“オランダ坂”を上って
思わず来てしまった
海を見下ろす白い教会
遅れて席につけば
新郎新婦は目の前をゆく
はにかんだ笑顔 昔のままだわ
学生時代の思い出が今
走馬灯のようによみがえる…
いつかあなたと組んだ腕
眩しい彼女のもの
果たせなかった約束は
青いブーケに変えて
必死で涙 堪える私を
胸の奥で見つめて
気付かないふりをして
そしてもう二度と会わないわ
終りを告げる鐘が今
街じゅうに鳴り響く…
いちばん好きだった人とは
結ばれないの
ステンドグラスに今
やさしい光が差し込む…
心の中でそっとつぶやいた
“さよなら”と
駐車場でエンジンを切った
不意に私の胸が震えた
横顔を見るだけで十分だよと
貴方は聞く耳も持たず
戸惑う私をキスでふさいだ
Open Your Door ...
二人の扉を開けて
見えない夜に飛び込んだ
Close Your Eyes ...
目を閉じたら 罪のはじまり
私には帰る場所があること
本当は知ってたでしょ
何をしていても思い出すのよ
誰よりも優しい温もり
涙を流す私に渡された合鍵
Unlock Your Door ...
玄関の扉を開けて
貴方の部屋に逃げ込んだ
Hold Your Time ...
時を抱いて 離さないでいて
Knock Your Door ...
孤独の扉をたたき
淋しい夜がまた繰り返す
Show Your Love ...
私を見て 愛してると云って
今夜だけは 帰りたくない ...
あんなにはしゃいだ週末が
まもなく発車します
“別れのキスはしないで”と
声に出さないうち
ドアが閉まった 静かな10番線
I gotta go, gotta go(ガタゴト)…
音を立て走り去る最終列車
I gotta go, gotta go(ガタゴト)…
云えない 云えない 想いを乗せて
あなたはどこか淋しげに
窓ガラスにもたれた
黄色い線の内側で
私は溜め息つく
愛が遠ざかる 涙のホームの端
I gotta go, gotta go(ガタゴト)…
カーブで点になる最終列車
I gotta go, gotta go(ガタゴト)…
叶わぬ 叶わぬ 気持を運んで
I gotta go, gotta go(ガタゴト)…
深い夜闇をすべる心の列車
I gotta go, gotta go(ガタゴト)…
二人の思い出に急いで行くの
あなたに渡したい
プレゼントがあるの
そっと目を閉じたら
キスをあげるわ
そのとき世界中
止まった気がしたの
ガラス球に閉じ込められたふたり
天上から落ちてくる妖精たち
さあ目をあけて、受け取って
運命が逆さまにした スノウ・ドーム
今年の冬はさむく
カーテンひけば白く
ひとり淋しい部屋で
ガウンをはおる
あのとき私たち
終わった気がしたの
思い出と一緒に捨ててほしかった
ガラスの中そっと覗いたら
抱き締め合っているふたり
運命が逆さまにした あなたとの恋ね
涙の粒はやがて結晶となり
あなたの住む街に降らせる
逆さまにして飾った スノウ・ドーム
半袖のサンタクロース
サーフボード 乗りこなし
この街に来て初めての
私だけ真夏のクリスマス
この頃は電話してばかり
北の国に住むあなたに
目を閉じれば近くにいる
光る水しぶき 粉雪みたい
あなたに見せたい景色があるの
砂浜に書いたメッセージ
水平線で折りたたんだ
飛び出す仕掛けの Christmas Card
サングラスをはずしたら
言い寄ってくる男たち
あなたよりもステキな人は
どこを探してもいないわ
イラストみたいな街を駆け抜け
封筒に詰めた溢れる想い
イヴに間に合うように…
ポストにいれたの Christmas Card
どんなに2人離れてたとしても
サンタは愛をとどけるよ
