遠い夏の日
小学生の私
君に伝えたかった想いを鞄に詰めて
親に乗せられた汽車
遠ざかる故郷の景色に
目を潤ませた
視界に飛び込んで来た麦わら帽子
君が振っていた
汽車の窓から手を伸ばして、叫んだ
「帰って来るから!!」
君は返した
「元気でな!!」
何年も過ぎて故郷の思い出は色褪せた
でも心にずっと残っている、あの日の君の声
いつか大人になったら、帰ろう
きっと君も待ってる
そう信じていた
大学を卒業し、そろそろ生活に余裕も出てきて、故郷へ帰ることを決意した
何故かあの日のことを思い出した
いよいよ、会えるね
汽車に揺られながら、
まだかまだかと心が早まるのを感じた
やがて汽車は私に、見覚えのある景色を見せた
懐かしい空の色
柔らかい風
そびえ立つ山々
そのどれもがあの頃のまま、私がいない間時間が止まっていたかのように、車窓に写った
そして駅に着いた
丸暗記した駅のアナウンス
少し古めの窓口
感傷に浸っていたその時
「・・・ったい」
誰かが私にぶつかった
「ごめんなさい、かおり、ぱぱがかえってくるのがうれしくて、つい、はしっちゃった」
可愛らしい女の子だった
「お父さんが帰ってくるの?お母さんは?」
「あっ。かおり、しらないひとには、おしゃべりしちゃだめなんだった。おねえさん、わるいひと?」
「ううん、お姉ちゃんもね、昔、ここに住んでたの。かおりちゃんっていうの?お姉ちゃんも、名前、かおりだよ。」
「そうなんだ!かおりね、ぱぱは、さいきん、おしごとでとうきょにいってる。ままは、あかちゃんのおせわ。このあいだ、うまれたの。」
「そっかぁ、かおりちゃん、おねえさんなんだね。もうすぐ、お父さん、来るかな?」
「うん、たぶん・・・あっ、きた!ぱぱーーー!」
かおりちゃんがかけていく
良かったね・・・
私も、早く君に会いたい
そう思っていた時だった。
「ありがとうございました」
そう声をかけてきたのは、君だった
「・・・・・・え、」
声にならないこの想い
私は君に、想いを伝えに来たのに?
君はようやく私に気づいた
「かおり・・・」
「子供ちゃん可愛いね。私と同じ名前じゃん。」
「お前のことが好きだったから。
せめて、俺にとって大切な娘には、かおりって
付けたかった。」
何よそれ
私は君をずっと・・・ずっと・・・
「ばいばい」
私は彼に別れを告げた
帰りの汽車に乗って夕焼けを眺めた
あの夕日に、私の心も吸い込んで欲しい
そんなことを考えていたら、
不思議と涙がこぼれた
もう君には会わない
悲しくて、でもせいせいして、
初恋の苦さと甘酸っぱさを感じた
元気でね、ありがとう。
空に輝く太陽は眩しすぎる。
あなたも太陽と同じ。
私のそばにいて、光を浴びさせて欲しいけれど、
私が直接見るには眩しすぎる。
あなたは、そんな存在。
柚子じゃないの
もう少し甘い
蜜柑でもないの
もう少し酸っぱい
オレンジにしては
少しほろ苦い
ピンクに似てるかなぁ
でもそんな明るくないし
水色の空?
たまに曇るけどなぁ
私の探すのは、
青春の代名詞。