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「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」6つ目のエピソード「ハルピュイア」前半戦、①~⑫のまとめ。

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ①

「ちょ、ちょっと待ってちょっと待って!」
昼休み、暑いながらもそれなりに人がいる廊下を、わたしは同じクラスの亜理那に引きずられて走っていた。
「とりあえずちょっと待って!」
わたしの必死の叫びをやっと聞き入れたのか、亜理那は立ち止まってわたしの方を振り向いた。
「なぁにサヤカ?」
「何って…」
イマイチ状況を理解していない亜理那に、わたしはちょっとあきれてしまった。
…ついさっきまで、わたしは教室でいつものように本を読んでいたはずなのだ。
だけど亜理那に、ちょっと会ってほしい人がいるんだけどさぁ…いい?と聞かれ、暇だからいいよ、って答えたら…こうなった。
誰かに会うと聞いて、教室出てすぐかな、と思っていたが、教室出てすぐどころか、廊下の突き当りのほうまで移動してきてしまったのだ。
…しかも走って。
走らなければいけないって事は、何か重要なことなのだろうか。
なんとなく、察しがつきそうな気がするけど。
「ねぇ亜理那…一体誰に会うの?」
誰に会うのかまだ分からないから、わたしは尋ねてみた。
「え、それはね~…まだ秘密!」
そう言って亜理那はまだ誰に会うかも伝えず、ただ人差し指を立てるだけだった。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-15 23:52
  • 新エピソード来ましたねー。次はハルピュイアですか。呼び方がハーピー派と好みが割れるあの生き物。僕もハルピュイア派ですね。けどハーピーのシンプルな感じも好き。

    何かが崩壊している者
    男性/21歳/埼玉県
    2019-08-16 08:40
  • レスありがとうございます。
    個人的にはハルピュイアの方がしっくりきますね~
    さてどんな物語になるのか、お楽しみに。
    今日も連載します!

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2019-08-16 16:55
「6.ハルピュイア」開幕。

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ②

「はぁ…」
「ほら、とりあえず行くよーっ」
亜理那はあきれるわたしに目もくれず、廊下の端にある階段を下り始めた。
まぁ、いっか。このままつっ立ってても意味ないし。
わたしはそう声に出さずに呟いて、彼女のあとを追うように歩き出した。

しばらく階段を下っていくと、亜理那は踊り場のところで足を止めた。
そこには焦げ茶色の髪を1本の三つ編みにした女子生徒が立っていた。
「ハルカ! 連れてきたよ!」
ハルカ、と呼ばれた少女は、わたし達の方を振り向く。
「亜理那…ってその子」
彼女はわたしの姿を見て顔をしかめた。
「なんで不見崎(みずさき)さんが…」
彼女は訝しげにわたし、そして亜理那に目を向け言った。
「アレ? ハルカ、サヤカと知り合いなの?」
「知り合いも何も…」
彼女はあきれたように呟く。
だが亜理那は、どうして彼女がそんなことを言うのか分からないのか、わたしがいる方を振り向いた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-16 23:56

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ③

「ねぇサヤカ、ハルカとどういう関係?」
「ど、どういう関係って…」
わたしは思わず口ごもる。
別に、彼女との関係が気まずいわけではないが…ただ、関係性をどう言えばいいのかよく分からないのだ。
そうわたしが困っていると、痺れを切らしたのか彼女が口を開いた。
「不見崎(みずさき)さんは私と去年同じクラスだったの」
「え? そうなの!」
それを聞いて、亜理那は目を輝かせる。
「サヤカ、それってホント?」
亜理那はキラキラした目でこちらを見てきた。そしてわたしは、そのキラキラにちょっと圧倒されてしまう。
「ま、まぁ…一応同じクラスだったけど、話す機会なかったし、近くの席になったことはほぼないし…」
「そうね、接触する機会まるでなかった」
彼女はわたしのことを気にせず、スパッと言った。
「あまり目立たないし、おとなしい方だったからそこまで気に留めなかった」
彼女は腕を組みながら階段の壁に背中を預けた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-19 23:48

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ④

「あ、そうなの?」
「…そういうものよ」
壁にもたれる彼女はあきれたかのように亜理那を見た。
彼女―鷲尾さんの様子を見ていて、この人は相変わらずなんだな、と思った。…まぁ、つい少し前まで同じクラスだったから、変化がなくて当然なんだろうけど。
鷲尾さんこと鷲尾 遥は、去年わたしと同じクラスの人だった。
こちら側からの印象としては、マジメで冷静。クラスでどんちゃん騒ぎしているような人たちからは、いつも少し離れたところにいるような人。
かと言って、わたしと同じように孤立していたわけではなく、よく同じようなメンバーでつるんでいることが多かった。
でもたいがい、一緒にいる人たちは彼女と同じように割とおとなしめな人達ばかり、亜理那のような人と繋がりがあるとは到底思えなかった。
「ね、ねぇ亜理那。亜理那は鷲尾さんとどういう関係?」
話が一旦落ち着いたところで、わたしは亜理那に切り出した。
「え? えーとね、ハルカはわたしと小学校の頃からの付き合いなんだ。たまにそこらへんでおしゃべりしたりするし」
ねーハルカ?と亜理那は鷲尾さんの方を見る。
鷲尾さんはまぁ、そうね、とうなずいた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-20 23:53

