネロの鋭い発言が心に刺さった。
「…人に執着するタイプか」
「うーわー、面倒なヤツじゃんコレ」
「…てか、ただの寂しがり?」
あとの3人も少々引き気味に言った。
わたしはネロが言ったことがどう考えても当たりすぎていて、何も言えることはなかったし、何か言おうとも思わなかった。
「あーでも執着さえしなければ仲良くしてやるのもアリだが」
不意に耀平が笑いながら言った。
「え、それいいの⁈」
ネロがマジかと言わんばかりに耀平の顔を覗き込む。
「まぁあんまりベタベタ付いてこないぐらいならOKってだけだよ。…見ろ、ショージキあれはかわいそうすぎねぇか?」
耀平は、自分たちの発言で盛大にダメージをくらって心が折れかけているわたしを指差した。
「あーこりゃ、なぁ…」
「うぅ…」
ネロと師郎は微妙な表情をした。
「ま、ヤバくなったら手を離しゃいいということで!」
耀平は明るくあとの3人に言った。
「コイツとつるんでも別にいいヤツ挙手!」
はい!(^O^)/
レスありがとうございます。
わざわざ…ありがとうございます!!
一つ前のお話のナンバリングをミスったので、こっちもナンバリング修正。
⑱じゃなくて、⑲ですね、これ。気を付けなきゃ…
さらに修正(´-∀-`;) 副題である「―異能力者たち―」を盛大に忘れてる…
タグには忘れずつけてるのに… ちょっとミス多すぎだよ自分、大丈夫か…?
これからは書き込むときにちゃんと見直ししよう。
「…まぁ、いいかな」
「別にどーでもいい」
「あーめんどくさ…もういいよ、それでも。ごじゆーにどーぞー」
師郎、黎、そしてネロの3人はそれぞれちょっとテキトー気味に答えた。
「てなわけでこれからはおれたちにつるんでもOK!」
3人の許可を取った耀平は明るくわたしに向かって言った。
「…え」
わたしは、目の前で起こっている状況がイマイチ掴めなかった。
「…これって仲良くしてもいいってコト?」
「簡単にいうとそんな感じ~? ま、一応興味もあるんだけどな。”異能力”を知ってしまった常人が、これから先何をするか、とか」
相変わらず耀平は明るく言う。
「…あ、やっぱ興味とかも込みなんだ」
わたしは思わずそう呟いた。興味、なのか…
「あと変な真似したらマジで許さないから」
「それな」
ネロが低い声で言う。
「分かっているだろうね?」
「あぁ…はい…」
わたしはネロの恐ろしさに触れてちょっと後ずさった。
連載再開、ありがとうございます!
今、結構部活(野球)が忙しくなってきて帰りも23時台になっているので、レスは出来ないかもですが、絶対見てから寝るのでこれからも頑張ってください!
Fc no. 1 北西の侍
レスありがとうございます!
もちろんこれからも頑張っていきます!!
北西の侍さんも、部活頑張ってください!
今日も連載します!
「仲良くするのはいいが、あんまり執着するのはアウトな。こっちが嫌になったら問答無用で離れるぞ?」
フッと耀平の顔から笑みが消えた。その目はあの時の”コマイヌ”の目とはまた違った恐ろしさをたたえていた。
「よかったじゃ~ん、何とか仲良くなれてさ~」
「まぁ…でもちょっと上っ面感出ちゃってますよ?」
セレンさんはわたしの肩を笑顔でポンッと叩いたが、わたし自身はこれでいいのかとちょっと困惑していた。
「もしも手を離す時のことを考えて、そこまで情を持つつもりはないからね」
ネロが冷ややかに言った。
「ホントのコト言うとボクはさ、アンタと一緒にいるのがかなり嫌なんだよ…」
そう呟きながら、ネロはわたしから目をそらした。
「そりゃな~、お前のせいで異能力のことコイツにバレたもんな~」
「そ、それ言うな! 言われたくない…」
耀平に嫌味を言われて、ネロは恥ずかしそうにうつむいた。
「え~でもいいんじゃない? これはこれでさ、面白いことになりそうだし…んじゃ! アタシはこの辺で!!」
そうセレンさんはニコッと笑うと、駅の入り口に向かって歩き出した。
「あ! ちょっと…」
「待て待てここで行くのかよ⁈」
わたしとネロは思わず目をパチクリさせた。
「だってさー、アタシもアタシで用事あるし…それにさ、もうキミ達だけでも十分仲良くできるでしょう?」
セレンさんは振り向きざまにそう言う。
「え、でもまだ…」
「いや、ぶっちゃけこいつと一緒は嫌なんだけど…」
「うーん…」
その言葉にわたしやネロは茫然とし、耀平はちょっと苦笑いした。
「それじゃ、また!」
そう言って彼女はまた駅の方へと歩き出した。
「これでいいのか…」
師郎はぽつっと呟いた。そして相も変わらず黎は、黙って駅の方を見つめていた。
「いや、あんま良くねーよ」
さっきの師郎の呟きに、ネロがスパッとツッコミを入れる。
「そうだね…」
わたしは無意識のうちにそう彼らに言っていた。
わたし達は、じゃあねと言わんばかりにこちらに大きく手を振りながら去って行くセレンさんの後ろ姿を、ただボンヤリと見ていた。
〈3.セイレーン おわり〉
あっ! ナンバリングミス発見!
㉑じゃなくて㉒だねこれ(笑)