地球の反対側までも…
大好きなあなたへ Christmas Card
遠い南の島で生まれた恋心
胸の奥がざわめくの
真っ暗な部屋でTVをつけましょう
まだまだ遠いわ タイフーン
青い天気図はまるで心模様
白い線は淋しさの数
だんだん間隔が狭くなってゆくの
週末はこの街も タイフーン
あの淡い恋の苦しさもぜんぶ
吸い込んで… 吸い込んで…
揺れるカーテンから見える
夕焼けの色はピンク
こわいからあなたに電話をするわ
あした家に来て タイフーン
厚い雲が東へ流れてゆけば
あなたが来るころね
紅茶を入れてそっと待ちましょう
ドアが開いたら タイフーン
あの淡い恋をよみがえらすの
嵐を呼んで… 嵐を呼んで…
風がガラスを叩きはじめて
街も電車も止まるの
今夜ふたりは台風の目になるのよ
ベッドの上には タイフーン
夕焼けを追いかける
あなたを追いかけ
放課後の土手 自転車で走る
白シャツは色を失くし
逆光の妖精 燃える輪郭から
飛びこんでくるの
オレンヂのままで世界を止めて
シャッターを切りたい
瞼の裏に焼きつける一枚のネガ
夕焼けを追いかける
あなたの影の長さ
さよならまでの 時を教える
前をゆくシルエットが
遠ざかるたび はやる心から
愛は生まれくるの
永遠にしたい一瞬を切り取って
人は大事に持ち続ける
美しい景色ほど色褪せるから…
フレームの数だけ思い出もまた
1コマずつふえてゆく
そっと胸にしまった一枚のネガ
途切れた会話 つなげるように
カーナビは「道なり」と
何度も 何度も くりかえす
午後の太陽 砂埃にかすみ
サイドミラーに映るあなたと
目が合うたびに 苦しくなる
電波塔が立つ展望台まで
ついて来いとあなたは云うの
You say you want me.
You want to marry me.
途中で寄ったガソリンスタンド
国道飛ばすバイクの群れは
今日も元気に 音を立ててる
あなたに話しても 遠い記憶
胸のアルバムにしまった青春
思い出ひとつ 横切ってゆく
電波塔が立つ展望台まで
ついて来いとあなたは云うの
You say you want me.
You want to marry me.
こんなに幸せな淋しさを
ハンドルを握る あなたは知らない
You never know, you never know ...
人里離れた 湖畔のヴィラは
曇り空 映す 冬の日の鏡
ここには誰も来ることもなく
振り子時計は速度を落とす
あなたはぼんやり 外を見ながら
雑誌めくってる 後ろ姿
痩せた猫背がやけに哀しい
けれど愛しい 不思議な気持ね
暖炉の薪は盛りに燃えて
若き日の二人はここには居ない
木馬に揺れて 編んだセーター
あなたへの愛を形にして
窓の外は冷たく 雪もちらつき
言葉じゃ云えないくらい
あなたが好きよ 目に見えない
ささやかな温もり 背中に感じて
ニューイヤーの花火も喧騒も
ここには届かない 静かな夜
無言の愛が部屋に漂う
素敵な季節 湖畔のヴィラで…
Love is like the wind that is swaying maple trees
“ジリッジリッ”とふくらんだ
ひと夏の恋の始まり
逃げ水 ふたりで
追いかけ走った…
夜風ももう涼しくなって
ひと足先 あなたは消えた
玄関先 しゃがみこむ私
余った花火に火をつける
“パチッパチッ”と燃えさかる
ひと夏の恋の盛り日
激しく、激しく、
音を立てたの
哀しいほどきれいな月が
水張った バケツに映る
意地張った あのときの私
今なら素直になれるのに
“チリッチリッ”と消えてゆく
ひと夏の恋の残り火
虚しく、虚しく、
叫んでただけ
いまアスファルトに落ちた
ひと夏の恋の終りが
静かな、静かな、
9月の花火