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑤

「あ、あと! あと! ハルカは小学校からの異能力者仲間なんだ!」
「ちょ、ちょっと亜理那ぁ!」
突然の発言に、鷲尾さんは動揺した。
「なんてこと言うの⁈ バレちゃいけないのに…! 常人に見えている世界から隠さなきゃいけないモノを、何で…」
もう信じらんない…と彼女は手で顔を覆い隠す。
あ、勘違いしないで!と亜理那は慌てて鷲尾さんに説明する。
「あのね、サヤカはただの常人だけど前々から異能力のことを知ってるんだ! だから大丈夫! 多分他の普通の人たちには言ってないし!」
だから安心して!と亜理那は鷲尾さんを落ち着かせようとした。
それを聞いた鷲尾さんは静かに顔を上げる。
「多分て…それでも1人にバレてる時点で相当大変なことなんだけど?」
あーっ、まぁね…と亜理那はうなずく。
「でも、サヤカはサヤカの方で異能力知るキッカケになった人たちに脅しとかかけられてるハズだから! きっと平気!」
確かにそうだけど…わたしは多分言ってないのに、何で亜理那はその事を知ってる?
…それにしても、亜理那が会わせたい人って、予想通りやっぱり異能力者だったんだな、とわたしは思った。
まぁ、それがまさか面識のある人だとは思わなかったけど。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-22 00:22

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑥

まぁ、この街は異能力者が多いって言うから、前々から知ってる人が異能力者ってことも全くおかしくないのかもしれない。
「…にしてもさ、亜理那」
2人の会話がひとまず済んだのか、鷲尾さんが真剣な顔で尋ねる。
「何で私に不見崎(みずさき)さんを会わせたの?」
「あっ確かに!」
鷲尾さんの疑問に、わたしもそう思った、とわたしは同調する。
「…えっとねぇ、それはね…」
わたし達の質問に亜理那はちょっと意味深に笑いながら答える。
「サヤカに、”サヤカが異能力を知るキッカケになった人達”を紹介してもらうため」
「は⁈」
予想外の彼女の返答に、わたしは近くの廊下に聞こえてしまうかもしれないような声で叫んだ。
「な、何でそんな事を…」
鷲尾さんもあまりの衝撃に絶句している。
「いや何でって…」
驚くわたし達を見ながら亜理那は申し訳なさそうに言う。
「単純に気になったからいいじゃん」

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-23 00:08

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑦

「う…」
「亜理那アンタねぇ…」
あまりにシンプルというか、彼女らしい発言にわたしは言葉を失い、鷲尾さんはあきれたように呟きかけた。
だが亜理那は目の前の状況を気にせず、さらにわたしに向き直った。
「というワケでサヤカ! その人たち紹介して!」
「ちょ、ちょっと待って…」
亜理那の切り替えの早さについていけず、わたしは一度彼女にストップをかけた。
わたしが異能力を知るキッカケになった人達が知りたいのは分かるが、会いたいって言うのは正直想定外だ。
まぁ、彼女の性格を考えるとそこまでおかしくないかもしれないけど。
だけど、なんか紹介しようとは思えない。
ぶっちゃけ”彼ら”を亜理那に会わせたら、わたしの方に色々面倒な事が降りかかりそうだし。
なんとなく危なっかしいからよしたいなぁ…とわたしは自分の中で呟いた。
「…でもさ亜理那」
わたしが色々考えてる中、不意に鷲尾さんが呟いた。
「不見崎(みずさき)さんに人紹介してもらうんなら、私をここに呼ぶ必要なくない?」

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-23 23:59

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑧

「…確かに」
ただわたしから”異能力を知るキッカケになった人達”を紹介してもらうなら、わざわざ鷲尾さんを呼ぶ必要はない。じゃあなぜ…
「あ~、それはね」
亜理那は少し間をとって答える。
「わたし1人だとサヤカから情報引き出せる自信がないから! あとハルカにその事教えたら絶対それが誰か知りたがっていい圧力になると思ったし」
え、とわたしと鷲尾さんは軽く凍り付く。
「あ、圧力…」
内容も内容だけど、いつもの彼女からは考えられないような言葉を繰り出した亜理那に、わたしは唖然としてしまった。
鷲尾さんもあきれたように下を向く。
「そう! 圧力! あとわたしよりもハルカのほうがそういうの得意だし…」
「いやそんなワケねーわ」
あきれ切っているわたし達を気にせず、いつも通りに話を続ける彼女に鷲尾さんは軽く反論した。
そんな突っ込むも気にせず、亜理那はわたしに向き直る。
「と、いうワケでさ~サヤカ、その人達の事教えてくれない? お願いっ!」
そう言って、彼女はぺこりと頭を下げた。
「お、お願いって…」
一生のお願いと言わんばかりに頭を下げる亜理那に、わたしは戸惑った。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-27 00:50

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑨

紹介することはできるけど、やっぱり面倒事が自分の身に起きそうな気がした。
うっかりしたら、”彼ら”がわたしから離れて行ってしまうかもしれないし…
でも、頭を下げてまでお願いされてるってなると、断るのもちょっとなぁ…
そう悶々と考えてるわたしの前にいる亜理那は、ふと思い出したように鷲尾さんの方を向いた。
「あ、そうだ、ハルカも加勢してよ。そのために呼んだんだし」
「嫌よ」
「え~何でぇ~?」
亜理那の誘いをすぐに拒否した鷲尾さんに対して、亜理那はさらに言う。
「ハルカは”異能力”の事を常人にバラシてしまった”異能力者”がどこの誰なのか気にならないの~? わたしはこの通りめちゃくちゃ気になってるんだけどさ」
その言葉を聞いて、不意に鷲尾さんは身じろぎした。
「…確かに、それがどこの誰かは気になるけど…」
「でしょでしょ~? それで、目の前にはその直結の知り合い! 誰か聞きだすチャンスだよ!」
ほんのちょっとだけ興味を持った鷲尾さんに、亜理那は番宣のごとく彼女に加勢するよう促す。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-28 00:03
  • このミズサキちゃんの人間臭い感じ、好きです。

    何かが崩壊している者
    男性/21歳/埼玉県
    2019-08-28 20:59
  • レスありがとうございます。
    まぁ、サヤカは自分が思う”the 普通の人間”そのものなので…(笑)

    今日も連載します!

    テトモンよ永遠に!
    女性/20歳/東京都
    2019-08-28 22:38

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑩

「まぁ、そうね…確かにどこのどいつか気になるし」
鷲尾さんはちょっと亜理那に押され気味に答える。
「ほらサヤカ! ハルカも気になるって言ってるよ?」
「ちょ、ちょっと待ってよ…」
確かに鷲尾さんもそう言ってるけれど、本気じゃなさそうだし、わたし的には…
「…無理?」
亜理那はわたしの目を覗き込みながら首を傾げた。
「ぅ~っ」
この調子じゃどう考えてもラチが明かないような気がして、わたしはため息をついた。
そして、この状況をどうにかするためにも、思い切って口を開いた。
「…しょうがない。紹介するよ」
「やったぁ! ありがとう!」
わたしが紹介するよ、と完全に言い終わる前に、亜理那はわたしの手を取った。
「じゃいつにする? やっぱ割とみんな暇な日曜日? ていうかどこにしようか…」
彼女らしいやや大げさ気味な反応にビックリしているわたしを気にせず、亜理那は1人話を進めていく。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-28 23:53

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑪

「亜理那、亜理那」
ふと何かを思い出したように、鷲尾さんは亜理那の話を遮った。
「…もしかしてさ、」
「?」
鷲尾さんは少し間を置いてから話し出した。
「これ私も一緒に行くヤツ?」
それを聞いて、亜理那はあー…と呟いた。
「…いたほうが心強いけど、行きたくないなら行かなくてもいいよ」
「じゃ行くわ」
想定外の返答に、わたしと亜理那はちょっと驚いた。
「…行くの?」
わたしは本気なのかと思わず尋ねた。
「まぁ、ね。亜理那とあなただけでは何か嫌な予感しかしないもの。ついでに”常人に異能力をバラしたヤツ”が誰なのか知りたいし」
…確かに、何をするか予想の付きにくい亜理那は、ちょっと頼りない。
でも冷静な鷲尾さんがいれば、そんな彼女が変な事をしても意外と大丈夫そうな気がした。
鷲尾さんの意志を確認したところで、亜理那は明るく言った。
「じゃあわたしと、ハルカと、サヤカで行くって事でOKだね!」
「あぁ、うん、まぁ…」
「それでいいけど、亜理那、変な事しないでよ?」
「分かってるって!」
わたしや鷲尾さんの心配を気にせず、亜理那はいつものように応えた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-30 00:01

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑫

「…何でさ、」
小柄な少女が、怒りを押し殺すように言った。
「何でさらに知り合いの異能力者増やしてくるんだよ!!」
「いやソレはしょうがないじゃん」
「しょうがないって言われても…」
彼女を前にして、わたしは苦笑いした。
やっぱり何でこうなるんだよと、黒パーカーの小柄な少女ネロはぼやく。
「あーこの子がサヤカに異能力バラしちゃった張本人?」
「ああそうだよ何か文句ぅ⁈」
そうなんだ~と言う亜理那に対して、ネロは半ばヤケクソ気味に答える。
「…こいつが…」
わたしの後ろにいるハルカはポツリと呟く。
「…何か用?」
ネロが怪訝そうにハルカに尋ねると、ハルカは真顔で言った。
「…何で常人に異能力バラした」
「…」
ネロは気まずいとか、言いにくいと言わんばかりにそっぽを向いた。

テトモンよ永遠に!
女性/20歳/東京都
2019-08-31 00:02
さぁ、お馴染みのメンバーが登場。ここからどうなる? 続きは後半戦のまとめで。